病理学

病理学 · C/50

肝硬変

Liver cirrhosis

応用トピック
消化管出血肝硬変肝臓の良性・悪性腫瘍肝補助療法と肝移植肝腫瘍の疫学・病因・組織・病期・症状・診断原発性・転移性肝腫瘍(症状・診断・治療)原発性・転移性肝腫瘍
疾患
肝硬変肝肺症候群食道静脈瘤
症状
静脈瘤出血腹水脾腫

🧠 全体像:肝硬変はあらゆるの共通最終経路で、慢性傷害→(Ito細胞)の活性化→→リモデリングという一つの機序が、原因を問わず同じ病態(線維化+形成)に収束する。

定義

  • 肝硬変 = びまん性の過程:線維化+正常な肝構築の構造的に異常な(・pseudolobules)への変換。
  • すべてのの共通の最終転帰。

原因

発生機序

  • 長期にわたる慢性細胞死 → 線維化()。
  • 進行例:線維帯がを隔てる。
  • 血管変化:
    • のの消失。
    • 門脈 ↔ 、 ↔ 門脈の血管シャント → 肝機能の障害。
  • がを高圧・高流速のチャネルに変える → 自由な溶質交換ができない。
    • の活性化した(Ito細胞)が沈着させる。
    • 活性化因子:ROS、、サイトカイン(正常時は脂肪・を貯蔵)。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocyte death'>肝細胞死</span><br>(アルコール・ウイルス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biliary disease'>胆道疾患</span>等)"] --> B["ROS・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth factor'>増殖因子</span>・サイトカイン"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='space of Disse'>Disse腔</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stellate cells'>星細胞</span>(Ito細胞)活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen deposition'>コラーゲン沈着</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinusoids'>類洞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fenestration'>窓</span>消失<br>門脈-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic vein'>肝静脈</span>シャント"]
    E --> F["線維帯が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='regenerative nodule'>再生結節</span>を隔てる<br>=肝硬変(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudo-lobules'>偽小葉</span>)"]

形態 — 結節サイズ別

型 結節サイズ 隔壁 典型的原因
型 < 3 mm(約2 mm)、均一 薄い 化学性・アルコール(びまん性の均一な傷害)
型 > 3 mm、不整 広い瘢痕 感染性・(不均一な傷害)

⚠️ 結節の大きさによる分類は、原因の推定にはあまり役立たない。 性は経過とともに性へ移行しうる——肝硬変患者156例のでは、初回生検で性だった75例のうち68例(約91%)が剖検では性で、10年間の転換率は約0.9と推定された。剖検のほうが性と診断しやすいため、この値はやや過大評価の可能性があると著者自身が述べている2。表の対応は典型例の目安であり、確定診断には原因の同定(血清学・既往歴など)を要する。

病期

A)代償性肝硬変(無症状)

  • 腹水、静脈瘤、脳症、黄疸がない。
  • 生存期間中央値12年超。
  • の存在 = 重要な予後因子。
  • ⭐ は、無症状の患者で進行した線維化から代償性肝硬変までを連続体としてまとめた臨床用語で、Baveno VIで定義された。「代償性肝硬変」とどちらを使ってもよいが、同義ではない。一過性によるが10 kPa未満なら(他の臨床・画像所見がなければ)cACLDを除外、10〜15 kPaは示唆、15 kPa超は強く示唆する3。
  • 重症度・予後の評価には分類(ビリルビン・アルブミン・/・腹水・脳症の5項目を各1〜3点で採点し、合計5〜6点がA、7〜9点がB、10〜15点がC)やMELD(ビリルビン・クレアチニン・に基づく)を用いる。2021年には、性別となどを加えて女性のリスクの過小評価に対処し、MELDNaより90日死亡の識別能が高いMELD 3.0が提案された4。

B)非代償性肝硬変(有症状)

  • 腹水、、肝性脳症、黄疸。
  • 生存期間中央値約2年。
  • 基礎原因が除かれればへ戻りうる。Baveno VIIはこれを再代償と呼び、①原因の除去・抑制・治癒(C型肝炎のウイルス排除、B型肝炎の持続的なウイルス抑制、アルコール性肝硬変での持続的な)、②腹水(利尿薬なし)・脳症(治療薬なし)の消失と12か月以上の静脈瘤再出血なし、③アルブミン・・ビリルビンの安定した改善、のすべてを満たすことと合意で定義した3。
  • ⭐ 肝硬変は長く不可逆的な終末像と考えられてきたが、原因を除去すると組織学的な線維化自体が退行しうるという報告が蓄積している。 慢性B型肝炎の無作為化試験の参加者がを5年間継続した追跡では、投与前後で生検を得られた348例のうち304例(87%)で組織学的な改善が、176例(51%)で線維化スコアの1段階以上の退行がみられ、開始時に肝硬変だった96例のうち71例(74%)が肝硬変でなくなった5。

肝硬変の結果

A)実質不全 → 黄疸

  • は複雑 → の鋭敏なマーカー。

B)血管不全 → 腹水(門脈圧亢進)

門脈圧亢進の結果:

  1. 腹水の形成
  2. 脾腫 → (血小板減少)
  3. → (破裂は多い死因)、、
  4. (低下による機能性腎不全)、(による低酸素血症)

C)腫瘍

💡 ポイント: 肝硬変 = +再生、の共通最終経路。型 = アルコール(均一)、型 = ウイルス性・壊死後性。のが線維化を駆動。代償性(無症状、12年超)と(腹水、静脈瘤、脳症、黄疸、約2年)。3つの結果:黄疸(実質性)、腹水/静脈瘤(門脈圧亢進)、。

まとめ

  • 肝硬変はびまん性の線維化と構造的に異常な()への変換で、すべてのの共通最終転帰。
  • 原因は、/MASH、慢性、、代謝性・遺伝性疾患など多岐にわたる。
  • 慢性傷害が(Ito細胞)を活性化しコラーゲンを沈着させ、の窓消失と血管シャントを介して肝機能を障害する。
  • 型(<3mm、均一)はアルコールなど均一な傷害、型(>3mm、不整)はなど不均一な傷害で典型的。
  • 代償性肝硬変(生存期間中央値12年超)と(腹水・静脈瘤・脳症・黄疸を伴い約2年)に分かれる。
  • 結果は3つ:実質不全による黄疸、門脈圧亢進による腹水・静脈瘤、そしてという腫瘍合併症。

出典

  1. 1.A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature(Hepatology・2023)2023年の多学会Delphiコンセンサス(56か国236名、4回の調査)が脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)を各病因を包む上位概念に採用し、NAFLD/NASHをMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)/MASHへ改称して心代謝リスク因子5つのうち1つ以上を診断要件としたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Conversion of Micronodular Cirrhosis into Macronodular Cirrhosis(Hepatology・1983)抄録で確認した。肝硬変に対するプレドニゾンの比較臨床試験に参加した156例の針生検・剖検による追跡で、初回生検で小結節性肝硬変と分類された75例のうち68例が剖検で大結節性肝硬変であり(68/75=約91%はこちらで計算した値)、10年間の転換率は約0.9と推定されたこと、剖検のほうが針生検より大結節性の診断が確実なため転換率をやや過大評価している可能性を著者自身が述べていることを確認した。結節の大きさによる分類は経過とともに変化しうるため、原因の推定には限界がある。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Baveno VII – Renewing consensus in portal hypertension(Journal of Hepatology・2022)PMCの著者最終稿(PMC11090185)で確認した。代償性進行性慢性肝疾患(cACLD、Baveno VIで定義)は進行した線維化と肝硬変の連続体を表す語で、「cACLD」と「代償性肝硬変」はどちらも使えるが同義ではないこと(2.2・2.3)、一過性エラストグラフィによる肝硬度10 kPa未満は他の既知の臨床・画像所見がなければcACLDを除外し、10〜15 kPaは示唆、15 kPa超は強く示唆すること(2.4)、再代償(recompensation)は原因の除去後に肝硬変の構造・機能変化が少なくとも部分的に退行することを意味し、臨床的には①原因の除去・抑制・治癒(C型肝炎のウイルス排除、B型肝炎の持続的なウイルス抑制、アルコール性肝硬変での持続的な断酒)、②腹水(利尿薬なし)・脳症(ラクツロース/リファキシミンなし)の消失と12か月以上の静脈瘤再出血なし、③肝機能検査(アルブミン・INR・ビリルビン)の安定した改善のすべてを満たすことと専門家合意で定義されたこと(7.22・7.23)を確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.MELD 3.0: The Model for End-Stage Liver Disease Updated for the Modern Era(Gastroenterology・2021)米国の肝移植希望者登録データを用いて、女性であることと血清アルブミン値、ビリルビン・ナトリウムおよびアルブミン・クレアチニンの交互作用項をMELDNaに追加したMELD 3.0が、既存のMELDNaよりも90日死亡予測の識別能(C統計量0.869対0.862)に優れ、女性の待機リスクの過小評価という性差の課題にも対処したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Regression of cirrhosis during treatment with tenofovir disoproxil fumarate for chronic hepatitis B: a 5-year open-label follow-up study(The Lancet・2013)抄録で確認した。テノホビルとアデホビルを48週比較した2つの無作為化二重盲検試験の参加者641例のうち585例がテノホビルの非盲検継続投与へ移行し、投与開始時と240週時点の両方で生検を得た348例のうち304例(87%)で組織学的改善(Knodell壊死炎症スコアの2点以上の低下かつ線維化の悪化なし)が、176例(51%)でIshak分類による線維化の1段階以上の退行がみられたこと、開始時に肝硬変(Ishak 5〜6)だった96例のうち71例(74%)が肝硬変でなくなったこと、結論として長期のHBV抑制が線維化・肝硬変の退行をもたらしうるとしたことを確認した。閲覧 2026-08-27