内科学

内科学 · S-33

自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎

Autoimmune Liver and Biliary Diseases

前提:病態
急性・慢性肝炎
前提:正常
消化腺:肝臓自然自己免疫と病的自己免疫
疾患
原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎自己免疫性肝炎
検査値
肝生検抗LKM1抗体抗SLA抗体抗平滑筋抗体
スコア
国際自己免疫性肝炎グループ簡易スコア

🧠 全体像:は炎症、は小型破壊、は外胆管の線維化狭窄を主体とする。パターン、Ig/自己抗体、組織、胆管画像を組み合わせて鑑別する。

三疾患の比較

項目 AIH PBC PSC
主なパターン /優位 優位のcholestasis 優位、反復胆管炎
免疫所見 IgG高値、/;2型でanti-LKM1 AMA、PBC特異的、IgM高値 特異的自己抗体なし;p-は非特異的
診断の中心 他原因除外+の 上昇、AMA/PBC特異抗体、組織のうち通常2項目 で多発狭窄・拡張、beading
関連 各種自己免疫疾患 、 、とくに
主要長期リスク 肝硬変、肝不全 肝硬変、骨粗鬆症 、、大腸癌、肝硬変

⚠️ PBCは2015年に「」から「」へ改称された。 略号PBCはそのままで、primary biliary cirrhosis が primary biliary cholangitis になった。きっかけは2014年5月の Monothematic Conference(ミラノ)で患者団体代表が「不正確さの是正」と「cirrhosisという語の烙印の除去」を求めたことで、翌2015年に主要な消化器・肝臓病誌へ同時掲載された声明として合意が示された。根拠はそのものが変わったことにある——診断時に肝硬変のある患者はもともと多数派ではなく、現在はUDCA治療を受けた患者の3人に2人が一般人口と変わらない予後をもち、肝硬変に至るのは少数にとどまる1。古い教科書・過去問の「」は同じ病気である。 改称は病名だけで、や治療は変わっていない。

💡 胆管の狭窄を見たら関連硬化性胆管炎を鑑別に置く。 PSC、、と紛らわしく、こちらはグルココルチコイドがするので取り違えの代償が大きい。日本の臨床診断基準は2020年に改訂され、関連硬化性胆管炎1,034例と鑑別疾患447例(143例、PSC 157例、147例)による多施設検証で感度99.0%と、2012年版の89.1%を有意に上回った2。の併存が診断の手がかりになる。

診断flow

flowchart TD
    A["原因不明の肝障害"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular (injury) pattern'>肝細胞障害型</span>優位"}
    B -->|"はい"| C["IgG・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antinuclear antibody'>ANA</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior mesenteric artery'>SMA</span>/LKM1+ウイルス/薬剤除外"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver biopsy'>肝生検</span>でAIHを確認"]
    B -->|"いいえ:cholestatic"| E["超音波で閉塞除外+AMA"]
    E --> F{"AMA陽性+PBC像"}
    F -->|"はい"| G["PBC"]
    F -->|"いいえ/大型胆管疑い"| H["MRCP"]
    H --> I["PSC/二次性硬化性胆管炎を鑑別"]

治療

AIH

/または非肝硬変例ので寛解導入し3、を併用・維持に用いる。TPMT/NUDT15、、肝機能を確認する。不耐・不応例ではmycophenolate mofetilなどを専門的に用いる。/とIgG正常化を目標とし、急性重症例で1〜2週以内に反応しない、または脳症を来した場合は緊急移植評価を行う。

💡 は「肝硬変が無いこと」が条件である。 でを減らせるのが利点だが、肝硬変では門脈大循環シャントのために全身へ回り、利点が消えるうえの懸念もある。AIHは無症候から広範なを伴うまで初診時の幅が大きく、は2025年版で成人・小児双方の診断と管理、variantや特殊型、AIH由来肝硬変での・とまでを更新した3。

PBC

(UDCA)13〜15 mg/kg/dayを第一選択とし、約12か月の生化学反応でリスクを再評価する41。不十分例では地域の承認と肝機能に応じ、作動薬/や他のを専門医が選ぶ。掻痒はを第一選択とし、UDCAなど他薬との服用間隔を空ける。、骨量、甲状腺を監視する。

💡 PBCのは「増えたが、まだ代替指標での承認」である。 2017の時点で認可薬はUDCAとオベチだけで、とはだった4。その後、承認の顔ぶれは国ごとに変わった。欧州ではオベチの販売承認が2024年8月30日に取り消され5、作動薬のエラフィブラノール(2024年9月)6とセラデルパル(2025年2月)7がを得た。米国でもオベチは、市販後試験が臨床的有用性を検証できず早期病期の投与例でと死亡が過剰だったことから、2025年11月24日付で承認が取り消された8。日本の2023年診療ガイドラインでは、は併用(推奨度1、エビデンスの強さB。PBCには保険適用外)で、オベチは挙がっていない9。いずれにせよは代替指標によるの段階にある。ただしとAASLDの2026年合意文書は、承認の根拠であるなどの肝生化学検査と非侵襲的線維化指標がには検証済みの有効性エンドポイントと認められていないこと、実臨床エビデンスとの標準化が欠けていることを本承認への障壁として明記している10。つまり「が下がる」ことと「移植・死亡が減る」ことは、まだ同義ではない。

PSC

を診断の第一選択とし、は優性/臨床的に重要なの・拡張などに限る11。すべての患者で進行を確実に止める薬はない。UDCA 13〜23 mg/kg/dayを選択的に試す場合も、高用量は避け、12か月で意味ある反応がなければ継続しない12。細菌性胆管炎を抗菌薬とで治療し、・と定期を行う。進行例はを検討する。

⚠️ PSCで高用量UDCAを使わないのは「効かないから」ではなく「害があったから」である。 28〜30 mg/kg/dayとを比べた150例の試験は無益性のため6年で中止された。UDCA群で・はより低下した(p<0.01)が、主要エンドポイント(肝硬変・静脈瘤・・・死亡)到達はUDCA群39%対プラセボ群26%で、調整後の危険はUDCA群が2.3倍(p<0.01)、重篤な有害事象も63%対37%(p<0.01)と多かった13。肝機能検査が改善したのに予後は悪化したという、代替指標を信じすぎることの典型例として覚える。

まとめ

  • AIHはIgG・自己抗体・、PBCはAMAと小胆管、PSCはの多発狭窄で捉える。
  • AIHはグルココルチコイド+、PBCはUDCAが基本である。
  • PSCにルーチンや高用量UDCAを用いず、・・大腸癌を監視する。

出典

  1. 1.Changing Nomenclature for PBC: From 'Cirrhosis' to 'Cholangitis'(The American Journal of Gastroenterology・2015)2014年5月のEASL Monothematic Conference(ミラノ)で英独の患者団体代表が「不正確さの是正」と「cirrhosisという語の烙印の除去」を求めたことを契機に、primary biliary cirrhosis を primary biliary cholangitis へ改称する合意が形成され、2015年に主要な消化器・肝臓病誌へ同時に掲載された。略号PBCは維持された。EASLのガイドライン委員・査読者15名では100%が改称に賛成し100%が略号PBC維持に投票、60%がprimary biliary cholangitisを選んだ。改称の根拠は、Sheila Sherlockが1959年に既に指摘したとおり多くの患者は診断時に肝硬変ではないこと、そしてウルソデオキシコール酸(13〜15 mg/kg/日)治療により診断された患者の3人に2人は一般人口と変わらない予後をもち、肝硬変に至るのは少数にとどまるという現在の自然史にある閲覧 2026-08-25
  2. 2.Multicenter Validation Study of the Clinical Diagnostic Criteria for IgG4-Related Sclerosing Cholangitis 2020 in Japan(Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences・2026)IgG4関連硬化性胆管炎1,034例と、膵癌143例・原発性硬化性胆管炎157例・胆管癌147例を含む鑑別疾患447例を用いた多施設検証研究で、2020年版臨床診断基準の感度は99.0%と2012年版の89.1%を有意に上回った(p<0.001)閲覧 2026-08-25
  3. 3.EASL Clinical Practice Guidelines on the management of autoimmune hepatitis(Journal of Hepatology(European Association for the Study of the Liver)・2025)自己免疫性肝炎は原因不明の慢性肝疾患で、年齢・性・民族を問わず発症し、初診時の臨床像は無症候例から広範な肝細胞壊死を伴う急性肝不全まで大きく幅がある。2025年版EASLガイドラインは成人・小児双方の診断と管理、variantや特殊型の管理、AIHに伴う肝硬変の管理(門脈圧亢進症と肝細胞癌のサーベイランス、肝移植を含む)を更新した閲覧 2026-08-25
  4. 4.EASL Clinical Practice Guidelines: The diagnosis and management of patients with primary biliary cholangitis(Journal of Hepatology(European Association for the Study of the Liver)・2017)PBCは無治療なら末期の胆汁性肝硬変に至る慢性炎症性・自己免疫性の胆汁うっ滞性肝疾患で、診断は通常、胆汁うっ滞型の肝機能検査異常と血中抗ミトコンドリア抗体の組み合わせによる。臨床像と経過は多様なのでリスク層別化が重要である。薬物治療としては認可薬(ウルソデオキシコール酸とオベチコール酸)と適応外使用の薬剤(フィブラート系、ブデソニド)がある閲覧 2026-08-25
  5. 5.Ocaliva (obeticholic acid): EPAR(European Medicines Agency・2025)EMAの製品ページで、Ocaliva(オベチコール酸)の欧州連合における販売承認が2024年8月30日の欧州委員会実施決定で取り消されたこと(Revoked)を確認した閲覧 2026-09-24
  6. 6.Iqirvo (elafibranor): EPAR(European Medicines Agency・2024)EMAの製品ページで、Iqirvo(エラフィブラノール)がPBCの成人に用いられ、2024年9月19日に欧州連合全域で有効な条件付き販売承認を得たことを確認した閲覧 2026-09-24
  7. 7.Lyvdelzi (previously Seladelpar Gilead) (seladelpar): EPAR(European Medicines Agency・2025)EMAの製品ページで、セラデルパル(Seladelpar Gilead、2025年4月14日にLyvdelziへ改名)が2025年2月20日に欧州連合全域で有効な条件付き販売承認を得たことを確認した閲覧 2026-09-24
  8. 8.Intercept Pharmaceuticals, Inc., et al.; Withdrawal of Approval of New Drug Application for OCALIVA (Obeticholic Acid) Tablets, 5 Milligrams and 10 Milligrams, and Three Abbreviated New Drug Applications for Obeticholic Acid Tablets, 5 Milligrams and 10 Milligrams(Federal Register(U.S. Food and Drug Administration)・2025)官報本文で、2016年にPBCへ迅速承認されたOcaliva(オベチコール酸)について、FDAが2025年8月27日に「市販後試験が臨床的有用性を検証せず、ベースラインで早期病期だった投与例で肝移植と死亡が過剰だった」と企業へ通知し、2025年11月24日付で新薬承認(および後発品3件)を取り消したことを確認した閲覧 2026-09-24
  9. 9.原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2023年)(厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班・2023)本文PDFで、UDCA(通常1日600 mg、効果不十分なら900 mgまで増量可)が第一選択であること、UDCAで生化学的治療反応が得られず予後不良が予想される症例にはベザフィブラート併用を検討する(推奨度1、エビデンスの強さB、2023追補)こと、ベザフィブラートは国内では高脂血症にのみ保険適用があり高脂血症を合併しないPBCには臨床研究として投与するのが適切とされていることを確認した。治療薬の項にオベチコール酸は挙がっていない閲覧 2026-09-24
  10. 10.EASL-AASLD Delphi consensus statement on surrogate endpoints and real-world evidence in primary biliary cholangitis(Journal of Hepatology(European Association for the Study of the Liver / American Association for the Study of Liver Diseases)・2026)PBCでは3剤の二次治療薬が条件付き承認を得たが、本承認への移行は難航している。理由は、(1)肝生化学検査と非侵襲的線維化指標という代替指標が規制当局に有効性の検証済みエンドポイントとして認められていないこと、(2)実臨床データ・実臨床エビデンスの統合が限られること、(3)患者報告アウトカムの標準化がないこと。62名のパネルによる修正Delphi法で16のステートメントと42の勧告が合意された閲覧 2026-08-25
  11. 11.Role of endoscopy in primary sclerosing cholangitis: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) and European Association for the Study of the Liver (EASL) Clinical Guideline(Journal of Hepatology(European Society of Gastrointestinal Endoscopy / European Association for the Study of the Liver)・2017)PSCの一次診断法としては、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)より磁気共鳴胆管造影(MRC)を優先すべきである(中等度の質のエビデンス、強い推奨)。MRCと肝生検を行っても判定できない場合や禁忌の場合に限りERCPを考慮してよく、ERCPの危険をサーベイランス・治療上の利益と秤にかける必要がある(低い質のエビデンス、弱い推奨)閲覧 2026-08-25
  12. 12.EASL Clinical Practice Guidelines on sclerosing cholangitis(Journal of Hepatology(European Association for the Study of the Liver)・2022)原発性・二次性いずれの硬化性胆管炎も管理が難しく、本ガイドラインは議論のある論点(診断手技、予後評価、合併症の早期発見、最適な診療経路、薬物・内視鏡・外科の治療選択)について成人・小児双方で実践的な指針を示した閲覧 2026-08-25
  13. 13.High-dose ursodeoxycholic acid for the treatment of primary sclerosing cholangitis(Hepatology・2009)PSC成人150例に高用量ウルソデオキシコール酸(28〜30 mg/kg/日)またはプラセボを投与した長期無作為化二重盲検試験。無益性のため6年で中止された。治療中のAST・ALPはUDCA群でより低下した(p<0.01)が、肝機能検査の改善はエンドポイント減少に結びつかなかった。試験終了時点で主要エンドポイント(肝硬変・静脈瘤・胆管癌・肝移植・死亡)到達はUDCA群30例(39%)対プラセボ群19例(26%)で、ベースライン調整後の主要エンドポイントの危険はUDCA群でプラセボ群の2.3倍(p<0.01)、死亡・移植・移植登録基準到達では2.1倍(p=0.038)だった。重篤な有害事象もUDCA群63%対プラセボ群37%(p<0.01)と多かった閲覧 2026-08-25