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Lab values · Published

副甲状腺ホルモン

Parathyroid hormone

別名
PTHインタクトPTHintact PTH
臓器系
内分泌・代謝腎・泌尿器運動器
科目
Internal MedicineTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
内科学 E-04:カルシウム代謝異常内科学 S-12:副甲状腺機能亢進症・低下症病態生理学 1-28:カルシウム・リン代謝のホルモン調節
関連疾患
X連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症カルシフィラキシスビタミンD依存性くる病悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症原発性副甲状腺機能亢進症骨飢餓症候群副甲状腺癌副甲状腺機能低下症慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
監視対象薬
カルシウム受容体作動薬

🧠 全体像:PTHは単独では読めないである。数値そのものよりも、同時に測った血清カルシウムに対してが「上がるべきときに上がっているか、下がるべきときに下がっているか」を見て初めて意味が決まる。高Caなのに抑制されていなければ副甲状腺自体の異常を、低Caなのにが上がっていなければ副甲状腺の反応不全を疑う——この「Caとの組み合わせ」で4に分けて考える枠組みが、このノートの背骨になる。

何を測っているか

は副甲状腺の主細胞でプレプロ(115アミノ酸)→プロ(90アミノ酸)と切り出されて作られる84アミノ酸の直鎖ポリペプチドで、合成から分泌までを1時間以内で完了する1。分泌を決めるのは主細胞表面の(CaSR)で、細胞外イオン化Ca²⁺濃度をで感知し、Caが上がるほど分泌を強く抑えるという負のフィードバックで動く。

flowchart TD
    A["血中イオン化Ca2+が低下"] --> B["副甲状腺主細胞のCaSRが感知"]
    B --> C["CaSR経由の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibitory signal'>抑制シグナル</span>が減弱"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parathyroid hormone'>PTH</span>分泌が増加"]
    D --> E["骨:破骨細胞を活性化しCaを遊離"]
    D --> F["腎:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distal tubule'>遠位尿細管</span>・集合管でCa再吸収を直接増加<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>でリン再吸収を減少"]
    D --> G["腎:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='1-alpha-hydroxylase'>1α水酸化酵素</span>を誘導し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='active vitamin D'>活性型ビタミンD</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcitriol'>カルシトリオール</span>)産生を促進"]
    G --> H["腸管:Ca吸収を促進(間接効果)"]
    E --> I["血中Ca2+が上昇しCaSRが再感知"]
    F --> I
    H --> I
    I -.->|"分泌を再抑制"| B

💡 が骨・腎にはするのに対し、腸管へはを介した間接効果しか持たない1。この非対称性が、後述する「高値・低値の意味」の表で過剰とが別カテゴリーに分かれる理由でもある。

基準値と測定法

は測定法(の設計)ごとに大きく異なるため、必ず報告書に記載された施設基準を用いる。単位はpg/mLが一般的で、目安として正常範囲は概ね10〜65 pg/mLとされる1。この目安を下回る抑制値は、高Ca血症の評価で「非依存性」を示唆する所見として参照される。

⭐ 「インタクト(第2世代)」と「whole (第3世代)」は同じ検体でも値が食い違う。 第2世代は生理活性を持つ(1-84)と、腎から排泄されるはずの不活性断片(7-84)の両方を認識するのに対し、第3世代はN末端に対する抗体を用いて(7-84)を認識しない。⚠️ 腎不全では(7-84)が蓄積するため、第2世代アッセイは生物活性のあるを実際より高く見積もる。 同一患者・同一時点でも世代が違えば数値を単純比較できない。

⚠️ はが数分と短く、検体中でも不安定。 採血後は速やかに分離・冷却し、できるだけ早く測定する(放置検体はになりうる)。

高値の意味・低値の意味

との組み合わせで4に分けて読む。

血清Ca の反応 代表的原因 次の一手
高値 高値、または「不適切に正常」 、(FHH)、 尿中Ca/比、家族歴、必要時CASR
高値 抑制(低値) 悪性腫瘍関連(PTHrP産生腫瘍、、腫瘍による産生)、、など PTHrP、25(OH)D、1,25(OH)₂D、胸腹部精査
低値 上昇 (、ビタミンD欠乏・吸収不良)、(標的臓器の抵抗性。独立ノートは無くの稿で対比して解説) 腎機能、25(OH)D、、Albright骨異栄養の身体所見
低値 抑制、または「不適切に正常」 (術後が最多、自己免疫性、)、異常 頸部、、自己抗体

⚠️ とFHHの鑑別は、単独ではできない。 どちらも高Ca・非抑制という同じパターンを示すため、尿中Ca/比(24時間尿中Ca×血清Cr/血清Ca×24時間尿中Cr)を追加する。0.01未満はFHHを強く示唆するが、のの約10%も同様に低値をとりうるため単独では確定できず、0.01〜0.02は判定困難でCASRが必要になる2。の詳細はを参照。

⚠️ は低値・高値のどちらでも分泌を落としうる。 軽度の低Mg血症はCaSRの感受性を下げて分泌をむしろ促すが、高度の低Mg血症は細胞内Mgの枯渇がCaSRの抑制性Gα蛋白を活性化してしまい、低Caにもかかわらず分泌がかえって抑制される「性副甲状腺機能低下」が起こる。高Mg血症でも同様に分泌が抑制される。低Ca血症でMgを測らずにだけで原因を追うと、この機序を見落とす。

⚠️ 測定上の注意

  • 干渉:を内服中の患者では、ストレプト‐結合を利用するで・のいずれも起こりうる。採血前48〜72時間のが望ましい。
  • :深夜〜早朝(午前3時ごろ)に一次ピーク、午後遅く(午後5時ごろ)に二次ピークを迎え、逆に午前10〜11時ごろに一次谷、夜(午後9時ごろ)に二次谷となる内因性のリズムを持つ3。経時比較は採血時刻をそろえる。
  • 検体の不安定性:のは3〜5分と短い。この短さを逆手に取ったのが術中測定で、腺腫切除後10分の時点でベースライン(切開前または切除前の最高値)から50%以上低下すれば治癒的と判定するMiami criterionが広く用いられ、約97%の精度で手術成功を予測する4。

経時変化とモニタリング

単回値よりも、基礎疾患の経過とともにがどう動くかを追う場面が多い。

  • ⚠️ では「正常化」を目標にしない。 2017ガイドラインは、(G5D)でインタクトを測定法のの約2〜9倍のレンジに維持することを提案し(2C)、この範囲内でも一方向への大きな変化があれば治療の開始・変更を考えるよう提案している(2C)。単回値ではなくなトレンドで判断する5。詳細はCKD-MBDを参照。
  • や製剤による治療では、の低下と同時に血清Caが下がりすぎていないかを必ず対で確認する。だけを見て治療強度を決めない。

まとめ

  • PTHは血清Caとセットで初めて解釈できる。「Caに対しての反応が適切か」を軸に4で考える。
  • 高値+高Ca=(要FHH鑑別)、低値+高Ca=悪性腫瘍関連、高値+低Ca=・、低値+低Ca=・Mg異常。
  • ⚠️ 第2世代(インタクト)と第3世代(whole )で値が異なり、特に腎不全では第2世代が高めに出る。
  • ⚠️ 検体は不安定で速やかな処理が必要。この不安定さを利用した術中測定(Miami criterion:切除後10分で50%以上低下)は手術の成否をその場で判定できる。
  • ではの「正常化」を目指さず、のレンジとトレンドで管理する。

出典

  1. 1.Physiology, Parathyroid Hormone(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)PTHが前駆体(プレプロPTH→プロPTH)から切り出される84アミノ酸のポリペプチドであること、血中Ca上昇が負のフィードバックとして働き分泌を止めること、骨では破骨細胞を活性化してCaを遊離させること、腎では遠位尿細管・集合管でCa再吸収を直接増加させ近位尿細管でリン再吸収を減少させること、1α水酸化酵素の産生を刺激し活性型ビタミンD合成を促すこと、正常範囲を10〜65 ng/L(pg/mLに相当)としその範囲を下回る抑制値が高Ca血症の評価で参照されることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Familial Hypocalciuric Hypercalcemia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)がCASR遺伝子変異による常染色体優性遺伝の疾患で、軽度の高カルシウム血症と正常〜軽度上昇したPTH、低カルシウム尿を呈すること、尿中Ca/クレアチニンクリアランス比が0.01未満であれば約80〜90%の症例でFHHが示唆される一方、孤発性原発性副甲状腺機能亢進症の約10%も0.01未満を示しうるため単独では確定できず、0.01〜0.02の間は判別が難しく遺伝子検査が推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Parathyroid Hormone Circadian Rhythm Is Truly Endogenous—A General Clinical Research Center Study(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・1997)健常男性を対象とした強制デシンクロナイズ法の研究で、血清PTHの一次ピークが午前3時14分ごろ、二次ピークが午後5時26分ごろに生じる一方、一次谷が午前10時41分ごろ、二次谷が午後9時03分ごろに生じ、この日内リズムが恒常条件下でも保たれる真に内因性のリズムであることを確認した。閲覧 2026-08-19
  4. 4.The American Association of Endocrine Surgeons Guidelines for Definitive Management of Primary Hyperparathyroidism(American Association of Endocrine Surgeons・2016)低侵襲副甲状腺摘出術において信頼できるプロトコルによる術中PTHモニタリングを推奨していること、代表的なMiami criterionが切除前の最高値から10分後の採血でPTHが50%以上低下することを治癒の指標とし、約97%の精度で手術成功を予測することを確認した。閲覧 2026-08-19
  5. 5.KDIGO 2017 Clinical Practice Guideline Update for the Diagnosis, Evaluation, Prevention, and Treatment of Chronic Kidney Disease–Mineral and Bone Disorder (CKD-MBD)(KDIGO・2017)推奨文の要約(2頁)で確認した。CKD G5DでインタクトPTHを測定法の正常上限の約2〜9倍の範囲に維持することを提案し、範囲内でもどちらかの方向への大きな変化は治療の開始・変更の契機とするよう提案していること(4.2.3、いずれも2C)、CKD G3a以降で血清Ca・リン・PTH・ALP活性のモニタリングを推奨していること(3.1.1、1C)閲覧 2026-09-24