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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 先天性疾患

Dent病

Dent disease

別名
Dent-1病Dent-2病X連鎖性劣性腎石症X-linked recessive nephrolithiasis
臓器系
腎・泌尿器
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-30:尿路結石症
鑑別疾患
Lowe症候群
合併症
慢性腎臓病
治療薬
ヒドロクロロチアジド
症状
血尿
検査値
カルシウム血清リンアルカリホスファターゼ低分子量蛋白尿
画像所見
腎石灰化症

🧠 全体像:Dent病は、のが壊れることで生じるの尿細管疾患である。はCLCN5(1型)とOCRL(2型)の2つがあり、⭐ 2型はと同じ遺伝子の対立遺伝子病という関係にある——同じOCRL遺伝子でも、変異の性質次第で「腎だけ」(Dent病2型)か「眼・神経・腎の三徴」()かに分かれる。全患者に必須の所見は蛋白尿で、・・が続く。⚠️ 2025年の欧州臨床実践推奨は、長く行われてきたのな使用を明確に否定している——とくに2型では脱水・を起こしやすい。

遺伝学とDD1/DD2の違い

項目 Dent病1型(DD1) Dent病2型(DD2)
CLCN5(Xp11.23)約50〜60%12 OCRL(Xq26.1)約15%12
コードする蛋白 Cl⁻/H⁺ClC-5 ポリリン酸5-ホスファターゼ(と同じ蛋白)
蛋白尿 100% 100%2
稀 7〜10%2
知的障害 0〜9% 25〜30%2
身長障害 10〜20% 60〜80%2
血清//CPK上昇 5〜20% 80〜90%2
くる病・ 5〜33% 10〜20%2
40〜75% 10〜40%2

⭐ 腎症状(蛋白尿・)はどちらの型でも共通するが、眼・神経・筋の所見は2型で明確に頻度が高い。 これは(同じOCRLの重症型で全例に・を伴う)とのを反映している——⚠️ Dent病2型はの「」ではなく、眼科的・特徴を欠く点で区別される別の表現型である1。

病態生理

flowchart TD
    A["CLCN5(1型)またはOCRL(2型)の病的変異<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='X-linked recessive'>X連鎖劣性</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>上皮細胞の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='receptor-mediated endocytosis'>受容体介在性エンドサイトーシス</span>障害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low molecular weight'>低分子量</span>蛋白・アルブミンの<br>再吸収不全"]
    B --> D["カルシウム再吸収の障害"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low molecular weight'>低分子量</span>蛋白尿(全例)"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercalciuria'>高カルシウム尿</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrocalcinosis'>腎石灰化症</span>・腎結石"]
    G --> H["進行性の腎機能低下"]
    B --> I["リン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bicarbonate'>重炭酸</span>の再吸収障害"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>・アシドーシス"]
    J --> K["くる病・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteomalacia'>骨軟化症</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multifactorial (polygenic)'>多因子性</span>、明確な相関なし)"]

臨床像

⭐ 蛋白尿は全患者に必須の所見である。 の5倍以上の増加が診断的とされる2。

⚠️ は「必須」ではなく地域差が大きい。 欧米の報告では患者の90%超にみられるのに対し、日本・韓国・中国のコホートでは50〜70%にとどまる2。成人のの閾値は24時間尿中カルシウム4.0 mg/kg超または尿中Ca/Cr比0.25 mg/mg超である1。

⭐ くる病・は単一の原因では説明できない。 慢性の・高・アシドーシス・が複合的に関与し、の程度とくる病の有無には明確な相関がない2。

そのほか血尿(の補助項目の一つ)や、続発性の異常を反映した上昇がみられる。

診断

蛋白尿は全例に必須で、加えて次のいずれかを満たせば診断的とされる——、または・腎結石・血尿・・・X連鎖性の遺伝パターンのいずれか1。確定診断はCLCN5またはOCRLのによる。

治療とモニタリング

⚠️ は「には使用すべきでない」(Grade B、中等度の推奨)。 従来は対策として広く使われてきたが、2025年の欧州臨床実践推奨は電解質異常のリスクを理由に定型使用を否定し、とくに2型患者はによる重度脱水・をより起こしやすいとしている2。GeneReviewsが挙げる「0.4 mg/kg/日超でを40%以上減少」という数値は、この最新推奨の文脈では限定的な状況でのみ考慮する選択肢として読む必要がある1。

⚠️ クエン酸塩の位置づけも「弱い推奨」にとどまる。 ・結石症を伴う患者では考慮してよいとされる(Grade C、弱い推奨)が、根拠はマウスのClcn5モデルで高クエン酸食が進行を遅らせたというデータであり、ヒトでの有効性は証明されていない12。

治療・検査 位置づけ
食事性カルシウム制限 をおおむね消失させる1
⚠️ 適応でない——血中値がもともと高い2
非 低値なら補充を考慮するが、減少のため血中濃度の解釈自体が難しい2
リン製剤 +くる病・の徴候がある場合のみ考慮(Grade X、弱い推奨)。⚠️ 尿中リン排泄を増やし・結石症のリスクをさらに高める2
阻害薬・ 腎保護目的でのは推奨しない(Grade C、中等度の推奨)。症例集積で蛋白尿減少を示せなかった2

⭐ モニタリングは専門施設で3〜6か月ごと。 電解質・カルシウム・リン・・クレアチニン・アルブミン・・・25OHビタミンDの血液検査、尿蛋白・蛋白・カルシウム・クレアチニンの尿検査、定期的な検査を組み合わせる2。

予後・腎移植

推定30〜80%の患者が30〜50歳代でに進展する(腎機能の平均低下速度は年1.5 mL/分/1.73m²程度)が、稀に60歳代以降まで進行が遅延する例もある12。⭐ 腎移植後の疾患再発は報告されていない12。⚠️ 女性保因者からの生体腎提供は、無症候の高齢女性に限り考慮しうるとされる2。

鑑別

⭐ とは同じOCRL遺伝子のアレル病である。 Dent病2型は腎性様の蛋白尿・という腎症状をと共有するが、眼科的・特徴を欠く点で区別される1。同じ遺伝子から表現型の重症度が大きく異なる好例として、両者を対で理解しておく。

まとめ

  • Dent病はの疾患で、原因はCLCN5(1型、約60%)またはOCRL(2型、約15%)の病的変異。2型はと同じ遺伝子のアレル病だが眼科的・特徴を欠く。
  • 全患者に必須の所見は蛋白尿(の5倍以上)。は欧米で90%超だがアジアのコホートでは50〜70%と地域差がある。
  • くる病・は・高・アシドーシス・が複合するの病態で、の程度と単純には相関しない。
  • 診断は蛋白尿(必須)+または・腎結石・血尿・・・X連鎖遺伝パターンのいずれか。確定はCLCN5・OCRLの。
  • ⚠️ 2025年の欧州臨床実践推奨は、の定型使用を明確に否定した(2型ではとくに脱水・のリスク)。クエン酸塩は・結石症を伴う場合の弱い推奨にとどまり、ヒトでの有効性は未証明。は不要、リン製剤は+くる病の徴候がある場合のみ。
  • 推定30〜80%が30〜50歳代でに進展するが、腎移植後の疾患再発はない。

出典

  1. 1.Dent Disease(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2017)Dent病1型の原因がXp11.23に位置するCLCN5遺伝子の病的変異(患者の約60%)、2型がXq26.1に位置するOCRL遺伝子の病的変異(約15%)であり、いずれもX連鎖劣性遺伝であること、両型とも低分子量蛋白尿と高カルシウム尿を主徴とするが2型では稀に白内障・軽度の知的障害・血清筋原性酵素上昇を伴い身長低下がより著しい(-2.10 SD対1型の-0.58 SD)こと、成人の高カルシウム尿の閾値が24時間尿中カルシウム4.0 mg/kg超または尿中Ca/Cr比0.25 mg/mg超であること、推定30〜80%の患者が30〜50歳で末期腎不全に進展し稀には60歳代以降まで進行が遅延する例もあること、サイアザイド系利尿薬0.4 mg/kg/日超で尿中カルシウム排泄を40%以上減少させうるが低カリウム血症・脱水のリスクがあること、クエン酸カリウムは動物モデルで有効性が示唆されるがヒトでの有効性は証明されていないこと、食事性カルシウム制限で高カルシウム尿はおおむね消失すること、腎移植後の疾患再発は報告されていないことを確認した(2017年12月14日最終更新の包括的改訂)。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Dent disease: clinical practice recommendations(Nephrology Dialysis Transplantation(欧州腎臓学会・ERKNet)・2025)PMC12209860の全文を取得して確認した。低分子量蛋白尿が全患者に必須の所見で正常上限の5倍以上の増加を診断的とすること、高カルシウム尿は欧米の患者の90%超に対し日本・韓国・中国のコホートでは50〜70%と地域差があること、1型(CLCN5、50〜60%)と2型(OCRL、約15%)の比較で低分子量蛋白尿は両型とも100%だが知的障害は1型0〜9%対2型25〜30%、先天性白内障は1型で稀対2型7〜10%、身長障害は1型10〜20%対2型60〜80%、血清LDH/AST/CPK上昇は1型5〜20%対2型80〜90%であること、くる病・骨軟化症の頻度が1型5〜33%・2型10〜20%で慢性高カルシウム尿・高リン尿・アシドーシス・CKDなど複数因子が関与し低リン血症の程度とくる病の有無に明確な相関はないこと、腎石灰化症が1型40〜75%・2型10〜40%、腎結石が1型20〜40%・2型10〜15%であること、腎機能の平均低下速度が年1.5 mL/分/1.73m²程度で全体として罹患男性の30〜80%が20〜50歳代で末期腎不全に至ること、クエン酸塩治療は腎石灰化症・結石症を伴う患者では考慮してよいとする一方(Grade C、弱い推奨)マウスモデルでの高クエン酸食がCKD進行を遅らせたデータに基づくこと、サイアザイド系利尿薬はDent病に定型的には使用すべきでないとされ(Grade B、中等度の推奨)2型患者はサイアザイドによる重度脱水・急性腎障害をより起こしやすいこと、活性型ビタミンDは血中カルシトリオール値が高いため適応でなく非活性型ビタミンDの血中濃度は結合蛋白減少のため解釈が難しいこと、リン製剤は低リン血症とくる病・骨軟化症の徴候がある場合にのみ考慮すべきで(Grade X、弱い推奨)尿中リン排泄増加を介して腎石灰化症・結石症のリスクをさらに高めること、ACE阻害薬・ARBは蛋白尿減少を示せなかった症例集積を根拠に腎保護目的での定型的使用を推奨しないこと(Grade C、中等度の推奨)、腎移植後の疾患再発は無いが女性保因者からの生体腎提供は無症候の高齢女性に限り考慮しうること、専門施設での3〜6か月ごとの定期評価(電解質・カルシウム・リン・重炭酸・クレアチニン・アルブミン・アルカリホスファターゼ・PTH・25OHビタミンD、尿蛋白・低分子量蛋白・カルシウム・クレアチニン、定期的な腎超音波検査)を推奨することを確認した。閲覧 2026-09-07