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Disease Atlas · 肝胆膵 · 疾患

薬剤性肝障害

Drug-induced liver injury

別名
DILI薬物性肝障害drug-induced hepatotoxicity
臓器系
肝胆膵
科目
PharmacologyPediatrics
トピック
薬理学 Core63:薬剤性有害反応:肝毒性小児科 51:小児の肝炎
鑑別疾患
非アルコール性脂肪肝疾患
続発疾患
急性肝不全
治療薬
アセチルシステインウルソデオキシコール酸
原因薬剤
パラセタモールデューティバカフトルバンザカフトル
症状
黄疸
検査値
AST・ALTALPγ-GTPビリルビン

🧠 全体像は、処方薬・薬・いずれによっても起こりうる肝障害の総称で、「予測できる」と「予測できない」という2つの全く異なる機序を持つ点が学習上の出発点になる。が前者の代表で、量を測れば発症リスクを予測できるのに対し、後者は常用量でも数日〜数週間の潜伏期を経て突然発症し、事前に予測する手立てがない。診療の幹は、①検査パターンをALT・ALPの比(R値)で・混合型に分類する、②黄疸を伴う(Hy’s lawの枠組み)は重症化・死亡のリスクが高いと認識する、③原因薬を直ちに中止し、ならを開始する、の3段階である。

病態:2つの機序

flowchart TD
    A["薬物・代謝物への曝露"] --> B{"機序は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dose-related'>用量依存性</span>か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='predictable'>予測可能</span>(内因性)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dose-related'>用量依存性</span>の直接的肝毒性<br>代表:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetaminophen'>アセトアミノフェン</span>の過量摂取"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unpredictable'>予測困難</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='idiosyncratic'>特異体質性</span>)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>または代謝的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='individual variation'>個体差</span><br>常用量でも発症しうる"]
    C --> E["肝細胞の壊死・機能障害"]
    D --> E
    E --> F["検査パターンで3型に分類<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular (injury) pattern'>肝細胞障害型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholestatic (injury) pattern'>胆汁うっ滞型</span>・混合型)"]
    F --> G{"黄疸を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular (injury) pattern'>肝細胞障害型</span>か<br>(Hy's lawの枠組み)"}
    G -->|"該当"| H["重症<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug-induced liver injury'>薬剤性肝障害</span>・死亡のリスクが高い"]
    G -->|"非該当"| I["多くは原因薬中止で回復"]

💡 「用量を守っていれば安全」が通用しないのがDILIの本質である。 の過敏反応やのあるが関与すると考えられているが、発症を事前に予測するは確立していない。アモキシシリン/はこの型の代表的な原因薬として知られる1

分類:肝細胞障害型・胆汁うっ滞型・混合型とR値

検査パターンの分類には、ALT/ALPの比である「R値」を用いる。 R値は「血清ALT/」を「血清ALP/ULN」で割った値で、R値5超は、2〜5は混合型、2未満はを示す2

R値 代表的な原因薬
5超 、NSAIDs、、バルプロ酸
混合型 2〜5 スタチン系、フェニトイン、
2未満 経口避妊薬、アモキシシリン/

⚠️ R値は初診時の1回だけの値では確定的でなく、経過とともに型が移行することがある。 の上昇度や画像所見と合わせて総合的に判断する。

Hy’s law:重症化の予測

Hy’s lawは、のうち黄疸を伴う例が重症であるという考え方の枠組みである。 ALT・ASTがの3倍を超え、かつの2倍を超え(閉塞性所見に乏しい=ALPはでない)、他に説明がつかない場合を指し、治験の投与中止基準としても用いられる31

💡 「胆管が閉塞していないのに黄疸がある」ことがの本質である。 肝細胞が薬剤によって直接壊されて抱合・排泄能そのものが落ちている状態を示し、の黄疸(や炎症による排泄障害)よりも肝不全への進展リスクが高いと考えられている。

臨床像

多くは無症状か非特異的な感・悪心にとどまり、健診や他疾患の経過観察中の異常で偶発的に発見されることが多い。症状が出る場合は黄疸で目立つ)、右上腹部不快感などがある。

⚠️ 原因薬の初回曝露から発症までの間隔は機序によって大きく異なる。 障害は摂取量に応じて急性に発症するのに対し、DILIは常用量投与下でも数日から数週間、時に数か月の潜伏期を経て発症し、投の聴取では最近始めた薬だけでなく数か月以内に開始した薬まで遡って確認する必要がある。

💡 後にとしてDILIリスクが明記される薬剤もある。 を含むの配合剤は、重篤かつ致死的となりうる・肝不全のを持ち、投与開始前と最初の6か月は毎月、次の12か月は3か月ごと、以降は少なくとも年1回のALT・AST・ALP・ビリルビン測定が定められている。発症時期は投与開始1か月以内から15か月後までと幅があり、定期モニタリングだけに頼らず症状の説明も併せて行う。

診断

には確定できる単独の検査・がなく、、検査パターン、他の肝疾患の除外を組み合わせた臨床診断である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver enzymes'>肝酵素</span>異常を確認"] --> B["直近の処方薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='marketing'>市販</span>薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='supplement'>サプリメント</span>・健康食品を全て聴取"]
    B --> C["R値で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular (injury) pattern'>肝細胞障害型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholestatic (injury) pattern'>胆汁うっ滞型</span>・混合型に分類"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral hepatitis'>ウイルス性肝炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune hepatitis, AIH'>自己免疫性肝炎</span>・胆道閉塞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty liver'>脂肪肝</span>など他の原因を除外"]
    D --> E{"Hy's lawの基準を満たすか"}
    E -->|"満たす"| F["重症化リスクが高いと判断し入院・専門医紹介を検討"]
    E -->|"満たさない"| G["原因薬を中止し外来で経過観察"]

除外すべき他の肝疾患には、、胆道閉塞などがある。小児期の肝炎でも、自己抗体・免疫グロブリンの評価と並行してウイルス性・代謝性・薬剤性の原因を除外する診断アプローチが取られる。

治療

原因薬の中止が治療の基本である。 多くのは中止後に回復するが、回復までの期間・は機序と重症度による。

まとめ

  • は、な機序(代表:)と、常用量でも起こるの機序(代表:アモキシシリン/)の2つに大別される。
  • 検査パターンはALT/ALPの比であるR値で分類し、R値5超は、2〜5は混合型、2未満はを示す。
  • Hy’s lawは、ALT・AST 3倍超+2倍超+閉塞所見なしという組み合わせを重症化・死亡のとして扱う枠組みである。
  • 診断は投と検査パターン、他の肝疾患の除外による臨床診断で、確定できる単独の検査はない。
  • 治療は原因薬の中止が基本で、による内因性DILIにはが特異的治療となり、重症例はに準じた管理・評価へ移行する。

出典

  1. 1.Guidance for Industry: Drug-Induced Liver Injury: Premarketing Clinical Evaluation(U.S. Food and Drug Administration・2009)ALT・ASTの著明高値に胆汁うっ滞所見の乏しい総ビリルビン2倍超が伴う所見(Hy's lawの枠組み)を重症薬剤性肝障害の予測指標とし、治験での投与中止基準の考え方を示した閲覧 2026-08-01
  2. 2.AASLD practice guidance on drug, herbal, and dietary supplement–induced liver injury(American Association for the Study of Liver Diseases(Hepatology誌)・2023)本文の「Initial laboratory assessment」節およびGuidance statement第15項から、R値を血清ALT/ULNを血清ALP/ULNで割った値と定義し、R値5超で肝細胞障害型、2〜5で混合型、2未満で胆汁うっ滞型に分類することを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Drug-Induced Hepatotoxicity(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)薬剤性肝障害が米国における急性肝不全の主要な原因の1つになっていること、予測可能(用量依存性、代表はアセトアミノフェン)と予測困難な特異体質性(代表はアモキシシリン/クラブラン酸)に機序を大別できること、Hy's lawの定義(ALT・ASTが基準上限3倍超+総ビリルビンが基準上限の2倍超+閉塞所見なし+他に説明がない)とこれが予後不良と関連すること、原因薬の中止が治療の中心でアセトアミノフェンによる内因性DILIにはN-アセチルシステインが特異的治療になることを確認した閲覧 2026-08-11