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Symptoms · Published

テタニー

Tetany

別名
潜在性テタニー手足搐搦助産師の手
臓器系
内分泌・代謝神経
科目
PathophysiologyInternal MedicineAnesthesiology
トピック
病態生理学 1-28:カルシウム・リン代謝のホルモン調節内科学 L-42:低Ca血症・高Ca血症内科学 S-12:副甲状腺機能亢進症・低下症麻酔科学 B-13:生命を脅かす電解質異常(Na・K・Ca)の補正病態生理学 2-17:呼吸性酸塩基平衡障害:呼吸性アシドーシスとアルカローシス
関連疾患
副甲状腺機能低下症

🧠 全体像は症状というより病態の名前で、末梢神経・筋の興奮性が病的に亢進し、不随意の持続性筋収縮として現れる状態を指す。「の症状」という理解は半分しか正しくない——低Mg血症、アルカローシスによるCa低下、それに伴う低K血症の挙動まで、複数の電解質・酸塩基異常が同じ(末梢神経の脱分極閾値低下)に合流して起こる。手足のとして現れる型と、でしか検出できない型があり、対応の中心は症状そのものを鎮める薬ではなく原因電解質の補正である。

定義と用語の整理

患者は「手足がつって戻らない」「唇や指先がる」「息を吸いすぎると手が固まる」のように訴える。医学用語では、末梢神経の自発的な脱分極が持続的な筋収縮として表面化した状態をと呼び、原因になる電解質異常そのものではなく、その結果として神経筋が過剰興奮している所見を指す言葉である。

に分けて整理すると、重症度と検出の仕方が見える。

所見 検出法
手足の:手指が屈曲し母指が内転する)、口周囲の、まれに 診察で明らかに分かる
安静時には症状が乏しい (血圧計を以上に約3分加圧するとが誘発される)、(顔面神経で同側顔面筋が収縮する)

の方がより特異的である。 は健常者の一部でも陽性になるため、単独では診断的価値が乏しい。

紛らわしい病態との切り分けが最初の関門になる。

病態 収縮の性質 見分け方
(本症候) 対称性・持続性、口周囲のを伴う 血清Ca・Mg・pHの異常を伴う
有痛性・局所的で自然に緩む 電解質異常を伴わないことが多く、は陰性
捻転性の異常姿勢(・眼球など) 抗精神病薬・の使用歴があり、で数分〜数十分に改善する
破傷風 が先行し間欠期のない全身の 創傷歴、歴の欠落
による一過性 対称性の手足の攣縮、口周囲の 不安発作などの文脈、呼吸数と換気パターンの異常

💡 」と「破傷風」は音も字面も紛らわしいが、機序は正反対に近い。 は電解質異常による神経の過剰興奮で筋が持続的に収縮する現象であり、破傷風は破傷風菌の素が抑制性シナプスを遮断して持続的な筋収縮を起こす感染症である。対応も原因検索の方向性もまったく異なる。

病態生理

神経の興奮性は、細胞外のCa²⁺がNaチャネルの活性化閾値を上げる方向に働くことで抑えられている。Caが下がると、この閾値そのものが下がり、末梢神経が些細な刺激で自発的に発火しやすくなる——これがの病態生理の核である。

💡 血清Ca値だけでは説明できないもある。アルカローシスではアルブミンへのCa²⁺結合が増え、総Caが正常のままCaだけが下がって症状が出るため、pHの評価を欠かすと原因を見誤る。

原因は「なぜCaが下がるか」という機序で群にまとめて理解する。

代表原因 要点
低Ca血症 術後後が最多)、自己免疫性・遺伝性、ビタミンD欠乏、の脂肪組織、大量輸血のクエン酸、 Ca値そのものが下がる
低Mg血症 シスプラチンの長期使用、 PTHの分泌と作用の両方を障害し、「Caを補正しても治らない低Ca血症」を作る1
アルカローシス (呼吸性)、嘔吐・利尿薬(代謝性) 総Caは正常のままCaだけが下がるため、血清Ca値だけを見て否定しない
低K血症の合併 上記いずれかに合併 カリウム血症はの顕在化をむしろ抑える方向に働き、Kを補正した途端に出現することがある

💡 低Mg血症はこの表で唯一「原因治療なしにCaだけ補正しても改善しない」群である。副甲状腺からのPTH分泌にも標的臓器でのPTH作用にもMgが必要なため、Mgを是正しない限り低Ca血症そのものが解除されない1

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ による気道閉塞は低Ca血症の側面のなかで最も急を要する。 手足の攣縮だけを見て安心せず、嗄声・喘鳴・呼吸苦の有無を必ず確認する。

は数分で低酸素に至りうるため、原因検索より先に気道確保を優先する順序を崩さない。

⚠️ QT延長からの心室性不整脈・心不全も致死的な側面である。 症候性低Ca血症では心電図モニターを外さない。

⚠️ ・副甲状腺手術後の術後低Ca血症は数時間〜数日で顕在化する。 術後の口周囲のを「よくあること」として軽く扱わない。

甲状腺・副甲状腺の血流障害や偶発的摘出が原因となるため、術中操作の内容と手術からのを必ず確認する。

⚠️ 低Mgを補正せずにCaだけ補正しても改善しない。 難治性のやCa補充への反応不良を見たら、まずMgを測定し直す。

⚠️ アルカローシスによるに漫然とCaを静注しない。 原因は換気や嘔吐の側にあり、Caの補正は本質的な治療にならない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["不随意の持続性筋収縮"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway symptoms'>気道症状</span>・意識障害を伴うか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laryngospasm'>喉頭痙攣</span>・気道緊急として<br>直ちに気道評価・確保"]
    B -->|"なし"| D["血清Ca(アルブミン補正、<br>可能なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ionization'>イオン化</span>Ca)・Mg・K・P・血液ガスを測定"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ionization'>イオン化</span>Caは低いか"}
    E -->|"低い"| F["PTH・25(OH)D・Cr・尿中Caで<br>原因を絞る"]
    E -->|"正常"| G["アルカローシス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperventilation'>過換気</span>・<br>低Mg血症を疑う"]

ではの契機(不安、疼痛、代謝性アシドーシスの代償)、術後経過、薬剤歴、下痢・嘔吐、アルコール歴を確認する。身体所見ではに加え、痙攣の有無、心電図でのを確認する。検査はカルシウムを軸に、アルブミン補正やCa、K・Pと血液ガスを併せて評価する。

気道所見の有無で緊急対応と原因検索のどちらを優先するかが決まるが、がなくても悠長に構えてよいわけではない。総Caが正常範囲でも症状が強ければCaを測定し直し、アルカローシスや低Mg血症を含めて評価をやり直す。

対応の考え方

  • 症候性の低Ca血症は10%の静注が第一選択である。は含有Ca量が多い一方、時の組織障害が重くからは避けられる2
  • 静注中は心電図モニタリングを行い、を含む輸液と同一ラインで投与しない2
  • 無症候・軽症の低Ca血症は経口Ca+で管理する。
  • 低Mg血症を伴う例では、低Mgを必ず同時に補正する。Mgが低いままではPTHの分泌も作用も回復しない1
  • 慢性期()の管理目標は血清Caを〜わずかに低値に置き、24時間尿中Caを定期的にフォローする。補正しすぎるとを招くためである3
  • によるでは、紙袋を安易に勧めない。低酸素の危険があるうえ、疾患の除外が先である。

まとめ

  • は症状名ではなく、神経筋の興奮性亢進という病態そのものを指す言葉である。
  • 、口周囲の)とでしか検出できない)に分けて整理する。
  • 機序は細胞外Caの低下によるNaチャネル閾値の低下で、低Ca血症・低Mg血症・アルカローシスがそれぞれ別の経路でこれを起こす。
  • 低Mg血症はCaを補正しても改善しない低Ca血症を作り、アルカローシスは総Caが正常のままCaだけを下げる。
  • 見逃してはいけないのは気道閉塞とで、術後の口周囲を軽視しないことも重要である。
  • と破傷風は名称が紛らわしいが機序は別物であり、混同すると原因検索の方向を誤る。
  • 対応の軸はの静注とMgの同時補正で、慢性期は補正しすぎないことを目標にする。

出典

  1. 1.Calcium Gluconate(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)症候性低Ca血症・テタニーへの治療は10%グルコン酸カルシウム10〜20 mLを50〜100 mLに希釈し10分かけて静注、症状が続けば10〜60分毎に反復すること、塩化カルシウムはグルコン酸カルシウムより含有元素Ca量が多い一方、血管外漏出時の組織壊死リスクが高いため末梢静脈からの投与では避けられ中心静脈路が前提になること、静注中は心電図モニタリングを行い重炭酸塩・リン酸塩と同一ラインで投与しないことを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Hypomagnesemia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)低Mg血症はMg依存性のアデニル酸シクラーゼによるcAMP産生を障害し、副甲状腺からのPTH分泌と標的臓器でのPTH作用の両方を低下させることで低Ca血症を来すこと、この機序による低Ca血症はMgを是正しない限りCa・ビタミンD補充だけでは改善しないことを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Hypoparathyroidism: update of guidelines from the 2022 International Task Force(International Task Force(第2回国際ワークショップ)/ Archives of Endocrinology and Metabolism・2022)慢性副甲状腺機能低下症の管理目標として血清Caを基準範囲の下半分またはそれをわずかに下回る値に置くこと、24時間尿中Caを成人女性で250 mg(6.25 mmol)未満・成人男性で300 mg(7.5 mmol)未満に保つことを目標とすること、過剰補正による高Ca尿が腎結石・腎石灰化のリスクになるためサイアザイド系利尿薬などで管理することを確認した閲覧 2026-08-03