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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

膜性増殖性糸球体腎炎

Membranoproliferative glomerulonephritis

別名
MPGN
臓器系
腎・泌尿器免疫・膠原病
科目
PathologyInternal MedicineMedical MicrobiologyPediatrics
トピック
病理学 C/60:ネフローゼ症候群病理学 C/61:急速進行性糸球体腎炎内科学 N-01:糸球体疾患内科学 S-20:ネフローゼ症候群と蛋白尿性疾患内科学 S-47:血管炎微生物学 3/35:肝炎ウイルス:B・C・D・G型小児科 3-24:小児糸球体疾患
鑑別疾患
C1q腎症膜性腎症溶血性尿毒症症候群溶連菌感染後糸球体腎炎
続発疾患
ネフリティック症候群ネフローゼ症候群慢性腎臓病
治療薬
リツキシマブシクロホスファミドミコフェノール酸モフェチルプレドニゾロンタクロリムスエクリズマブイプタコパンペグセタコプランソホスブビルベルパタスビルエンテカビルエナラプリル
原因微生物
HCVHBV
症状
浮腫血尿
検査値
クレアチニンアルブミン尿沈渣補体C4クリオグロブリン腎生検
元疾患
脂肪萎縮症
原因となる疾患
クリオグロブリン血症シェーグレン症候群感染性心内膜炎全身性エリテマトーデス
適応薬
イプタコパンペグセタコプラン

🧠 全体像:MPGNは単一疾患の名前ではなく、「+GBMの分裂による(像)」という光顕パターンの名前にすぎない→同じパターンが、免疫複合体(または)の沈着と、の制御異常という全く別の機序の両方から生じうる→旧来は所見でI/II/III型に分けていたが、現行は(IF)所見に基づき「免疫複合体・単クローン性介在性MPGN」と「」へ組み替える機序別分類へ移行した→この機序の違いが(原因治療か補体か)を決める、という一本の流れで理解する。

概要

(MPGN)は、光顕での増多とを伴うの糸球体を示し、(GBM)がの介入によって分裂し「」様のを呈する組織パターンである。臨床像はとの要素が混在することが多く、どちらか一方に単純に分類できない疾患の代表例になる。

⚠️ 「」(GBMの二重化を伴わない別の組織パターン)とは異なる概念であり、混同しない。

分類の歴史 — 形態学的パターン名から機序別分類へ

MPGNの分類は、20世紀後半に確立された所見に基づく形態分類から、2010年代以降の所見に基づく機序別分類へと大きく組み替えられた。

旧分類() ・所見
I型 のの高い沈着(による)
II型(高密度沈着病) GBM内のの高密度沈着
III型 +上皮下の混合沈着

⭐ 旧分類は教育上の対比としては今も有用だが、現行のではない。2013年以降、旧II型(高密度沈着病)は代替補体経路の異常による「」の一病型として再分類され、現行分類はパターンではなく(IF)所見に基づく次の機序別へ組み替えられている。

現行分類(IF所見) 機序
免疫複合体・介在性MPGN 免疫グロブリン+補体の
(・) の制御異常。C3優位でIgはほとんど無い
沈着に乏しいパターン 免疫グロブリン・補体ともにほとんど沈着しない

病態(機序)

免疫複合体・単クローン性MPGN

が・へ沈着し(が主体のと対照的)、の活性化を介して炎症を起こす。代表的背景疾患:

💡 関連例の多くは(IgM型が代表)を介して免疫複合体を形成する。C4低下を伴う紫斑・関節痛があれば、この機序を疑う手掛かりになる。

C3腎症

は()の制御異常により、C3活性化産物が糸球体に優位に沈着し免疫グロブリンはほとんど検出されない病態群で、(旧II型MPGNに相当)との2病型を含む。

  • :(C3bBb)を安定化させる自己抗体で、持続的なと血清C3低下を引き起こす。
  • ・I因子・MCP()の異常:ので、遺伝性・後天性の機能低下が持続的なにつながる。
  • ⭐ では(体幹上部・上肢の)と網膜のを伴うことがあり、腎外にも異常の影響が及ぶ所見として知られる。

沈着に乏しいパターン

免疫グロブリンも補体もほとんど沈着しないMPGN様パターンもある。代表例は(など)ので、からの修復過程が同じ組織像を作るが、機序は免疫複合体でも補体制御異常でもない。

flowchart TD
    A["光顕:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesangium'>メサンギウム</span>増多+GBM二重化<br>(MPGNパターン)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunofluorescence, IF'>免疫蛍光</span>(IF)で沈着パターンを確認"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granular'>顆粒状</span>の免疫グロブリン+補体"}
    C -->|"あり"| D["免疫複合体・単クローン性MPGN"]
    D --> E["感染・自己免疫・単クローン性を検索"]
    B --> F{"C3優位でIgはわずか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C3 glomerulopathy'>C3腎症</span>"]
    G --> H["C3・C4、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C3 nephritic factor'>C3腎炎因子</span>、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement factor H'>H因子</span>・I因子・MCP、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic testing'>遺伝子検査</span>"]
    B --> I{"沈着ほとんどなし"}
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombotic microangiopathy, TMA'>血栓性微小血管症</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='healed stage'>治癒期</span>などを検討"]

臨床像

MPGNはとの両方の要素を同時に示すことが多い。大量浮腫を伴う蛋白尿とともに、血尿・高血圧といった腎炎性所見が併存する。

診断

腎生検が必須であり、光顕・・の3つを揃えて初めて病型を分類できる。単独所見では機序を確定できない。

  1. 光顕で増多・糸球体・GBM二重化を確認する。
  2. で沈着パターン(の免疫グロブリン+補体か、C3優位か、ほぼ陰性か)を評価する。
  3. C3優位のパターンを見たらを疑い、血清C3・C4、、自己抗体、のへ進む。
  4. 免疫複合体パターンなら、・などの感染血清学、・抗dsDNA抗体、血清・と(の検索)を追加する。

⭐ クレアチニン・アルブミン・尿沈渣は初期評価に共通して用いるが、機序の確定には血清学的検索と生検の組み合わせが要る。

治療

原因の同定と原因治療が最優先である。組織パターンを一律に免疫抑制で治療しない。

原因不明の特発性免疫複合体性MPGNやでは、などのRAS阻害薬による支持療法を土台に、重症度に応じ免疫抑制療法を検討する。糸球体疾患ガイドライン(2021年)は特発性を重症度別に支持療法単独から免疫抑制まで段階づけ、にはを第一選択とし、無効例のみ補体C5抗体()を追加する位置づけとしている。⚠️ このの使用はである。 欧州のSmPCも日本の電子添文も、の効能をPNH・・・の4つに限っており、糸球体疾患は含まれない12。ガイドラインが位置づけていることと承認されていることは別である。

⭐ 近年、をより上流で標的とするがこの領域の適応を得た。いずれも試験でに対する有意な減少を示している。⚠️ ただし米国の現行添付文書を並べると、適応の射程は2剤で違う。

薬剤 米国添付文書の適応(腎領域) 対象年齢
経口の阻害薬 で蛋白尿を減らす(一次性IC-MPGNは含まれない)3 成人3
皮下注射のC3・C3b阻害薬 または一次性MPGN(IC-MPGN)で蛋白尿と腎機能低下を抑える4 12歳以上4

⚠️ 承認の範囲は動く。 が・一次性IC-MPGNの適応を得た2025年7月28日の承認レターでは、適応は「蛋白尿を減らす」まで(原文は to reduce proteinuria で終わる)で、腎機能低下の抑制が加わったのは現行版(2026年8月改訂)の添付文書である54。承認範囲・推奨は変わりうるため、実臨床では最新の一次資料で確認する。

⚠️ 移植後再発は免疫複合体性MPGN・のいずれでも起こりうる合併症で、移植前と移植後モニタリングの対象になる。

まとめ

  • MPGNは疾患名ではなく、増多とGBM二重化(像)を示す組織学的パターン名であり、免疫複合体性・単クローン性介在性とという異なる機序が同じ形態に収束する。
  • 旧来のI/II/III型(分類)は教育上の対比として有用だが、現行のは所見に基づく機序別(免疫複合体・単クローン性MPGN vs )である。
  • はの制御異常による病態群で、ではとを伴いうる。
  • 臨床像はとの要素が混在し、持続するが特徴的で、やへ進みうる。
  • 診断には光顕・・を揃えた腎生検が必須で、C3優位パターンを見たら補体経路の精査へ進む。
  • 治療は原因治療が最優先で、特発性例はRAS阻害薬による支持療法を土台に重症度別の免疫抑制療法(ではが第一選択)を行う。近年は・など補体上流を標的とする薬剤が承認され選択肢が広がったが、米国の適応はが成人の(蛋白尿の減少)、が12歳以上の・一次性IC-MPGN(蛋白尿と腎機能低下の抑制)と射程が異なる34。

出典

  1. 1.Soliris 300 mg concentrate for solution for infusion — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)4.1の効能はPNH・aHUS・難治性の全身型重症筋無力症・NMOSDの4つで、膜性増殖性糸球体腎炎もC3腎症も含まれない。したがってC3腎症へのエクリズマブ投与は欧州では適応外使用である閲覧 2026-09-07
  2. 2.ソリリス点滴静注300mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構・2025)2025年4月改訂(第8版、効能変更)。4.の効能又は効果はPNHにおける溶血抑制・aHUSにおける血栓性微小血管障害の抑制・全身型重症筋無力症・NMOSDの再発予防の4つで、膜性増殖性糸球体腎炎もC3腎症も含まれない閲覧 2026-09-07
  3. 3.FABHALTA (iptacopan) capsules, for oral use — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2026)SPL本文を自分で取得し、1 INDICATIONS AND USAGE が逐語で「the treatment of adults with complement 3 glomerulopathy (C3G), to reduce proteinuria」(1.3)と書き、対象が成人に限られ、目的が蛋白尿の減少であることを確認した。⚠️ 全文に membranoproliferative・MPGN は0件、immune complex は1件だけでそれはIgA腎症の機序の説明であり、一次性免疫複合体型MPGNはこの薬の適応に含まれない。ほかの適応は1.1が成人のPNH、1.2が進行リスクのある成人の一次性IgA腎症の腎機能低下の抑制である。閲覧 2026-09-16
  4. 4.EMPAVELI (pegcetacoplan) injection, for subcutaneous use — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2026)SPL本文(印字された改訂表示は Revised 8/2026)を自分で取得し、1.2の適応が逐語で「the treatment of adult and pediatric patients aged 12 years and older with C3 glomerulopathy (C3G) or primary immune-complex membranoproliferative glomerulonephritis (IC-MPGN), to reduce proteinuria and the loss of kidney function」であることを確認した。すなわち対象は12歳以上で、C3腎症だけでなく一次性免疫複合体型MPGNを含み、目的は蛋白尿の減少と腎機能低下の抑制の2つである。閲覧 2026-09-16
  5. 5.NDA 215014/S-011 Supplement Approval Letter: EMPAVELI (pegcetacoplan) injection(U.S. Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research・2025)一部変更承認レター(署名は2025年7月28日)をPDFで取得し、逐語で「This Prior Approval sNDA provides for the use of Empaveli (pegcetacoplan) for the treatment of adult and pediatric patients aged 12 years and older with C3 glomerulopathy (C3G) or primary immune-complex membranoproliferative glomerulonephritis (IC-MPGN), to reduce proteinuria」と述べていることを確認した。⚠️ この時点の適応は蛋白尿の減少までで、腎機能低下の抑制は含まれていない(現行の添付文書=Revised 8/2026 では加わっている)。閲覧 2026-09-16