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Drug Atlas · B6 Antihypertensives / 降圧薬 · 必修

ラミプリル

ramipril

分類
Antihypertensives / 降圧薬
商品名(EU)
Tritace
科目
Pharmacology
トピック
B6: Drugs acting on the renin-angiotensin-aldosterone-system (RAAS)
禁忌疾患
遺伝性血管性浮腫
副作用
乾性咳嗽血管性浮腫低血圧めまい
監視検査値
カリウムクレアチニン
相互作用
バルサルタン+サクビトリルリチウム
対象疾患
Fabry病アルポート症候群冠微小血管障害急性冠症候群高血圧症慢性冠症候群(安定狭心症)慢性心不全
原因となる疾患
急性腎障害

🧠 全体像:は阻害薬4剤の中で、「高血圧・心不全がなくても心血管リスクが高いだけで予後を改善する」というHOPE試験のエビデンスを最も強く背負う薬である。基本の位置づけはと同じ型阻害薬だが、「のハイリスク患者全般への」という文脈で名前が挙がりやすい。

薬効群の中での位置づけ

同じ阻害薬の中では「HOPE試験・ハイリスク患者の」という枠で覚えるとよい。

薬剤 体内での形 半減期 際立つ特徴
活性体そのもの 約2時間(短い) 食事で吸収↓。・
→ 約11時間 最も広く使われる基準薬
→ 約25〜30時間(1日1回) 組織への親和性が高い
→ 約13〜17時間 HOPE試験:高血圧・心不全がなくても高リスク患者の心血管イベントを抑制

⭐ 阻害薬と(・・)のは。 は「」でもあり、I→IIの変換に加えの分解も担う。阻害薬はこの分解を止めるため・が生じるが、はだけを狙うためこの2つの副作用が少ない。全体の立ち位置(③MRA・④との関係)はの項を参照。

機序

flowchart TD
    A["経口<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ramipril'>ラミプリル</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["肝臓で加水分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ramiprilat'>ラミプリラト</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin-converting enzyme'>ACE</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kininase II'>キニナーゼII</span>)を阻害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin'>アンジオテンシン</span>Ⅱ生成↓"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinin'>ブラジキニン</span>分解↓(蓄積)"]
    E --> G["血管収縮↓・アルドステロン↓"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial function'>血管内皮機能</span>改善"]
    F --> I["蓄積しすぎると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry cough'>空咳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angioedema'>血管浮腫</span>"]
    G --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antihypertensive (blood-pressure lowering)'>降圧</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterload reduction'>後負荷軽減</span>"]
    H --> J

💡 HOPE試験(2000年、NEJM)は「血圧をほとんど下げない用量」でも心血管イベントが減ったことから、の効果がだけでは説明できない血管内皮保護作用を含むことを示した。 これが「高血圧の治療薬」ではなく「心血管リスクを下げる薬」としてが語られる理由である。

薬物動態

項目 値・特徴
か はい(でへ加水分解)
約50〜60%
代謝 肝臓でへ変換
排泄 (として)
半減期 約13〜17時間(1日1回投与が可能)

適応

領域 使いどころ
循環器 高血圧症、、
循環器(血圧非依存の) ⭐ ()を含むのハイリスク患者全般:HOPE試験で心血管死・心筋梗塞・脳卒中のを抑制
腎 蛋白尿を伴う、(進行抑制)

用法・用量

高血圧・心血管リスク低減では1日1回2.5 mgから開始し、を見ながら5〜10 mgまで漸増する。腎機能低下例はを減らす。実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌に何が載るかは国ごとの文書が決める。 下の表は英国のを実際に開いて数えたもので、この文書で読めた範囲である。⭐ は日本の基準収載品目リスト(令和8年8月13日適用)の内用薬・注射薬・外用薬のいずれにも収載がなく、日本の電子添文は確認できなかった1。日本での扱いについては、ここでは何も述べない。

# 英国 SmPC 4.3 の禁忌(8項目) 補足
1 ・添加剤または他の阻害薬に対する過敏症 「他の阻害薬」まで含む
2 の既往——遺伝性・特発性、または阻害薬/による既往 ⭐ はこの4つを1項目にまとめて書く(・は「薬剤性の既往」と「遺伝性/特発性」を2項目に分ける)
3 /との併用 最終投与から36時間はを開始しない。逆向き(の開始)にも36時間
4 血液が陰性表面と接触する治療 膜(ポリアクリロニトリル膜など)による透析・、硫酸による。重篤なのリスク
5 ⭐ 有意なまたはの 4.4 の注意ではなく 4.3 の禁忌
6 妊娠第2・ 第1三半期は 4.3 ではなく 4.6 で「推奨されない」
7 ⭐ 低血圧または血行動態が不安定な状態 確認した4剤の英国SmPCではだけ。・・の 4.3 には無い
8 糖尿病または( 60 mL/min/1.73 m² 未満)でのアリスキレン含有製剤の併用 の禁止

Tritace(2026年8月26日改訂)2との錠(2026年7月14日改訂)3で同じ8項目であり、5・7の項目は固有の書き方ではない。

  • ⭐ が禁忌であることは、英国SmPC 4.3 に逐語で載っている——History of angioedema (hereditary, idiopathic or due to previous angioedema with ACE inhibitors or AIIRAs)2。💡 は「」としての分解も担うため、阻害薬はを蓄積させる。もともと過剰で発作を起こすでは発作を誘発・増悪させうる。
  • ⭐ ・のは、では「注意」ではなく「禁忌」である。 同じ阻害薬でも・の英国SmPCはこれを 4.3 に置かず 4.4 の注意として扱い、はと同じく 4.3 の禁忌に置く。⚠️ 「阻害薬はクラスで同じ」と平坦化すると、この差が消える。 💡 機序は、の収縮をⅡに依存している腎で、その収縮が外れて圧が落ちることである。
  • ⚠️ 片側性でが機能している場合は 4.3 の禁忌ではない。 英国SmPC 4.4 は patients with unilateral renal artery stenosis with a second functional kidney を「が強く活性化している患者」の一例として挙げ、初回投与時・増量時の急激な血圧低下と腎機能悪化に注意し、血圧を監視しながら用いるとしている2。
  • ⚠️ 妊娠の射程を「全妊娠期」と平坦化しない。 英国SmPCで 4.3 の禁忌になるのは第2・で、第1三半期は 4.6 が not recommended(推奨されない)とし、催奇形性については「第1三半期曝露に関する疫学的エビデンスは決定的ではないが、わずかなリスク上昇は否定できない」と書いている。胎児腎障害・・頭蓋骨化の遅延という古典的な「阻害薬胎児症」と、新生児の腎不全・低血圧・は、第2・の曝露について述べられている2。妊娠が判明したら直ちに中止し、妊娠を計画している患者は安全性が確立したへ切り替える。
  • ⚠️ は禁忌欄には無い。 英国SmPC 4.4 は、・70歳超・コントロール不良の糖尿病・カリウム塩/などの併用・脱水・・代謝性アシドーシスを危険因子として挙げ、の定期的な監視を求めている2。「禁忌ではない」は「危なくない」ではなく、監視しながら使うという意味である。
  • ⚠️ ・との併用は避ける(は腎機能悪化・高K血症のリスクを上げるだけで予後を改善しない:ONTARGET試験)。/との併用は上表4.3の禁忌で、切り替えには前後36時間の間隔が要る。
  • :を低下させに達しうる
  • ・カリウム製剤・との併用で高K血症・腎機能低下のリスクがされる

副作用

頻度 内容
高頻度 (蓄積)、低血圧(特に初回投与時)
注意 めまい、、腎機能低下
重篤・まれ (気道閉塞に至り得る)、

まとめ

  • 阻害薬4剤の中でHOPE試験のエビデンスを最も強く背負う薬。でへ変換される。
  • 半減期約13〜17時間、1日1回投与が可能。
  • 高血圧・心不全がなくても、のハイリスク患者全般で心血管イベントのに使われる。
  • 阻害薬に共通の・は分解阻害に由来し、これがとのになる。
  • 英国SmPCの 4.3 は8項目。遺伝性・特発性を含むの既往、⭐有意な・の、⭐低血圧または血行動態が不安定な状態、治療、妊娠第2・、/との併用、糖尿病・でのアリスキレン併用が並ぶ。
  • ⭐ が「注意」ではなく「禁忌」なのは・で、・とは違う。 クラスで揃っていると思って平坦化しない。
  • は禁忌ではなく 4.4 の監視項目。妊娠は第1三半期が「推奨されない」・第2・が禁忌と射程が分かれる。日本の基準収載品目リストに収載がなく、日本の電子添文は確認できていないので、日本での扱いは断定しない。
  • ・とのは避ける。

出典

  1. 1.薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年8月13日適用)(厚生労働省・2026)同ページから内用薬(tp20260813-01_01.xlsx)・注射薬(同_02)・外用薬(同_03)の3つのExcelを取得して全文検索し、「ラミプリル」が3ファイルとも0件であることを確認した。陽性対照として同じ内用薬のファイルに「ペリンドプリル」3件・「エナラプリル」5件・「カプトプリル」1件・「リシノプリル」6件が収載されていることを確かめている。閲覧 2026-09-13
  2. 2.Tritace 5mg Tablets — Summary of Product Characteristics(Sanofi(emc に掲載された英国の製品概要)・2026)本文末尾の「Date of revision of the text」が 26 August 2026 であるラミプリルの英国製品概要(先発品 Tritace)で、4.3 の禁忌が8項目——有効成分・添加剤または他のACE阻害薬に対する過敏症、History of angioedema (hereditary, idiopathic or due to previous angioedema with ACE inhibitors or AIIRAs)、サクビトリル/バルサルタンとの併用、Extracorporeal treatments leading to contact of blood with negatively charged surfaces、Significant bilateral renal artery stenosis or renal artery stenosis in a single functioning kidney、妊娠第2・第3三半期、Ramipril must not be used in patients with hypotensive or haemodynamically unstable states、糖尿病または腎機能障害(GFR 60 ml/min/1.73m2 未満)でのアリスキレン含有製剤の併用——であることを確認した。4.6 は第1三半期を not recommended、第2・第3三半期を contraindicated と書き分け、第1三半期の催奇形性について「疫学的エビデンスは決定的でないが、わずかなリスク上昇は否定できない」とし、第2・第3三半期の曝露で decreased renal function, oligohydramnios, skull ossification retardation と新生児の renal failure, hypotension, hyperkalaemia が知られるとしている。高カリウム血症は 4.3 ではなく 4.4 の Electrolyte Monitoring: Hyperkalaemia にあり、危険因子(腎機能障害、70歳超、コントロール不良の糖尿病、カリウム塩・カリウム保持性利尿薬などの併用、脱水、急性心不全、代謝性アシドーシス)を挙げて血清カリウムの定期監視を求めている。片側性腎動脈狭窄で対側腎が機能している患者は 4.4 の「RAASが強く活性化している患者」の一つとして挙げられている。閲覧 2026-09-13
  3. 3.Ramipril 5mg Tablets — Summary of Product Characteristics(Zentiva Pharma UK Limited(emc に掲載された英国の製品概要)・2026)本文末尾の「Date of revision of the text」が 14/07/2026 である後発品ラミプリル錠の英国製品概要で、4.3 の禁忌が先発品 Tritace と同じ8項目(体外循環治療、有意な両側腎動脈狭窄または単腎の腎動脈狭窄、低血圧または血行動態が不安定な状態を含む)であることを確認した。両側腎動脈狭窄と体外循環治療が 4.3 に入るのは先発品固有の書き方ではないことを確かめるために引いた。閲覧 2026-09-13