病理学

病理学 · A/37

移植拒絶反応(移植片拒絶)

Rejection of transplants

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
腎移植と腎代替療法肝補助療法と肝移植自家・同種造血幹細胞移植移植の基本概念・脳死・適応・免疫抑制
疾患
移植片対宿主病
スコア
Banff分類

🧠 全体像:はで機序が変わる——は既存抗体による即時の血栓症、急性は新規のT細胞・抗体反応で治療反応性がある、慢性は低グレードの持続的傷害が血管内膜を厚くして不可逆的な虚血に至る。

拒絶の基盤

とドナー()は異なるMHC分子をもつ。死につつある細胞が内で処理されるため、ドナー抗原が異物として認識され、免疫応答が引き起こされる。

機序

  • T細胞介在性細胞傷害 — のCD8⁺T細胞がドナーのMHC-Iを認識 → CTLへ分化 → 細胞を殺す。
  • 抗体介在性拒絶 — のが遊離したドナー抗原を取り込む → MHC-IIでCD4⁺T細胞に提示 → /IL-5 → B細胞 → 形質細胞 → 抗抗体。
  • — ドナーMHC-IIをCD4⁺が認識 → Th1 → TNF+IFN-γ。

💡 「直接経路/間接経路」は抗原の見え方の区別であって、CD8とCD4の区別ではない。 直接経路はT細胞が由来の(パッセンジャー白血球)上の無傷のドナーMHCをそのまま認識する経路、間接経路は自身のが自己MHC上に提示したドナー由来ペプチドを認識する経路である。では直接・間接いずれの経路でもCD4⁺・CD8⁺の両方が活性化して急性拒絶を起こしうる。心・腎移植の早期急性拒絶は主にドナーMHC-IIを直接認識するCD4⁺T細胞が起点になる。一方、間接経路で活性化したT細胞は単独で、またはB細胞の産生を助けてを担うという状況証拠が強い1。

拒絶の種類

型 時期 機序 病理
数分〜数時間 既存の 急性動脈炎、血栓症、 → チアノーゼ様で弛緩した
急性 数日〜数週 細胞性(T細胞)±液性(抗体) /、
慢性 数か月〜数年 低グレードの免疫傷害、サイトカイン 内膜の増殖、、線維化・萎縮
  • — 既存の抗体(過去の輸血・移植・妊娠)→ 補体 → 広範な血栓症と。は術中に機能不全に陥る。
  • 急性 — 細胞性:CD4/CD8浸潤、、。液性: → 、内皮壊死、フィブリン。免疫抑制の強化に反応する。
  • 慢性 — 上昇(腎)。血管優位:内膜増殖、内腔狭小化 → 虚血。最終的に腎・尿細管の萎縮、糸球体の。

⭐ 急性拒絶は「細胞性(T細胞性)」と「」の2種として整理し直されている。 上表の「急性=細胞性±液性」という書き方は骨格として今も正しいが、AMRは(DSA)・症・C4d染色の所見で定義される独立した病型として扱われる。この診断枠組みは1990年代に始まったBanff分類(腎移植病理の国際共通言語)としておよそ2年ごとに国際会議で改訂され続けており、2013年の第12回会議でC4d染色陰性のAMRを含める基準改訂が行われ2、2019年会議でT細胞関連型拒絶(TCMR)とAMR双方の基準が明確化され3、2022年会議(最初のBanff分類から30年の節目)ではDSA陽性だが確定基準に届かない「probable AMR」とDSA陰性・C4d陰性の症という2つの表現型がさらに区分された4。・急性・慢性という時間軸による3分類は今も正しい骨格で、現代の拒絶診断はこれに「T細胞関連型かAMRか」という軸を重ねて読む。

移植片生存の改善

  • 適合と(MHC-IとIIの両方が一致すると最良。腎で最も影響が大きい)。
  • 免疫抑制 — 、(/)、(MMF)。以外の全に用いる。リスク:ウイルス駆動の悪性腫瘍増加(EBVリンパ腫、HPVによる扁平上皮癌、HHV8による)。
  • 抗CD3(T細胞抑制)、(B7–CD28)→ ・アポトーシス。

骨髄移植

💡 ポイント: = 既存抗体、数分、血栓症(ABO/不適合)。急性 = T細胞()±抗体、数日〜数週、治療可能。慢性 = +線維化、数か月〜数年、不可逆的。 → GVHD(ドナーT細胞が宿主の皮膚・肝・腸を攻撃)。

まとめ

  • 拒絶はドナーのMHC抗原がに異物として認識されることで起こる。
  • 機序はCD8⁺による細胞傷害、CD4⁺T細胞の補助による抗抗体の産生、Th1によるの3つに整理される。抗原認識の経路としては、ドナーMHCをそのまま認識する直接経路と、自己のが提示したドナー由来ペプチドを認識する間接経路(・抗体産生に関与)がある。
  • 拒絶は既存抗体による数分〜数時間の血栓症、急性拒絶は数日〜数週で治療反応性がある、はと線維化を伴い不可逆的。
  • 適合・と免疫抑制療法(など)でを改善する。
  • 免疫抑制はウイルス駆動の悪性腫瘍(リンパ腫、関連扁平上皮癌、HHV8による)のリスクを高める。
  • では拒絶に加えが重要な合併症となる。

出典

  1. 1.Allorecognition by T Lymphocytes and Allograft Rejection(Frontiers in Immunology・2016)全文(Europe PMC、PMC5155009)で、直接経路はレシピエントT細胞がドナー細胞上の無傷の同種MHC分子を認識する経路、間接経路はレシピエントの抗原提示細胞が自己MHC上に提示したドナー由来ペプチドを認識する経路であること、皮膚移植では直接・間接の両経路で活性化したCD4陽性・CD8陽性T細胞がともに急性拒絶を起こしうること、心・腎移植の早期急性拒絶は主にドナーMHCクラスIIを直接認識するCD4陽性T細胞が起点となること、間接経路で活性化したT細胞が単独で、またはB細胞の同種抗体産生を誘導して慢性拒絶を担うという状況証拠が強いことを確認した閲覧 2026-09-23
  2. 2.Banff 2013 meeting report: inclusion of c4d-negative antibody-mediated rejection and antibody-associated arterial lesions(American Journal of Transplantation・2014)2013年の第12回Banff会議が、C4d沈着が検出されない抗体関連型拒絶(C4d陰性ABMR)の診断基準を定めてBanff分類を改訂したことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.The Banff 2019 Kidney Meeting Report (I): Updates on and clarification of criteria for T cell- and antibody-mediated rejection(American Journal of Transplantation・2020)Banff 2019が慢性活動性T細胞関連型拒絶(CA TCMR)・境界病変・抗体関連型拒絶の基準の明確化と精緻化を行ったこと、C4d染色陰性かつドナー特異的抗体が検出されない微小血管炎症の症例では分子診断の価値が検討されたことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.The Banff 2022 Kidney Meeting Report: Reappraisal of microvascular inflammation and the role of biopsy-based transcript diagnostics(American Journal of Transplantation・2024)Banff 2022会議後の調査で、ドナー特異的抗体(DSA)陽性で抗体関連型拒絶(AMR)の組織所見を一部持つが確定基準に達しない「probable AMR」と、DSAで説明できない微小血管炎症を指す「Microvascular inflammation, DSA-negative and C4d-negative」という2つの表現型の区分に合意が得られたこと、2022年の会議が最初のBanff分類から30年の節目にあたることを確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.National Institutes of Health Consensus Development Project on Criteria for Clinical Trials in Chronic Graft-versus-Host Disease: I. The 2014 Diagnosis and Staging Working Group Report(NIH Consensus Development Project(Biology of Blood and Marrow Transplantation誌)・2015)慢性GVHDの診断的所見・特徴的所見を臓器別に定め、皮膚・口腔・眼・消化管・肝・肺・関節などを0〜3点でスコアし、全身重症度を軽症・中等症・重症に判定する枠組みを示したことを確認した。2026-09-23の再確認では全文を取得できず、抄録で2014年版が2005年版の枠組みを維持しつつ口腔・眼・生殖器・肺の診断基準を改訂したことを確認した閲覧 2026-08-27