内科学

内科学 · S-12

副甲状腺機能亢進症・低下症

Hyperfunction and Hypofunction of the Parathyroid Gland

前提:病態
副甲状腺の病理カルシウム・リン代謝のホルモン調節
疾患
原発性副甲状腺機能亢進症骨飢餓症候群副甲状腺癌副甲状腺機能低下症
症状
Chvostek徴候テタニー
検査値
副甲状腺ホルモン

🧠 全体像:副甲状腺疾患は補正Caまたはイオン化Caとの組合せで分類する。高Caに対してが抑制されないなら、低Caに対してが高いなら二次性、低Caに対してが低い/ならを考える。

検査パターン

病態 Ca リン 主因
原発性HPT 高 低〜正常 高/ 単腺腺腫、多腺性病変(従来の多腺過形成)
二次性HPT 低〜正常 では高、ビタミンD欠乏では低〜正常 高 、ビタミンD欠乏、吸収不良
HPT 高 では高いことが多い 長期二次性HPTの自律化
副甲状腺機能低下 低 高 低/ 術後、自己免疫、遺伝性

原発性HPTでは腎結石、骨粗鬆症・骨折、、便秘、多尿、を評価する。25(OH)D、、24時間尿Ca、(・・橈骨遠位1/3)、・腎画像を行い、を尿中Ca/Crクリアランス比と家族歴で除外する1。局在画像は診断目的でなく、手術を決めた後に行う2。

⚠️ Ca/Crクリアランス比 0.01 未満というは、除外のとしては弱い。 欧州内分泌学会(ESE)のコンセンサスは、CCCR<0.01(カルシウム排泄率1%未満)をFHHのスクリーニングとして挙げつつ、FHH 1型の約65%しか拾えない(感度が低い)うえ外科的に確定した原発性HPTの約18%もCCCR<0.01を示す(特異度も低い)として、その臨床的価値は限定的だとしている。がの2倍を超えるなら原発性HPTらしい。はCCCRを下げるので少なくとも1週間してから24時間尿を採る。・ビタミンD不足・妊娠ではCCCRは検証されていない。疑わしければ遺伝学的検査を行うが、臨床的にFHHと診断された患者の25%超はCASR/GNA11/AP2S1に変異を持たないので、陰性でもFHHは除外できない1。を受けた1,599例の検討でも、病的なFHH関連変異をもつ3例の24時間尿Ca/CCCRは326 mg/1.24%・334 mg/1.83%・240 mg/1.00%で、従来の閾値では拾えなかった3。

💡 正常カルシウム性という病型がある。 補正Caもイオン化Caも一貫して正常なのに3か月を超えてが高い状態で、ビタミンD不足・Ca摂取不足・吸収不良・ 60 mL/min未満・やといったの原因をすべて評価したうえでのである1。血清Caは変動するので3〜6か月かけて反復測定する。これが本当に疾患なのかは決着しておらず、見つかっても通常は手術へ回さず経過観察する。逆に、Caが正常な人にをルーチンに測ることは勧められない(測るから見つかる、という構図になる)4。

原発性HPTの手術適応

症候性例はを推奨する。無症候でも次のいずれかで手術を推奨する2。

  • 血清Caがより>1.0 mg/dL(0.25 mmol/L)
  • T-score ≤−2.5または椎体/
  • / <60 mL/min
  • 腎結石・
  • 24時間尿Ca >250 mg/日(女性)、>300 mg/日(男性)
  • 年齢<50歳

💡 この一覧は2022年の第5回国際ワークショップ版である。 2014年の前回版を50名超のが4つのタスクフォースで見直したもので、前回から特に腎に関する推奨が変わった2。の閾値は女性>250 mg/日(6.25 mmol/日)・男性>300 mg/日(7.5 mmol/日)、無症候でも50歳未満なら手術適応で、50歳超でも余命10年以上なら考慮する。初期評価には腎画像(超音波または)・24時間尿Ca・橈骨遠位を含む・X線が入る4。

手術しない場合はCa・腎機能・を追跡する。はCa低下、/は骨量改善を目的に使い分ける。

副甲状腺機能低下症

口周囲・四肢の、、、けいれん、、QT延長を来す。Chvostek/は補助所見で特異的ではない。急性症候性低Caでは心電図下に静注し、Mgを補正する。

慢性期は経口Ca+を基本に、血清Caを低正常域、尿Caを過剰にしないよう調整する。と低Na食はに用いる。従来治療で症状・・・腎機能を制御できない選択例では補充を検討する1。

💡 補充は「考慮してよい」段階から、持続型が実用に入る段階へ移った。 ESEコンセンサス(2022)は、最適化した従来治療でも低Ca血症が続く例・吸収不良例・が著しく低い例にrhPTH(1-84)(入手できなければrhPTH(1-34))を考慮してよいとしつつ、腎と骨への長期影響は未解明だと明記していた1。その後、1日1回皮下注の(1-34)の第3相PaTHway試験で、52週時点で78例中63例(81%)が「血清Ca 8.3〜10.6 mg/dL かつ従来治療からの離脱(Ca 600 mg/日以下・なし)」という複合評価項目を達成し、95%が従来治療から離脱、24時間尿Ca排泄は376 mg/日から195 mg/日へ下がった5。目標は「低正常のCaで症状を抑える」から「腎を守りながら生理的な作用を戻す」へ動いている。

まとめ

  • Caとを同時に解釈し、原発性・二次性・・低下症を分類する。
  • 原発性HPTの画像は診断でなく術前局在目的である。
  • はとCaで治療し、腎合併症を防ぐ。

出典

  1. 1.European Expert Consensus on Practical Management of Specific Aspects of Parathyroid Disorders in Adults and in Pregnancy: Recommendations of the ESE Educational Program of Parathyroid Disorders(European Society of Endocrinology(European Journal of Endocrinology、Bollerslev J et al.)・2022)家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)の鑑別では尿中カルシウム/クレアチニンクリアランス比(CCCR)0.01未満(カルシウム排泄率1%未満)がスクリーニングになるが、FHH 1型の約65%しか拾えない感度の低さと、外科的に確定した原発性副甲状腺機能亢進症の約18%がCCCR 0.01未満を示す特異度の低さのため臨床的価値は限定的であること、PTH濃度が基準上限の2倍超なら原発性副甲状腺機能亢進症らしいこと、サイアザイドはCCCRを下げるため少なくとも1週間休薬してから24時間尿を採ること、CCCRは腎機能障害・ビタミンD不足・妊娠では検証されていないこと、FHH疑い例には全例遺伝学的検査を推奨するが臨床的にFHHと診断された患者の25%超はCASR/GNA11/AP2S1に生殖細胞系列バリアントを持たず陰性でも除外できないこと、正常カルシウム性原発性副甲状腺機能亢進症は「3か月超持続するPTH高値と一貫して正常なカルシウム濃度」という生化学的所見であり二次性副甲状腺機能亢進症の原因を慎重に評価したうえでの除外診断であること、慢性副甲状腺機能低下症では高カルシウム尿にサイアザイドを併用し、最適化した従来治療でも低カルシウム血症が続く例・吸収不良例・QOLが著しく低下した例にrhPTH(1-84)(入手できなければrhPTH(1-34))による補充療法を考慮してよいが腎・骨への長期影響はさらなる検討を要することを本文で確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Evaluation and Management of Primary Hyperparathyroidism: Summary Statement and Guidelines from the Fifth International Workshop(Fifth International Workshop on Primary Hyperparathyroidism・2022)原発性副甲状腺機能亢進症の診断は生化学的に行い、無症候例の手術は血清カルシウム、骨・腎病変、年齢などの基準で判断することを確認した。2014年に公表された前回の国際ガイドラインを50名超の専門家が4つのタスクフォース(疫学・病態・遺伝学/古典的および非古典的病像/外科/管理)で見直し、GRADE法を用いて改訂したもので、前回と異なり腎に関する推奨が変更された閲覧 2026-08-25
  3. 3.Familial Hypocalciuric Hypercalcemia as a Misnomer: Limitations of 24-Hour Urine Calcium and Calcium:Creatinine Clearance Ratios for Identifying Germline Mutations in Patients with Primary Hyperparathyroidism(Journal of the American College of Surgeons・2026)原発性副甲状腺機能亢進症として副甲状腺摘出術を受けた1,599例の単施設後ろ向き研究で、遺伝学的検査を受けた254例のうち病的なFHH関連変異をもつ3例(CASR 2例、AP2S1 1例)の24時間尿カルシウムとカルシウム/クレアチニンクリアランス比は326 mg/1.24%、334 mg/1.83%、240 mg/1.00%であり、従来のカットオフでは同定できなかった。したがって従来の尿カルシウム・CCCRの閾値はFHHの検出に不十分で、正常カルシウム血症の記録や後天性高カルシウム血症の証拠が無い患者には生殖細胞系列の遺伝学的検査を考慮すべきである閲覧 2026-08-25
  4. 4.Primary Hyperparathyroidism in Adults: Recent Developments in Diagnosis and Management(The Medical Journal of Australia(Wootton E, De Sousa SMC, Prince RL, McLeod DSA, Pattison DA, Grossmann M)・2026)原発性副甲状腺機能亢進症の有病率が一般人口の約1%で、80〜90%は単腺腺腫によること、最大10%が遺伝性で若年発症(40〜45歳まで)・多腺病変・副甲状腺癌などでは遺伝学的検査を考慮すべきこと、初期評価に腎画像(超音波またはCT)・24時間尿カルシウム排泄・橈骨を含むDXA・胸腰椎X線が含まれること、尿中カルシウム排泄は女性で6.25 mmol/日(250 mg/日)超・男性で7.5 mmol/日(300 mg/日)超を高値とすること(第5回国際ワークショップに基づく)、手術適応が症状・骨粗鬆症または脆弱性骨折・腎合併症(結石、腎石灰化、高カルシウム尿、腎機能低下またはeGFR 60 mL/min/1.73 m²未満)・無症候かつ50歳未満(50歳超でも余命10年以上なら考慮)であること、正常カルシウム性原発性副甲状腺機能亢進症が本当に疾患かは不明で通常は手術へ回さず経過観察すべきこと、およびカルシウム異常が無い状況でPTHをルーチンに測定することは勧められないことを本文で確認した閲覧 2026-08-25
  5. 5.Efficacy and Safety of TransCon PTH in Adults With Hypoparathyroidism: 52-Week Results From the Phase 3 PaTHway Trial(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2025)成人の副甲状腺機能低下症82例を対象とした第3相PaTHway試験(26週の二重盲検プラセボ対照期+156週の非盲検延長期、北米・欧州21施設)で、1日1回皮下投与のPTH(1-34)プロドラッグであるパロペグテリパラチド(TransCon PTH)は52週時点で78例中63例(81%)が複合主要評価項目(血清カルシウム8.3〜10.6 mg/dLかつ従来治療からの離脱=元素カルシウム600 mg/日以下・活性型ビタミンDなし)を達成し、95%(74/78)が従来治療から離脱して活性型ビタミンDを要した者は皆無であったこと、24時間尿カルシウム排泄が平均376 mg/日から195 mg/日へ低下したこと、有害事象の多くは軽度〜中等度で延長期に試験中止に至った例はなかったことを確認した閲覧 2026-08-25