内科学

内科学 · L-50

肝硬変

Liver Cirrhosis

前提:病態
肝硬変肝の循環障害
疾患
肝硬変門脈圧亢進症
スコア
Child-Pugh分類MELDスコア

🧠 全体像:肝硬変は慢性肝障害による線維化・と血管の終末像で、臨床的にはと、腹水・肝性脳症・・黄疸を来したに分ける。原因治療、門脈圧・合併症管理、、移植紹介を一体化する。

原因と診断

主な原因はアルコール関連肝疾患、、・、、PBC・PSC、、、α1-antitrypsin欠乏、薬物、血管性・心臓性疾患である。原因は複数併存し得る。

💡 /NASHという呼称は2023年に/MASHへ置き換わった。 多学会Delphiコンセンサスは脂肪性肝疾患(SLD)を概念に据え、心代謝リスク因子5つのうち1つ以上をの診断要件とし、その条件を満たしつつ女性で週140–350 g・男性で週210–420 g飲酒する例を MetALD という中間カテゴリーに分けた1。旧名は試験・過去文献で今も使われるため、対応関係で覚える。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic liver disease'>慢性肝疾患</span>/血小板低下・画像異常"] --> B["原因検索+血算・肝腎機能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='international normalized ratio'>INR</span>"]
    B --> C["超音波+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elastography'>エラストグラフィ</span>±非侵襲スコア"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensated stage'>代償期</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompensated stage'>非代償期</span>か"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensated stage'>代償期</span>"| E["CSPH評価・原因治療・予防"]
    D -->|"腹水・脳症・出血・黄疸"| F["誘因治療+移植評価"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular carcinoma'>HCC</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='surveillance'>サーベイランス</span>+栄養・ワクチン接種"]
    F --> G

血小板低下、アルブミン低下、ビリルビン・上昇、/異常を認めるが、正常でも肝硬変を除外できない。超音波で結節状輪郭、脾腫、腹水、をみる。と血小板などで(CSPH)を非侵襲的に層別化し、診断不明・重複疾患ではを考慮する。

⭐ Baveno VII(2022)は「代償性進行性(cACLD)」を診断の起点に置いた。 進行した線維化と代償性肝硬変を連続体として扱う枠組みで、CSPHの有無によって死亡リスクも必要な検査・治療も分かれる2。非侵襲評価は5・10・20・25 kPaを区切りとする「rule of five」で整理され、≥25 kPaはCSPHをrule in(90%超)、≤15 kPaかつ血小板≥15万/µLはrule out(90%超)、中間では20–25 kPa+血小板<15万/µLまたは15–20 kPa+血小板<11万/µLでCSPHを推定する34。<20 kPaかつ血小板>15万/µLなら高リスク静脈瘤の可能性が低く、スクリーニング内視鏡を省いてよい4。

⚠️ この非侵襲基準は 30 kg/m²を超える例では検証されていない。 肥満例ではが読みにくく、Baveno VII基準をそのまま当てはめられない4。

Child–Pughはアルブミン、ビリルビン、、腹水、脳症、はビリルビン、、クレアチニン、Na、アルブミン、性別などから予後・移植優先度を評価する。単独は出血リスクを表さない。

💡 MELDは3.0へ更新された(米国の臓器配分では2023年7月13日から)5。 はMELDNa(・ビリルビン・クレアチニン・Na)に女性というとを加え、ビリルビン×Na・アルブミン×クレアチニンの作用とクレアチニン上限3.0 mg/dLを組み込んだもので、登録後90日死亡予測のC統計量は0.869(MELDNaは0.862)と改善し、女性が受けていたリスト上の不利も是正した6。Child–Pughはな腹水・脳症の評価を含む一方で床上・外来のどこでも計算でき、MELDはなだけで移植優先度を決める——使い分けはこの性格の違いによる。

代償期の管理

  • 原因治療:支援、/治療、代謝リスク管理、自己免疫・胆汁うっ滞・代謝性疾患の治療。
  • CSPHがあれば、禁忌がなく血圧が耐えればなどで初回を予防する。NSBB使用中はルーチンのスクリーニング内視鏡が不要となる場合がある。NSBBは従来「の予防薬」だったが、Baveno VII以降はCSPHをもつ代償性肝硬変での初回予防にも推奨されるようになった点が変化である32。
  • NSBB不適または非侵襲評価で方針が決まらない場合は上部内視鏡で静脈瘤を評価し、高リスク静脈瘤はNSBBまたはでする。
  • 肝硬変では原則6か月ごとに腹部超音波+でを行う7。病変があれば多相/へ進む。

非代償化と主要合併症

合併症 初期対応の要点
腹水 新規・入院・悪化時は;Na制限、±、大量穿刺ではアルブミン
細菌性腹膜炎 腹水 PMN ≥250/μLで直ちに抗菌薬+アルブミン;を待たない8
蘇生、制限的輸血、血管作動性薬、抗菌薬、12時間以内を目安に内視鏡;高リスクでは早期
肝性脳症 感染、出血、便秘、脱水、薬剤など誘因治療+;再発予防に追加
AKI アルブミンによる容量評価、、+アルブミンを中心に専門管理
反復大量穿刺+アルブミン、適応例で、移植評価

新規腹水に「見た目だけ」で利尿薬を開始せず、腹水アルブミン・総蛋白、細胞数・培養を採り、SAAGで門脈圧性を評価する。NSBBは有益だが、重い低血圧、AKIなどでは減量・一時中止を検討する。

⚠️ は「HRS-AKI」へ定義が変わり、クレアチニン2.5 mg/dLという絶対値の閾値は外れている。 2015年のInternational Club of Ascites基準で従来の1型・2型はそれぞれ HRS-AKI・HRS- へ改称され、旧1型が要件としていた「2週以内にの2倍かつ>2.5 mg/dLへ到達」という到達値が撤廃された9。2015年基準では、48時間以内にが≥0.3 mg/dL上昇、または7日以内にの≥1.5倍というAKI基準を満たしたうえで、腹水があり、利尿薬中止とアルブミン1 g/kg/日48時間投与で改善せず、ショック・最近の・腎疾患所見がないことで診断していた9。閾値を待たず早期に拾えるようになったことが改訂の眼目である。

⚠️ 現行のADQI・ICA合同合意(2024)は、この「48時間のアルブミン投与」を診断の要件から外した。 新基準は、①腹水を伴う肝硬変、②48時間以内の0.3 mg/dL以上の上昇、または7日以内にから50%以上の上昇、および/または尿量0.5 mL/kg/時以下が6時間以上、③臨床的に必要なら適切な容量補充を行ったうえで24時間以内に・尿量が改善しない、④AKIの主因として別の説明を強く示す根拠がない、の4項目である。診断の要件としてアルブミンを48時間系統的に投与することには反対を強く推奨している(grade D)。が正常か過剰な患者では48時間の投与がを招き、の開始も遅らせるためである。呼称もHRS-AKI・HRS-AKD・HRS-へ置き換えることを強く推奨している10。旧1型/2型という呼称も過去問では問われるため、対応関係で覚える。ではが最も根拠が厚く、+より優れる9。

日常管理と移植

  • アルコール、、不要な鎮静薬・ハーブ系を避け、薬剤量を肝腎機能に合わせる。は通常、適正な低用量ならより安全だが個別化する。
  • 蛋白を制限せず、一般に1.2–1.5 g/kg/日を目安に十分なエネルギーを確保する。長時間絶食を避け、就寝前軽食、評価・運動を取り入れる。
  • ・、インフルエンザ、COVID-19、肺炎球菌、帯状疱疹など適応ワクチン接種を整える。
  • 骨粗鬆症、栄養、感染、腎機能を定期評価する。胆石やだけを目的に不要な介入をしない。
  • 初回、MELD上昇、、難治性掻痒・合併症では早期に施設へ紹介する。MELD ≥15は目安だが、スコアが低くても反復は紹介理由となる。

まとめ

  • 肝硬変はと、腹水・脳症・・黄疸を伴うに分ける。
  • 原因治療、CSPHへのNSBB、6か月ごとので初回と癌を予防する。
  • したら誘因・合併症を治療し、MELDだけに依存せず移植評価へつなぐ。

出典

  1. 1.A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature(Hepatology・2023)2023年の多学会Delphiコンセンサスが脂肪性肝疾患(SLD)を上位概念に据え、NAFLD/NASHをMASLD/MASHへ改称して心代謝リスク因子5つのうち1つ以上を診断要件としたこと、MASLDの条件を満たしつつ週140〜350 g(女性)・週210〜420 g(男性)飲酒する例をMetALDという別枠に置いたことを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Baveno VII – Renewing consensus in portal hypertension(Journal of Hepatology・2022)Baveno VIIが代償性進行性慢性肝疾患(cACLD)を診断の軸に据え、臨床的に有意な門脈圧亢進症(CSPH)の有無で死亡リスク・必要な検査・治療が分かれるとしたこと、肝静脈圧較差測定の位置づけ、非侵襲的検査によるcACLDとCSPHの診断、病因治療・非病因治療が肝硬変の経過に与える影響、初回非代償化の予防、急性出血エピソードの管理、さらなる非代償化の予防、内臓静脈血栓症を含む肝の血管障害の診断と管理という9領域について合意声明をまとめたことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.Advances in portal hypertension management: Evolution of the Baveno guidelines((Baveno consensus workshop review)・2025)Baveno VIIが臨床的に有意な門脈圧亢進症をHVPG 10 mmHg以上と定義すること、非侵襲的診断として肝硬度15 kPa以下かつ血小板数15万/µL以上ならCSPHを除外でき肝硬度25 kPa以上ならCSPHと診断できること、非選択的β遮断薬(特にカルベジロール)がCSPHを持つ代償性肝硬変患者で初回非代償化予防にも推奨されるようになったことを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Recent Advances in the Diagnosis and Management of Clinically Significant Portal Hypertension in Liver Cirrhosis: A Clinical Review(Biomedicines・2026)Baveno VIIのrule of fiveが肝硬度5・10・20・25 kPaを非代償化と肝関連死のリスクが段階的に上がる区切りとすること、肝硬度25 kPa以上でCSPHをrule in(陽性的中率90%超)、肝硬度15 kPa以下かつ血小板数15万/µL以上でrule out(陰性的中率90%超)とすること、肝硬度20〜25 kPaで血小板15万/µL未満または肝硬度15〜20 kPaで血小板11万/µL未満ならCSPHを推定すること、肝硬度20 kPa未満かつ血小板15万/µL超(または脾硬度40 kPa未満)なら高リスク静脈瘤の可能性が低くスクリーニング内視鏡を省けること、これらのBaveno VII基準がBMI 30 kg/m2を超えるMASLD例では検証されていないことを確認した閲覧 2026-08-25
  5. 5.Updates to Medical Urgency Scoring of Liver Transplant Candidates in Effect(Organ Procurement and Transplantation Network(Health Resources and Services Administration)・2023)OPTNのお知らせ(2023年9月11日付、Wayback保存版2026-06-12)で、米国の肝移植待機患者の医学的緊急度スコアの改訂が2023年7月13日に発効し、12歳以上に用いるMELDの計算式が更新され、成人女性の補正と血清アルブミンの変数が加わったことを確認した閲覧 2026-09-24
  6. 6.MELD 3.0: The Model for End-Stage Liver Disease Updated for the Modern Era(Gastroenterology・2021)MELD 3.0はMELDNa(INR・ビリルビン・クレアチニン・ナトリウム)に女性という変数と血清アルブミンを加え、ビリルビンとナトリウム、アルブミンとクレアチニンの交互作用およびクレアチニン上限3.0 mg/dLを組み込んだモデルで、待機リスト登録後90日死亡予測のC統計量は0.869(MELDNaは0.862)と改善し、女性が受ける待機リスト上の不利も是正した。閲覧 2026-08-25
  7. 7.AASLD Practice Guidance on prevention, diagnosis, and treatment of hepatocellular carcinoma(American Association for the Study of Liver Diseases (AASLD)・2023)肝硬変などのハイリスク集団に対する肝細胞癌サーベイランスは6か月ごとの腹部超音波を基本とし、AFPを併用する閲覧 2026-08-25
  8. 8.Emergency medicine updates: Spontaneous bacterial peritonitis(2023)SBPの腹水好中球基準、培養法、抗菌薬と高リスク例のアルブミン投与を確認した。閲覧 2026-08-25
  9. 9.Acute kidney injury and hepatorenal syndrome in cirrhosis(World Journal of Gastroenterology・2021)2015年のInternational Club of Ascites基準で肝腎症候群1型・2型がそれぞれHRS-AKI・HRS-CKDへ改称され、旧1型が要件としていた血清クレアチニン2.5 mg/dL超という絶対値の閾値が撤廃されたこと、HRS-AKIは48時間以内に血清クレアチニンが0.3 mg/dL以上上昇または7日以内に基準値の1.5倍以上というICA-AKI 2015の定義を満たすうえで、腹水があり、利尿薬中止とアルブミン1 g/kg/日の48時間投与で改善せず、ショック・最近の腎毒性薬剤・器質的腎疾患所見がないことで診断すること、血管収縮薬のなかではテルリプレシンが最も根拠が厚くオクトレオチドやミドドリンより優れることを確認した閲覧 2026-08-25
  10. 10.Acute kidney injury in patients with cirrhosis: Acute Disease Quality Initiative (ADQI) and International Club of Ascites (ICA) joint multidisciplinary consensus meeting(Journal of Hepatology・2024)全文(PMC11193657のHTML)で確認した。HRS-AKIの新しい診断基準を、a) 腹水を伴う肝硬変、b) 48時間以内の血清クレアチニン0.3 mg/dL以上の上昇、または7日以内に基準値から50%以上の上昇、および/または尿量0.5 mL/kg/時以下が6時間以上、c) 臨床的に必要なら適切な容量補充を行ったうえで24時間以内に血清クレアチニン・尿量が改善しないこと、d) AKIの主因として別の説明を強く示す根拠がないこと、の4項目とする。診断の要件としてアルブミンを48時間系統的に投与することには反対を強く推奨し(grade D)、体液量が正常または過剰な患者では48時間の投与が体液貯留を招きテルリプレシンの開始を遅らせうるとしていること。旧来のHRS 1型・2型の語をHRS-AKI・HRS-AKD・HRS-CKDへ置き換えることを強く推奨していること閲覧 2026-09-24