薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C8 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

アモキシシリン

amoxicillin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
サワシリンパセトシンワイドシリン
商品名(EU)
OspamoxAugmentin(クラブラン酸配合)
科目
Pharmacology
トピック
C8: Penicillins
禁忌疾患
伝染性単核球症
標的微生物
Streptococcus pyogenes / GASStreptococcus pneumoniaeEnterococcus faecalisListeria monocytogenesHelicobacter pyloriBorrelia burgdorferi
副作用
下痢皮疹
自然耐性の微生物
Bacillus cereusChlamydia psittaciChlamydophila pneumoniaeCoxiella burnetiiEnterobacter cloacaeKlebsiella pneumoniaeMycoplasma genitaliumMycoplasma hominisMycoplasma pneumoniaeOrientia tsutsugamushiProteus vulgarisRickettsia prowazekiiRickettsia rickettsiiRickettsia typhiSerratia marcescensUreaplasma urealyticum
対象疾患
MALTリンパ腫(節外性辺縁帯リンパ腫)クラミジア性器感染症ヒト咬傷創感染ライム病リンパ管炎胃炎咽後膿瘍化膿性リンパ節炎化膿性関節炎(敗血症性関節炎)化膿性仙腸関節炎感染性心内膜炎機能性ディスペプシア気管支拡張症急性壊死性潰瘍性歯肉炎急性中耳炎・慢性中耳炎(滲出性中耳炎を含む)急性副鼻腔炎急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍憩室症・憩室炎根尖性歯周炎市中肺炎歯性上顎洞炎消化性潰瘍多脾症候群唾液腺炎・唾石症丹毒・蜂窩織炎智歯周囲炎放線菌症慢性副鼻腔炎無脾症・脾機能低下症涙嚢炎類丹毒猩紅熱脾摘後重症感染症
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症急性・慢性尿細管間質性腎炎薬剤性免疫性溶血性貧血

🧠 全体像:アモキシシリンはペニシリンにを足してグラム陰性菌へ間口を広げたで、経口吸収がアンピシリンより良いため外来経口の主力になる。弱点は素のβラクタマーゼに壊されること。だから実臨床ではと組ませる設計が定番で、「アモキシシリン単剤か、配合剤か」は耐性菌がいるかどうかの判断そのものになる。

薬効群の中での位置づけ

は側鎖の改造で守備範囲を変えてきた歴史そのものが分類になっている。

世代・型 代表 広がった範囲 弱点
(PCG)・ ・梅毒・髄膜炎菌 βラクタマーゼに弱い。腸内細菌に無効
・ MSSA(黄色ブドウ球菌のに耐える) には無効。グラム陰性に弱い
アモキシシリン・アンピシリン 腸球菌・・一部の腸内細菌・H. pylori 素のβラクタマーゼに弱い
Pseudomonas aeruginosa 単剤では耐性化しやすくと配合

⭐ アモキシシリンとアンピシリンの使い分けは「経口か静注か」がほぼすべて。 はほぼ同じだが、アモキシシリンはが高く(約75〜90%)食事の影響も小さいため外来経口に向き、アンピシリンは経口吸収が悪い分を静注で補う。逆に・サルモネラのではアンピシリンの方が腸管内濃度の点で好まれるという例外がある。

機序

flowchart TD
    A["アモキシシリンが細菌の細胞壁へ到達"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein, PBP'>ペニシリン結合蛋白</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein'>PBP</span>)に共有結合"]
    B --> C["ペプチドグリカンの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transpeptidase'>トランスペプチダーゼ</span>反応を阻害"]
    C --> D["架橋できない細胞壁が積み上がる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autolysin'>自己融解酵素</span>が活性化"]
    E --> F["浸透圧に耐えられず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriolysis (lysis)'>溶菌</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]
    G["細菌がβラクタマーゼを産生"] -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-lactam ring'>βラクタム環</span>を加水分解"| A
    H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clavulanate'>クラブラン酸</span>を併用"] -.->|"βラクタマーゼを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suicide substrate'>自殺基質</span>として不活化"| G

がD-Ala-D-Ala構造を模倣してのに入り込み、共有結合して酵素を止める。分裂して細胞壁を作っている菌にしか効かない(のである理由)。

💡 自体はほとんど抗菌力を持たない。 βラクタマーゼに「基質のふりをして」結合し、酵素を不可逆的に壊すである。だから配合剤はアモキシシリンのスペクトラムを広げるのではなく、本来の守備範囲を耐性菌から取り戻す設計になっている。

薬物動態

項目 値・特徴
約75〜90%(アンピシリンの約40%より大幅に良い)
食事の影響 ほぼ受けない。食前食後を問わず服用できる
分布 中耳・副鼻腔・肺・尿路へ良好。髄液へは炎症時のみ
代謝 ほとんど受けない
排泄 が主体(未変化体)。腎機能低下でが要る
半減期 約1時間

⭐ のなので「を超えている時間(%T>)」が効果を決める。 1回量を増やすより投与回数を増やす方が理にかなう。1日3回投与が基本になるのはこのため。

適応

領域 使いどころ
呼吸器 (肺炎球菌)、・の第一選択
消化器 H. pylori除菌の+(またはメトロニダゾール)との3剤併用
歯科処置前の予防投与(高リスク患者)
泌尿器 腸球菌による尿路感染
感染症一般 (アンピシリンと並ぶ選択肢)、ライム病の
人獣共通・口腔 Erysipelothrix rhusiopathiae による(⚠️ 本菌はバンコマイシンに本質的耐性)、(メトロニダゾールとの併用)

用法・用量

経口。成人では1回250〜500 mgを1日3回、重症・耐性菌が想定される呼吸器感染では1回1 gまで増量する。H. pylori除菌では1回750 mgを1日2回。小児は体重あたりで計算する。腎機能低下例ではを延ばす。 実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:への過敏症、(感染中の投与で高率に全身性発疹が出る)
  • :とのは古くは10%と言われたが、側鎖構造が異なれば実際の頻度はごく低い。「ペニシリンアレルギー」の申告内容(発疹か、アナフィラキシーか)を確認せずにへ逃げない
  • 腎機能:高用量・腎不全で痙攣(βラクタム共通の)

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢(配合でさらに増える)、悪心
注意 皮疹。IgE介在の蕁麻疹(真のアレルギー)と遅発性の(多くは再投与可能)を区別する
重篤・まれ アナフィラキシー、、間質性腎炎、肝障害(配合剤で多い)

まとめ

  • 。ペニシリンにを足してグラム陰性菌側へ間口を広げた薬。
  • に共有結合して細胞壁の架橋を止める。分裂中の菌にしか効かない。
  • 経口吸収がアンピシリンより良く食事の影響も小さいので、外来経口の主力になる。
  • 素のβラクタマーゼに弱い。配合は守備範囲を広げるのでなく、耐性菌から取り戻す設計。
  • なので1回量より投与回数。1日3回が基本。
  • 。腎機能低下では間隔を延ばす。高用量・腎不全で痙攣。
  • では高率に発疹が出るため避ける。
  • H. pylori除菌の3剤併用の一角を担う。