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Drug Atlas · B6 Antihypertensives / 降圧薬 · 必修

エナラプリル

enalapril

分類
Antihypertensives / 降圧薬
商品名(日本)
レニベース
商品名(EU)
RenitecEnap
科目
Pharmacology
トピック
B6: Drugs acting on the renin-angiotensin-aldosterone-system (RAAS)
禁忌疾患
遺伝性血管性浮腫
副作用
乾性咳嗽血管性浮腫低血圧めまい
監視検査値
クレアチニンカリウム
相互作用
バルサルタン+サクビトリルリチウム
対象疾患
Denys-Drash症候群Frasier症候群IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)IgA腎症アルポート症候群ネフリティック症候群ネフローゼ症候群拡張型心筋症急性冠症候群虚血性心筋症高血圧症高血圧性腎硬化症常染色体優性多発性嚢胞腎常染色体劣性多発性嚢胞腎腎動脈狭窄症全身性強皮症僧帽弁閉鎖不全症巣状分節性糸球体硬化症大動脈弁閉鎖不全症糖尿病性腎症膜性増殖性糸球体腎炎慢性心不全慢性腎臓病
原因となる疾患
急性腎障害苔癬型薬疹扁平苔癬性類天疱瘡

🧠 全体像:は阻害薬4剤の中で最も広く使われる基準薬であり、とは対照的に(肝臓のエステラーゼで加水分解されてになる)。半減期が約11時間と扱いやすく1日1〜2回投与で足りるため、高血圧・心不全という循環器の適応にとどまらず、蛋白尿を伴う糸球体疾患全般で「を拡張してを下げる」腎保護薬として最も頻繁に登場する。

薬効群の中での位置づけ

阻害薬は「カスケードのどこを止めるか」で4つの立ち位置に分かれる。

立ち位置 代表薬 機序 阻害薬との関係
①阻害薬「-pril」 ・・・ AngⅡ産生↓、分解↓(蓄積) —
②ARB「-sartan」 ・・ を直接遮断 代謝に影響せず・が少ない
③MRA ・ の最終末端(受容体レベル)を止める
④ARNI + 阻害薬と(、切替に36時間)

⭐ 阻害薬とのは。 は「」という酵素でもあり、I→IIの変換に加えの分解も担う。阻害薬はこの分解を止めてを蓄積させるため・が生じる。はだけを狙うためこの2つの副作用が少ない。

同じ阻害薬の中でが占める位置は「標準・基準」である。

薬剤 体内での形 半減期 際立つ特徴
活性体そのもの 約2時間(短い) 食事で吸収↓。・
→ 約11時間 最も広く使われる基準薬。の静注製剤あり
→ 約25〜30時間(1日1回) 組織への親和性が高い
→ 約13〜17時間 HOPE試験:高リスク患者の心血管イベント抑制

機序

flowchart TD
    A["経口<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enalapril'>エナラプリル</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["肝臓のエステラーゼで加水分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='enalaprilat'>エナラプリラト</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin-converting enzyme'>ACE</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kininase II'>キニナーゼII</span>)を阻害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin'>アンジオテンシン</span>Ⅱ生成↓"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinin'>ブラジキニン</span>分解↓(蓄積)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin II type 1 (AT1) receptor'>AT1受容体</span>を介する血管収縮↓"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aldosterone secretion'>アルドステロン分泌</span>↓→Na・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water retention'>水貯留</span>↓"]
    F --> I["血管拡張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='efferent arteriole'>輸出細動脈</span>拡張"]
    F --> J["蓄積しすぎると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry cough'>空咳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angioedema'>血管浮腫</span>"]
    G --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antihypertensive (blood-pressure lowering)'>降圧</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterload reduction'>後負荷軽減</span>"]
    H --> K
    I --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraglomerular pressure'>糸球体内圧</span>↓→蛋白尿↓(腎保護)"]

💡 との最大の違いはである点。 内服後すぐには効かず、肝臓での加水分解を経て初めて活性を持つため、極端な肝機能低下例では効果発現が遅れうる。一方で半減期が長く1日1〜2回で安定したが得られるため、慢性疾患の維持療法にはこちらが向く。自体は静注製剤としても存在し、経口摂取できないなどで使う。

薬物動態

項目 値・特徴
か はい(でへ加水分解)
約60%(として)
食事の影響 ほとんど受けない
代謝 肝臓でへ変換
排泄 (として)
半減期 約11時間(1日1〜2回投与)

⭐ 腎機能低下例ではの排泄が遅れ蓄積しやすい。 を減らし、腎機能・カリウムをこまめに確認する。

適応

領域 使いどころ
循環器 高血圧症、(の基盤治療の一つ。⚠️ 「が使えない場合の代替」と一括りにしない——阻害薬との位置づけの前後関係は文書ごとに違う。→ の「ガイドラインでの位置づけ」)、、
循環器(弁膜症・) (症候性・手術非適応例の)、(二次性MRの)
腎 蛋白尿を伴う・(拡張で↓)、IgA腎症、IgA血管炎の腎病変、(進行抑制)、、片側性の(健常例)
リウマチ・ の腎クリーゼ:急性期は短時間作用型のでし、安定後の長期管理はなど長時間作用型へ切り替えることが多い

用法・用量

高血圧では1回5〜20 mgを1日1〜2回。心不全では1回2.5 mgなど低用量から開始し、を見ながら(1回10〜20 mgを1日2回など)まで漸増する。腎機能低下例はを減らす。実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌に何が載るかは国ごとの文書が決める。 下の表は英国の1と日本の電子添文(2. 禁忌)2を並べたもので、この2文書で読めた範囲である(米国の添付文書は確認していない)。⚠️ 英国の列は 4.3(禁忌)の中身だが、日本で禁忌になっている項目が英国では 4.4(・注意)にあることがある——その場合は「記載なし」ではなく 4.4 の中身を書いてある。

項目 英国 SmPC 4.3(6項目) 日本 電子添文 2.(7項目)
過敏症 本剤の成分・添加剤または他の阻害薬 本剤の成分
阻害薬によるの既往/または特発性の(別々の2項目) の既往歴のある患者(等の薬剤による、、、特発性等をまとめて1項目)
妊娠 第2・(第1三半期は 4.6 で「推奨されない」=禁忌ではない) 妊婦又は妊娠している可能性のある女性(三半期で区切らない)
との併用 /との併用。最終投与から36時間以内の開始も不可 投与中、あるいは投与中止から36時間以内
アリスキレン 糖尿病または( 60 mL/min/1.73 m² 未満)の患者での併用 アリスキレン投与中の糖尿病患者(他の治療でも血圧コントロールが著しく不良の患者を除く)
⭐ 4.3 には無いが、4.4 に独立した項がある(「記載なし」ではない)。Haemodialysis Patients=膜(原文は例として AN 69 を挙げる)で透析中に阻害薬を併用した患者での報告があり、別の膜または別系統のを考慮する。Anaphylactoid Reactions during LDL Apheresis=硫酸による中に生命を脅かすが報告され、各の前に一時的に阻害薬をすることで回避された 硫酸固定化等の吸着器による施行中/AN69膜を用いた施行中
  • 💡 が禁忌なのは、が「」としての分解も担っているためである。 阻害薬はこの分解を止めてを蓄積させるので、もともと過剰で発作を起こすでは発作を誘発・増悪させうる。
  • ⚠️ 「阻害薬によるの既往」と「遺伝性/特発性の」は別の禁忌項目である。 英国SmPCは 4.3 でこの2つを別々の箇条に分けて挙げている。薬剤性の既往が無くても遺伝性なら禁忌になる。
  • ⚠️ 表の「」を「英国にはこの規定が無い」と読まない。 膜による透析と硫酸によるは、英国SmPCでは 4.3(禁忌)ではなく 4.4(特別な及び使用上の注意)に置かれている1。⭐ 違うのは上の区分であって、内容は日本の 2.3・2.4 とほぼ同じ——どちらの文書も同じ2つの状況を名指しし、日本は禁忌として、英国は膜や薬剤を替える/一時するという注意として扱う。⚠️ 「不在」を1つの節だけで判定しない。
  • ⚠️ ・では急激な低下と高K血症のリスク——ただし**ではこれは英国SmPCの禁忌欄(4.3)ではなく注意(4.4 Renovascular hypertension)の側にある**。低用量で開始し慎重に増量して腎機能を監視するとされる1。片側性でが健常なら通常は使用でき、では開始後のクレアチニン・カリウムを監視して使用する(同じ阻害薬でもの英国SmPCはこれを 4.3 の禁忌に置いており、クラスで揃っていない3)。
  • ⚠️ 「禁忌ではない=慎重投与でよい」ではない。 日本の電子添文でもは禁忌欄に無いが、9.1.1「両側性のある患者又はでのある患者」の本文は逐語で 「治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。」 であり、運用上は禁忌に近い2。違うのは危険の程度ではなく、例外を認める余地が文書に書かれているかどうかである。
  • ⚠️ ・との併用は避ける(は腎機能悪化・高K血症のリスクを上げるだけで予後を改善しない:ONTARGET試験)
  • :を低下させに達しうる
  • ・カリウム製剤・との併用で高K血症・腎機能低下のリスクがされる

副作用

頻度 内容
高頻度 (蓄積)、低血圧(特に初回投与時、利尿薬併用例で顕著)
注意 めまい、、腎機能低下(開始後30%以内のクレアチニン上昇は許容範囲)
重篤・まれ (気道閉塞に至り得る)、、好中球減少

まとめ

  • 阻害薬4剤の中で最も広く使われる基準薬。と異なりで、によりへ変換されて初めて活性を持つ。
  • 半減期約11時間で1日1〜2回投与。の静注製剤もある。
  • 蛋白尿を伴う糸球体疾患(IgA腎症、、ADPKD など)で拡張による腎保護目的で広く使われる。
  • 阻害薬に共通の・は分解阻害に由来し、これがとのになる。
  • は英国SmPC・日本の電子添文とも禁忌。妊娠は英国が第2・、日本が妊婦・妊娠の可能性と射程が違う。
  • ⭐ はではどちらの文書でも禁忌欄に入らない(英国は 4.4 の注意、日本は 9.1.1)。⚠️ ただし日本の 9.1.1 は逐語で「治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。」であり、「慎重投与」と要約すると原文より弱くなる。
  • ⚠️ (膜での透析・硫酸による)は英国SmPCにも記載がある——ただし禁忌(4.3)ではなく 4.4 の注意として。上の区分が違うだけで、内容は日本の禁忌 2.3・2.4 とほぼ同じである。
  • ・とのは避ける。

出典

  1. 1.Innovace 2.5 mg / 5 mg / 10 mg / 20 mg Tablets — Summary of Product Characteristics(Organon Pharma (UK) Limited(emc に掲載された英国の製品概要)・2025)本文末尾の「Date of revision of the text」が 26 November 2025 であるエナラプリルマレイン酸塩の英国製品概要で、4.3 の禁忌が「本剤の成分・添加剤または他のACE阻害薬に対する過敏症」「ACE阻害薬による血管性浮腫の既往」「Hereditary or idiopathic angioedema(遺伝性または特発性の血管性浮腫)」「妊娠第2・第3三半期」「糖尿病または腎機能障害(GFR 60 mL/min/1.73 m2 未満)の患者でのアリスキレン含有製剤の併用」「サクビトリル/バルサルタンとの併用(最終投与から36時間以内の開始も不可)」の6項目であることを確認した。両側腎動脈狭窄は 4.3 ではなく 4.4 にあり低用量で開始し腎機能を監視して用いるとされていること、4.6 が第1三半期を not recommended、第2・第3三半期を contra-indicated と書き分けていることも確認した。⚠️ 体外循環については、4.3 に無いだけで 4.4 に独立した2項がある——「Anaphylactoid Reactions during LDL Apheresis / Rarely, patients receiving ACE inhibitors during low density lipoprotein (LDL)-apheresis with dextran sulfate have experienced life-threatening anaphylactoid reactions. These reactions were avoided by temporarily withholding ACE inhibitor therapy prior to each apheresis.」と「Haemodialysis Patients / Anaphylactoid reactions have been reported in patients dialysed with high-flux membranes (e.g., AN 69) and treated concomitantly with an ACE inhibitor. In these patients consideration should be given to using a different type of dialysis membrane or a different class of antihypertensive agent.」。高カリウム血症も 4.3 に無く 4.4 にあり、その全文は「ACE inhibitors can cause hyperkalaemia because they inhibit the release of aldosterone. The effect is usually not significant in patients with normal renal function. However, in patients with impaired renal function and/or in patients taking potassium supplements (including salt substitutes), potassium-sparing diuretics, trimethoprim or co-trimoxazole also known as trimethoprim/sulfamethoxazole and especially aldosterone antagonists or angiotensin receptor blockers, hyperkalaemia can occur.」以下で、⚠️ ラミプリル・ペリンドプリルの英国SmPCが挙げる「70歳超」「(コントロール不良の)糖尿病」「脱水」「急性心不全」「代謝性アシドーシス」はこの文書には現れない(全文検索で 70 years・metabolic acidosis・dehydration・uncontrolled diabetes はいずれも0件)。閲覧 2026-09-13
  2. 2.レニベース錠2.5/レニベース錠5/レニベース錠10 電子添文(オルガノン株式会社(PMDA 医療用医薬品 電子添文)・2025)冒頭の作成又は改訂年月が2025年9月改訂(第5版)であるエナラプリルマレイン酸塩の日本の電子添文で、「2. 禁忌」が7項目——2.1 成分に対する過敏症の既往、2.2「血管性浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシン変換酵素阻害剤等の薬剤による血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫、後天性血管性浮腫、特発性血管性浮腫等)」、2.3 デキストラン硫酸固定化セルロース等の吸着器によるアフェレーシス施行中、2.4 AN69膜を用いた血液透析施行中、2.5 妊婦又は妊娠している可能性のある女性、2.6 アリスキレン投与中の糖尿病患者、2.7 ARNI(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)投与中または投与中止から36時間以内——であることを確認した。遺伝性血管性浮腫が単独の項ではなく「血管性浮腫の既往歴」の例示として挙がっていること、両側腎動脈狭窄が禁忌欄に無いことも確認した。⚠️ 両側腎動脈狭窄は「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」に置かれ、9.1.1「両側性腎動脈狭窄のある患者又は片腎で腎動脈狭窄のある患者」の本文は逐語で「治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。腎血流量の減少や糸球体ろ過圧の低下により急速に腎機能を悪化させるおそれがある。」であり、「慎重投与」より強い。閲覧 2026-09-13
  3. 3.Coversyl Arginine 5 mg Film-coated Tablets — Summary of Product Characteristics(Servier Laboratories Limited(emc に掲載された英国の製品概要)・2021)本文末尾の「Date of revision of the text」が 10/2021 であるペリンドプリルアルギニンの英国製品概要で、4.3 の禁忌が8項目——過敏症(有効成分・添加剤または他のACE阻害薬)、ACE阻害薬による血管性浮腫の既往、Hereditary or idiopathic angioedema、妊娠第2・第3三半期、糖尿病または腎機能障害(GFR 60 mL/min/1.73 m2 未満)でのアリスキレン併用、サクビトリル/バルサルタンとの併用(最終投与から36時間以内の開始も不可)、Extracorporeal treatments leading to contact of blood with negatively charged surfaces(血液が陰性荷電表面と接触する体外循環治療)、Significant bilateral renal artery stenosis or stenosis of the artery to a single functioning kidney(有意な両側腎動脈狭窄または単腎の腎動脈狭窄)——であることを確認した。後ろの2項目が 4.3 の禁忌として並んでいる点を確認するために引いた。閲覧 2026-09-13