病理学

病理学 · C/56

末期腎・腎不全

End-stage kidney and renal failure

応用トピック
腎代替療法―透析と腎移植
疾患
高血圧性腎硬化症巣状分節性糸球体硬化症膜性腎症慢性腎臓病慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
症状
出血傾向

🧠 全体像:は多様な慢性腎疾患が、、、、血管病変へ収束した形態学的終末像である。G5(15 mL/min/1.73 m²未満)だけで透析開始を決めず、、体液・電解質・酸塩基異常、栄養、患者の希望を統合する。

腎の機能

  • の排泄
  • 塩・水バランスの調節
  • の維持
  • ホルモン分泌(、レニン、)

4つの機能成分:糸球体、尿細管、間質、血管。いずれか1つの傷害が二次的に他に波及 → 慢性疾患 → 。

flowchart TD
    A["糖尿病・高血圧血管病<br>糸球体疾患・嚢胞性疾患<br>尿細管間質性疾患・閉塞"] --> B["慢性の腎傷害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerulosclerosis'>糸球体硬化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular atrophy'>尿細管萎縮</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial fibrosis'>間質線維化</span>・血管病変"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='End-Stage Kidney'>末期腎</span><br>(G5・eGFR15未満)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Azotemia'>高窒素血症</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood urea nitrogen'>BUN</span>・Cr上昇)"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uremia'>尿毒症</span><br>(体液・電解質・内分泌の破綻)"]

末期腎

定義

  • CKD G5はeGFR15 mL/min/1.73 m²未満の腎不全である。病理学的なは、原疾患を問わず広範な不可逆的へ至った腎を指す。はを・区分(G1〜G5)・区分(A1〜A3)の3要素(CGA分類)で分類する。とによる予後のヒートマップでは、G4・G5は区分にかかわらず最も高いリスク区分に置かれる1。
  • の除去、尿濃縮、体液・酸塩基調節、内分泌機能が高度に障害される。
  • 糖尿病、高血圧・血管病、糸球体疾患、遺伝性・嚢胞性疾患、尿細管間質性疾患、閉塞などが原因となる。原因頻度は地域・集団で異なる。
  • G5でも直ちに全員が透析を要するわけではない。、、、をする。 2024は、透析開始を症状・徴候・生活の質・本人の希望・・検査異常の総合評価で決めるとし、による症状・徴候(神経症状、、、難治性掻痒など)、治療抵抗性の酸塩基・電解質異常、・血圧の管理不能、に反応しないの悪化・のいずれかがあれば開始する。これはしばしば 5〜10 mL/min/1.73 m²で起こるが、常にではない1。
  • 推定 10〜14での計画的早期導入と5〜7での遅延導入を比べた無作為化試験(IDEAL)では死亡に差がなく、遅延導入群の75.9%は症状の出現により目標値より高いで導入された2。

形態

  • 対称性に萎縮した腎、赤褐色での表面。
  • 糸球体の消失() — タンパク漏出 → 捕捉 → 圧迫 → 硬化。
  • と尿細管周囲毛細血管の喪失を伴う。
  • リンパ球性の。
  • 萎縮尿細管の甲状腺様外観(:好酸性の円柱を容れた拡張尿細管が、を満たしたに似る)。
  • ⚠️ 糖尿病、、などでは腎が必ずしも小さくならないことがあり、・という終末像の所見だけからは原疾患を特定できないことが多い。
  • 💡 それでも慢性病変の程度そのものは予後を語る。自己腎生検676例の前向きコホートでは、・、、などの程度が、臨床・蛋白尿・で補正した後も腎機能の進行と独立に関連した3。

腎不全

腎が毒素・を排泄できない。臨床像 = +。

A)高窒素血症(生化学的)

  • BUNとクレアチニンなど産物が血中に増加した状態で、は検査室により異なる。
  • は蛋白摂取、消化管出血、、、肝機能、クレアチニンは、食事、薬剤にも左右されるため、単一の固定値で腎不全やを定義しない。
型 機序 例
腎低灌流、なし ショック、脱水
腎性(内因性) (糸球体/尿細管/血管) 糸球体腎炎、(ATN)
腎よりの閉塞 、(BPH)

B)尿毒症(臨床症候群)

腎機能低下に伴う蓄積、体液・電解質・酸塩基、内分泌・代謝異常が生むである。上昇はの一部だが、の定義そのものではない。

  1. 体液・電解質・酸塩基
    • 尿細管疾患 → 多尿 → 脱水。
    • → 濾過低下 → 塩・水の貯留 → 浮腫、心不全。
    • 排泄の失敗による代謝性アシドーシス。
  2. Ca²⁺・PO₄³⁻代謝
    • PO₄³⁻増加 → Ca²⁺低下 → PTH上昇 → → 。
    • による骨からのCa²⁺動員にが重なり、Ca×P積が上がる → 軟部組織・血管の。
  3. 心肺
    • () =「バターを塗ったパン」状( → フィブリノゲン漏出)。
    • — 。
  4. 造血
    • 貧血 — 合成の低下。
    • — 。
  5. 消化管
    • 、大腸炎。
  6. 神経筋
    • 神経障害。
  7. 皮膚
    • 掻痒( 2024は難治性掻痒を透析開始を考える症状の1つに挙げる)1。

急性腎不全

  • 急激な腎機能低下。乏尿・を伴うことが多いが、尿細管が傷害されるとが失われて尿量が保たれるの経過もある(のほうが予後は悪い)4。
  • 基準では、48時間以内の0.3 mg/dL以上の上昇、7日以内の基礎値の1.5倍以上への上昇、または尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上持続、のいずれかで定義される4。
  • 3型:

形態

  • 皮質血流の低下+分布異常 → 局所虚血。
  • 大きく淡いの腎、厚く蒼白な皮質、暗く充血した錐体。
  • では、や太いヘンレ上行脚を中心に上皮の・消失・脱落、尿細管拡張、を認める。病因によっては糸球体、間質、血管も障害されるため「糸球体は正常」と一律にはいえない。

慢性腎不全

  • 多様な慢性腎疾患が進行した場合の共通終末像であり、すべてのが必ずここへ進行するわけではない。

原因

原因群 代表例
代謝性
血管性 、
IgA腎症、、など
遺伝性・嚢胞性 、など
尿細管間質性・閉塞性 、薬剤性、、長期尿路閉塞

💡 ポイント: は広範な、、、血管病変が収束した形態である。は、は、脳症、食欲低下、掻痒、などを伴うである。透析開始はの単独値でなく、症状、・血圧、治療抵抗性の電解質・酸塩基異常、を総合する1。

まとめ

  • は多様な慢性腎疾患(糖尿病、高血圧・血管病、糸球体疾患、嚢胞性疾患、尿細管間質性疾患、閉塞など)が進行し、・・血管病変へ収束した終末像である。
  • 腎不全の臨床像は(・クレアチニン上昇)と(体液・電解質・酸塩基・内分泌・代謝異常からなる)に分けて捉える。
  • は・腎性(内因性)・の3型に分類する。
  • ではPO₄³⁻上昇→Ca²⁺低下→上昇→、および(バターを塗ったパン状)が代表的合併症である。
  • は急激な腎機能低下で、乏尿・を伴うことが多いがもあり、・腎性・の3型に分かれる。
  • は代謝性・血管性・・遺伝性/嚢胞性・尿細管間質性/閉塞性の原因群から進行する共通終末像だが、すべてのが必ずへ進行するわけではない。
  • 透析開始はの単独値ではなく、症状・・治療抵抗性の電解質/酸塩基異常・を総合して判断する(しばしば 5〜10 mL/min/1.73 m²だが常にではない)。

出典

  1. 1.KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease(KDIGO・2024)KDIGOの公開する全文PDF(Kidney International 2024;105(4S):S117–S314)で、CKDを原因(Cause)・GFR区分(G1〜G5)・アルブミン尿区分(A1〜A3)で分類するCGA分類と、G5がGFR 15 mL/min/1.73 m²未満(Kidney failure)であることを確認した。GFRとアルブミン尿による予後のヒートマップでは、G4・G5はA1〜A3のいずれでも最高リスク区分(赤、very high risk)に置かれている。Practice Point 5.4.1は透析開始を症状・徴候・QOL・本人の希望・GFR・検査異常の総合評価で決めるとし、5.4.2はTable 41の状況(尿毒症による症状・徴候〔神経症状、心膜炎、食欲不振、治療抵抗性の酸塩基・電解質異常、難治性掻痒、漿膜炎など〕、体液量・血圧の管理不能、食事療法に反応しない栄養状態の悪化または認知機能障害)が1つ以上あれば開始するとし、それはしばしば(常にではない)GFR 5〜10 mL/min/1.73 m²で起こると述べる。閲覧 2026-08-27
  2. 2.A randomized, controlled trial of early versus late initiation of dialysis(The New England Journal of Medicine・2010)抄録で、IDEAL試験が進行性CKD(Cockcroft-Gault式による推定GFR 10.0〜15.0 mL/min/1.73 m²)の成人828例を、推定GFR 10.0〜14.0での計画的早期導入群404例と5.0〜7.0での遅延導入群424例に割り付け、中央値3.59年の追跡で死亡に差がなかったこと(37.6%対36.6%、ハザード比1.04、95%信頼区間0.83〜1.30)、遅延導入群の75.9%は症状の出現により目標値7.0より高いGFRで導入されたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.The Prognostic Value of Histopathologic Lesions in Native Kidney Biopsy Specimens: Results from the Boston Kidney Biopsy Cohort Study(Journal of the American Society of Nephrology・2018)抄録で、自己腎生検676例の前向きコホート(腎疾患の進行=eGFRの40%以上低下または腎代替療法)において、人口統計・臨床病理診断・検査値で補正した後も、間質線維化・尿細管萎縮(軽微に対し重度でハザード比3.42、95%信頼区間1.99〜5.87)、全節性糸球体硬化(重度で3.31)、細動脈硬化(重度で2.33)などが進行と独立に関連し、慢性病変から作った11点の慢性度スコアも1点あたりハザード比1.19で関連したこと、結論として多様な腎疾患を横断して生検の組織病変が蛋白尿・eGFRで補正後も予後情報を持つと述べていることを確認した。原疾患が判別できない標本に限った解析は抄録に無い。閲覧 2026-08-27
  4. 4.KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury(KDIGO・2012)KDIGOの公開する全文PDFで、2.1.1が急性腎障害(AKI)を48時間以内の血清クレアチニン0.3 mg/dL以上の上昇、既知または推定で過去7日以内に生じた基礎値の1.5倍以上への上昇、尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間持続、のいずれかで定義する(Not Graded)ことを確認した。本文は、尿細管が傷害されると最大濃縮能が失われ尿量が正常のこともある(非乏尿性腎不全)と述べ、乏尿性AKIは非乏尿性より予後が悪いとしている。閲覧 2026-08-27