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Symptoms · Published

多発性単神経炎

Mononeuritis multiplex

別名
多発単神経炎多発性単神経障害mononeuritis multiplexmononeuropathy multiplex
臓器系
神経免疫・膠原病
科目
Internal MedicineNeurology
トピック
内科学 S-47:血管炎神経内科 G3-27:代謝性・自己免疫性・その他の全身疾患に伴う神経症状
関連疾患
ANCA関連血管炎クリオグロブリン血症結節性多発動脈炎血管炎(大血管炎・中血管炎・小血管炎)顕微鏡的多発血管炎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

🧠 全体像は、解剖学的に離れた2本以上の末梢神経が、同時にあるいは段階的に、非対称に侵される病型である。に広がるとは成り立ちが逆で、末梢神経を栄養するが個々に閉塞し、そのがまだらに梗塞することで生じる。だから血管炎が代表的な原因になり、進行例では病変が融合して対称性のに見えるという落とし穴がある。

定義と用語の整理

近接する病型と混同しやすいため、障害される神経の本数・分布・で整理する。

病型 障害される神経 分布・
1本 局所の圧迫・絞扼・外傷が主体
(本項) 解剖学的に離れた2本以上 非対称・。同時に侵されることも、神経ごとに段階的に侵されることもある1
末梢神経全体 左右対称・遠位優位()。

⚠️ は進行するとと見分けにくくなる。 広範囲に多数の神経が侵されると、個々の病変が重なり合って左右対称・遠位優位の分布に見えることがあり、に酷似しうる1。この段階で「対称だから代謝性・」と判断すると、背景にある血管炎などの治療可能な原因を見落とす。初発時の分布(非対称・段階的な神経ごとの発症歴)を病歴で遡って確認することが鑑別の鍵になる。

病態生理

が個々の神経ごとに閉塞し、が虚血・梗塞に陥ることで発症する。神経幹のは分節的にしか吻合しないため、1本の血管が閉塞すると、そのだけがまだらに障害される。これが「離れた神経が、時間差をおいて」侵される臨床像の理由であり、血管炎によるはこの虚血に起因すると考えられている2

閉塞の機序で群にまとめると、原因検索の優先順位が立てやすい。

  • 血管壁への:血管炎そのものがを壊死性に障害する。
  • 免疫複合体・寒冷沈降物の沈着などがを狭小化させる。
  • :糖尿病などで・血流障害が慢性に進む。
  • 腫・腫瘍細胞浸潤や腫瘍・が神経周囲の血管を直接圧迫・浸潤する。
  • 病原体による直接障害は菌自体が神経に浸潤し、HIV・肝炎ウイルスは血管炎や免疫複合体を介して障害する。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 急速進行する血管炎性は臓器障害の緊急である。 血管炎性を有する患者は通常、腎・肺など神経以外の臓器障害を併せ持ち、治療しなければ致死的な経過をたどりうる2。新規の感覚・運動障害を「末梢神経の問題」だけで完結させず、・血尿・肺症状の有無を確認し、陽性なら免疫の開始を急ぐ。
  • ⚠️ でない」ことを確認する意義は大きい。 非対称・段階的な発症歴が確認できれば、対称性のを来す代謝性・・遺伝性疾患の検索より先に、血管炎・・感染症という治療可能な原因を優先して検索する根拠になる。
  • ⚠️ 糖尿病患者でも稀に単神経・多発単神経型の障害(など)を来すが、大半は遠位対称性のであり、の分布を見たら糖尿病だけに帰属させず血管炎の合併を検索する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["非対称・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='discontinuous (skip lesions)'>非連続</span>な感覚運動障害を確認"] --> B{"分布は非対称・段階的か、<br>対称・遠位優位か"}
    B -->|"対称・遠位優位"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyneuropathy'>多発神経障害</span>として評価"]
    B -->|"非対称・段階的"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrophysiologic study'>電気生理検査</span>で障害神経を<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='objective'>客観的</span>に同定"]
    D --> E["血清学的検査:ANCA・補体・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryoglobulin'>クリオグロブリン</span>・血糖・感染症スクリーニング"]
    E --> F{"全身性血管炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='connective tissue disease (collagen vascular disease)'>膠原病</span>を<br>示唆する所見があるか"}
    F -->|"はい"| G["神経生検・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle biopsy'>筋生検</span>で<br>血管炎の組織学的確認を検討"]
    F -->|"いいえ"| H["糖尿病・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span>・<br>腫瘍性浸潤など他の原因を検索"]
    G --> I["原疾患に応じて<br>免疫<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suppressive therapy'>抑制療法</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='timing'>緊急度</span>を判断"]
  • まず)で、障害されている神経をに同定し、優位のパターンであることを確認する。
  • 次にANCA関連血管炎などの血管炎血症性血管炎、(関節リウマチ・)を血清学的検査で検索し、糖尿病・感染症(・HIV・B型/C型肝炎)のスクリーニングを併せて行う。
  • 全身性血管炎を示唆する所見があれば、など感覚神経と筋の生検で血管壁の炎症を組織学的に確認する。

まとめ

  • は、解剖学的に離れた2本以上の末梢神経が、同時にあるいは段階的に非対称に障害される病型であり、対称・遠位優位に進むとは分布とで区別する。
  • 進行して病変が融合すると対称性のに見えることがあり、初発時の非対称・段階的な発症歴を遡って確認しないと血管炎などの治療可能な原因を見落とす。
  • 病態生理の中心はの閉塞による神経の虚血・梗塞で、だから全身性血管炎(ANCA関連血管炎・)が代表的な原因になる。
  • 原因は血管炎のほか、、糖尿病、感染症(・HIV・B型/C型肝炎)、、腫瘍・に群分けできる。
  • ⚠️ 急速進行する血管炎性は腎・肺など他臓器障害の緊急であり、免疫の開始を急ぐ。
  • 評価はで障害神経を同定し、血清学的検査で背景疾患を絞り込み、必要なら神経生検・で組織学的に確認する順に進める。

出典

  1. 1.Multiple Mononeuropathy(Merck Manual Professional Edition・2026)多発性単神経炎は2本以上の末梢神経が一度にまたは段階的に障害される病型であること、広範囲に多数の神経が侵されると多発神経障害に酷似しうること、原因として結節性多発動脈炎・全身性エリテマトーデス・Sjögren症候群・関節リウマチなどの血管炎関連疾患、サルコイドーシス、糖尿病、アミロイドーシス、Lyme病、HIV感染症、ハンセン病を挙げていることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.ANCA-Associated Vasculitic Neuropathies: A Review(Neurology and Therapy・2022)ANCA関連血管炎による神経線維の軸索変性は血管炎が引き起こす虚血に起因すると考えられていること、神経障害を有する患者は通常、腎・肺など他臓器の障害を併せ持ち、治療しなければ致死的な経過をたどりうることを確認した。閲覧 2026-08-04