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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

クリオグロブリン血症

Cryoglobulinemia

別名
クリオグロブリン血症性血管炎混合性クリオグロブリン血症mixed cryoglobulinemiacryoglobulinemic vasculitis
臓器系
免疫・膠原病血液
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 R-07:小血管炎内科学 S-47:血管炎
鑑別疾患
IgA血管炎寒冷凝集素症
続発疾患
膜性増殖性糸球体腎炎
関連疾患
シェーグレン症候群リンパ腫多発性骨髄腫
治療薬
リツキシマブメチルプレドニゾロンシクロホスファミド
原因微生物
Hepatitis C virus
症状
触知可能紫斑関節痛脱力多発性単神経炎
検査値
クリオグロブリンC4リウマトイド因子
原因となる疾患
Waldenströmマクログロブリン血症

🧠 全体像は、低温で可逆的にする免疫グロブリン()が血中に存在する状態の総称である。診療の出発点はBrouet分類のI型(単クローン性)か、II型・III型(混合型)かという二分岐にある——I型は単クローン性Igが単独でを起こす「物理的な病気」でを検索し、II型・III型は活性を持つ免疫複合体がを活性化する「真の血管炎」で、その大半はHCV感染が背景にある。この二分岐を取り違えると、血管炎としてを投与すべき患者に効かない治療をしたり、逆に造血器腫瘍の検索が遅れたりする。

分類:Brouet分類

組成 機序 代表的な背景疾患
I型 単クローン性Ig(IgMまたはIgG)単独 (物理的機序) リンパ腫などの
II型(混合型) 単クローン性IgM型IgG 免疫複合体によるの活性化=真の血管炎 HCV感染が80〜90%を占める1
III型(混合型) IgM型IgG II型と同じ免疫複合体機序 HCV感染、症候群などの

💡 I型とII/III型は「同じ」という名前でくくられているが、機序ももほぼ別の病気である。 I型の活性を持たず免疫複合体を作らないため、補体は低下しにくく、血管炎の三徴(後述)も伴わない。

病態

II型・III型では、単クローン性またはのIgM(活性を持つ)がIgGのを認識して免疫複合体を形成し、これが低温下でしつつ小血管壁に沈着してを活性化する。結果としてを伴うが皮膚・腎・末梢神経など小血管の豊富な臓器に生じる。I型では単クローン性Igそのものが低温下で凝集・ゲル化し、血流を物理的に障害する()ため、免疫複合体形成やを介さずにを起こす1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryoglobulin'>クリオグロブリン</span>産生"] --> B{"単クローン性成分は単独か"}
    B -->|"はい(I型)"| C["低温下での凝集・ゲル化<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperviscosity'>過粘稠</span>による物理的な血流障害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acral ischemia'>末端虚血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin necrosis'>皮膚壊死</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Raynaud phenomenon'>レイノー現象</span>"]
    B -->|"いいえ(II型・III型、混合型)"| E["IgM型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rheumatoid factor, RF'>リウマトイド因子</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyclonal'>多クローン性</span>IgGの免疫複合体形成"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classical complement pathway'>補体古典経路</span>の持続的活性化<br>(C4が選択的に強く低下)"]
    F --> G["小血管壁への複合体沈着=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytoclastic vasculitis'>白血球破砕性血管炎</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpable purpura'>触知可能紫斑</span>・関節痛・末梢神経障害"]
    G --> I["糸球体への沈着<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='membranoproliferative glomerulonephritis, MPGN'>膜性増殖性糸球体腎炎</span>"]

臨床像

混合型(II型・III型)の関節痛脱力(Meltzer三徴)である。 紫斑は下腿などのかかる部位に分布し、進行するとすることがある。関節痛は非破壊性で、RAのような骨びらんは来さない。

臓器 混合型(II型・III型)の所見
皮膚 下腿優位の(重症例)
型の糸球体腎炎。混合型の約3分の1に生じ、蛋白尿・血尿・高血圧・腎機能低下を来す1
末梢神経 感覚優位のに加え、を来すことがある2
全身 感、、まれに肺・消化管病変

I型では、これらの血管炎所見の代わりに、・チアノーゼ・末端の壊死・皮膚潰瘍などによる虚血症状が前面に出る。高値や血管炎三徴を伴わない点でII・III型と鑑別できる。

診断

測定の成否は検体の取扱いで決まる。 採血から血清分離までの全過程を37℃に保たないと、体内では確かに存在するが検体の中で先にし偽陰性になる2。詳しい測定手順・との違いはの項を参照。

補体パターンも診断の手掛かりになる。混合型では、免疫複合体がを持続的に活性化するため、C4がC3に比べて不釣り合いに強く低下し、測定感度以下になることも珍しくない。IgM型高値を伴うことが多く、この組合せはを来す他の腎炎(など)との鑑別点になる3

⚠️ 混合型と判明したら、必ずHCV感染のスクリーニングを行う。HCVが確認できない場合は症候群などの自己免疫疾患や他の症を検索する。I型では造血器腫瘍の検索(M蛋白、)を優先する。皮膚生検・腎生検でや糸球体病変を確認することもあるが、典型的な臨床像と陽性・があれば生検を待たずに治療を開始できることが多い。

鑑別のポイント

紫斑・関節痛を来す小血管炎という点でIgA血管炎と類似するが、IgA血管炎は主に小児に多くIgA沈着・正常補体が典型的である一方、は成人に多くHCVなどの背景疾患・を伴う点で区別できる。

治療

HCV関連混合型(大多数を占める)

HCVが背景にある混合型では、によるウイルス排除が第一選択治療である。DAAは著効率(SVR率)約90%と高く、軽症〜中等症の多くはDAA単独でクリオクリット値が低下し症状が改善する1

中等症〜重症・臓器障害を伴う例

腎障害・重度の末梢神経障害・皮膚潰瘍などを伴う中等症〜重症例では、DAAに加えリツキシマブなどの抗CD20抗体を併用する。生命を脅かす重症例(、広範ななど)では、の高用量パルス、)、などのによる迅速な介入を要する1

I型(造血器腫瘍関連)

I型の管理は、症状のコントロールと、背景にある造血器腫瘍()そのものの治療が中心となる。IgM型ではリツキシマブなどの抗CD20抗体、IgG/IgA型では形質細胞を標的とする薬剤(など)が用いられる1

⚠️ いずれの型でも、を避け保温することは対症療法として有用だが、混合型の根本治療は背景疾患(HCV・自己免疫疾患・造血器腫瘍)の治療であり、対症療法だけで終わらせない。

まとめ

  • はBrouet分類のI型(単クローン性、による物理的機序)とII型・III型(混合型、免疫複合体による真の血管炎)に大別され、この二分岐が診療の出発点になる。
  • 混合型の80〜90%はHCV感染が背景にあり、・関節痛・脱力(Meltzer三徴)、を来す。
  • 補体はC4がC3より不釣り合いに強く低下するパターンを示し、IgM型高値を伴う。
  • 測定は採血から血清分離まで37℃を維持しないと偽陰性になるなど、検体取扱いが診断の成否を左右する。
  • HCV関連混合型はDAAによるウイルス排除が第一選択で、中等症〜重症例ではリツキシマブを、生命を脅かす重症例では高用量ステロイドパルス・を追加する。
  • I型は免疫複合体を作らず血管炎三徴を伴わない点でII・III型と区別し、背景の造血器腫瘍の治療を中心に管理する。

出典

  1. 1.Cryoglobulinemia: An update on classification, pathophysiology, clinical presentation, and management(Journal of Internal Medicine・2026)Brouet分類でI型は単クローン性IgMまたはIgG単独でリンパ増殖性疾患・多発性骨髄腫に、II型・III型(混合型)はリウマトイド因子活性を持ちHCV感染がその80〜90%を占めること、混合型のうち約3分の1にMPGN型糸球体腎炎を伴うこと、HCV関連混合性クリオグロブリン血症の治療は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が第一選択でSVR率は約90%に達すること、中等症〜重症例ではリツキシマブなど抗CD20抗体を併用し、生命を脅かす重症例では高用量グルココルチコイドパルス・アフェレーシス・シクロホスファミドなどの免疫抑制薬を要すること、I型は免疫複合体を作らず過粘稠による物理的機序で症状を起こし治療は背景の造血器腫瘍の治療が中心となることを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Cryoglobulinemic vasculitis and glomerulonephritis: concerns in clinical practice(Chinese Medical Journal・2019)採血から血清分離までの全過程を37℃に保つことが必須であり満たさないと偽陰性の最も一般的な原因となること、クリオクリット判定には血清を4℃で最長7日間観察し7日目に37℃へ再加温して再溶解を確認する必要があること、混合型クリオグロブリン血症では皮膚紫斑・関節痛・末梢神経障害・腎浸潤を来し血清C4低値がC3低値より高頻度でリウマトイド因子陽性と関連することを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Rheumatoid Factor, Complement, and Mixed Cryoglobulinemia(Clinical and Developmental Immunology・2012)II型混合性クリオグロブリン血症ではIgM型リウマトイド因子高値を伴い、古典経路の持続的な活性化によりC3がほぼ正常〜軽度低下にとどまる一方でC4は不釣り合いに強く低下し測定感度以下になることも珍しくないことを確認した。閲覧 2026-08-10