病理学

病理学 · B/40

動脈炎・静脈炎(血管炎)

Arteritis and Phlebitis

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応用トピック
動脈疾患の疫学・危険因子・スクリーニング・予防・保存的治療:血管炎小血管炎中血管炎・大血管炎結節性多発動脈炎血管炎若年成人の脳血管障害IgA血管炎・川崎病・小児多系統炎症性症候群・多発血管炎性肉芽腫症川崎病と小児多系統炎症性症候群(MIS-C)
疾患
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)血管炎(大血管炎・中血管炎・小血管炎)顕微鏡的多発血管炎白血球破砕性血管炎閉塞性血栓血管炎(Buerger病)
症状
顔面痛
画像所見
コークスクリュー側副血行

🧠 全体像:血管炎は「罹患する血管の太さ」×「免疫機序(III型過敏の vs ANCAによる好中球活性化)」の2軸で整理すると、大血管の巨細胞動脈炎・、中血管のPAN・、小血管の関連血管炎という配置が自然に見えてくる。

血管炎 — 定義

血管炎 = 動脈炎 = angiitis: 血管壁の炎症。2つの大きな機序:感染性(直接侵入)と・。

感染性血管炎

病原体(通常は細菌や真菌 — Aspergillus、Mucor)の直接侵入による限局性炎症。壁の → ・血栓症 → 梗塞。

非感染性(免疫介在性)機序

  1. III型過敏(免疫複合体): 循環複合体が壁に沈着 → → マクロファージ融解+好中球侵入 → ROS → 炎症(SLE、薬剤性、感染後)。
  2. ANCA: 好中球細胞質抗原に対する自己抗体 → 好中球の活性化・ → ROS+ → 。P-ANCA(核周囲、)↔ (関連血管炎の一つ。〔EGPA〕でも一部陽性)、C-ANCA(細胞質、)↔ (GPA、旧称。CHCC 2012で人名を外して改称)1。⚠️ はCHCC分類上陰性が典型で、陽性・小型血管優位のと区別される12。⭐ 生検確認血管炎502例のコホートでは、特異性(PR3対MPO)に基づく分類の方が臨床病型による分類より再発を予測しやすかった3。
  3. 抗内皮抗体: 。
  4. 細胞介在性: 高度のT細胞浸潤。

血管径による分類

大血管 中血管 小血管
巨細胞(側頭)動脈炎、 、(関節リウマチ、SLEに伴う血管炎は中血管も侵しうる) 、(GPA)、(EGPA、旧称)、、感染後

⚠️ (EGPA)は元の資料では中血管の欄に置かれていたが、CHCC 2012 は小血管の関連血管炎に分類する1。実際には中血管を侵すこともあるが、分類上の所属は小血管である。

💡 分類基準とを混同しない。 2022年に(ACR)とがの新しい分類基準を公表した。どちらも研究の対象者をそろえるための分類基準として、研究での使用のために検証されたものである45。点数が閾値に届かないことを理由に、目の前の患者の血管炎を否定する使い方はしない。

(2022 ACR/) (2022 ACR/)
絶対条件 診断時年齢50歳以上 診断時年齢60歳以下+画像上の
高配点の項目 陽性または超音波のhalo sign(+5)、50 mm/時以上または 10 mg/L以上(+3)、突然の視力喪失(+3) とまたは腸間膜動脈の病変(+3)、罹患動脈領域の数(+1〜+3)
各+2の項目 肩・頸の、・、新たな頭痛、頭皮の圧痛、の診察上の異常、画像での両側病変、で大動脈全体の集積 狭心症、四肢、、上肢の脈拍減弱、頸動脈の脈拍減弱または圧痛
各+1の項目 — 女性、上肢間の血圧差20 mmHg以上、左右対の動脈病変
分類の閾値 合計6点以上 合計5点以上
検証データでの性能 感度87.0%・特異度94.8% 感度93.8%・特異度99.2%

出典:4、5。

大血管の血管炎

  • 巨細胞(側頭)動脈炎: 高齢者。( → 失明、も)。慢性肉芽腫性の炎症に巨細胞+の、線維化で治癒。頭痛、、顔面痛、しばしばを合併する。(感度約77%、〔skip lesion〕のため陰性でも否定できない)6、⚠️ 近年は生検に先立ち超音波(halo sign)などの画像検査を第一選択とする方向にある7、で治療。再発予防・ステロイド低減には(GiACTA試験)を用いる8。
  • (「」): 50歳未満の女性、主にアジア(CHCC 2012の定義も「発症は通常50歳未満」1。2022年の分類基準は診断時年齢60歳以下を絶対条件とする5)。の線維化が大血管起始部を狭窄・閉塞(、vasa vasorum周囲の)。上肢の脈が弱い、・ → 失明、神経障害。

中血管の血管炎

  • (PAN): poly = 多数の動脈(腎、冠動脈、肝、腸間膜)、nodosa = 結節状(1866年の原記載が全身の動脈に間欠的な結節状の外観、いわば「真珠の首飾り」状の所見を記したことに由来する名)2。壊死性、免疫複合体、は侵さない。歴史的にはHBV関連が多く、HBs抗原が免疫複合体を作る機序で説明されてきたが、ワクチンの普及などでPAN自体のが大きく下がり、1990年代には最も多い血管炎の一つだったものが現在は最もまれな血管炎の一つとされる2。急性 = ++血栓、慢性 = 。発作性の発熱、体重減少、高血圧、腹部・筋の痛み。⚠️ 典型的には陰性(陽性・小型血管優位のとの鑑別点)12、。
  • 川崎症候群(): 4歳未満の小児、日本で多い。抗内皮抗体、冠動脈+皮膚粘膜の動脈。PAN様の壁変化。・口腔の紅斑、手足の浮腫、手掌・足底の紅斑、、。 → 破裂 → AMI/。

小血管の血管炎

  • (白血球性・過敏性): 細動脈・・毛細血管の。腫瘍・薬物(ペニシリン)・微生物へのP-ANCA反応 → 、にした好中球核(「白血球・leukocytoclasia」)。喀血、血尿・、消化管出血、筋痛、紫斑。
    • ⚠️ 「=白血球性・」という括りは古い教科書の書き方である。 CHCC 2012はMPAを「が乏しいかない、主に小血管を侵すで、が非常に多く、もしばしば起こり、を欠く」関連血管炎と定義する。皮膚に限局したは単一臓器血管炎、薬剤による血管炎は「薬剤関連の免疫複合体血管炎」「薬剤関連関連血管炎」として、それぞれ別に置かれている1。
  • (GPA、旧称): 三徴:(1)上・下気道の壊死性肉芽腫、(2)小・中血管の、(3)。吸入物質への細胞介在性過敏、C-陽性。、、糸球体腎炎。
    • ⚠️ 「ステロイドで治療」だけでは足りない。 2022の推奨では、生命や臓器を脅かす関連血管炎(GPA・MPAを含む)の寛解導入はにリツキシマブまたはを併用し、グルココルチコイドは4〜5か月以内に換算5 mg/日まで減らす。GPA・MPAのにはリツキシマブを推奨し、・メトトレキサートを代替とする9。
  • (): 小動脈(±静脈 → )の血栓性炎症。ほぼ例外なく喫煙者で、多くは若年発症(従来「35歳未満」と教えられるが、はOlin基準が45歳未満、Shionoya基準が50歳未満をとる)。への過敏 → 、血管収縮、。顕微鏡:、+内腔血栓、後に線維化。ではの周囲にを認める。、、四肢の壊疽 → 切断リスク。

💡 ポイント: 血管炎を血管径+血清学に対応づける:巨細胞(高齢者、、失明、肉芽腫性、生検+ステロイド)と高安(若年アジア女性、脈なし)= 大、PAN(歴史的に関連、肺を侵さない、陰性が典型、腎/冠動脈)と川崎(小児、、抗内皮抗体)= 中、(P-/、、肉芽腫なし)、(GPA、旧称Wegener)(C-ANCA/PR3-ANCA、呼吸器+腎の三徴)、(若年男性喫煙者、壊疽)= 小。

まとめ

  • 血管炎は感染性(病原体の直接侵入)と・(III型過敏、、抗内皮抗体、細胞介在性)に大別される。
  • 罹患血管径で大・中・小に分類され、大血管は巨細胞動脈炎・、中血管は・、小血管は・(旧称)・が代表的である。
  • 巨細胞(側頭)動脈炎は高齢者に生じる肉芽腫性動脈炎で失明のリスクがあり、とステロイドで対応する。2022 は診断時50歳以上を絶対条件とし、の分類基準は60歳以下を絶対条件とする。
  • は歴史的に関連が多かったが、現在はPAN自体がまれになった。を侵さず、典型的には陰性でと区別される。
  • (GPA)は上下気道の壊死性肉芽腫・小中血管の・の三徴を特徴とし、C-陽性が典型的。寛解導入はグルココルチコイドにリツキシマブまたはを併用する。
  • はCHCC 2012では肉芽腫を欠く関連血管炎と定義され、皮膚のや薬剤性血管炎とは別に分類される。
  • ()は喫煙者にほぼ限定される若年発症の疾患で(の年齢はOlin基準45歳未満・Shionoya基準50歳未満)、四肢壊疽のリスクがある。

出典

  1. 1.2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides(Arthritis & Rheumatism (American College of Rheumatology)・2013)全文(Wiley誌上版のWayback保存版)で、CHCC 2012が血管径に基づく分類を整理し、Wegener肉芽腫症を多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、Churg-Strauss症候群を好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と改称したこと、結節性多発動脈炎(PAN)を「糸球体腎炎や細動脈・毛細血管・細静脈の血管炎を伴わず、ANCAと関連しない、中型または小型動脈の壊死性動脈炎」と定義したこと、MPAを「免疫沈着が乏しいかない、主に小血管(毛細血管・細静脈・細動脈)を侵す壊死性血管炎で、壊死性糸球体腎炎が非常に多く、肉芽腫性炎症を欠く」と定義したこと、皮膚白血球破砕性血管炎を単一臓器血管炎に、薬剤関連の免疫複合体血管炎・薬剤関連ANCA関連血管炎を推定病因に関連する血管炎として別に置いたこと、高安動脈炎の発症は通常50歳未満・巨細胞性動脈炎は通常50歳超としたことを確認した閲覧 2026-09-24
  2. 2.Polyarteritis Nodosa: Old Disease, New Etiologies(International Journal of Molecular Sciences・2023)全文(PMC10706353)で、糸球体腎炎・肉芽腫・ANCA陽性の欠如がPANを他の血管炎と鑑別する所見であること、歴史的にPANはB型肝炎ウイルス(HBV)感染と強く結びついていたが、HBVワクチンの登場とAIDS流行を受けた公衆衛生対策の強化でPAN(全体)の発生率が著明に低下し、1990年代には最も多い血管炎の一つだったものが現在は最もまれな血管炎の一つになっていること、1866年にKussmaulとMaierが大血管・小血管・肺血管を侵さず全身の動脈に間欠的な結節状の外観を示すと記載し、この「真珠の首飾り」状の所見がnodosaという病名の由来となったことを確認した。HBV関連例が占める現在の割合の数値はこの総説に記載が無い閲覧 2026-09-24
  3. 3.Classification of antineutrophil cytoplasmic autoantibody vasculitides: the role of antineutrophil cytoplasmic autoantibody specificity for myeloperoxidase or proteinase 3 in disease recognition and prognosis(Arthritis & Rheumatism・2012)生検で確認されたANCA血管炎502例のコホートで、ANCA特異性(PR3対MPO)に基づく分類が臨床病型分類(Chapel Hill・European Medicines Agency方式)より再発予測モデルの適合度が高く、PR3-ANCA陽性例はMPO-ANCA陽性例よりおよそ2倍再発しやすかった(ハザード比1.89、95%CI 1.33〜2.69)ことを確認した。治療抵抗性・末期腎不全・死亡についてはいずれの分類方式にも予測力がなかった閲覧 2026-08-27
  4. 4.2022 American College of Rheumatology/EULAR classification criteria for giant cell arteritis(American College of Rheumatology / EULAR(Annals of the Rheumatic Diseases)・2022)抄録で、診断時年齢50歳以上を絶対条件とし、側頭動脈生検陽性または超音波のhalo sign(+5)、赤沈50 mm/時以上またはCRP 10 mg/L以上(+3)、突然の視力喪失(+3)、肩・頸の朝のこわばり、顎跛行または舌跛行、新たな側頭部頭痛、頭皮の圧痛、診察上の側頭動脈の異常、画像での両側腋窩動脈病変、FDG-PETでの大動脈全体の集積(各+2)の合計6点以上で巨細胞性動脈炎に分類すること、検証データで感度87.0%・特異度94.8%であり、臨床研究での使用のために検証された基準であることを確認した閲覧 2026-09-24
  5. 5.2022 American College of Rheumatology/EULAR classification criteria for Takayasu arteritis(American College of Rheumatology / EULAR(Annals of the Rheumatic Diseases)・2022)抄録で、診断時年齢60歳以下と画像上の大血管炎の所見を絶対条件とし、女性(+1)、狭心症(+2)、四肢跛行(+2)、血管雑音(+2)、上肢の脈拍減弱(+2)、頸動脈の脈拍減弱または圧痛(+2)、上肢間の血圧差20 mmHg以上(+1)、罹患した動脈領域の数(+1〜+3)、左右対の動脈病変(+1)、腹部大動脈と腎動脈または腸間膜動脈の病変(+3)の合計5点以上で高安動脈炎に分類すること、検証データで感度93.8%・特異度99.2%であり、研究での使用のために検証された基準であることを確認した閲覧 2026-09-24
  6. 6.Temporal artery biopsy: A technical guide and review of its importance and indications(Survey of Ophthalmology・2023)側頭動脈生検の感度は約77%・特異度はほぼ100%で、GCAは区域性(skip lesion)の血管炎であるため生検陰性でも臨床的疑いが強ければ診断を否定しないこと、大血管病変を伴う症例では側頭動脈生検が陰性になりうる割合が約40%に達することを確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.EULAR recommendations for the use of imaging in large vessel vasculitis in clinical practice: 2023 update(EULAR・2024)巨細胞性動脈炎が疑われる患者では側頭動脈と腋窩動脈の超音波を第一選択の画像検査とし、生検に先立って用いることを確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.Trial of Tocilizumab in Giant-Cell Arteritis(New England Journal of Medicine(GiACTA試験)・2017)巨細胞性動脈炎251例のGiACTA試験で、52週時点のステロイド不要な持続寛解率がトシリズマブ毎週投与56%・隔週投与53%に対し、26週漸減プラセボ群14%・52週漸減プラセボ群18%であったことを確認した閲覧 2026-08-27
  9. 9.EULAR recommendations for the management of ANCA-associated vasculitis: 2022 update(European Alliance of Associations for Rheumatology・2024)抄録で、生命または臓器を脅かすANCA関連血管炎の寛解導入には高用量グルココルチコイドとリツキシマブまたはシクロホスファミドの併用を推奨し、グルココルチコイドを4〜5か月以内にプレドニゾロン換算5 mg/日まで漸減すること、GPA・MPAの寛解維持にはリツキシマブを推奨し、アザチオプリンとメトトレキサートを代替とすること、アバコパンをグルココルチコイド曝露を減らす戦略の一部として考慮しうること、再発・難治性のEGPAにはメポリズマブを推奨することを確認した閲覧 2026-09-24