内科学

内科学 · S-34

肝補助療法と肝移植

Liver Replacement and Transplantation

前提:病態
肝硬変肝不全移植拒絶反応(移植片拒絶)
疾患
移植後リンパ増殖性疾患
スコア
MELDスコアミラノ基準

🧠 全体像:は、非可逆的な、、一部の肝悪性腫瘍に対する唯一の根治的肝である。人工肝補助は毒素除去や移植までのになり得るが、肝の合成・代謝・を恒久的に置換しない。

適応と紹介時期

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute liver failure, ALF'>急性肝不全</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompensated cirrhosis'>非代償性肝硬変</span>/選択された腫瘍"] --> B["可逆性と禁忌を同時評価"]
    B --> C["MELD系スコア・臓器不全・腫瘍基準で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='timing'>緊急度</span>"]
    C --> D["心肺・腎・感染・悪性腫瘍評価"]
    C --> E["栄養・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frailty'>フレイル</span>・精神社会・依存症・支援評価"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transplant eligibility (candidacy)'>移植適格性</span>をmultidisciplinary判断"]
    E --> F
    F --> G["献肝/生体部分<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver transplantation'>肝移植</span>"]
例
、ウイルス、、などで延長+脳症
反復腹水、、肝性脳症、、MELD上昇
Cholestatic/代謝性 PBC、PSC、、選択されたなど
腫瘍 ・大血管浸潤がなく、Milan基準など移植施設プロトコル内の1

はMELDだけでなくKing’s College criteriaなどを参考に、早期から移植施設へ搬送する。時点で紹介し、末期まで待たない。King’s College criteriaは満たせば予後不良を強く示すが、での感度は約58%にとどまり、満たさないことは安全の証明にならない2。

⚠️ MELDはへ更新されている。 は(・ビリルビン・クレアチニン・ナトリウム)にと性別を加え、ビリルビンとナトリウム、アルブミンとクレアチニンの作用およびクレアチニン上限3.0 mg/dLを組み込んだ。リスト登録後90日死亡予測のC統計量は0.869(は0.862)と改善し、同じクレアチニンでも女性の腎機能が過小評価されるために生じていたリスト上の不利が是正された3。米国の臓器分配ネットワーク(OPTN)は2023年7月13日からこれを臓器配分に用いている4。旧MELD・も試験では問われうるので、「原初のMELD→→」という並びで覚える。

💡 の数字は1回の前向き研究に由来する。 48例にを行い、「単発なら5 cm以下、多発なら3個以下でいずれも3 cm以下」という基準内だった35例の4年全生存率85%・92%に対し、基準外の13例は50%・59%だった(p=0.01)1。以後、などのや、局所治療で基準内へ縮小させるが施設プロトコルとして広く用いられている。は2024年版で、こうしたtransplant oncologyの展開と適応の拡大を2016年版以降の主要な変化として挙げている5。

肝補助療法

Continuous KRTはAKI・アンモニア・体液管理に、やアルブミン透析は選択例のに用いられるが、ルーチンに移植を代替する確立療法ではない。では低血糖、脳浮腫、感染、出血、腎不全を集中管理し、原因治療を同時に行う。

💡 「機械灌流」は患者を支える装置ではなく、を支える装置である。 人工肝補助が受け手側の時間を稼ぐのに対し、はドナー肝を生理的な状態のまま保ち、冷却を避けて機能を回復・評価する。220件の無作為化試験では、単純冷保存に比べ肝細胞逸脱酵素で測った障害が50%低く、しかも臓器廃棄率は50%低く平均保存時間は54%長かった。胆管合併症・・患者生存には有意差がなかった6。「良い肝をより良くする」のではなく「使えなかった肝を使えるようにする」技術と捉える。 2024もこの装置の登場を2016年版以降の変化のひとつに挙げている5。

移植前評価

活動性制御不能感染、悪性腫瘍、回復不能な重症などは重大な禁忌となる。年齢、肥満、腎機能、、門脈解剖、依存症、、介護・社会支援を個別評価する。アルコール関連肝疾患は固定した期間だけで機械的に除外せず、再飲酒リスクと治療参加を総合する。

⚠️ 「6か月ルール」は絶対ではない。 内科治療に反応しない重症の6か月は約30%で、死亡の大半は2か月以内に起こるため、6か月待つこと自体が致命的になりうる。7施設の前向き研究では、初回発症・Lilleスコア0.45以上・家族の支援あり・重篤な併存症なし・への同意という条件で厳選した例に早期移植を行い、6か月は移植群77±8%対対照群23±8%(p<0.001)、2年でも6.08(p=0.004)と利益が保たれた。ただし選ばれたのは重症入院例の2%未満である7。米国12施設147例の(ACCELERATE-AH、移植前期間の中央値55日)でも移植後は1年94%・3年84%と他の適応と同等だったが、3年で34%に何らかの飲酒、17%に持続的飲酒があり、持続的飲酒は死亡リスクを4.59(p=0.01)で上げた8。「6か月ルールを撤廃した」のではなく「厳選した少数に例外を認めた」と理解する。

術後管理

時期 主な課題
早期 原発性機能不全、血栓、、胆汁漏、感染、急性拒絶
維持免疫抑制 などCNI±mycophenolate±グルココルチコイド;濃度・腎毒性・相互作用監視
長期 、糖尿病・高血圧・脂質異常、骨疾患、感染、・PTLD、原疾患再発

拒絶はだけで断定せず、血流・胆道・感染・薬剤を除外し、必要時で診断する。生ワクチンは原則避け、移植前に可能なを済ませる。

まとめ

  • は、肝硬変、選択されたなどの根治療法である。
  • 肝はであり、移植適応評価を遅らせない。
  • 術後は拒絶だけでなく血管・胆道合併症、感染、腎・代謝・悪性腫瘍を長期管理する。

出典

  1. 1.Liver transplantation for the treatment of small hepatocellular carcinomas in patients with cirrhosis(The New England Journal of Medicine・1996)切除不能の小肝細胞癌を伴う肝硬変48例に肝移植を行った前向き研究。適格基準は「単発なら直径5 cm以下、多発なら3個以下でいずれも直径3 cm以下」であった(のちのミラノ基準)。4年時点の全生存率は75%、無再発生存率は83%。摘出肝の病理で基準内と確認された35例(73%)では4年全生存率85%・無再発生存率92%だったのに対し、基準を超えていた13例(27%)では50%・59%と有意に低かった(全生存p=0.01、無再発生存p=0.002)閲覧 2026-08-25
  2. 2.Ability of King's College Criteria and Model for End-Stage Liver Disease Scores to Predict Mortality of Patients With Acute Liver Failure: A Meta-analysis(Clinical Gastroenterology and Hepatology・2016)急性肝不全の死亡予測でKing's College criteriaの感度がメタ解析で約58%にとどまり、基準を満たさない例でも死亡し得るため単独では移植紹介の可否を決めきれないことを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.MELD 3.0: The Model for End-Stage Liver Disease Updated for the Modern Era(Gastroenterology・2021)MELD 3.0はMELDNa(INR・ビリルビン・クレアチニン・ナトリウム)に女性という変数と血清アルブミンを加え、ビリルビンとナトリウム、アルブミンとクレアチニンの交互作用およびクレアチニン上限3.0 mg/dLを組み込んだモデルで、待機リスト登録後90日死亡予測のC統計量は0.869(MELDNaは0.862)と改善し、女性が受ける待機リスト上の不利も是正した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Updates to Medical Urgency Scoring of Liver Transplant Candidates in Effect(Organ Procurement and Transplantation Network(Health Resources and Services Administration)・2023)OPTNのお知らせ(2023年9月11日付、Wayback保存版2026-06-12)で、米国の肝移植待機患者の医学的緊急度スコアの改訂が2023年7月13日に発効し、12歳以上に用いるMELDの計算式が更新され、成人女性の補正と血清アルブミンの変数が加わったことを確認した閲覧 2026-09-24
  5. 5.EASL Clinical Practice Guidelines on liver transplantation(Journal of Hepatology(European Association for the Study of the Liver)・2024)肝移植の領域はこの10年で複数の面から変わった——適応の拡大、acute-on-chronic liver failure症例への移植、transplant oncologyの展開、心停止後提供(donation after cardiac death)の利用、新しい術式、待機リスト上の優先順位付けである。加えて臓器灌流装置の登場、新しい型の拒絶の認識、小児から成人への移行への配慮が移植後管理を改善した。本ガイドラインは2016年版以降の変化に焦点を絞っている閲覧 2026-08-25
  6. 6.A randomized trial of normothermic preservation in liver transplantation(Nature・2018)肝移植220件の無作為化試験で、従来の単純冷保存と比べ常温機械灌流(normothermic machine perfusion)は、肝細胞逸脱酵素で測ったグラフト障害が50%低く、しかも臓器廃棄率は50%低く平均保存時間は54%長かった。胆管合併症、グラフト生着、患者生存には有意差がなかった閲覧 2026-08-25
  7. 7.Early liver transplantation for severe alcoholic hepatitis(The New England Journal of Medicine・2011)重症アルコール性肝炎は通常6か月の禁酒後でなければ肝移植の対象とされないが、内科治療に反応しない例の6か月生存率は約30%で、死亡の大半は2か月以内に起こる。7施設で、初回発症かつLilleスコア0.45以上(内科治療無反応)または急速に肝機能が悪化した例を厳選し、家族の支援・重篤な併存症なし・断酒への同意を条件に早期移植を行った。選ばれたのは重症アルコール性肝炎入院例の2%未満、施設の使用グラフトの2.9%にすぎない。6か月累積生存率は早期移植群77±8%対非移植対照群23±8%(p<0.001)で、この利益は2年の追跡でも維持された(ハザード比6.08、p=0.004)。飲酒を再開したのは3例(移植後720日・740日・1140日)閲覧 2026-08-25
  8. 8.Outcomes of Early Liver Transplantation for Patients With Severe Alcoholic Hepatitis(Gastroenterology・2018)米国12施設で2006〜2017年に禁酒6か月未満で肝移植を受けた重症アルコール性肝炎147例の後ろ向き研究(ACCELERATE-AH)。移植前の禁酒期間の中央値は55日、Lilleスコア中央値0.82、MELD-Na中央値39。移植後の累積生存率は1年94%(95%CI 89〜97%)、3年84%(95%CI 75〜90%)で他の適応と同等だった。退院後は72%が断酒、18%がslip、11%が持続的飲酒。何らかの飲酒の累積発生率は1年25%・3年34%、持続的飲酒は1年10%・3年17%。持続的飲酒は死亡リスク上昇と関連した(ハザード比4.59、p=0.01)閲覧 2026-08-25