病理学

病理学 · B/41

静脈瘤・リンパ管疾患(静脈瘤/リンパ浮腫など)

Varices, varicosities and disorders of the lymphatic vessels

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応用トピック
慢性静脈不全の症状・身体診察・画像診断と治療下肢静脈疾患・血栓後症候群
疾患
Trousseau症候群リンパ浮腫-睫毛重生症候群食道静脈瘤
症状
チアノーゼリンパ浮腫

🧠 全体像:静脈系の異常はいずれも「弁またはの破綻→うっ滞→浮腫・皮膚変化」という共通パターンをたどる。は弁の閉鎖不全、門脈圧亢進は門脈–の開通、は不動・が引き金だが、行き着く先はうっ滞と、進行すれば肺塞栓・という重い合併症である。

静脈瘤

静脈瘤 = 静脈系の異常に拡張・した血管。 は、遷延する内腔圧の上昇+壁支持の喪失により生じる拡張・した静脈で、典型的には下肢のに。

  • 危険因子: 女性、妊娠(経産)、加齢、長時間の立位、肥満、家族歴(ガイドラインが系統的レビューの結果として挙げる慢性静脈疾患の危険因子)1。
  • 💡 なぜ立位で悪くなるか: 立っているだけだと足の静脈圧は80〜90 mmHgと高いが、歩いて下腿のが働けば20〜30 mmHgへ下がる。この低下が不十分だと歩行時静脈圧が高いままになり、その上昇は慢性静脈疾患のが重いことと関連し、主に逆流()、より少なく近位の閉塞に伴っていた。は毛細血管・のを介して浮腫・線維化・色素沈着を起こし、潰瘍へ進む1。→
  • 発生機序: 拡張 → 静脈弁の閉鎖不全 → うっ滞、うっ血、浮腫、血栓症。
  • 形態: 最大拡張部での壁の菲薄化()、隣接部での+、限局性の内腔血栓、弁の変形。
  • 臨床経過: 弁の閉鎖不全 → うっ滞 → 下肢浮腫、虚血性皮膚変化・潰瘍()、、。

他部位の静脈瘤(門脈圧亢進)

肝硬変 → 門脈圧亢進 → 門脈–の開通 → 以下の部位に拡張静脈:

血栓性静脈炎・静脈血栓症

静脈血栓+症を指す互換的な用語。主に下肢の(前立腺周囲・も)。

  • 原因(Virchowのうっ滞・): 長期の不動(、長時間のフライト・運転)、、腫瘍、妊娠。
  • : (異なる時期に異なる部位に血栓が出現)、古典的にはに伴う。
  • 症状: 圧痛・ふくらはぎの圧迫痛、時のふくらはぎ痛。
  • 主要な意義: 肺塞栓。

大静脈症候群

原因 結果
SVC症候群 腫瘍によるSVCの圧迫・浸潤 頭部・頸部・腕のとチアノーゼ
IVC症候群 腫瘍によるIVCの圧迫・浸潤、または上行進展する血栓(肝・腎・下肢静脈) 下肢浮腫、下腹部静脈の怒張、

リンパ管疾患

原発性は稀。二次性(悪性腫瘍、炎症)がはるかに多い。

  • : 細菌感染がリンパ管を介し広がる、好中球+単球で満たされた拡張リンパ管。徴候:赤く痛む皮下の線条、急性リンパ節炎、菌血症・敗血症の可能性。
  • : リンパ系の障害による局所的な液体貯留。
    • 一次性: 孤立性または家族性の欠陥。
    • 二次性(閉塞性): 世界的にはが熱帯・亜熱帯地域における二次性の最多原因である一方、先進国では悪性腫瘍・外科的リンパ節切除(など)・放射線後の線維化が主体である。乳癌サバイバーの10〜40%にが生じ(に放射線を加えた場合に最も高い)、腋窩手術後に臨床的に明らかな上肢に限ると6〜30%とされる2。
    • 結果: 閉塞部より後方の → → 持続性浮腫 → 間質のの増加 → 硬い硬化・「オレンジの皮」様皮膚 → 。拡張リンパ管の破裂 → (chylous)の貯留。慢性(とくに乳房切除後)に生じるをStewart-Treves症候群と呼ぶ3。
flowchart TD
    A["リンパ管の閉塞<br>(悪性腫瘍・リンパ節切除・放射線後線維化)"] --> B["閉塞部より後方の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased hydrostatic pressure'>静水圧上昇</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial fluid'>間質液</span>の貯留"]
    C --> D["持続性の浮腫"]
    D --> E["間質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='connective tissue deposition'>結合組織沈着</span>の増加"]
    E --> F["硬い硬化<br>「オレンジの皮」様皮膚"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>"]

💡 ポイント: = → 下肢うっ滞・潰瘍。肝硬変・門脈圧亢進では → (致死的)、、。・(不動、心不全、癌、妊娠)→ 肺塞栓リスク、遊走性 = Trousseau(悪性腫瘍)。SVC症候群 → 顔面・腕のうっ血+チアノーゼ。 → 硬いの「オレンジの皮」様皮膚、世界的な二次性の最多原因は、先進国では乳房切除後・放射線後が主体2。

まとめ

  • はの閉鎖不全によるうっ滞が本態で、下肢浮腫・虚血性皮膚変化・潰瘍を来す。
  • 肝硬変による門脈圧亢進は門脈–を開通させ、(致死的なのリスク)・・を生じる。
  • ・は不動・・腫瘍・妊娠が誘因で、最大の臨床的懸念は肺塞栓である。
  • はに伴う。
  • SVC症候群は頭頸部・腕のうっ血とチアノーゼ、IVC症候群は下肢浮腫とを来す。
  • は閉塞によるから持続性浮腫・を経て「オレンジの皮」様皮膚・に至り、世界的にはが二次性の最多原因、先進国では後が主体で、慢性に(Stewart-Treves症候群)を生じうる。

出典

  1. 1.European Society for Vascular Surgery 2022 Clinical Practice Guidelines on the Management of Chronic Venous Disease of the Lower Limbs(European Society for Vascular Surgery・2022)全文(ゲント大学リポジトリのPDF)で、慢性静脈疾患の危険因子として一般に報告されているのが女性・年齢・肥満・長時間の立位・家族歴・経産であると、ガイドラインが系統的レビューの結果として紹介していること、立位では足背静脈圧が80〜90 mmHgと高く、下腿筋ポンプの働く歩行時には20〜30 mmHgへ下がるが、これが下がらないと歩行時静脈圧が高くなり、4,132肢の後ろ向き研究でその上昇が慢性静脈疾患の重い臨床分類と関連し主に逆流、より少なく近位の閉塞に伴っていたこと、静脈高血圧が毛細血管・細静脈の内皮障害から浮腫・線維化・色素沈着・潰瘍へ進むと説明していることを確認した閲覧 2026-09-24
  2. 2.Lymphedema(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Wayback保存版(Last Update 2025年10月18日)で、二次性リンパ浮腫は世界的には熱帯・亜熱帯地域でリンパ系フィラリア症(Wuchereria bancrofti)が最多原因で、先進国ではリンパ節郭清・放射線・腫瘍浸潤などの癌治療関連が主体であること、乳癌サバイバーの10〜40%がリンパ浮腫を生じ(腋窩郭清+放射線で最も高く、センチネルリンパ節生検のみより高い)、腋窩手術後に臨床的に明らかな上肢リンパ浮腫を生じるのは6〜30%と、別の箇所で2つの幅を記載していることを確認した。「6〜40%」という幅は本文に無い閲覧 2026-09-24
  3. 3.Stewart-Treves Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)1948年にStewartとTrevesが乳房切除後の慢性リンパ浮腫に生じたリンパ管肉腫(血管肉腫)6例の症例集積を報告したことに始まり、大半は乳房切除後リンパ浮腫由来だが、あらゆる原因の慢性リンパ浮腫に生じうることを確認した閲覧 2026-08-27