内科学

内科学 · L-42

低Ca血症・高Ca血症

Hypocalcemia and Hypercalcemia

前提:病態
副甲状腺の病理骨ミネラル恒常性に作用する薬
前提:正常
カルシウム代謝と骨の生理学
疾患
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
症状
Chvostek徴候テタニー喉頭痙攣帯状角膜症

🧠 全体像:Ca異常では総Caだけを見ず、アルブミン、pH、イオン化Caを確認する。低Ca血症は反応とMg・リン酸・ビタミンDで、高Ca血症はが抑制されているかで原因を大別し、神経・心症状のある重症例は原因検索と並行して治療する。

評価の基本

血中Caの約半分はイオン化Caで、残りは主に型である。低アルブミンでは総Caだけが低く見える。補正式は概算にすぎず、重症患者、腎不全、酸塩基異常ではイオン化Caを実測する。アルカローシスはを増やしてイオン化Caを下げ、を誘発し得る。

⚠️ 補正カルシウム式の限界は「概算にすぎない」よりもう一段強い。 総CaとイオンCaを同時測定した成人22,658例の住民ベースでは、補正しない総Caのほうが(R²=71.7%)よく使われる簡易Payne式による補正Ca(R²=68.9%)よりイオン化Caとの相関が良く、低Ca・正常・高Caへの分類も補正なしが最良だった(補正なし74.5%、Payne式63.0%、簡易Payne式58.7%)。しかも補正式による誤分類はがあるときにこそ悪化した——本来その式が役立つはずの場面である1。💡 したがって「低アルブミンなら補正式で補えばよい」とは考えず、判断が変わる場面ではイオン化Caを測る、測れないなら補正値を過信せず補正なしの総Caも併せて見る、という運用にする。

低Ca血症

原因と所見

主な原因 追加所見
低値/ 甲状腺・副甲状腺手術後、自己免疫、遺伝性副甲状腺機能低下 リン酸高値
高値 ビタミンD欠乏・吸収不良、、抵抗性、、腫瘍崩壊 原因によりリン酸低値または高値
機能低下 低Mg血症 分泌・作用が障害
Ca消費・薬剤 、、大量輸血のクエン酸、 病歴が重要。とくに透析依存の高齢女性では後の重症低Ca血症リスクが高い2

口周囲・四肢の、、、、、痙攣、QT延長、不整脈を来す。は特異度が低いが、は血圧計をより高く3分膨らませた際のである。

急性例では低血圧・心不全、不安、混乱、などを伴うことがある。慢性例では基底核などの、、、歯牙形成異常、乾燥皮膚が手掛かりとなる。

flowchart TD
    A["低Ca/症状"] --> B["イオン化Ca・ECG・Mg・リン酸"]
    B --> C{"痙攣・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetany'>テタニー</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laryngospasm'>喉頭痙攣</span>・QT延長"}
    C -->|"あり"| D["10% <span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcium gluconate'>グルコン酸カルシウム</span>静注+モニター"]
    C -->|"なし"| E["経口Ca+原因治療"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parathyroid hormone'>PTH</span>+25-OHビタミンD+腎機能"]
    F --> G["低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parathyroid hormone'>PTH</span>:副甲状腺機能低下"]
    F --> H["高<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parathyroid hormone'>PTH</span>:ビタミンD欠乏・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic kidney disease'>CKD</span>など"]

重症症候性では10% を緩徐静注し、症状・ECG・Caを確認して反復またはする。静注Caは・リン酸含有液と同じ輸液ラインで混合しない。Mg欠乏を補正する。慢性副甲状腺機能低下では経口Caとを用い、Caを低正常域に保ちつつ、結石、を避ける。難治例では補充を専門的に検討する。

高Ca血症

PTHで大別する

主な原因
高値/ 原発性・、、
抑制 PTHrP産生癌、性転移・骨髄腫、産生リンパ腫/肉芽腫、ビタミンD・A過剰、甲状腺機能亢進、固定、薬剤

「結石、骨症状、腹部症状、」と表現されるように、多尿・口渇・脱水・結石、便秘・悪心、筋力低下、、混乱・傾眠、QT短縮を来す。FHHは通常軽症で尿Caが低く、原発性との鑑別なしに手術しない。

高Ca血症クリーゼ

、神経症状、AKI、重い脱水・不整脈では緊急治療する。

  1. 0.9%で循環と尿量を回復する。目安は200–300 mL/時で尿量>100 mL/時を維持する。心・腎機能に応じを避ける34。
  2. カルシトニン(4 IU/kg)は数時間で作用するががあるため短期間のとする。効果は4–6時間で立ち上がるが約2日しかもたない3。
  3. 悪性腫瘍関連ではまたはでを抑える。腎機能と原因で選ぶ。米国内分泌学会の2023年ガイドラインはまたはを強く推奨し、両者を比べる場合はを優先することを条件付きで推奨している4。がなければ4 mgを15〜30分で、または60–90 mgを2時間で静注する3。
  4. 過剰(リンパ腫、)にはグルココルチコイドが有効となり得る3。
  5. をCa排泄目的にルーチン使用せず、輸液後の時に限る4。難治性で腎・心不全がある場合は低Caによる透析を検討する。

💡 「輸液→速効薬→」という順番は、効果発現の速さの差そのものである。 は即効だが投与を止めれば効果も切れる。カルシトニンは4〜6時間で効くが約2日で効かなくなる。は2〜3日かかるが2〜4週もつ3。⚠️ 本命は/で、カルシトニンはそのまでの橋渡しにすぎない——カルシトニンだけで乗り切ろうとすると数日で破綻する。を投与しても高Ca血症が続く不応例では、が10日以内に64%で補正血清Caを11.5 mg/dL以下へ下げ、反応期間の中央値は104日だった5。

治療選択の速度と役割

介入 主作用 効果発現 おおよその持続・注意
循環血液量を回復し尿中Ca排泄を増やす 数時間 投与中;心・腎不全では過剰負荷に注意
カルシトニン 抑制+尿中Ca排泄 4〜6時間 約48時間でが目立つ3
破骨細胞性を抑制 24〜72時間 2〜4週;腎機能に応じ薬剤・投与を選ぶ3
RANKL阻害でを抑制 数日 数週〜数か月;低Ca血症を監視(透析例でとくに注意)2
グルココルチコイド 産生・を抑える 2〜5日 リンパ腫・など原因を選ぶ
を介してを抑える 数日 に用いる
透析 血中Caを直接除去 数時間 重症腎不全、輸液不能、難治例

まとめ

  • アルブミン・pHの影響を踏まえ、必要時はイオン化Caを直接測定する。
  • 低Caは・Mg・リン酸・ビタミンD、高Caは抑制の有無から原因を分ける。
  • 重症低Caは静注カルシウム、高Caクリーゼは+迅速作用薬+で治療する。

出典

  1. 1.Use of Albumin-Adjusted Calcium Measurements in Clinical Practice(JAMA Network Open・2025)血清総カルシウムとイオン化カルシウムを同時測定した成人22,658例の住民ベース横断研究で、補正なしの総カルシウムのほうが(R²=71.7%、95%CI 71.1〜72.2)よく用いられる簡易Payne式による補正カルシウム(R²=68.9%、95%CI 68.0〜69.6)よりイオン化カルシウムとの相関が強かったこと、低Ca血症・正常・高Ca血症への分類一致率も補正なし総カルシウム74.5%に対しPayne式63.0%・簡易Payne式58.7%と補正なしが最良だったこと、補正式による誤分類は低アルブミン血症があるときにいっそう悪化したこと、したがって補正式への依存は得るものが少なく真のカルシウム状態を誤分類する危険が大きいことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Severe Hypocalcemia With Denosumab Among Older Female Dialysis-Dependent Patients(JAMA・2024)透析依存の高齢女性ではデノスマブ投与後の重症低カルシウム血症のリスクが高く、慎重な適応判断と血清カルシウムの監視が必要であることを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Malignancy-Related Hypercalcemia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)症候性の重症高カルシウム血症の初期治療が生理食塩液・カルシトニン・ビスホスホネートであること、生理食塩液は即効性で効果は投与中持続すること、カルシトニンは4〜6時間で効き始めるが効果は約2日しかもたないこと、ビスホスホネートは2〜3日で効き始め効果は2〜4週持続すること、生理食塩液は200〜300 mL/時で尿量100 mL/時超を目標とし心不全・腎不全では慎重を要すること、ループ利尿薬は十分な輸液蘇生の後にのみ投与すべきこと、カルシトニンの用量が4 IU/kgであること、ゾレドロン酸(4 mgを15〜30分で静注)またはパミドロン酸(60〜90 mgを2時間で静注)が腎機能障害のない患者に推奨され悪性腫瘍関連ではゾレドロン酸が優先されること、およびグルココルチコイドが活性型ビタミンD産生過剰(リンパ腫・肉芽腫性疾患など)による高カルシウム血症に有効であることを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Treatment of Hypercalcemia of Malignancy in Adults: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society / Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2023)悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の治療として成人にデノスマブまたは静注ビスホスホネートを強く推奨し、両者を比較した場合はデノスマブを優先することを条件付きで推奨したこと、骨吸収抑制薬の効果が現れるまでの一次治療は静注輸液による十分な補液であり心機能に応じて調整すること、フロセミドの有効性・安全性を支持する根拠はごくわずかでループ利尿薬をルーチンに用いるべきではないが腎機能障害または心不全のある患者では生理食塩水補液中の溢水を防ぐために慎重に用いることが必要になりうる、としていることを確認した。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Denosumab for treatment of hypercalcemia of malignancy(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2014)静注ビスホスホネート投与後も持続する不応性の悪性腫瘍関連高カルシウム血症で、デノスマブが10日以内に64%の患者で補正血清カルシウムを11.5 mg/dL以下へ低下させ、反応期間の中央値が104日であったことを確認した。閲覧 2026-08-25