薬理学

薬理学 · Core63

薬剤性有害反応:肝毒性

Core63: Drug-induced adverse reaction: hepatotoxicity

前提:病態
Core16:薬物代謝(生体内変換)の相Core8:薬物有害反応
前提:正常
膵臓の外分泌とその調節。肝臓の胆汁産生
応用トピック
薬剤性肝障害非再取り込み阻害型抗うつ薬・双極性障害躁状態治療薬抗てんかん薬・鎮痛補助薬アンドロゲン・蛋白同化ステロイド・抗アンドロゲン薬・性機能作用薬免疫薬理学I(細胞傷害性薬)免疫薬理学II(サイトカイン遺伝子発現阻害薬・5-ASA誘導体)抗がん薬V(低分子シグナル伝達阻害薬・レチノイド)脂質代謝に作用する薬・体重管理薬メトロニダゾール・フィダキソマイシン・リファキシミン・ニトロフラントイン・ホスホマイシン抗抗酸菌薬(抗結核薬)抗レトロウイルス薬抗肝炎ウイルス薬
疾患
薬剤性肝障害薬剤性胆汁うっ滞

🧠 全体像:()は 、、 に分類され、機序としては な() と のことがある。⭐ この2分法に、近年は——薬のがを動かして二次性に肝を傷める型——が加わって3つになった1。⚠️ 学習上のいちばんの落とし穴は、「と呼ぶための検査閾値」と「かかを決めるR値」を混同することである。前者は障害があると認めるための入口、後者は入った後の型分けで、数値も目的も別物である。

定義

  • 肝毒性/(drug-induced liver injury) = 。処方薬・・・のいずれでも起こる。
  • として現れうる(重症例はへ進む)。
  • 機序的には:
    • (・intrinsic) = 。
    • (・idiosyncratic) = 用量に依存しない。

3つの機序を分けて覚える

頻度 多い まれ 中間
用量との関係 あり なし なし
予測できるか できる できない 部分的
での再現 できる できない 通常できない
速い(数日) さまざま(数日〜数年) 遅い(数か月)
代表的な薬 ()、、静注メトトレキサート アモキシシリン-、、、 、、
機序 の直接的肝毒性 宿主の代謝的または免疫学的な反応 肝またはへの間接的作用

出典はいずれも AASLD の診療ガイダンス1。

  • 💡 が独立した型として扱われる理由。 による肝炎や、リツキシマブ投与後のB型肝炎ウイルス再活性化は、薬そのものが肝細胞に毒なのではなく、薬が免疫系を動かした結果として肝が傷む。中止すれば止まるとも、代謝物へのとも扱いが違う1。
  • 💡 は型を絞る手がかりになる。 ・メトトレキサートはが長く、過敏反応型では24〜72時間と短い1。

検査の読み方——「DILIと呼ぶ閾値」と「R値による型分け」

⚠️ この2つは別の物差しである。

① 肝障害と認めるための閾値

RUCAM(Roussel Uclaf法)は、肝障害の定義を ALTが(N)の5倍以上、またはALPがNの2倍以上とし、初診日に同時に測るのがよいとする2。この閾値は偽陽性を減らしての特異度を上げるために置かれている。

  • ⚠️ が正常範囲でだけ高いときは、骨など肝胆道以外の由来を除くため、γ-GTPまたは5’-の上昇を伴うことを確認する2。

② R値による型分け

⭐ R値は「血清/」を「血清/」で割った値で、R値5超が、2〜5が混合型、2未満がである1。

型 R値 代表的な原因薬
R値5超 、NSAIDs、INH()、リファンピシン、、、バルプロ酸、
R値2〜5 スタチン、、、フェニトイン
R値2未満 経口避妊薬、アモキシシリン-、、、
  • ⚠️ R値は初診時に計算するのが最もよいが、経過とともに型が移行しうる。 また同じ薬が複数の臨床像をとりうる1。「この薬は」と固定して覚えない。
  • ⚠️ 境界の書き方は資料でわずかに割れる。 AASLDは「5超/2〜5/2未満」、RUCAMは「R 5以上/2超5未満/R 2以下」と書き、さらにRUCAMはとの片方だけが上がる場合( 5N超かつ N以下=、 2N超かつ N以下=)を別に定めている12。ちょうど境界の値にあたるときは、どちらの文書の定義で述べているかを明示する。

重要例

  • :
    • 。
    • NSAIDs。
    • :INH、リファンピシン、。
    • 。
    • バルプロ酸。
    • 。
  • 胆汁うっ滞性障害():
    • 経口避妊薬。
    • アモキシシリン-。
    • 。
    • 。
    • 。
  • :
    • スタチン系。
    • 。
    • 。
    • フェニトイン。

⭐ アモキシシリン-は、米国でも欧州でも「臨床的に明らかな薬物性の現在最も多い原因」である3。で、およそ2,500処方に1回の頻度と推定され、男性・高齢者・複数回の投与歴で多い。

  • 💡 犯人はのほうである。 アモキシシリン単独への再投与では再発しないのに対し、配合剤への再投与ではより早く・より重い肝障害が起こり、遷延する胆汁うっ滞や肝硬変に至ることがある3。
  • ⚠️ 投与が終わってから数日〜数週間して発症しうるため、薬との関連が見逃されやすい3。「飲み終わったから関係ない」と切らない。
  • ⚠️ 発熱・発疹・好酸球増多といった免疫アレルギー所見は起こりうるが必発ではなく、通常は目立たない3。
  • 💡 HLA class II の DRB1*15:01 と拡張 DRB1*15:01-DRB5*01:01-DQB1*06:02、HLA class I の A*02:01 との関連が報告されている3。
  • 💡 小児では像が違う。 無黄疸で悪心・嘔吐・腹痛を呈することが多く、検査パターンもになりやすいが、経過は良性であることが多い3。

Hy’s law——「一人の診断名」ではなく「薬の危険信号」

⚠️ Hy’s lawは個々の患者につける診断名ではない。 のデータベース全体を見て、その薬が大きな集団に使われたときに重症のを起こす力を持つかを判定するための枠組みである4。

米国のガイダンスは、Hy’s law症例の要件を3つに分けて書いている4。

  1. その薬がを起こす。 非肝毒性の対照薬またはより、またはがの3倍以上へ上昇するが高いことで示される。
  2. そのような上昇を示したのうち1名以上で、胆汁うっ滞の初期所見(上昇)を伴わずにがの2倍超へ上昇する。
  3. 両者の組み合わせを説明できる他の理由がない(A・B・C、既存または急性の肝疾患、同じ障害を起こしうる他の薬など)。
  • ⭐ 要件1が「の比較」であることが要点。 ここを「その患者のが3倍超」と読み替えると、Hy’s lawは個人のになってしまう。実際の使われ方は「1例見つかれば懸念、2例あればその薬が重症を起こしうることを高度に予測する」という、薬に対する判定である4。
  • 💡 もとはZimmermanの観察である。 薬物性のに黄疸が伴うと予後が悪く、移植前の時代でによる死亡率10〜50%だったという記述が出発点になっている4。
  • 💡 なぜビリルビンなのか。 肝はビリルビン排泄能に大きなを持つので、黄疸や軽度の(2×超)が出るということは、回復できないほどのが起きていることを意味する4。
  • ⭐ は「この所見は、Hy’s law症例のおよそ10分の1の頻度で致死的または移植を要するを起こす薬を同定する」と述べる4。「死亡率10%」という覚え方とは意味が違うので区別する。

💡 前向きコホートでの検証。 Hy’s lawは検査のタイミングもの定義も定めていないため、DILIN前向きコホートで4通りの解釈が比べられた5。

解釈 の死亡(または) 混合型・
初診時のR値で分ける 11.1% 2.0%(P<0.001)
ピーク値のR値で分ける 10.3% 1.6%(P<0.001)
の関連基準・初診時の値 7.9% 3.9%(P=0.04)
の関連基準・ピーク値 7.9% 3.0%(P=0.01)
  • 初診時のR値がHy’s law症例を同定する最も信頼できる方法だった5。
  • を高頻度に起こす薬はおおむね死亡率10%以上、混合型・を典型的に起こす薬はいずれも10%未満だった。一方で黄疸を伴うを起こしても死亡率が低い薬があるため、著者らはHy’s lawの精緻化が必要だとしている5。
  • ⚠️ 個々の患者への当てはめは弱い。 AASLDの予後指標の表では、Hy’s law(3倍超かつビリルビン2.5 mg/dL超、は2倍未満であるべき)のは8〜20%にとどまり、混合型・には適用できないとされる。修正版Hy’s law(R値5超かつビリルビン2.5 mg/dL超)でも12%である1。

治験での投与中止基準

ガイダンスは、次のいずれかで投与中止を考慮すべきとしている4。

条件
またはがの8倍超
またはがの5倍超が2週間を超えて持続
またはがの3倍超、かつ2倍超またはINR 1.5超
またはがの3倍超に、倦怠感・悪心・嘔吐・右上腹部痛または圧痛・発熱・発疹・好酸球増多(5%超)のいずれかが加わった

⚠️ ガイダンス自身がこれらを「前向きに系統的な評価を受けていない」と断っている4。逐語の閾値として覚えつつ、確立した診療基準ではないことも合わせて覚える。

因果関係の評価——RUCAM

⭐ RUCAM(Roussel Uclaf Causality Assessment Method、旧称CIOMS)は、疑わしい薬・ごとに点数を付けて因果の確からしさを定量化するである2。

  • 採点は7項目(服薬開始から発症までの時間、中止後の〈〉または〈・混合型〉の推移、危険因子、併用薬・併用、他の原因の検索、その薬剤・の既知の肝毒性、意図しない再投与への反応)で、と・混合型に別々の採点表を用いる2。
  • 合計点の判定は 0点以下=除外、1〜2点=unlikely、3〜5点=possible、6〜8点=probable、9点以上=highly probable2。
  • ⚠️ RUCAMは主としての反応のために作られており、(内因性)の反応を想定していない2。中毒にRUCAMを回すのは用途外である。
  • ⚠️ 中止後の経過を追う期間にステロイドやを投与するとが隠れるため、その項目は0点(情報なし)としか採点できない2。治療と評価が干渉する。
flowchart TD
    A["薬の服用中または中止後に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver enzymes'>肝酵素</span>が上昇"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alanine aminotransferase'>ALT</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='baseline / reference value'>基準値</span>の5倍以上<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alkaline phosphatase'>ALP</span>が2倍以上か"}
    B -->|"満たさない"| C["経過観察<br>肝障害の定義には達していない"]
    B -->|"満たす"| D["R値を計算する<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='alanine aminotransferase'>ALT</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper limit of normal'>ULN</span> ÷ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='alkaline phosphatase'>ALP</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper limit of normal'>ULN</span>"]
    D --> E["R値5超<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular (injury) pattern'>肝細胞障害型</span>"]
    D --> F["R値2〜5<br>混合型"]
    D --> G["R値2未満<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholestatic (injury) pattern'>胆汁うっ滞型</span>"]
    E --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total bilirubin'>総ビリルビン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper limit of normal (ULN)'>基準上限</span>の2倍超で<br>他に説明がつかないか"}
    H -->|"はい"| I["Hy's lawの枠組みに合致<br>重症化の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red flags'>危険信号</span>として扱う"]
    H -->|"いいえ"| J["原因薬を中止し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral hepatitis'>ウイルス性肝炎</span>など他の原因を除外"]
    F --> J
    G --> J
    I --> K["原因薬を直ちに中止<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute liver failure, ALF'>急性肝不全</span>に準じた管理と移植の検討"]

⚠️ ()の1日最大量は国・剤形で異なる。 米国の(OTC)添付文書は、12歳以上に6時間ごと2錠、24時間に6錠(500 mg錠×6=3,000 mg)を超えないよう指示し、欄では24時間に4,000 mgを超えた場合に重篤な肝障害が起こりうるとする6。英国では経口製剤の承認用量が成人1日4 g(1 gを4〜6時間ごと)である一方、静注製剤は体重50 kg超の成人で1日4 g、「肝毒性リスクがある」患者では1日3 gへの減量が承認用量に明記されており、体重50 kg未満へのについては英国当局は具体的な減量幅を示さず臨床判断に委ねている7。どの国・どの剤形の上限かを区別して覚える。

  • ⚠️ 米国OTCのは、上限量だけでなく併用と飲酒も並べている——「を含む他の薬と併用した場合」「本剤の使用中に成人が毎日3杯以上の酒類を飲む場合」6。配合感冒薬との重複が実務上いちばん多い経路である。
  • ⚠️ ただし「高リスク群」の線引きは思われているほど固まっていない。 肝障害の危険因子を系統的に検討した総説のは「リスクが明らかに高いと言える患者群は存在しない」であり、英国で歴史的に高リスクの指標とされてきた因子には臨床へ再導入するに足る質の高い根拠がないとされた7。⚠️ これは添付文書のをしてよいという意味ではない——上の指示は守ったうえで、「この人は飲酒家だから同じ量でも必ず危ない」と個別に断定はできない、と理解する。
  • 💡 治療側もこの流れで簡素化された。 英国では2012年以降、中毒の治療は単一の(過量服用4時間後で100 mg/Lの)を超えたら治療する方式へ改められ、時期のずれた服用や服用時刻が不明な例はすべて治療対象となった7。

💡 ・(HDS)による肝障害は増加傾向にある。 米国のDILIN前向き研究では全体の16%がHDSによるもので、その割合は2004〜2005年の7%、2010〜2012年の19%、2013〜2014年には20%へ増えた8。⚠️ この20%の分母はDILIN登録症例であって米国の肝障害全体ではない。

  • 主な原因は、緑茶エキス、複数成分のである8。
  • 💡 原因ごとに検査パターンが違う。 ボディビル用に売られるは遷延するだが最終的には自然軽快する経過をとり、緑茶エキスなどは急性を起こす傾向がある8。
  • 💡 国・地域で割合が大きく違う。 スペインの登録では2006年の2%から2010〜2013年の13%へ増加し、シンガポールでは70%と報告されている8。

治療

  • 原因薬を中止する。(これが治療の中心である)
  • ():
    • を増やす。
    • を減らす。
    • ⭐ 中毒に対する特異的として確立している。
    • ⚠️ それ以外のでは、適応が限られる。 AASLDは関連のの成人に3日間投与を考慮するとし、その根拠として「なでの3週時点の転帰改善、とくに早期の脳症をもつ患者での利益」を挙げている1。引用されているのは下の非173例の試験である9。
    • 💡 による 102例の無作為化試験では、は短縮したが生存の利益は示されなかった1。
  • :
    • 膜に対するの毒性を減らすと考えられている。
    • ⚠️ 位置づけは「強い掻痒への対症療法」である。 AASLDは10〜15 mg/kgをするとしつつ、前向きの有効性データは不足しており、安全性は高いと考えられるという書き方にとどめている1。
  • 重症の過敏反応・:本文では「重症の過敏反応(を含む)に1 mg/kgのステロイドがしばしば用いられる」とされる。⚠️ ただし同じ文書のTable 9は用量を対象で書き分けており、による症例に1 mg/kg/日の相当、それ以外には40〜60 mgを充てている(・期間は確立しておらず、多くは1〜3か月でできるとされる)1。
  • 重症:
    • 根治療法 = 。
  • 💡 予後の全体像。 患者の80%はなく回復するが、黄疸を伴う重症のでは最大10%が死亡しうる1。

⚠️ を「肝庇護薬」として一般化しない。 非起因の173例の試験で、の3週全生存率は70%対66%(片側P=0.283)で有意差がなかった9。有意だったのはの移植なし生存(40%対27%、片側P=0.043)で、しかもその差は脳症グレードI〜IIの114例(52%対30%、片側P=0.010)に限られ、グレードIII〜IVの59例では9%対22%(片側P=0.912)で利益がなかった。移植率も32%対45%で有意差はない(P=0.093)。著者らは「進行した脳症の患者は本剤の利益を受けず、通常は緊急を要する」としている9。

⚠️ 小児では向きが逆だった。 AASLDは、非の小児で短期の非経口を用いた場合に転帰がむしろ不良だったため、小児への使用には慎重であるべきだとしている1。成人のデータを小児へ外挿しない。

まとめ

  • = 古典的(・)1。
  • = 古典的。米国・欧州で最も多い薬物性の原因で、およそ2,500処方に1回。犯人はのほうである3。
  • スタチン//フェニトイン = 混合型。
  • は急性毒性肝障害の古典的。ただし非のではに差はなく、移植なし生存の改善も脳症グレードI〜IIに限られる9。小児では慎重に1。
  • 機序は・型・の3つ。はなどが代表1。
  • 「と呼ぶ閾値( 5N以上または 2N以上)」と「R値による型分け(5超/2〜5/2未満)」は別物21。
  • Hy’s lawは薬に対する判定であって個人の診断名ではない。 3要件のうち第1要件は「対照よりが高い」という集団の比較である4。個人へのは8〜20%1。
  • 初診時のR値で分けたとき、Hy’s lawに該当するの死亡(または)は11.1%、混合型・は2.0%5。
  • 因果評価はRUCAM(7項目、9点以上でhighly probable)。のためので、には使わない2。
  • ⚠️ 米国OTCは1日6錠=3,000 mgが上限で、4,000 mg超で重篤な肝障害の。併用薬の重複と毎日3杯以上の飲酒も対象6。
  • HDSは米国DILIN登録の20%(2013〜2014年)を占める。は、緑茶エキスは8。

の分類そのものはCore8:、の相はCore16:()の相、腎毒性・はそれぞれCore61:薬剤性:腎毒性・Core62:薬剤性:で扱う。疾患としての全体像はにまとめてある。

出典

  1. 1.AASLD practice guidance on drug, herbal, and dietary supplement–induced liver injury(American Association for the Study of Liver Diseases(Hepatology誌)・2023)全文(PMC9936988)で確認した。肝毒性を直接型(intrinsic、用量依存性・予測可能・潜時は数日、代表はアセトアミノフェン)、特異体質型(idiosyncratic、用量非依存性・予測不能・潜時は数日から数年、代表はアモキシシリン/クラブラン酸・セファロスポリン・イソニアジド・ニトロフラントイン)、間接型(indirect、薬物の生物学的作用が宿主免疫を介して二次性に肝を傷める、潜時は数か月、代表は免疫チェックポイント阻害薬・抗CD20抗体・プロテインキナーゼ阻害薬)の3つに分けている。R値は血清ALT/ULNを血清ALP/ULNで割った値で、5超が肝細胞障害型、2未満が胆汁うっ滞型、2〜5が混合型であり、初診時に計算するのが最もよいが経過で型が移行しうる。潜時はニトロフラントイン・メトトレキサートで長く、過敏反応型では24〜72時間と短い。DILI患者の80%は後遺症なく回復するが、黄疸を伴う重症の肝細胞障害型では最大10%が死亡しうる。予後指標の表でHy's lawはALT基準上限3倍超かつビリルビン2.5 mg/dL超(ALPは基準上限2倍未満であるべき)で陽性的中率8〜20%、混合型・胆汁うっ滞型には適用できないとされ、修正版Hy's law(R値5超かつビリルビン2.5 mg/dL超)は陽性的中率12%とされる。治療はDILI関連の急性肝不全の成人にN-アセチルシステインの3日間投与を考慮するとし、その根拠として大規模な無作為化比較試験での3週時点の転帰改善、とくに早期の脳症をもつ患者での利益を挙げる(参考文献148はLee WMら Gastroenterology 2009;137:856-64)。抗結核薬によるDILI 102例の別の無作為化試験では在院日数の短縮はあったが生存の利益は示されなかった。一方、非アセトアミノフェン急性肝不全の小児では短期の非経口N-アセチルシステインで転帰がむしろ不良だったため小児への使用には慎重であるべきとする。ウルソデオキシコール酸は強い掻痒に10〜15 mg/kgを分割投与するが、前向きの有効性データは不足しており安全性は高いと考えられるとする。重度の過敏反応・DRESSにはメチルプレドニゾロン1 mg/kgが用いられるが、Table 9では免疫チェックポイント阻害薬による症例に1 mg/kg/日のメチルプレドニゾロン相当、それ以外にプレドニゾン40〜60 mgと書き分けており、至適用量・期間は確立していないが多くは1〜3か月で漸減できるとしている。閲覧 2026-09-22
  2. 2.RUCAM in Drug and Herb Induced Liver Injury: The Update(International Journal of Molecular Sciences・2015)全文(PMC4730261)で確認した。RUCAM(Roussel Uclaf因果関係評価法。旧称CIOMS)は薬物性・生薬性肝障害の因果関係を定量的に評価する道具で、主として特異体質性の反応のために作られており内因性(直接型)の反応を想定していない。肝障害の定義はALTが基準値(N)の5倍以上、またはALPがNの2倍以上で、初診日に同時測定するのがよい。ALTが正常範囲にあるときは、骨など肝胆道以外の由来を除くためALP上昇がγ-グルタミルトランスペプチダーゼまたは5'-ヌクレオチダーゼの上昇を伴うことを確認する。障害型はALT/ALP(いずれもNの倍数)の比Rで分け、ALTが5N超でALPがN以下、または両者上昇でR 5以上なら肝細胞障害型、ALPが2N超でALTがN以下、または両者上昇でR 2以下なら胆汁うっ滞型、ALTが5N超・ALPがN超でRが2超5未満なら混合型とする。採点は7項目で行い、肝細胞障害型と胆汁うっ滞型・混合型で別の採点表を用いる。合計点は0点以下で除外、1〜2点でunlikely、3〜5点でpossible、6〜8点でprobable、9点以上でhighly probableと判定する。また中止後の経過を追う期間にステロイドやウルソデオキシコール酸を投与すると自然経過が隠れるため0点(情報なし)としか採点できないとしている。閲覧 2026-09-22
  3. 3.Amoxicillin-Clavulanate(LiverTox: Clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury (NCBI Bookshelf)・2020)ライブページはボット判定のため、2025年保存のWayback版で全文を確認した(章の更新表示は Last Update: October 20, 2020)。アモキシシリン-クラブラン酸は、米国でも欧州でも臨床的に明らかな薬物性急性肝障害の現在最も多い原因である。肝障害は特異体質性で、およそ2,500処方に1回の頻度と推定され、男性・高齢者・複数回の投与歴で多い。肝障害は主としてクラブラン酸によるもので、アモキシシリン単独への再投与では再発しないのに対し、配合剤への再投与ではより早く・より重い肝障害が起こり、遷延する胆汁うっ滞や肝硬変に至ることがある。HLA class IIのDRB1*15:01と拡張ハプロタイプDRB1*15:01-DRB5*01:01-DQB1*06:02、HLA class IのA*02:01との関連が報告されている。投与終了後数日から数週間たって発症しうるため関連が見逃されやすい。発熱・発疹・好酸球増多といった免疫アレルギー所見は起こりうるが必発ではなく通常は目立たない。小児では無黄疸で悪心・嘔吐・腹痛を呈することが多く、検査パターンも肝細胞障害型になりやすいが経過は良性であることが多い。閲覧 2026-09-22
  4. 4.Guidance for Industry: Drug-Induced Liver Injury: Premarketing Clinical Evaluation(U.S. Food and Drug Administration・2009)26頁のPDF全文を取得して確認した。Hy's lawは、薬物性の肝細胞障害に黄疸が伴うと予後が悪いというZimmermanの観察(移植前の時代で急性肝不全による死亡率10〜50%)を治験の枠組みに翻訳したものであると説明している。Hy's law症例の3要件は、①その薬が肝細胞障害を起こす(非肝毒性の対照薬またはプラセボより、ALTまたはASTの基準上限3倍以上の上昇の発生率が高いことで示される)、②そのような上昇を示した被験者のうち1名以上で、胆汁うっ滞の初期所見(ALP上昇)を伴わずに総ビリルビンが基準上限の2倍超へ上昇する、③ウイルス性肝炎・既存の肝疾患・他の肝毒性薬など、両者の組み合わせを説明できる他の理由がない、である。治験データベースでHy's law症例を1例見つけたら懸念すべきであり、2例あればその薬がより大きな集団で重症薬剤性肝障害を起こしうることを高度に予測するとされる。またこの所見は、Hy's law症例のおよそ10分の1の頻度で致死的または移植を要する重症肝障害を起こす薬を同定するとしている。投与中止を考慮すべき基準として、ALTまたはASTが基準上限の8倍超、5倍超が2週間超持続、3倍超かつ総ビリルビン2倍超またはINR 1.5超、3倍超に倦怠感・悪心・嘔吐・右上腹部痛または圧痛・発熱・発疹・好酸球増多(5%超)のいずれかが加わった場合、の4つを挙げている。ただしこれらは前向きに系統的な評価を受けていないとも断っている。閲覧 2026-09-22
  5. 5.Refinement of Hy Law Using the Drug-Induced Liver Injury Network Database(The American Journal of Gastroenterology・2025)抄録で確認した。Hyman Zimmermanの観察(黄疸を伴う肝細胞障害型の薬物性肝障害の死亡率は10%以上)をHy's lawと呼ぶが、Hy's lawは検査のタイミングも肝細胞障害型と混合型・胆汁うっ滞型の定義も定めていないとして、前向きDILINコホートで4通りの解釈を検証した。初診時のR値で分けると死亡(またはDILIによる肝移植)は肝細胞障害型11.1%対混合型・胆汁うっ滞型2.0%(P<0.001)、ピーク値のR値では10.3%対1.6%(P<0.001)、FDAの関連基準(ALTまたはAST基準上限3倍以上かつALP基準上限2倍以下)では初診時7.9%対3.9%(P=0.04)・ピーク値7.9%対3.0%(P=0.01)だった。初診時のR値がHy's law症例を同定する最も信頼できる方法であり、肝細胞障害型を高頻度に起こす薬はおおむね死亡率10%以上、混合型・胆汁うっ滞型を典型的に起こす薬はいずれも10%未満だった一方、黄疸を伴う肝細胞障害型を起こしても死亡率が低い薬があり、Hy's lawの精緻化が必要だと結論している。閲覧 2026-09-22
  6. 6.ACETAMINOPHEN TABLET(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed / Akron Pharma Inc.)・2026)米国の市販(OTC)アセトアミノフェン500 mg錠の添付文書を取得して確認した。用法は「12歳以上の成人・小児は症状が続くあいだ6時間ごとに2錠。医師の指示がないかぎり24時間に6錠を超えない」であり、上限は1日3,000 mgにあたる。肝臓についての警告は「成人が24時間に4,000 mgを超えて服用した場合、小児が24時間に5回分を超えて服用した場合、アセトアミノフェンを含む他の薬と併用した場合、本剤の使用中に成人が毎日3杯以上の酒類を飲む場合に、重篤な肝障害が起こりうる」である。医師の指示がないかぎり成人は10日、小児は5日を超えて使用しないとも指示している。閲覧 2026-09-22
  7. 7.Are some people at increased risk of paracetamol-induced liver injury? A critical review of the literature(European Journal of Clinical Pharmacology・2018)全文(PMC5765191)で確認した。英国の経口パラセタモールの承認用量は成人で1日4 g(1 gを4〜6時間ごと)であり、同じ用量が米国・オーストラリアでも推奨されている。英国の規制当局は体重50 kg未満の成人について「臨床判断」を用いるべきで肝毒性のリスクが高いかもしれないとするが、具体的な減量幅は示していない。静注製剤では英国の承認用量が体重50 kg超の成人で1日4 g(4〜6時間ごと)、肝毒性のリスクがある患者では1日3 gへ減量とされ、体重50 kg未満では15 mg/kgを4〜6時間ごと・上限1日60 mg/kgとされる。本総説の結論は「パラセタモールによる肝毒性のリスクが明らかに高いと言える患者群は存在しない」であり、英国で歴史的に高リスクの指標として用いられてきた因子には、臨床に再導入するに足る質の高い臨床的根拠がないとしている。英国では2012年以降、パラセタモール中毒の治療は単一の治療ラインに基づく方式(過量服用4時間後で100 mg/Lの治療ライン)へ改められ、時期のずれた服用や服用時刻が不明な例はすべて治療対象となった。閲覧 2026-09-22
  8. 8.Liver injury from herbal and dietary supplements(Hepatology・2017)全文(PMC5502701)で確認した。米国では生薬・サプリメント(HDS)による肝障害が増えており、DILINの前向き研究では全体の16%がHDSによるもので、その割合は2004〜2005年の7%から2010〜2012年の19%、2013〜2014年には20%へ増えた。主な原因はアナボリックステロイド、緑茶エキス、複数成分の栄養補助食品である。ボディビル用に売られるアナボリックステロイドは典型的に遷延する胆汁うっ滞型だが最終的には自然軽快する経過をとり、緑茶エキスなどは急性肝細胞障害型を起こす傾向がある。欧州のスペインの登録では2006年の2%から2010〜2013年の13%へ増加しており、アジアでは割合が大きく異なりシンガポールでは70%と報告されている。閲覧 2026-09-22
  9. 9.Intravenous N-acetylcysteine improves transplant-free survival in early stage non-acetaminophen acute liver failure(Gastroenterology・2009)抄録で確認した。非アセトアミノフェン起因の急性肝不全173例(N-アセチルシステイン81例・プラセボ92例)を72時間投与で比較した前向き二重盲検試験で、主要評価項目の3週全生存率は70%対66%(片側P=0.283)で有意差がなく、移植なし生存は40%対27%(片側P=0.043)と有意に良好だった。その差は脳症グレードI〜IIの114例(52%対30%、片側P=0.010)に限られ、グレードIII〜IVの59例では9%対22%(片側P=0.912)で利益がなかった。移植率は32%対45%で有意差はなかった(P=0.093)。悪心・嘔吐のみがN-アセチルシステイン群で有意に多かった(14%対4%、P=0.031)。著者らは、進行した脳症の患者は本剤の利益を受けず通常は緊急肝移植を要すると結論している。閲覧 2026-09-22