疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 全身 · 疾患

アミロイドーシス

Amyloidosis

臓器系
全身血液
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 A/13:アミロイドーシス内科学 S-43:ALアミロイドーシス
鑑別疾患
悪性関節リウマチ軽鎖沈着症骨髄腫腎自己免疫性自律神経節障害純粋自律神経不全症糖尿病性腎症膜性腎症
合併症
無脾症・脾機能低下症
続発疾患
ネフローゼ症候群拘束型心筋症慢性心不全慢性偽性腸閉塞末梢神経絞扼症候群小径線維ニューロパチー
治療薬
ダラツムマブボルテゾミブシクロホスファミドデキサメタゾンメルファランフロセミド
症状
下痢出血傾向便秘肝腫大
検査値
ナトリウム利尿ペプチドM蛋白全体長軸方向ストレイン交感神経皮膚反応
組織像
腎アミロイドーシス(Congo red染色)脾・腎アミロイドーシス(肉眼標本)
下位分類
家族性アミロイドポリニューロパチー
原因となる疾患
TNF受容体関連周期性症候群Waldenströmマクログロブリン血症クリオピリン関連周期熱症候群家族性地中海熱関節リウマチ高IgD症候群・メバロン酸キナーゼ欠損症多発性骨髄腫
適応薬
ダラツムマブ

🧠 全体像:は、異常フォールディングした前駆蛋白がの不溶性線維()として細胞外に沈着し、臓器を圧迫・障害するである。「」は単一疾患ではなく、沈着する前駆蛋白の種類によって原因・治療がまったく異なるという点が学習の核心であり、に由来するAL型()、慢性炎症由来のSAA蛋白によるAA型、(TTR)由来のATTR型(遺伝性・野生型)を区別して考える。学習の幹は「原因不明の腎障害・・末梢神経障害・などを見たら疑う→でを確認する→血清・となどで前駆蛋白型を正確に同定する→型別に治療する(ALはへの、AAは原疾患治療、ATTRはTTR安定化薬・遺伝子サイレンシング薬)」。

病態

はをとって凝集し不溶性となるため、の機構で除去されにくい。沈着した組織はを来し、臓器機能が徐々に失われる。

flowchart TD
    A["前駆蛋白の異常フォールディング"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-pleated sheet structure'>βプリーツシート構造</span>への凝集"]
    B --> C["不溶性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid fibril'>アミロイド線維</span>の形成"]
    C --> D["細胞外への沈着"]
    D --> E["組織の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure atrophy'>圧迫萎縮</span>・機能障害"]
    E --> F["罹患臓器に応じた症候(腎・心・神経・肝・軟部組織)"]

主な型と前駆蛋白

型 前駆蛋白 主な原因・関連疾患
AL(immunoglobulin light chain) (λ優位) 。など形質細胞異常症を伴うことがある
AA(serum amyloid A) (SAA、肝由来の) 慢性炎症性疾患(関節リウマチ、、症など)、
ATTR(遺伝性) TTR遺伝子変異による。・心筋症を来す
ATTR(野生型) 野生型 加齢に伴う沈着。高齢男性の・両側の原因の一つ
Aβ 前駆体蛋白(APP) の(中枢神経限局性で全身性とは扱いが異なる)

💡 AA型はIL-1・IL-6などのが肝でのSAA産生を促進し、産物がAA線維として沈着する経路である。原疾患の炎症を制御できれば進行を止められる点がAL・ATTRと異なる。

臨床像

罹患臓器によって症候が大きく異なるため、複数臓器にまたがる原因不明の症候を統合的に評価することが診断の鍵となる。

臓器 主な所見
腎臓 アルブミン優位の蛋白尿、、腎機能低下(透析に至りうる)
心臓 壁肥厚を伴う、心不全(が保たれたまま悪化する様の経過)、心電図の、不整脈、を伴いやすい。⭐ AL型では心病変が予後を最も強く規定する(T・・差によるMayo 2012病期で、生存期間中央値はI期94.1か月〜IV期5.8か月)1
末梢・自律神経 、、(下痢・便秘の交代)
軟部組織 、、両側性
肝・消化管 、上昇、吸収不良、

⚠️ 心不全に対して通常量の阻害薬やβ遮断薬を用いると、浸潤による・拘束型血行動態のため強い低血圧を来しうる。を慎重に行う。

⚠️ AL型は、成人の後天性の原因として鑑別に挙げる。 (AL型)91例の報告では、22例(24%)が機能的にであった。この群はの所見(など)で同定されており、の診断については塗抹のほうが脾より鋭敏だった。原著は、成人の後天性のにを含めるべきであるとしている2。が確認されれば、莢膜を持つ細菌に対する予防(ワクチン・)の対象として・と同じ扱いになる。

診断

flowchart TD
    A["原因不明の心肥厚・蛋白尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyneuropathy'>多発神経障害</span>など"] --> B["血清・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine immunofixation'>尿免疫固定</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum free light chain ratio'>血清遊離軽鎖比</span>"]
    B --> C["罹患が疑われる臓器の評価(心エコー・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Biomarkers'>バイオマーカー</span>、腎機能など)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abdominal fat pad aspiration'>腹壁脂肪吸引</span>または罹患臓器の生検"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Congo red stain'>コンゴレッド染色</span>陽性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polarized light'>偏光</span>下<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apple-green birefringence'>アップルグリーン複屈折</span>"}
    E -->|"陽性"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass spectrometry'>質量分析</span>などで前駆蛋白型を同定"]
    E -->|"陰性だが疑い強い"| G["別部位・罹患臓器の生検を追加"]
    F --> H["AL疑いなら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clonal plasma cells'>クローン性形質細胞</span>を評価、ATTR疑いなら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic testing'>遺伝子検査</span>"]

のみでは軽鎖異常を見逃すため、、、を組み合わせて評価する。はによる下のを確認し、免疫染色に加えて可能であればで沈着蛋白の型を直接同定する(免疫染色のみでは型の誤判定がありうる)。

が疑われ、かつ血中・尿中にを認めない場合は、がATTRの診断に有用である。ただしは高齢者に非特異的にみられうるため、陽性であってもAL・ATTRの鑑別を省略してはならない。ATTRではTTRで遺伝性か野生型かを鑑別する。

治療

型によって治療の考え方が根本的に異なるため、前駆蛋白型の同定を経ずに治療を開始しない。

型 治療の中心
AL を標的とする治療。新規診断例では適格性と臓器機能に応じて+++を中心に用い、な選択例では高用量後のを検討する
AA 原疾患(関節リウマチ、、症、など)の炎症を積極的に制御することがの進行抑制につながる
ATTR(遺伝性・野生型) TTRを安定化する薬剤(など)や、TTR mRNAを標的とする(パチシラン、ブトリシランなど)を用いる。・は高度選択例に限る

AL治療の効果は、によると、・蛋白尿などの臓器反応を別々に追跡して評価する。

臓器支持療法

  • 心不全には慎重な利尿(など)と塩分管理を軸とし、低血圧・腎機能に注意しながら調整する
  • 、不整脈、血栓症、末梢神経障害への支持療法を行う
  • 高度選択例では腎移植・をクローン制御やTTRと一体で検討する

まとめ

  • は前駆蛋白によりAL()、AA(慢性炎症)、ATTR(遺伝性・野生型)などに分かれ、原因と治療がそれぞれ異なる。
  • 診断はでの確認にとどまらず、などによる前駆蛋白型の正確な同定が必須である。
  • ALはを含むクローン、AAは原疾患治療、ATTRはTTR安定化薬・が治療の中心である。
  • 腎・心・末梢神経・軟部組織など多臓器にまたがる症候を統合的に評価し、脆弱な臓器機能に配慮した支持療法を組み合わせる。

出典

  1. 1.Revised prognostic staging system for light chain amyloidosis incorporating cardiac biomarkers and serum free light chain measurements(Journal of Clinical Oncology・2012)抄録で、ALアミロイドーシスでは心病変が予後不良を予測し従来の病期分類が心筋トロポニンTとNT-proBNPに基づくこと、新規診断810例から遊離軽鎖差(FLC-diff)18 mg/dL以上・心筋トロポニンT 0.025 ng/mL以上・NT-proBNP 1,800 pg/mL以上に各1点を与えるI〜IV期を作成し、各期の生存期間中央値が94.1・40.3・14・5.8か月だったことを確認した閲覧 2026-09-23
  2. 2.Hyposplenism in primary systemic amyloidosis(Annals of Internal Medicine(Gertz MA, Kyle RA, Greipp PR)・1983)抄録本文を取得し、原発性全身性アミロイドーシス91例のうち22例(24%)が機能的に脾機能低下であったこと、この群が末梢血塗抹の所見によって同定されたこと、脾機能低下の診断において末梢血塗抹が脾シンチグラフィより鋭敏であったこと、成人の後天性脾機能低下の鑑別診断にアミロイドーシスを含めるべきであると結論していることを確認した。全文は取得できておらず、確認したのは抄録に記載された主要所見までである(生存分布が正常脾機能群と異なった〈p<0.0001〉ことは抄録に書かれているが、どちらが不良かは抄録からは判定できない)閲覧 2026-09-05