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Disease Atlas · 肝胆膵 · 病態

門脈圧亢進症

Portal hypertension

臓器系
肝胆膵消化器
科目
PathophysiologyInternal Medicine
トピック
病態生理学 2-4:肝機能障害(2)内科学 L-50:肝硬変
合併症
食道静脈瘤
治療薬
プロプラノロールカルベジロールオクトレオチド
症状
腹水脾腫静脈瘤出血吐血
検査値
血小板数
スコア
Child-Pugh分類
原因となる疾患
COACH症候群バッド・キアリ症候群肝硬変先天性肝線維症

🧠 全体像は単一の疾患ではなく、の血流抵抗が上がった結果として生じる血行動態の状態である。診療の骨格は閉塞の位置(性・)による分類にあり、最多を占める肝硬変(性・性)の各論は肝硬変に、代表的な合併症であるの管理はに譲る。本ノートは分類の骨格と、原因を問わず共通する血行動態・身体所見を扱う。

病態

は、の血流に対する抵抗の上昇と、の血管拡張による門脈への流入増加という2つの機序が組み合わさって生じる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal system'>門脈系</span>のどこかで血流抵抗が上昇"] --> B["門脈圧の上昇"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='splanchnic circulation'>内臓循環</span>の血管拡張<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitric oxide, NO'>一酸化窒素</span>↑)"]
    C --> D["門脈への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased blood flow'>血流増加</span>がさらに圧を押し上げる"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collateral circulation'>側副血行路</span>の発達<br>(食道<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric varices'>胃静脈瘤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Caput medusae'>メデューサの頭</span>・直腸静脈瘤)"]
    B --> F["脾腫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hypersplenism'>脾機能亢進</span>"]
    C --> G["有効動脈血液量の低下"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renin-angiotensin-aldosterone system'>レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系</span>活性化"]
    H --> I["ナトリウム・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water retention'>水貯留</span>=腹水"]

が病態の重症度を数値化する共通の物差しである。 正常は5 mmHg以下で、6 mmHg以上はを示唆し、10 mmHg以上を臨床的に有意な(CSPH)、12 mmHg以上では腹水・肝性脳症・消化管出血が通常出現する1。Baveno VIIはCSPHをHVPG 10 mmHg以上と定義し、では肝硬度・による非侵襲的な層別化(肝硬度15 kPa以下かつ15万/µL以上でCSPH除外、25 kPa以上でCSPH診断)を用いる2。この非侵襲基準の詳細な使い分けと個々の治療閾値は肝硬変の診断節に譲る。

分類:どこで詰まっているか

閉塞の解剖学的位置によって性・に分ける。性はさらにとの位置関係で3つに細分される1

分類 代表的な原因
症、・外部圧迫
性・ 、先天性の早期
性・(最多) 肝硬変
性・
不全、下大静脈病変

💡 「肝性」という言葉に引きずられて肝硬変だけを想定しない。 )・など)はそのものは正常でも門脈圧が上がりうる。の代表であり、静脈流出路の閉塞がうっ血を経て二次性に肝硬変・門脈圧亢進を招く。臨床で頻度が最も高いのは性・性の肝硬変だが、分類全体を知らないと肝機能正常な前性)を見落とす。

臨床像:3つの結果を身体所見から読む

門脈圧上昇がもたらす結果は、原因を問わず共通する3方向に集約される。

  • の発達:正常なら門脈へ向かう血流が逆転し体循環へ向かう。(食道)、臍周囲静脈の)、後腹膜(腎・卵巣静脈)、肛門直腸(直腸静脈瘤)の4部位が代表である1。食道破裂はとして大量の原因になる。
  • 脾腫:脾腫はの信頼できる臨床指標であり、脾臓の過形成によりが低下する。術後も自体は改善しないことに注意する1
  • 腹水による有効動脈血液量の低下がを活性化し、ナトリウム・を招くことで生じる1。腹水そのものの評価・治療の詳細は肝硬変治療節に譲る。

診断とHVPG測定

臨床的な手がかりは脾腫・血小板減少・腹水・の画像所見(腹部超音波・CT)である。確定的な重症度評価にはHVPGの直接測定(カテーテル法)を用いるが、侵襲的であるため、代償性肝硬変ではを組み合わせた非侵襲的な層別化が広く使われる2。非侵襲基準の詳細な数値・使い分けは肝硬変の診断節を参照。

治療

治療の軸は、原因治療(なら血栓の管理、なら流出路閉塞の解除、性・性なら肝硬変の原因治療)と、門脈圧そのものを下げる対症療法の二本立てである。

まとめ

  • は単一疾患ではなく、閉塞の解剖学的位置で性(前・後)・に分類される血行動態の状態である。
  • HVPGが重症度の共通指標で、10 mmHg以上が臨床的に有意な、12 mmHg以上で腹水・肝性脳症・消化管出血が通常出現する。
  • 原因を問わず、の発達(静脈瘤・など)、脾腫・、腹水という3方向の結果が共通して生じる。
  • 頻度は性・性の肝硬変が最多だが、)を分類全体で押さえないと肝機能正常なを見落とす。
  • 各論(肝硬変の管理、の急性期治療、)は個別ノートに譲る。

出典

  1. 1.Portal Hypertension(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)門脈圧亢進症が肝前性(門脈・脾静脈の血流増加または閉塞)、肝内性(類洞前:住血吸虫症・先天性肝線維化・原発性胆汁性胆管炎早期/類洞:肝硬変・アルコール性肝炎/類洞後:静脈閉塞性疾患)、肝後性(バッド・キアリ症候群・収縮性心膜炎・三尖弁不全・下大静脈病変)に解剖学的分類されること、肝静脈圧較差(HVPG)が正常値5 mmHg以下、6 mmHg以上で門脈圧亢進症を示唆、10 mmHg以上で臨床的に有意な門脈圧亢進症、12 mmHg以上で腹水・肝性脳症・消化管出血が通常発生することを確認した。側副血行路が食道胃静脈瘤・臍部(メデューサの頭)・後腹膜・肛門直腸の4部位に形成されること、脾腫が門脈圧亢進症の信頼できる臨床指標で脾機能亢進による血小板減少を伴い門脈体循環シャント後も脾機能亢進は改善しないこと、腹水が有効動脈血液量減少に伴うレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系活性化とナトリウム・水貯留により形成されることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Advances in portal hypertension management: Evolution of the Baveno guidelines((Baveno consensus workshop review)・2025)Baveno VIIが臨床的に有意な門脈圧亢進症をHVPG 10 mmHg以上と定義すること、非侵襲的診断として肝硬度15 kPa以下かつ血小板数15万/µL以上ならCSPHを除外でき肝硬度25 kPa以上(ウイルス性・アルコール性・非肥満NASHで)ならCSPHと診断できること、非選択的β遮断薬(特にカルベジロール)がCSPHを持つ代償性肝硬変患者で初回非代償化予防にも推奨されるようになったことを確認した閲覧 2026-08-11