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Symptoms · Published

出血傾向

Hemorrhagic diathesis

別名
出血リスク出血性素因
臓器系
血液全身
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 H-07:凝固・止血系の検査病理学 C-56:末期腎・腎不全病理学 C-6:真性多血症/本態性血小板血症
関連疾患
アセトアミノフェン(パラセタモール)中毒アミロイドーシス異常子宮出血(機能性子宮出血)肝硬変急性骨髄性白血病急性腎障害急性前骨髄球性白血病血球貪食性リンパ組織球症血栓性血小板減少性紫斑病骨形成不全症若年性特発性関節炎新生児黄疸・高ビリルビン血症真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症免疫性血小板減少症
起因薬
ケトロラク

🧠 全体像:「」とは、1回の出血イベントそのものではなく、軽微な誘因や誘因なしに出血が繰り返される、あるいは止血の努力に見合わない出血が続くという患者の体質を指す。量と速度から緊急性を判断し部位から出血源を絞る評価は出血に譲り、ここでは「なぜこの患者は止血できないのか」をそのものの異常として組み立てる。止血は(血小板と血管壁)→(凝固因子とフィブリン)→線溶(できた血栓の分解)という3系統の連鎖であり、どの系統が壊れているかによって出血の性状・部位・タイミングが変わる。この3系統への分解と、PT・APTT・という3つのの組み合わせが、原因検索の出発点になる。

「出血傾向」を疑う病歴の型

単発の出血と真のを分けるのは、誘因との釣り合い反復性である。

手がかり 意味
誘因に見合わない出血(軽微な・採血後) のどこかに欠損がある可能性
複数のな部位で反復する出血 局所病変ではなく全身性の止血異常を疑う根拠になる
いったん止血したのに時間を置いて再出血する 異常(が不安定)の特徴
手術・分娩・のたびに出血で問題になった既往 軽症の先天性異常でも表面化しやすい負荷になる
の家族歴 遺伝性疾患(血友病、など)を積極的に疑う根拠

⭐ 標準化されたツール(など)は病歴の定量化に役立つが、強い出血歴があればスコアが低いことを理由に検査を中止しない。

止血の3系統から原因を分類する

flowchart TD
    A["血管損傷"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary hemostasis'>一次止血</span>:血小板の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adhesion'>粘着</span>・凝集、血管壁の反応"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary hemostasis'>二次止血</span>:凝固因子カスケードによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrin formation'>フィブリン形成</span>"]
    B --> D["安定した止血栓"]
    C --> D
    D --> E["線溶:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasmin'>プラスミン</span>による血栓の分解"]
    B --> F["異常:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet count'>血小板数</span>低下・機能異常、血管壁脆弱"]
    C --> G["異常:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulation factor deficiency'>凝固因子欠乏</span>・消費・合成低下・阻害"]
    E --> H["異常:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperfibrinolysis'>線溶亢進</span>"]
  • は皮膚・粘膜の点状出血や紫斑、など表在性の出血が主体になる。低下(産生低下・破壊亢進・)と、数は正常でも起こるの両方を含む。
  • 異常は関節内・・後腹膜など深部の出血が主体で、いったん止血してから再出血する遅発性のパターンを取りやすい。に特化した内容はに譲る。
  • は頻度こそ低いが見落とされやすい。いったん形成された血栓が早期に溶けてしまうため、止血処置の後に再出血する点は異常と紛らわしいが、機序が異なる(自体は正常)。重症肝疾患、DIC()に伴う二次の顆粒球顆粒による線溶因子放出などが代表例である。

💡 3系統は独立ではない。では血管壁へのによる)が側に、まれにへの吸着による後天性欠乏が側に、同時に関与しうる。

検査値の組み合わせで病型を絞る

・PT・APTTの3つを組み合わせると、原因群をかなり絞り込める。

PT APTT 示唆される病態 代表例
低下 正常 正常 血小板の破壊亢進・産生低下・消費 による
正常 正常 正常(それでも出血) 、血管壁の脆弱性 )、の手がかり
正常 延長 正常 欠乏、・抗凝固薬投与の初期 軽度の合成障害の初期像
正常 正常 延長 、阻害物質 血友病(詳細は
低下〜正常 延長 延長 肝合成能低下、高度・胆汁うっ滞、 肝硬変による
低下 延長 延長 の合併 DIC、、APLに伴うDIC
上昇 正常 正常(それでも出血) 極端なによる

💡 肝硬変ではPT(INR)延長が目立つが、同時に抗凝固蛋白(・Sなど)の合成も低下するため、INR単独の値は出血リスクを正確に表さない。門脈圧亢進や血小板減少など他の要因を合わせて評価する。

見逃してはいけないパターン

⚠️ 出血と血栓が同時に進行する状態は、単純な「」として片付けると対応を誤る。

  • DICが同時に進み、出血と血栓が併存する。敗血症、産科合併症、悪性腫瘍、外傷が誘因になる。
  • :血小板減少はあるが、によるである。を伴う溶血所見と血小板減少があれば、確定診断を待たず治療を始める。
  • 炎症性疾患での「な低下」のように、炎症が改善したわけではないのに血小板・フィブリノゲン・ESRが急に低下するのは、への進展を示すである。
  • 思春期の直後からの著明なとしてだけでなく、など全身性のの初発症状として評価する。
  • を持つ患者では最も見逃してはいけない合併部位である。詳細はに譲る。

評価の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic diathesis'>出血傾向</span>を疑う病歴"] --> B["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet count'>血小板数</span>・PT・APTT・フィブリノゲンを測定"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet count'>血小板数</span>は低下しているか"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudothrombocytopenia'>偽性血小板減少</span>を除外し破壊・産生低下を鑑別"]
    C -->|"いいえ"| E{"PT・APTTは延長しているか"}
    E -->|"いずれかまたは両方"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixing test'>混合試験</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulation factor deficiency'>凝固因子欠乏</span>か阻害物質かを鑑別"]
    E -->|"両方正常でも出血あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor antigen'>VWF抗原</span>・活性、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet function'>血小板機能</span>検査、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='factor XIII'>第XIII因子</span>を評価"]
    D --> H["薬剤歴・肝腎機能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>を必ず併せて確認"]
    F --> H
    G --> H

で必ず確認するのは、抗凝固薬・・NSAIDsの内服、出血の家族歴、過去の手術・での出血歴、月経量、肝疾患・腎疾患である。過去に大きな手術を問題なく乗り切っている既往は、重篤な先天性異常をかなり否定するが、や後天性の異常までは否定しない。

まとめ

  • は「誘因との釣り合い」と「反復性」で単発の出血と区別する。
  • 止血は(血小板・血管壁)、(凝固因子)、線溶の3系統に分けて考える。
  • ・PT・APTTの組み合わせが原因群を絞り込む最初の一手になる。
  • PT・APTTが正常でも出血する病態(、血管性)がある。
  • DIC・TTPは出血と虚血・血栓が同居する病態で、確定診断を待たず初期対応を始める。
  • 肝硬変のINR延長は抗凝固蛋白の合成低下も伴うため、単独で出血リスクを判定しない。