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Drug Atlas · A20 Mood stabilizers / 気分安定薬 · 必修

リチウム

lithium

分類
Mood stabilizers / 気分安定薬
商品名(日本)
リーマス
商品名(EU)
Quilonum
科目
Pharmacology
トピック
A20: Non-reuptake-inhibitor antidepressants. Agents used for treatment of manic phase of bipolar disorders
禁忌疾患
原発性副腎不全慢性腎臓病
副作用
振戦下痢
監視検査値
クレアチニン甲状腺刺激ホルモン
影響検査値
カルシウム
相互作用
(デクス)イブプロフェン(デクス)ケトプロフェンイルベサルタンインドメタシンエナラプリルカプトプリルジクロフェナクセレコキシブナプロキセンバルサルタンバルサルタン+サクビトリルヒドロクロロチアジドペリンドプリルメロキシカムヨウ素ラミプリルロサルタン
対象疾患
気分障害(うつ病・双極性障害)統合失調感情障害
原因となる疾患
急性・慢性尿細管間質性腎炎甲状腺機能低下症巣状分節性糸球体硬化症尿崩症

🧠 全体像治療におけるであり、から転用されたバルプロ酸・カルバマゼピン・とは出自も機序も異なる、精神科で唯一の「純粋な」である。自殺予防効果が実証されている数少ない精神科薬という独自の価値を持つ一方、治療域とが極めて近いため、有効性を追求すること自体が中毒リスクと隣り合わせになる——が治療そのものと不可分な薬。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 出自 機序 際立つ強み・弱点
金属イオン(唯一) ・GSK-3阻害 第一選択・自殺予防効果/治療域が狭い
バルプロ酸 由来 GABA↑・Na⁺・T型遮断 躁に強い/催奇形性
カルバマゼピン 由来 Na⁺ にも/SJS(HLA-B*1502)・
由来 Na⁺・グルタミン酸↓ うつの予防に強い/SJS(緩徐増量が必須)

「躁に強いのは・バルプロ酸・カルバマゼピン、うつの予防に強いのは」という非対称性がの維持療法を理解する鍵。 は急性躁には無力に近いが再発性のうつエピソードを防ぐ力が強く、逆には躁・うつ双方の予防効果と自殺予防効果を併せ持つバランス型——このバランスの良さが第一選択である理由。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lithium'>リチウム</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inositol monophosphatase (IMPase)'>イノシトールモノホスファターゼ</span>を阻害"] --> B["イノシトール一リン酸から<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='myo-inositol'>ミオイノシトール</span>への再生が止まる"]
    B --> C["細胞内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myo-inositol'>ミオイノシトール</span>が枯渇"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphatidylinositol'>ホスファチジルイノシトール</span>系<br>シグナル伝達が減弱"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lithium'>リチウム</span>がGSK-3βを阻害"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroprotection'>神経保護</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic plasticity'>シナプス可塑性</span>関連の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wnt pathway'>Wnt経路</span>など)が変化"]
    D --> G["過剰な神経興奮性シグナルの<br>『鈍化』(気分の振れ幅を抑える)"]
    F --> G

💡 の正確な抗躁機序は今も完全には解明されていないが、「イノシトール枯渇仮説」と「GSK-3阻害仮説」の2本柱で説明されることが多い。どちらも共通するのは、特定の神経伝達物質受容体を直接ブロックするのではなく、細胞内シグナル伝達の段階で気分の振れ幅そのものを鈍らせるという発想であり、これが躁・うつ両方向への予防効果につながると考えられている。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 経口でほぼ完全に吸収
分布 へゆっくり分布(脱水・Na⁺欠乏で再吸収が増え中毒リスク↑)
代謝 受けない(未変化体のまま体内を巡る)
排泄 のみでNa⁺とに再吸収される)
半減期 約18〜24時間(定常状態到達に約5日)
治療域 血中濃度0.6〜1.2 mEq/L(との差がわずか)

を一切受けず腎臓だけで処理される、しかもでNa⁺と同じ経路で再吸収されるという2点が、臨床上のあらゆる注意点の根っこにある。 脱水・低Na⁺血症・NSAIDs・ACE阻害薬・はいずれもNa⁺の動態を変えることでを下げ、中毒濃度に押し上げる——これらは「そのものを阻害する薬」ではなく「の排泄経路に割り込む薬」として理解する。

適応

領域 使いどころ
精神科 の急性期治療・の再発予防(第一選択)、うつ病のへの
精神科(他) の既往があるでの長期予防(自殺予防効果が実証されている数少ない薬)

用法・用量

炭酸として1日400〜600 mgより開始し、1日2〜3回に分割する。血中濃度の目安は急性期0.8〜1.2 mEq/L、0.6〜1.0 mEq/L。 投与初期・増量時は1週間に1回、は2〜3か月に1回を目安に血中濃度・腎機能・甲状腺機能を測定する。実際の用量は年齢・腎機能・体格・併用薬で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
高頻度 細かい振戦、多尿・下痢、悪心
注意 症(TSH上昇)、、体重増加
重篤・まれ (振戦増悪・・意識障害)、、催奇形性(Ebstein奇形)

まとめ

  • における由来の他のとは異なり、金属イオンそのものが薬効を持つ唯一の存在。
  • ・GSK-3阻害という、受容体ではなく細胞内シグナル伝達を標的にする機序。
  • 精神科薬の中で数少ない自殺予防効果が実証された薬。
  • のみでを受けず、Na⁺とに再吸収されるため脱水・NSAIDs・ACE阻害薬・で中毒リスクが上がる。
  • 治療域が0.6〜1.2 mEq/Lと狭く、定期的な血中濃度・腎機能・甲状腺機能モニタリングが必須。
  • 慢性使用で症・を起こしうる。
  • 妊娠初期はEbstein奇形のリスクがわずかに増加する。