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Lab values · Published

アルカリホスファターゼ

Alkaline phosphatase

別名
ALPアルカリフォスファターゼ
臓器系
肝胆膵運動器
科目
PathophysiologyPathologyInternal Medicine
トピック
病態生理学 2-3:肝機能障害(1)病理学 C/92:骨髄炎/Paget病内科学 S-13:骨軟化症とくる病内科学 L-52:胆石症・胆嚢炎・胆管炎
関連疾患
Caroli病肝転移原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎線維性骨炎総胆管嚢腫薬剤性肝障害
スコア
慢性GVHDのNIHコンセンサス基準

🧠 全体像:血清ALPは単一の物質ではなく、肝・骨を中心に複数の組織由来のを一括して測る検査である。高値が「肝が悪いか、骨が悪いか」を区別しないという限界を最初に理解する。単独では由来を決められないため、γ-GTPの並行上昇の有無、臨床背景、必要なら分画で切り分ける。好中球内の酵素活性を染色する(LAPスコア)とは名前が同じだけで、由来細胞も臨床用途もまったく別の検査であり、互換性はない。

何を測っているか

ALPは細胞膜の外側に結合するで、酸エステルをする。肝・骨・腎に発現する組織非特異型にコードされるが、・脂質によるの違いで肝型・骨型として異なる性質を持つ。・胎盤型は別の遺伝子にコードされる組織特異型である。

flowchart TD
    A["ALP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isoenzyme'>アイソザイム</span>"] --> B["組織非特異型(単一遺伝子ALPL)"]
    A --> C["組織特異型(別遺伝子)"]
    B --> D["肝型:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='canalicular membrane'>毛細胆管膜</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bile duct epithelium'>胆管上皮</span>"]
    B --> E["骨型:骨芽細胞膜"]
    B --> F["腎型:血清への寄与はごく少量"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal type'>腸型</span>:食後に一過性上昇"]
    C --> H["胎盤型:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='third trimester'>妊娠後期</span>に増加"]
    D --> I["血清ALP:主に肝型+骨型"]
    E --> I
    F --> I
    G --> I
    H --> I

血清ALPの大部分は肝型と骨型が占め、・胎盤型の寄与は通常小さい。⭐ 由来を切り分ける実務的な方法は、γ-GTPが同時に上がっているかを見ることである。γ-GTPに肝型ALPと近接して存在し胆汁うっ滞で並行して上昇するが、骨芽細胞には存在しないため骨由来の上昇には反応しない。ALP高値でγ-GTPが正常なら骨由来を、両者とも高値なら肝・胆道由来を疑う入口になる。ただし早期・軽症では一致しないこともあり、確定には分画や画像検査を要する。

基準値と単位

U/Lで表すが、⚠️ 測定法でが大きく異なる。 日本臨床化学会は2020年4月1日以降、準備の整った施設から常用基準法をからへ切り替え、1年程度での完了を目指した。への変更で測定値は現行()の1/3程度になり、成人の新は38〜113 U/Lとされる1。旧法の数値をそのまま国際文献のに当てはめない。

要因 内容
測定法差 ALPへの反応性が高く、血液型B・O型の分泌型(B・O型の約8割)では空腹時でも疾患とな高値が出現しやすい。はこの反応性を抑え、逆に胎盤型への反応性は高くなる1
年齢差(小児・思春期) 骨の成長に伴い骨芽細胞活性が生理的に高く、成人基準より高値になる。数値だけで骨疾患を疑わない
胎盤型ALPが妊娠週数とともに増加し、総ALPを生理的に上昇させる1
加齢 の変化を背景に軽度の上昇がみられることがある

高値の意味

機序で群にまとめると解釈しやすい。

機序 代表例 手掛かり
胆汁うっ滞 、薬剤性胆汁うっ滞、移植後拒絶 γ-GTP同時上昇、画像で胆管拡張を評価
浸潤性肝疾患 などの重症 胆管拡張がなくてもALPが上昇し得る
亢進 Paget病、骨折治癒期、成長期小児、・くる病に伴う異常 γ-GTPは正常のことが多い、Ca・リン・PTHを併せて評価
その他 (胎盤型)、悪性腫瘍に伴う 生理的・良性の上昇として経過観察できる場合がある

胆汁うっ滞型と肝細胞障害型の切り分け(R値)

肝機能異常を最初に評価する場面では、ALTと ALP のどちらが主体かをR値で分類する。R値は「血清ALT/」を「血清ALP/ULN」で割った値で、R値5超は、2〜5は混合型、2未満はを示す2。⚠️ R値は初診時に最も正確で、単独では病因を確定しない。の上昇度や画像所見と合わせて判断する。

低値の意味

低値は高値より原因が絞られ、機序が分かると解釈しやすい。

状況 解釈
(先天性) 変異で骨型・肝型ALPの活性が生来低く、骨のを来す。乳児期・小児期の診断でALPが鍵になる
ALPは依存性酵素で欠乏に先行して低下し、非経口補充で速やかに正常化する(相関係数+0.79)3と並行して追うになる
欠乏 もALPの補因子の一つで、重度欠乏は活性低下に関与し得る。血清を確認する
によるビタミンB12欠乏に伴い低値を来すことがある
過剰ながALPの補因子を置き換えて活性を阻害し、著明な低値をとる。ALP対比4未満は、におけるの診断に感度94%・特異度96%とされ、AST/ALT比2.2超と組み合わせると感度・特異度が100%に上がる4
が全般に低下し、軽度低値になり得る

⚠️ 測定上の注意

  • 食後・腸由来の上昇:脂肪食後はALPが一過性に増える。時代は血液型B・O型の分泌型では空腹時でも影響が出やすかったが、はこの反応性を抑えている1
  • 溶血の影響は他の酵素より小さい:AST・LDH・カリウムなどは溶血でになりやすいが、ALPは重度の溶血(ヘモグロビン相当2.5〜4.5 g/L)でも臨床的に有意な変化を来しにくいとされる5
  • の影響:EDTA・クエン酸・などの金属は、ALPの補因子であるを奪って活性を低下させる。血漿検体ではになり得るため、血清または適切なを用いた検体で測定する。
  • 分画が必要な場面:γ-GTPと一致しない高値、由来不明の持続高値、悪性腫瘍が疑われるがγ-GTPもマーカーも決め手にならない場合は、電気泳動などによる分画を検討する。

経時変化とモニタリング

単回値だけで由来や重症度を決めず、推移で読む場面が多い。骨折治癒期には一過性に上昇し、癒合とともに正常化する。Paget病では治療後のALP低下を治療効果の指標として追う。慢性の経過観察でも、単回の絶対値よりな変化の方向を重視する。悪性腫瘍ののモニタリングに補助的に使われることもあるが、単独でや治療効果を確定する指標にはならない。

まとめ

  • 血清ALPは肝型・骨型を主とする複数のを一括で測る検査で、高値だけでは由来を区別できない。
  • γ-GTPの並行上昇の有無が、肝・胆道由来と骨由来を切り分ける実務的な第一歩になる。
  • 日本は2020年からに移行し、測定値は旧の約1/3、新は成人38〜113 U/Lである。旧法の数値をそのまま国際文献のに当てはめない。
  • 高値は胆汁うっ滞・浸潤性肝疾患・亢進・その他(の胎盤型など)に機序で分けて読む。R値はALTとALPの上昇比から・混合型・を分類する手掛かりになる。
  • 低値は欠乏、などに絞られる。ではALP対比の低下が診断の手掛かりになる。
  • (LAPスコア)とは名前を共有するだけの別検査であり、互換性はない。

出典

  1. 1.ALP・LD測定法変更について — 医療従事者向け(ver. 1.0)(日本臨床化学会 酵素・試薬専門委員会(ALPプロジェクト・LDプロジェクト)・2019)本文(PDF全文)から、日本のALP常用基準法を2020年4月1日より準備の整った施設からJSCC法からIFCC法へ変更し1年程度での達成を目指すこと、変更後の測定値が現行の1/3程度になり換算係数がJSCC→IFCC 0.35倍・IFCC→JSCC 2.84倍であること、変更後の成人基準範囲が38〜113 U/Lであること、JSCC法試薬は小腸型ALPへの反応性が高く血液型B・O型の分泌型(B・O型の約8割)では空腹時でも疾患と無関係な高値が出現しうる一方、胎盤型ALPはIFCC法の方が反応性が高く妊娠週数が増すほど胎盤型の増加でJSCC法との乖離が大きくなること、この変更で疾患と無関係な上昇が減り肝・骨疾患としての臨床的意義が向上すること、小児・新生児は既報の小児基準範囲を換算係数で変換した値を用いることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.AASLD practice guidance on drug, herbal, and dietary supplement–induced liver injury(American Association for the Study of Liver Diseases(Hepatology誌)・2023)本文の「Initial laboratory assessment」節およびGuidance statement第15項から、R値を血清ALT/ULNを血清ALP/ULNで割った値と定義し、R値5超で肝細胞障害型、2〜5で混合型、2未満で胆汁うっ滞型に分類することを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Screening for Wilson disease in acute liver failure: a comparison of currently available diagnostic tests(Hepatology・2008)抄録から、急性肝不全140例(Wilson病16例を含む)の検討で、ALP対総ビリルビン比4未満がWilson病による急性肝不全の診断に感度94%・特異度96%・尤度比23を示したこと、AST/ALT比2.2超と組み合わせると感度・特異度100%になることを確認した。本文(Hepatology誌)は購読制のため未取得、抄録のみ確認。閲覧 2026-08-04
  4. 4.Effects of hemolysis interference on routine biochemistry parameters(Biochemia Medica・2011)本文のResults節から、ALPは重度溶血(ヘモグロビン相当2.5〜4.5 g/L)でも統計学的な差はCLIA許容範囲内にとどまり臨床的に有意な干渉を来しにくいこと、カリウムや総ビリルビンは中等度溶血(ヘモグロビン1 g/L超)で臨床的に意味のある変動を示すことを確認した。閲覧 2026-08-04
  5. 5.Serum alkaline phosphatase and serum zinc levels in the diagnosis and exclusion of zinc deficiency in man(American Journal of Clinical Nutrition・1985)抄録から、重症亜鉛欠乏患者では血清ALPと血清亜鉛が並行して低値を示し非経口亜鉛補充で両者とも正常化すること(相関係数+0.79)、亜鉛欠乏のない患者では亜鉛補充後も両者に相関がないこと(r=-0.01)を確認した。閲覧 2026-08-04