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Disease Atlas · 全身 · 先天性疾患

多脾症候群

Polysplenia syndrome

別名
左側相同Left isomerism
臓器系
全身循環器血液
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
発生学 5.5:臨床関連発生学 12.6:心血管系:臨床
鑑別疾患
無脾症・脾機能低下症
関連疾患
胆道閉鎖症腸回転異常症・腸軸捻転内臓錯位症候群
治療薬
ペニシリンVアモキシシリン

🧠 全体像:(polysplenia syndrome、左側相同)は、(右側相同)と対をなす(ヘテロタキシー)である。のによるが破綻し、本来は左側だけにある構造が体の両側に対称に現れる——脾に関して言えば、単一の脾臓を欠くとは逆に、複数の小さく機能の乏しい脾臓ができる1。⭐ 「=脾ゼロ、多=脾たくさん」という語感とは裏腹に、臨床上の要点は共通する。 どちらもの合併を評価し、どちらも脾機能そのものは信頼できないという前提で管理する。

無脾症候群との対比

(右側相同) (左側相同)
脾臓 欠損(単一臓器としてゼロ) 複数の小さく機能の乏しい脾臓
対称化する構造 右側の構造が両側性に(両側とも右肺様・右心耳様) 左側の構造が両側性に(両側とも左肺様・両側形態学的)
の重症度 より重篤(の合併率が高い) 相対的に軽度なことが多いが、・などを伴いうる
合併時の1年死亡率 約85% 50%超
正常心・軽微なにとどまる割合 まれ 5〜10%が正常心または軽微なにとどまり成人に達する1

⚠️ 「はより軽い」と単純化しない。 相対的に予後が良い傾向はあるが、を合併すれば1年死亡率は50%を超え、決して無害ではない1。

臨床像——脾以外の左側性構造

は脾だけでなく、体中の左右非対称な構造すべてに及ぶ。でみられる代表的な組み合わせは次のとおりである1。

系統 所見
心血管 、、両側の形態学的、のリスク
呼吸器 両側形態学的左肺(肺、両側とも過剰葉数が少ない構造)
消化管 症、
静脈系 下大静脈欠損(による還流)

💡 の重症度はの型によって系統的に異なる。 (完全な鏡像)に比べ、(・)はなどのを有意に多く伴う2。ただしこの疫学データは・を合わせた「」全体の集計であり、単独の内訳を分けて報告したものではない点に注意する2。

胆道閉鎖症との合併——脾奇形を伴う胆道閉鎖症(BASM)

⭐ のおよそ10%にが合併する(BASM)3。BASMは・腹部・心血管や肺の奇形を多様に組み合わせて伴い、単独のに比べ胆汁排泄が不良で全体的な予後は不良とされるが、経験を積んだ施設では手術成績・長期の胆汁排泄に単独例との有意差がないとも報告されている3。

⚠️ 新生児でを疑ったら、脾の数と内臓の左右配置も画像で確認する。 BASMを見落とすと、合併する・血管異常への備えが遅れる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primitive node (Hensen node)'>原始結節</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motile cilium'>運動線毛</span>機能異常<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Left-right axis determination'>左右軸決定</span>の破綻)"] --> B["左側性構造が両側性に出現"]
    B --> C["複数の小さく機能の乏しい脾臓(多脾)"]
    B --> D["両側形態学的左肺・下大静脈欠損"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrioventricular septal defect (AVSD)'>房室中隔欠損</span>などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac defects'>心奇形</span>"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal malrotation'>腸回転異常</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biliary atresia'>胆道閉鎖症</span>の合併"]
    C --> G["脾機能は正常と見なさない"]
    E --> H["心エコー・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac defects'>心奇形</span>の重症度を評価"]
    H --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complex congenital heart disease'>複雑心奇形</span>を合併するか"}
    I -->|"あり"| J["1年死亡率50%超。専門施設で管理"]
    I -->|"軽微・正常心"| K["5〜10%は成人まで無症状に経過しうる"]

管理——脾があっても脾機能は信頼しない

⚠️ の脾臓は「数はあっても働きが乏しい」。 複数の小さな脾臓は、でみられるに対する脆弱性と同様の機能的を来しうる1。したがって画像で脾臓が「複数見える」ことをもって脾機能が保たれていると判断しない。

⭐ 予防の骨格はと共通する。 脾機能が保たれていないと判断される、あるいは判定できない場合は、やアモキシシリンによるとワクチン接種を、に準じて検討する。国・年齢による推奨の違いは・の項を参照する。

まとめ

  • (左側相同)は、(右側相同)と対をなすで、複数の小さく機能の乏しい脾臓を特徴とする。
  • ⭐ より予後が良い傾向はあるが、決して軽症とは限らない。 合併時の1年死亡率はで約85%・で50%超、一方での5〜10%は正常心にとどまり成人に達する。
  • 心血管(・)、呼吸器(両側形態学的左肺)、消化管(・)、静脈系(下大静脈欠損)にわたる合併がありうる。
  • ⚠️ のおよそ10%にが合併する(BASM)。 新生児の評価では脾の数と内臓の左右配置も確認する。
  • ⚠️ 脾臓が複数あることは脾機能が保たれていることを意味しない。 脾機能が不確実なら、に準じた・ワクチン接種を検討する。

出典

  1. 1.Heterotaxy Polysplenia Syndrome in Adulthood: Focused Review and a Case Report(Cureus(Lagrotta G, Moises M)・2020)左側相同(多脾症候群)は左側臓器が対性に存在し右側臓器が欠損しうる臓器錯位の一型で、単一の脾臓ではなく複数の小さく機能の乏しい脾臓を特徴とすること、心奇形として房室中隔欠損・肺動脈狭窄・両側の左心耳形態・完全房室ブロックのリスクを伴いうること、非心奇形として両側形態学的左肺(両葉性肺)、腸回転異常、下大静脈欠損(奇静脈による還流)を伴いうること、複雑心奇形を伴う症例の1年死亡率は無脾症候群で85%・多脾症候群で50%超と報告されていること、一方で多脾症候群患者の5〜10%は正常心または軽微な心奇形にとどまり成人に達すること、診断には心エコー・CT・MRIを用いることを、総説として確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Laterality defects in the national birth defects prevention study (1998-2007): birth prevalence and descriptive epidemiology(American Journal of Medical Genetics Part A・2014)米国NBDPSの非症候性左右軸異常517例(臓器錯位378例=73.1%、全内臓逆位139例=26.9%)で出生有病率が1万出生あたり1.1であったこと、臓器錯位に予期される奇形を除いたうえで、臓器錯位のほうが全内臓逆位に比べて両大血管右室起始・房室中隔欠損・肺動脈狭窄・ファロー四徴症以外の心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖・総/部分肺静脈還流異常を有意に多く伴っていたことを確認した。本論文は臓器錯位(左側相同・右側相同を合わせた集団)としての疫学であり、多脾症候群(左側相同)単独の内訳は報告していない閲覧 2026-09-06
  3. 3.Extra-Hepatic Biliary Atresia in Association with Polysplenia and Intestinal Malrotation(Journal of Neonatal Surgery(Ramji J, Joshi RS, Bachani M, Rathore D)・2013)肝外胆道閉鎖症のおよそ10%に多脾症候群(脾奇形を伴う胆道閉鎖症=biliary atresia splenic malformation, BASM)が合併すること、多脾症候群は腸回転異常・腹部内臓逆位・心血管・血管・肺の奇形を多様に組み合わせて伴うこと、多脾症候群を合併した胆道閉鎖症は単独の胆道閉鎖症に比べ胆汁排泄が不良で全体的な予後が不良であるが、経験を積んだ施設では手術成績・長期の胆汁排泄に有意差がないことを、症例報告と総説として確認した閲覧 2026-09-06