薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C2 Antimycobacterials / 抗結核薬 · 必修

イソニアジド

isoniazid

分類
Antimycobacterials / 抗結核薬
商品名(日本)
イスコチン
商品名(EU)
Isozid
科目
Pharmacology
トピック
C2: Antimycobacterial drugs
禁忌疾患
急性肝不全
標的微生物
Mycobacterium tuberculosis
副作用
知覚異常黄疸
相互作用
ビタミンB6フェニトインプロチオナミド
対象疾患
結核結核腫結核性脊椎炎結節性血管炎腸腰筋膿瘍
原因となる疾患
胸膜炎尋常性痤瘡鉄芽球性貧血薬剤誘発性ループス

🧠 全体像:はRIPEの「I」で、の治療だけでなくの予防投与にも単剤で使える唯一のRIPE構成薬という特別な立ち位置を持つ。分裂中のに対する()がRIPEの中で最も強く、治療開始直後に量を急速に減らして感染性を落とす主役でもある。副作用は末梢神経障害・肝障害・の3つを対にして覚えるのが定石で、末梢神経障害は(ビタミンB6)併用で予防できる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 RIPEでの役割 特徴的な副作用 単剤で使える場面
の主役 末梢神経障害・肝障害・ の予防投与に単剤可
リファンピシン (再発予防) 誘導・ 予防投与レジメンの一つ(4R)
への ・肝障害 単剤では用いない
耐性化予防(感受性判明まで) 単剤では用いない

⭐ だけが「予防」と「治療」の両方でが許される。 ではRIPEの一角として必ずするが、(LTBI)に対しては6〜9か月の(6H・9H)や、との併用短期レジメン(3HP・1HP)が確立している1。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isoniazid, H'>イソニアジド</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catalase-peroxidase'>カタラーゼ・ペルオキシダーゼ</span><br>(KatG)が活性化"]
    B --> C["反応性の高い代謝物を生成"]
    C --> D["NAD⁺と結合しINH-NAD<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adduct'>付加体</span>を形成"]
    D --> E["InhA(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enoyl-ACP reductase'>エノイル-ACP還元酵素</span>)を阻害"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mycolic acid'>ミコール酸</span>合成が止まる"]
    F --> G["細胞壁が作れず<br>分裂中の菌を殺菌"]

自体には抗菌活性がなく、自身が持つKatG酵素によって細胞内で活性化されて初めて効くという点がの理解にも直結する(KatG変異は主要な耐性の一つ)。分裂中の菌にしか効かないための菌には無効で、これが(酸性環境のに効く)との役割分担を生む。

💡 NAT2()のがの正体。 肝でのアセチル化速度により「」「」に分かれ、では血中濃度が高く保たれるぶん末梢神経障害のリスクが上がる。この多型は集団によって頻度が大きく異なり、243集団を集計した系統的レビューでは、の頻度が最も高いのは東アジア人と先住アメリカ人で、南欧の集団がそれに次ぐ。対照的に、中央アジア・中東・西欧の集団はの主な保有者である2。

薬物動態

項目 値・特徴
良好。空腹時投与が望ましい(食事で吸収低下)
分布 髄液を含めが良好(に使える理由)
代謝 肝でのアセチル化(NAT2)。により速度が大きく異なる
排泄 代謝物として
半減期 で約1時間、で約3時間

適応

領域 使いどころ
結核のRIPEレジメンの中核(2HRZE/4HR)
の予防 単剤6〜9か月(6H・9H)、またはとの併用短期レジメン(3HP・1HP)
を活かし標準治療の一部として使用

用法・用量

:成人では体重換算約5 mg/kg/日(最大300 mg)を1日1回、空腹時にし、RIPEの他剤と併用する3。の予防投与:同用量を6〜9か月継続する単剤法のほか、週1回投与の併用短期法(3HP)もある。(ビタミンB6)を、栄養不良・妊娠・糖尿病・腎不全・感染など末梢神経障害のリスクが高い患者では併用する。 添付文書は栄養不良患者、および飲酒常用者・糖尿病患者など神経障害の素因がある患者への併用を明記している3。実際の用量・期間は年齢・体重・適応・肝機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:急性肝疾患(など)、による重度肝障害の既往
  • ⚠️ 末梢神経障害は併用で予防できる。 がの再利用を阻害し機能的なを起こすことが機序で、栄養不良・妊娠・・糖尿病・腎不全・感染がリスク因子になる
  • ⚠️ 肝障害は年齢とともにリスクが上がる。 のは20〜35歳で約0.5%、35〜50歳で約1.5%、50歳超で3%以上とされ4、定期的な症状モニタリングを行う。無症候性の軽度だけでは中止しないが、有症状の肝障害や著明な上昇では中止する
  • フェニトインのを阻害し血中濃度を上昇させる(特にの患者で顕著)。併用時はフェニトイン中毒(眼振・)に注意する
  • は肝障害・末梢神経障害の両方のリスクを高める

副作用

頻度 内容
高頻度 の無症候性上昇(多くは自然軽快)
注意 末梢神経障害(・、併用で予防)、消化器症状
重篤・まれ (黄疸を伴う)、様症状(陽性、中止で軽快)、、まれに末梢神経障害が重度化した運動障害

まとめ

  • RIPEの「I」。KatGで活性化されるで、InhAを阻害して合成を止め、分裂中の菌を殺菌する。
  • の予防投与に単剤で使える唯一のRIPE構成薬。
  • NAT2による急速/の差が、血中濃度とのを説明する。
  • 末梢神経障害は(ビタミンB6)併用で予防(機能的B6欠乏が機序)。
  • 肝障害と様症状(陽性)も代表的な有害事象。
  • フェニトインの代謝を阻害し血中濃度を上げるため、併用時は中毒症状に注意する。

出典

  1. 1.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 1: Prevention – Tuberculosis preventive treatment, second edition(World Health Organization・2024)潜在性結核感染(LTBI)治療のレジメンとして、イソニアジド単剤6〜9か月(6H・9H)に加え、リファペンチンとの併用短期レジメン3HP(週1回3か月)・1HP(毎日1か月)が現行のWHO推奨に含まれることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.NAT2 global landscape: Genetic diversity and acetylation statuses from a systematic review(PLoS One・2023)1992年10月から2020年10月までの164論文・243集団・101の少数民族を対象とした系統的レビューで、急速アセチル化型の頻度が最も高いのは東アジア人と先住アメリカ人であり、南欧の集団がそれに次ぐこと、一方で中央アジア・中東・西欧の集団が緩徐アセチル化型の主な保有者であることを確認した。世界全体で最も頻度が高いハプロタイプは NAT2*4・*5B・*6A であり、アジアでは *5B が少なく *7B が多いこと。閲覧 2026-08-27
  3. 3.ISONIAZID 300 MG- isoniazid tablet(DailyMed (U.S. FDA); Health Department, Oklahoma State・2023)治療用量が体重換算5 mg/kg/日(最大300 mg)単回投与であること、栄養不良患者やアルコール依存症・糖尿病など神経障害の素因がある患者にピリドキシン併用が推奨されることを添付文書で確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Isoniazid(LiverTox, NIDDK (NCBI Bookshelf)・2025)イソニアジドによる症候性肝炎の発生率は20〜35歳で約0.5%、35〜50歳で約1.5%、50歳超で3%以上と年齢とともに明確に上昇することを確認した。閲覧 2026-08-27