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Drug Atlas · C2 Antimycobacterials / 抗結核薬 · 必修

カナマイシン

kanamycin

分類
Antimycobacterials / 抗結核薬Antibiotics / 抗菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C13: AminoglycosidesC2: Antimycobacterial drugs
禁忌疾患
重症筋無力症
標的微生物
Mycobacterium tuberculosis
副作用
難聴耳鳴めまい
監視検査値
クレアチニン
対象疾患
D-乳酸アシドーシス

🧠 全体像:はとほぼ同じ働き方をするだが、⚠️ 結核治療での現在の位置づけは瓜二つではない。 統合ガイドライン Module 4(2026年の第2版)は推奨B3.2でとを名指しして多剤耐性/の長期レジメンに「含めない」としており、一方で(入手できなければ)は条件付きでGroup Cに残っている1。「注射用アミノグリコシド系」とひとまとめに覚えると、この推奨を取り違える。💡 除外の理由が毒性ではなく有効性にある点も、同じ理由で誤解されやすい(後述)。⭐ なお日本の電子添文では「肺結核及びその他の結核症」が今もとして残っており、承認された用法と、国際的に推奨されるレジメンは別の話である2。

ストレプトマイシンとの違い

項目
機序 同じ(結合→蛋白合成の開始反応を阻害)2 同じ
結核以外の適応 重症グラム陰性菌感染症 ・という独自の適応を持つ
長期レジメンでの扱い ⚠️ 推奨B3.2で「含めない」と名指しされた(条件付き推奨・非常に低い確実性)1 Group Cに残る——推奨B3.11により、が入手できない場合の代替として、18歳以上・感受性確認・有害事象監視という同じ条件下で用いてよい1
主なの型 主として蝸牛機能障害(難聴・)2 主として(・回転性めまい)が先行しやすい
とのは部分的(変異部位が異なることが多い) とのは部分的

WHOはなぜカナマイシンだけを外したのか

⭐ 旧来の「注射薬入り治療」ではまたはが注射薬の代表格で、2020年までのの定義もこの3剤(・・)への耐性を要件にしていた3。転機は2018年で、STREAM Stage 1試験を受けた改訂が「注射薬である(または)をへ置き換える」という形で行われた1。

⚠️ 「注射薬が薬効群ごと外れた」ではない。 2026年の第2版が長期レジメンから除外しているのは推奨B3.2のとだけであり、Table 2.20のGroup Cには今も「(または)」が掲げられている。推奨B3.11は、①18歳以上、②で感受性が示され、③有害事象を監視するが確保できる、という条件下でを含めてよいとし、が入手できない場合に限りが代われるとする(いずれも条件付き推奨・非常に低い確実性)1。

💡 除外の根拠は「効かなさ」であって「毒性の強さ」ではない。 は理由を「これらの薬剤は使用時により不良な転帰と関連していた」と述べる。⚠️ 転帰と有害事象の数字は別々の解析から来ている——転帰は2018年の個別患者データ(長期レジメン、intention-to-treat集団)、有害事象は2016年の個別患者データの一部を用いたアーム別である1。

薬剤 ・再発の(対 治療成功)
2018年IPD
重篤な有害事象の(中央値)
2016年IPDの一部による
1.9(95%CL 1.0–3.4、2946例) 10.8%(95%信用区間 7.2–16.1)
2.0(1.1–3.5、777例) 8.4%(5.7–12.2)
0.3(0.1–0.8、635例) 10.3%(6.6–17.0)
0.5(0.1–2.1、226例) 4.5%(2.3–8.8)

⚠️ 有害事象の側では10.8%と10.3%がほぼ同等である——置き換えをしたのは転帰の差のほうである。💡 どちらも個別患者データを集めた観察研究中心の解析で、は少数にとどまるため、自身も推奨B3.2・B3.11の確実性を「非常に低い」と格付けしている。因果の証明ではなく、比較の方向を示すデータとして読む。

なお現在は・・などの全を中心とする・BDLLfx/C(では重症度に応じてBPaL・BPaLC・BDLC)が先に提案され、Group A・B・Cから組む長期レジメン(総治療期間18〜20か月)は、これらが組めないときの受け皿である1。

適応・用法

⚠️ の推奨と各国のは別物である。 日本の電子添文は今も適応菌種にを含み、適応症に「肺結核及びその他の結核症」を掲げている(ほかに表在性・皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、骨髄炎、肺炎、腎盂腎炎、、中耳炎、百日咳など)2。承認が残っていることは、国際的な推奨レジメンの構成薬であることを意味しない。

場面 用法・用量(日本の電子添文)2
肺結核およびその他の結核症 成人1日2 g(力価)を朝夕1 gずつ2回して週2日、または1日1 gずつ週3日。原則として他のと併用する
高齢者(60歳以上) 1回0.5〜0.75 g(力価)へ減量。小児または体重の著しく少ない患者も適宜減量する
その他の適応症 成人1日1〜2 g(力価)、小児1日体重1 kgあたり30〜50 mg(力価)を1〜2回に分けて筋注

⚠️ がある患者では減量するかをあける。 高い血中濃度が持続して腎障害が悪化し、も強く出るおそれがある2。クレアチニンと聴力の反復評価をセットで行う。

禁忌・注意・副作用

  • 電子添文の禁忌は1項目だけである——本剤の成分およびアミノグリコシド系またはに対する過敏症の既往歴2
  • ⚠️ 重症筋無力症は作用により症状を悪化させる。 ただし日本の電子添文はこれを禁忌欄ではなく「9.1.2 特定の背景を有する患者」に置いている2。同じ節の9.1.1には「本人またはその血族がアミノグリコシド系による難聴またはその他の難聴のある患者」が挙がる——家族歴をする理由がここにある。ミトコンドリア12S の変異(m.1555A>Gなど)をで持つ人は、通常量のアミノグリコシド投与でも難聴を来しやすい4
  • ⚠️ 重大な副作用の筆頭はで、電子添文は「主として蝸牛機能障害」と明記している(頻度は5%以上または頻度不明)。難聴・・めまいとして現れ、不可逆となりうる。💡 障害は音から始まってへ及ぶので、会話音域が保たれているうちに拾うには8 kHzでの聴力検査が有用である2。ほかに等の重篤な腎障害(0.1%未満)、ショック(0.1%未満)
  • ⚠️ 併用で毒性が足し合わさる薬がはっきり決まっている2:(等)、腎毒性・をもつ薬剤(バンコマイシン、シスプラチンなど白金含有抗悪性腫瘍薬)、麻酔薬・(作用が増強され呼吸抑制をきたしうる)、腎障害を起こすおそれのある血液代用剤(等)
  • 妊婦は有益性が危険性を上回る場合にのみ投与する——新生児にがあらわれるおそれがある2
  • その他の副作用として症状(・)・欠乏症状、注射局所の疼痛・がある2

⭐ よりが軽い、とは言えない。 ナミビアの4公的治療施設における(2004〜2014年、ベースライン聴力正常353例。群302例・群51例)では、あらゆる程度の聴力障害のが群56%・群75%(p=0.01)、より重度の聴力障害のリスクはで高かった(4.0、95%CI 1.5–10.8)5。⚠️ これは単一国の観察研究であり、は行われていない(施設の分布が両群で大きく偏っている)。上ののデータで両剤のがほぼ同等だったことと合わせ、が外れたのは安全性ではなく有効性の問題だったという読み方が要点である。

まとめ

  • と同じくに結合して蛋白合成を阻害する。・腎毒性・という副作用プロフィールも共通。
  • ⚠️ ただし結核治療での位置づけは共通ではない。 Module 4(2026年の第2版)の推奨B3.2はとだけを長期レジメンから除外し、(無ければ)は条件付きでGroup Cに残る(推奨B3.11)。「注射薬が薬効群ごと外れた」と覚えない。
  • 除外の根拠は有効性——2018年の個別患者データで・再発のが1.9・2.0に対し、0.3・0.5。別解析による重篤な有害事象の頻度はとでほぼ同等だった。
  • 日本の電子添文では「肺結核及びその他の結核症」が今も適応で、成人1日2 gを週2日または1日1 gを週3日の筋注(60歳以上は1回0.5〜0.75 gへ減量)、他のとの併用が原則。
  • 日本の電子添文が禁忌に挙げるのは過敏症の既往だけで、重症筋無力症は9.1.2「特定の背景を有する患者」として作用への注意が置かれている(妊婦も禁忌ではなく有益性投与)。
  • 重大な副作用は主として蝸牛機能障害としての、重篤な腎障害、ショック。8 kHzでの聴力検査と腎機能の反復評価が要る。

出典

  1. 1.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: treatment and care, second edition(World Health Organization・2026)2026-09-27に第2版(ISBN 978-92-4-012512-4)のPDF本体で確認した。推奨B3.2(不変)の原文が「Kanamycin and capreomycin are not to be included in the treatment of MDR/RR-TB patients on longer regimens.(Conditional recommendation, very low certainty of evidence)」で、カナマイシンとカプレオマイシンを名指しで長期レジメンから除外していること。⚠️ この除外は薬効群単位ではなく、推奨B3.11が「Amikacin may be included in the treatment of MDR/RR-TB patients aged 18 years or more on longer regimens when susceptibility has been demonstrated and adequate measures to monitor for adverse reactions can be ensured. If amikacin is not available, streptomycin may replace amikacin under the same conditions.」(同じく conditional・very low)とし、Table 2.20のGroup Cに「Amikacin (or streptomycin)」が掲げられていること。除外の理由づけとして本文が「Kanamycin and capreomycin – these medicines were associated with poorer outcomes when used; therefore, they are no longer recommended for use in MDR-TB regimens.」と述べ、Table 2.20の脚注hも同じ文を繰り返すこと。Table 2.21(2018年の個別患者データメタ解析、長期MDR-TBレジメン)で治療成功に対する治療失敗・再発の調整オッズ比がカナマイシン1.9(95%CL 1.0–3.4、2946例)・カプレオマイシン2.0(1.1–3.5、777例)、アミカシン0.3(0.1–0.8、635例)・ストレプトマイシン0.5(0.1–2.1、226例)であること。Table 2.22(脚注aによれば2016年の個別患者データの一部を用いた arm-based network メタ解析)の重篤な有害事象の絶対リスク中央値がカナマイシン10.8%(95%信用区間7.2–16.1)、アミカシン10.3%(6.6–17.0)、ストレプトマイシン4.5%、カプレオマイシン8.4%、リネゾリド17.2%であること。沿革として、STREAM Stage 1試験を受けた2018年の改訂が「replace the injectable agent kanamycin (or capreomycin) with amikacin」であったこと。推奨B3.15〜B3.17が長期レジメンの総期間18〜20か月・培養陰転後15〜17か月・アミカシンまたはストレプトマイシンを含む場合の強化期6〜7か月を提案すること。推奨B1.1・B1.2が6か月のBPaLM・BDLLfx/Cを提案し、pre-XDR-TBでは重症度に応じてBPaL・BPaLC・BDLCを使い分けること。閲覧 2026-09-27
  2. 2.カナマイシン硫酸塩注射液1g「明治」電子添文(医薬品医療機器総合機構・2026)2026年3月改訂(第2版)の電子添文全文を確認した。「2. 禁忌」は「本剤の成分並びにアミノグリコシド系抗生物質又はバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者」の1項目のみで、重症筋無力症は禁忌欄ではなく「9.1.2」(特定の背景を有する患者)に「神経筋遮断作用がある」として置かれ、9.1.1に「本人又はその血族がアミノグリコシド系抗生物質による難聴又はその他の難聴のある患者」がある。「4. 効能・効果」の適応菌種に結核菌を含み、適応症に「肺結核及びその他の結核症」が今も掲げられている。「6. 用法・用量」は〈肺結核及びその他の結核症に対して使用する場合〉成人1日2g(力価)を朝夕1gずつ2回筋肉内注射して週2日、または1日1gずつ週3日、高齢者(60歳以上)は1回0.5〜0.75gとし、原則として他の抗結核薬と併用すると定める。〈その他の場合〉は成人1日1〜2g、小児1日体重1kgあたり30〜50mgを1〜2回に分けて筋注。「11.1 重大な副作用」は第8脳神経障害を「主として蝸牛機能障害」と明記し(5%以上又は頻度不明)、急性腎障害等の重篤な腎障害(0.1%未満)・ショック(0.1%未満)を挙げる。「8.3」は聴力障害の早期発見に8kHzでの聴力検査が有用と述べる。「9.2 腎機能障害患者」は減量または投与間隔延長を求め、「9.5 妊婦」は有益性投与としたうえで新生児に第8脳神経障害があらわれるおそれがあるとする。「10.2 併用注意」にループ利尿剤(フロセミド等)・腎毒性及び聴器毒性を有する薬剤(バンコマイシン、白金含有抗悪性腫瘍剤等)・麻酔剤/筋弛緩剤(呼吸抑制)・腎障害を起こすおそれのある血液代用剤が挙げられている。「18.1 作用機序」は細菌リボソームの30Sサブユニットに結合し蛋白合成の開始反応を阻害すると記載する。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Evidence-based Definition for Extensively Drug-Resistant Tuberculosis(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine・2021)2020年までのXDR-TB定義がMDR-TBかつフルオロキノロン耐性かつ第二選択注射薬(カナマイシン・アミカシン・カプレオマイシン)耐性であったこと、2019年のWHO推奨で第二選択注射薬の役割が大幅に縮小したためこの定義の見直しが必要になったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Mitochondrial 12S rRNA mutations associated with aminoglycoside ototoxicity(Mitochondrion・2011)ミトコンドリア12S rRNA遺伝子の変異(m.1555A>Gなど)を母系遺伝で持つ人は、通常量のアミノグリコシド投与でも難聴を来しやすいことを確認した。カナマイシンを含むアミノグリコシド系全般に共通するリスクである。閲覧 2026-09-07
  5. 5.Comparing amikacin and kanamycin-induced hearing loss in multidrug-resistant tuberculosis treatment under programmatic conditions in a Namibian retrospective cohort(BMC Pharmacology & Toxicology・2015)ナミビアの4公的MDR-TB治療施設における後ろ向きコホート(2004-2014年、ベースライン聴力正常353例、カナマイシン群302例・アミカシン群51例)で、聴力障害の累積発生率がカナマイシン群56%(168/302)・アミカシン群75%(38/51)(p=0.01)であり、より重度の聴力障害のリスクはアミカシンで有意に高かった(調整オッズ比4.0、95%CI 1.5-10.8)ことを本文とTable 2・Table 3で確認した。ただしTable 1では治療施設の分布が両群で大きく異なり(アミカシン群の98%が単一施設)、無作為化されていない観察研究である。閲覧 2026-08-27