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慢性GVHDのNIHコンセンサス基準

NIH consensus criteria for chronic GVHD

別名
NIHコンセンサス基準NIH基準(慢性GVHD)
臓器系
血液免疫・膠原病
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 H-34:同種造血幹細胞移植内科学 S-45:自家・同種造血幹細胞移植
構成:症状
口腔乾燥涙液分泌低下嚥下障害体重減少労作時呼吸困難関節拘縮
構成:検査値
総ビリルビンALTALP

🧠 全体像は、のうち慢性GVHDを対象に2つの別の仕事をする基準である。①診断——他の検査なしに単独で診断を確定できる「」と、生検・検査による裏づけが要る「」を区別し、慢性GVHDと言ってよい条件を決める。②——皮膚・口腔・眼・消化管・肝・肺・関節と筋膜・性器の8臓器を0(なし)〜3(重症)でスコア化し、罹患臓器数と各臓器の最高スコアの組合せから軽症・中等症・重症を決める。⚠️ この基準の最大の転換点は移植後100日という時間の境界を捨てたことである——急性か慢性かは発症日ではなく臨床像で決まり、100日以降でもの所見のみなら「」、慢性GVHDの所見にの所見が併存すれば「」と呼ぶ1の臓器stage・全身gradeを判定するとは対になる基準で、の採点はに委ねる

目的と適用場面

内容
目的 慢性GVHDのを標準化し、臓器別重症度を0〜3でスコア化して全身重症度(軽症/中等症/重症)を決める
対象 後に慢性GVHDを疑う、または発症した患者
使う場面 診断の確定、導入の判断、での重症度登録・治療効果判定
評価しないもの で評価)

もともとの対象患者を標準化する目的で作られた基準である1

診断の枠組み

診断は、他の検査なしに単独で診断を確定できるが1つあるか、生検・検査(など)による裏づけと感染症・薬剤性変化など他疾患の除外を要するが1つあるかのどちらかで成立する。診断に時間制限は無い1

確認できた範囲を臓器別に示す。

臓器 (単独で診断を確定できる) (生検・検査による裏づけが必要)
皮膚 )、
口腔 、潰瘍、
(該当所見なし) 新規発症の乾燥・・疼痛、
消化管(食道) 、上〜の狭窄
生検で確認されたの臨床診断は他臓器にがあるときに限り診断的として扱う 胸部CTでの・気管支拡張
関節と筋膜 筋膜炎、筋膜炎・硬化による/こわばり 筋炎・
外陰・膣(性器) (女性)、(男性) びらん、、潰瘍

肝(・ALT・ALPの上昇)は単独ではにもにも数えない。他臓器の所見で慢性GVHDと診断されたあとに、重症度スコアの対象として肝所見を評価する位置づけである2の分類は爪・頭髪と体毛も独立の項目として立てるが、重症度スコアでは爪・頭髪は皮膚scoreの「その他所見」として扱われ独立採点されない23

構成要素と配点

診断が確定した患者について、8臓器それぞれを0〜3点でスコア化する。⚠️ 各臓器で「GVHD以外の原因で完全に説明できる異常」は除外し、複数の原因が重なった異常はGVHDによるものとして採点する3

皮膚

による評価とによる評価の2系統があり、不一致のときは高い方の点数を採用する3

0点 1点 2点 3点
に皮疹なし 1〜18% 19〜50% 50%超
0点 2点 3点
なし 表在性硬化(つまめる) 深部硬化(つまめない)・可動域制限・潰瘍のいずれか

の評価には1点にあたる段階が定義されておらず、0点の次は2点から始まる3

口腔

0点 1点 2点 3点
無症状 軽度の症状。所見はあるが経口摂取への影響は目立たない 中等度の症状。所見があり経口摂取が一部制限される 高度の症状。所見があり経口摂取が大きく制限される

自体はに分類される所見で、口腔scoreの症状の一つとして評価に含まれる3

0点 1点 2点 3点
無症状 軽い乾燥感でADLに影響なし(の使用が1日3回以下) 中等度の乾燥感でADLに一部影響(が1日3回超、またはが必要。によるは無い) 高度の乾燥感でADLに大きく影響(疼痛緩和のための特殊なが必要)、またはのため就労不能、またはによる

消化管

0点 1点 2点 3点
無症状 症状はあるが3ヶ月間の体重減少5%未満 体重減少5〜15%を伴う症状、または日常生活に大きな支障のない中等度の下痢 体重減少15%超で経口栄養補助が必要、またはを要する、または日常生活に大きく支障する高度の下痢

嚥下障害・狭窄()やの要否(score 3の基準)に直結する症状として評価対象に含まれる。

ALTALP倍数で判定する。2014年改訂でASTは判定対象から除外された2

0点 1点 2点 3点
正常で、ALTまたはALPがULNの3倍未満 正常でALTがULNの3〜5倍、またはALPがULNの3倍以上 上昇(3 mg/dL以下)、またはALTがULNの5倍超 上昇が3 mg/dL超

症状スコアとFEV1(%予測値)スコアの2系統があり、不一致のときはFEV1スコアを優先して最終的な肺scoreとする23

0点 1点 2点 3点
無症状 1階分の昇降で 平地歩行で 安静時の・酸素投与を要する
0点 1点 2点 3点
FEV1 80%以上 FEV1 60〜79% FEV1 40〜59% FEV1 39%以下

関節と筋膜

0点 1点 2点 3点
無症状 四肢の軽いつっぱり感。可動域は正常〜軽度低下でADLに影響なし 四肢のつっぱり感、または筋膜炎による紅斑・。可動域が中等度に低下しADLに軽度〜中等度の制限 を伴い可動域が高度に低下。ADLに大きな制限(靴ひもを結ぶ・ボタンをかける・着替えなどが自分でできない)

外陰・膣(性器)

0点 1点 2点 3点
所見なし 軽度の所見(女性は診察時の不快感の有無を問わない) 中等度の所見(診察時の不快感を伴う症状があることがある) 高度の所見(症状の有無を問わない)

全身重症度の判定

罹患臓器数(score 1以上の臓器がいくつあるか)と各臓器の最高scoreの組合せで軽症・中等症・重症を決める。単純な最高scoreの読み替えではない2

重症度 条件
軽症 罹患臓器が1〜2個で、いずれもscore 1以下。かつ肺score 0
中等症 罹患臓器が3個以上でいずれもscore 1以下、または肺以外の1臓器以上でscore 2、または肺score 1
重症 いずれかの臓器でscore 3、または肺score 2〜3

⚠️ 肺はを反映して特別扱いされる。 罹患臓器数にかかわらず、肺score 1だけで全身「中等症」に、肺score 2以上だけで全身「重症」になる2

解釈とカットオフ

重症度 目安
軽症 での対応を検討できる範囲
中等症 の開始を検討する
重症 を要し、不可逆的な臓器障害(肺のなど)のリスクが高い

⭐ 全身重症度が中等症〜重症の慢性GVHDではの開始を検討する、というのが基準文書自体の推奨である1

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 版が2つある。 2005年の初版(Filipovich ら)と、2014年の改訂版(Jagasia ら、2015年公表)である。改訂では、皮膚のが加わり、眼のの数値がスコア用紙から削除され(は両版とものままである)、肝の重症度判定からASTが除外されてビリルビン・ALT・ALPのみになり、肺の重症度判定はDLCOを使わずFEV1単独に単純化された12。文献のscoreやを引用・比較するときはどちらの版によるか確認する。

⚠️ 各臓器の異常はGVHD以外の原因を除外してから採点する設計になっている。 肝病変では(A・B・C・E型、CMV、EBV、)、に伴う胆汁うっ滞などの除外が必要で、を欠く症例で組織学的確認をせずのみで診断すると・不適切な治療のリスクが高まる4

⚠️ 肺・眼はいずれも症状に基づく項目を持つ。 肺は「的な重症度」と「FEV1」の2系統をとり不一致時はFEV1を優先し、眼は「の使用回数」という患者申告に依存する基準で採点する。この優先順位の設計自体、症状申告に基づく採点がぶれやすいことを踏まえたものである。肺の評価はさらに呼吸筋の萎縮・胸郭拘束・感染など重なり合う病態で複雑になる4

⚠️ 本来はの対象患者を標準化する目的で作られた基準である1。個々の患者のや治療反応の判定に転用する際は、この設計上の前提を踏まえる。

まとめ

  • は、慢性GVHDの①診断()と②(8臓器を0〜3でスコア化し軽症/中等症/重症を決める)という2つの役割を持つ。
  • 発症日ではなく臨床像で急性・慢性を分類するのがこの基準の転換点で、という概念はここから生まれる。
  • 肝所見(ビリルビン・ALT・ALP)は単独では診断できず、他臓器の診断的・と組み合わせて重症度スコアの対象になる。
  • 皮膚はの高い方、肺は症状とFEV1の不一致時はFEV1を、それぞれ最終scoreとして採用する。
  • 全身重症度は罹患臓器数と最高scoreの組合せで決まり、肺だけは罹患臓器数によらず特別扱いされる(score 1で中等症、score 2以上で重症)。
  • 2005年初版と2014年改訂版があり、眼・肝・肺の判定基準が変わっている。他病態の除外や症状ベースの項目の主観性を踏まえ、の対象患者標準化という設計目的を意識して使う。

出典

  1. 1.National Institutes of Health Consensus Development Project on Criteria for Clinical Trials in Chronic Graft-versus-Host Disease: I. Diagnosis and Staging Working Group Report(NIH Consensus Development Project(Biology of Blood and Marrow Transplantation誌)・2005)2005年版の抄録から、この基準が診断基準の標準化・臓器別0〜3点スコア・全身重症度(軽症/中等症/重症)の3つの機能を持つこと、診断的所見1つまたは特徴的所見1つ(生検・検査で確認)で診断できること、診断に時間制限を設けないこと、急性・慢性GVHDを古典的急性/持続性・再燃性・遅発性急性/古典的慢性/オーバーラップ症候群の分類とすること、中等症〜重症の全身重症度で全身療法の開始を検討する推奨であることを確認した。臨床試験の対象患者標準化を目的として作られた基準であることはタイトル自体から確認した。PubMed収載の抄録のみ取得でき、本文(Biol Blood Marrow Transplant誌)は購読制のため未取得。閲覧 2026-08-04
  2. 2.National Institutes of Health Consensus Development Project on Criteria for Clinical Trials in Chronic Graft-versus-Host Disease: I. The 2014 Diagnosis and Staging Working Group Report(NIH Consensus Development Project(Biology of Blood and Marrow Transplantation誌)・2015)本文(PMC全文)から、2014年改訂版のTable 1(診断的所見・特徴的所見の臓器別一覧。肝の行は存在するが診断的所見・特徴的所見のいずれにも該当が無く、本文が「慢性GVHDに特徴的または診断的な肝所見は無い」と明記していること、眼の診断的所見も該当が無く4所見はいずれも特徴的所見であること、肺の特徴的所見は胸部CTのエアトラッピング・気管支拡張であること、皮膚の特徴的所見は脱色素と丘疹鱗屑性病変の2つであること)、肝の重症度判定からASTが除外されビリルビン・ALT・ALPのみになったこと、肺の重症度判定がFEV1単独に単純化されDLCOを使わなくなったこと、2014年改訂でSchirmer試験の数値がスコア用紙から削除されたこと(KCSは両版とも特徴的所見であること)、全身重症度(軽症/中等症/重症)の判定アルゴリズムと肺スコアが罹患臓器数によらず特別扱いされること(肺score1のみで中等症、肺score2以上で重症)を確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Chronic GVHD Assessment and Scoring Form (LTF003)(Fred Hutchinson Cancer Center / Seattle Cancer Care Alliance・2015)2014年NIH基準に基づく実臨床の採点用紙(本文3ページを直接取得)から、8臓器それぞれのscore 0〜3の具体的な数値基準(皮膚のBSA%と硬化性変化の2系統、口腔の症状程度、眼の人工涙液使用回数、消化管の体重減少%、肝のビリルビン・ALT・ALPの基準値上限倍数、肺の症状スコアとFEV1%予測値の2系統、関節と筋膜の可動域とADL、外陰・膣の所見程度)、皮膚は不一致時にBSAスコアと硬化性変化スコアの高い方を採用すること、肺は不一致時に症状スコアよりFEV1スコアを優先すること、各臓器に「GVHD以外の原因で完全に説明できる異常は除外する」チェック項目が設けられていることを確認した。閲覧 2026-08-04
  4. 4.Chronic Graft-Versus-Host Disease(EBMT(The EBMT Handbook, 7th edition)・2019)慢性GVHDはNIH基準(2014-2015年版を参照)で8臓器を0〜3点採点すること、肝病変の診断ではウイルス性肝炎・薬剤性肝障害・完全静脈栄養に伴う胆汁うっ滞などの除外が必要なこと、診断的所見を欠く場合に組織学的確認なしで臨床診断のみに頼ると誤診・不適切な治療のリスクがあること、肺病変の評価は呼吸筋の萎縮・胸郭拘束・感染など重なり合う病態で複雑になることを確認した。閲覧 2026-08-04