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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

血管炎(大血管炎・中血管炎・小血管炎)

Vasculitis (large-, medium-, and small-vessel)

臓器系
免疫・膠原病循環器
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 B/40:動脈炎・静脈炎(血管炎)内科学 R-07:小血管炎内科学 R-08:中血管炎・大血管炎内科学 S-47:血管炎
鑑別疾患
壊疽性膿皮症
原因薬剤
モンテルカスト
症状
跛行血尿喀血触知可能紫斑多発性単神経炎
検査値
赤沈C反応性蛋白(CRP)クレアチニン尿沈渣クリオグロブリン
下位分類
ANCA関連血管炎Cogan症候群IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)ベーチェット病巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)結節性多発動脈炎高安動脈炎川崎病

🧠 全体像:血管炎は「どの太さの血管が侵されるか」で臨床像がほぼ決まる。大血管が侵されれば・血圧左右差・という虚血パターン、中血管が侵されれば臓器梗塞と動脈瘤という二面性、小血管が侵されれば紫斑・糸球体腎炎・肺胞出血という「漏れ」のパターンが現れる。この罹患血管径による軸(Chapel Hill 2012コンセンサス)が血管炎診療の設計図であり、そこに小血管炎特有のANCA関連/免疫複合体性という機序軸が重なる。各疾患の病態・・治療レジメンの詳細は子ノートに譲り、本ノートは「径から臨床像・検査戦略を導く」ことに集中する。

分類の軸

血管炎の分類は、罹患する血管のを主軸に据えると最も整理しやすい。2012年改訂Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類は、大血管・中血管・小血管という解剖学的な軸に、小血管炎をさらに機序(ANCA関連/免疫複合体性)で細分する二段階の枠組みを採用しており、加えて単一の血管径に限局しないという区分を設けている1

血管径 主に侵される血管 代表疾患
大血管 大動脈とその一次分枝
中血管 主要な臓器動脈とその分枝(
小血管・ANCA関連 細動脈・毛細血管・、免疫沈着に乏しい(pauci-immune) ANCA関連血管炎(GPA・MPA・EGPA)
小血管・免疫複合体性 同上、免疫複合体の沈着を伴う IgA血管炎
大血管〜小血管まで、血管径を問わず任意のサイズを侵しうる

💡 は「血管径で分類できない」こと自体が定義になる区分である。は動脈・静脈の両方、かつ大〜小のあらゆる径を侵しうる血管炎を呈することがあり、を伴いながら)を合併しうる。どちらも「この疾患は必ずこの径」という一対一対応が成立しない点で、他の4区分と一線を画す。

flowchart TD
    A["血管炎を疑う"] --> B["罹患血管径で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Chapel Hill 2012'>分類</span>"]
    B --> C["大血管:大動脈とその一次分枝"]
    B --> D["中血管:主要臓器動脈・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscular artery'>筋性動脈</span>"]
    B --> E["小血管:細動脈・毛細血管・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venule'>細静脈</span>"]
    B --> V["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='variable-vessel vasculitis'>可変血管炎</span>:径を問わず任意のサイズ"]
    C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulselessness'>脈拍消失</span>・血圧左右差・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='claudication'>跛行</span>"]
    D --> D1["臓器梗塞+動脈瘤(二面性)"]
    E --> E1{"免疫沈着の機序"}
    E1 -->|"ANCA関連(pauci-immune)"| E2["紫斑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crescentic glomerulonephritis'>半月体性糸球体腎炎</span>・肺胞出血"]
    E1 -->|"免疫複合体性"| E3["紫斑・関節痛・腹痛・腎炎"]
    C1 --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant cell arteritis, GCA'>巨細胞性動脈炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Takayasu arteritis'>高安動脈炎</span>"]
    D1 --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyarteritis nodosa, PAN'>結節性多発動脈炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Kawasaki disease'>川崎病</span>"]
    E2 --> H["ANCA関連血管炎(GPA・MPA・EGPA)"]
    E3 --> I["IgA血管炎"]
    V --> V1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Behçet&#39;s disease'>ベーチェット病</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cogan syndrome'>Cogan症候群</span>"]

💡 血管径が臨床像を規定する理由は、それぞれの血管が担う役割の違いにある。大血管は四肢・頭頸部へ血流を送る「幹線」であり、閉塞すれば脈拍・血圧というな血行動態に異常が出る。中血管は個々の臓器を養う「終末動脈」に近く、閉塞すれば臓器梗塞、壁がすれば動脈瘤という二面性を示す。小血管は組織とのを担う「末端」であり、炎症はここでは閉塞よりもの破綻として現れ、皮膚では紫斑、腎糸球体では血尿・蛋白尿・腎炎、肺胞では出血という「漏れ」のパターンを取る。

⭐ この径による整理は、Wegener腫症・Churg-Strauss症候群という旧名称が現在の(EGPA)へ改称された経緯とも関わる。2012年CHCC分類は用語を機序ベースへ刷新した改訂であり、旧教科書的記述(=P-ANCA/C-ANCAだけでの記載など)を見た場合は現行の名称・機序記載に読み替える。

共通の初期アプローチ

罹患が疑われる血管径にかかわらず、次の順序で評価を進めると効率的である。

  1. 全身炎症症状の:発熱、感、体重減少、関節痛・筋痛は血管径を問わず共通してみられる非特異的所見であり、これだけでは径を絞り込めない。
  2. 血管径を示唆する身体所見の探索:四肢の脈拍・血圧左右差、(大血管)、腹部・四肢の虚血徴候や皮膚の(中血管)、・肺症状(小血管)を系統的に確認する。
  3. 初期検査:血算、・CRPで全身炎症を確認し、腎病変の有無を尿沈渣・クレアチニンで必ずスクリーニングする(血管径を問わずは共通の初期検査)。
  4. 血清学は疑う径に応じて選ぶ:小血管炎(特にANCA関連)を疑えばを、免疫複合体性を疑えば補体・を追加する。・中血管炎では血清学的マーカーの意義は乏しく、画像・・生検が診断の中心になる。
  5. 確定手段は血管径で使い分ける:大血管は生検が届きにくいため画像(超音波・MRA/CTA・FDG-PET)を優先し、中血管は)または症候性組織の生検、小血管は最も到達しやすい罹患組織(皮膚・腎・末梢神経)の生検で確定する。
  6. 緊急性の判断を先行させる(血尿・喀血)(ANCA関連血管炎)、冠動脈病変のリスク()、腸管・腎の虚血()など、確定診断を待たずに治療を開始すべき所見がないかを常に並行して評価する。
flowchart TD
    A["全身炎症症状+血管径を示唆する所見"] --> B["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate, ESR'>赤沈</span>/CRP・尿沈渣・クレアチニンを全例で確認"]
    B --> C{"どの血管径を疑うか"}
    C -->|"大血管"| D["超音波・MRA/CTA・FDG-PETを優先"]
    C -->|"中血管"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiography'>血管造影</span>または症候性組織の生検"]
    C -->|"小血管"| F["ANCA・補体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryoglobulin'>クリオグロブリン</span>を追加し、罹患組織を生検"]
    D --> G["緊急所見(視覚切迫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organ ischemia'>臓器虚血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary-renal syndrome'>腎肺症候群</span>等)の有無を確認"]
    E --> G
    F --> G
    G -->|"あり"| H["確定を待たず治療開始"]
    G -->|"なし"| I["確定後に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment strategy'>治療方針</span>を決定"]

下位型の判別

⭐ 罹患血管径・好発年齢・血清学・確定手段の組み合わせが、6疾患を鑑別する最大の武器になる。

疾患 血管径 好発 特徴的な臨床像 血清学 確定手段
大血管 50歳以上 新規頭痛、、視覚症状(など)、の合併 (非特異的) 超音波(側頭・)、
大血管 40歳未満の女性 、脈拍・血圧左右差、、大動脈弁逆流 炎症反応が正常化しても血管病変が進行しうる MRA/CTA、超音波、FDG-PET
中血管 中高年、一部はHBV関連 ;肺・糸球体は侵さない ANCA通常陰性、HBs抗原(HBV関連例) 、症候性組織(皮膚・筋・神経)の生検
中血管 5歳未満の乳幼児 発熱+5主要所見(・口唇口腔変化・発疹・四肢末端変化・)、冠動脈拡張・瘤 確定的ななし 心エコー(冠動脈)による経時評価
ANCA関連血管炎 小血管(ANCA関連) 中高年(小児はまれ) (血尿・蛋白尿を伴う+喀血を伴う肺胞出血)、、成人発症喘息・好酸球増多(EGPA) 腎・肺・皮膚などの生検(
IgA血管炎 小血管(免疫複合体性) 小児(3〜10歳) 血小板減少を伴わない下肢・臀部優位の、腹痛、関節痛、腎炎 診断必須のなし、ANCA陰性 主に臨床診断。非典型例で皮膚・腎生検(IgA優位沈着)

💡 同じ「肺・腎を侵すか」という問いへの答えが、中血管炎()と小血管炎(ANCA関連血管炎)を分ける最大のポイントになる。・弓状動脈レベルの虚血によるを来すが糸球体腎炎は起こさず、肺も通常保たれる。ANCA関連血管炎はその逆で、糸球体そのものを壊死性に傷害する性腎炎と肺胞出血()を特徴とする。同様に、同じ小児の血管炎でも、免疫複合体性のIgA血管炎(紫斑・腹痛・関節痛・腎炎)と、中血管炎である(発熱・粘膜皮膚所見・冠動脈病変)は血管径も臓器もまったく異なる。

⚠️ 血管径による分類はあくまで典型像であり、の炎症が中〜小血管領域まで及ぶ例など、境界が厳密でない例外もある。径による分類は診断の出発点であり、最終的には臨床像・血清学・画像・生検を統合する。

総論としての治療原則

  • グルココルチコイドがほぼ全型で寛解導入の基盤となるが、径・疾患ごとに併用薬とタイミングが大きく異なる。詳細な用量・レジメンは各子ノートに譲る。
  • :グルココルチコイド単独に頼らず、早期から、メトトレキサートなど)を併用してステロイド曝露を減らす方針が共通する。)は可能な限り炎症を鎮静化させてから計画する。
  • 中血管炎:同じ中血管炎でも治療の骨格はまったく異なる。+アスピリンが標準治療であり、成人の血管炎に典型的なグルココルチコイド+という枠組みには入らない。とHBV関連の有無で強度を調整し、HBV関連例は長期の強力な免疫抑制を避けて抗ウイルス治療を軸に据える。
  • 小血管・ANCA関連血管炎:グルココルチコイド+リツキシマブまたはで寛解導入し、グルココルチコイドは急速に減量する。は全例のルーチンではなく、重症腎障害や肺胞出血など選択的な状況に限る。
  • 小血管・免疫複合体性(IgA血管炎):多くは自然軽快するため支持療法が中心で、グルココルチコイドは重い腎外症状の症状緩和に用いることはあっても、腎炎予防目的に一律投与しない。腎炎が高度な例に限り免疫を専門科で検討する。
  • ⚠️ 「血管炎だから一律にグルココルチコイド+」という発想は誤りのIVIG+アスピリンのように、径が同じでも疾患が異なれば治療の骨格自体が別物になる例がある。
  • 各疾患の具体的な薬剤選択・用量・・救済療法・外科的介入の詳細は、ANCA関連血管炎IgA血管炎の各ノートに譲る。

まとめ

  • 血管炎はまず罹患血管径(大血管・中血管・小血管)で分類し、小血管炎はさらにANCA関連/免疫複合体性に分かれる(Chapel Hill 2012コンセンサス)。
  • 血管径は臨床像の設計図である:大血管=脈拍・血圧左右差、中血管=臓器梗塞と動脈瘤の二面性、小血管=紫斑・糸球体腎炎・肺胞出血という「漏れ」のパターン。
  • 確定手段も血管径で使い分ける:大血管は画像(超音波・MRA/CTA・PET)優先、中血管はまたは症候性組織生検、小血管は罹患組織(皮膚・腎・神経)の生検が中心。
  • (中血管・肺腎温存)とANCA関連血管炎(小血管・)、IgA血管炎(小児・免疫複合体性)と(小児・中血管)は、それぞれ血管径・機序が異なる紛らわしいペアとして意識する。
  • 治療の骨格は径・疾患で大きく異なり、特にのIVIG+アスピリンは他の血管炎のグルココルチコイド中心の枠組みとは別物である。詳細は各子ノートを参照する。

出典

  1. 1.2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides(Arthritis & Rheumatism (American College of Rheumatology)・2013)CHCC 2012分類が大血管・中血管・小血管(ANCA関連/免疫複合体性)に加えて、血管径を問わず任意のサイズ・種類の血管を侵しうる可変血管炎(variable vessel vasculitis)という区分を設け、代表疾患としてベーチェット病とCogan症候群の2疾患を挙げていることを確認した。閲覧 2026-08-02