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Disease Atlas · 肝胆膵 · 先天性疾患

胆道閉鎖症

Biliary atresia

臓器系
肝胆膵小児
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 C/45:黄疸の病態生理/ビリルビン代謝異常/胆石症小児科 3-45:胆汁うっ滞・抱合型高ビリルビン血症小児科 50:小児の胆汁うっ滞性肝疾患小児科 09:新生児黄疸
鑑別疾患
新生児黄疸・高ビリルビン血症総胆管嚢腫
合併症
肝硬変
治療薬
ウルソデオキシコール酸
症状
遷延性黄疸黄疸
検査値
ビリルビン
スコア
PELDスコア

🧠 全体像時間が予後を決める疾患である。胆管が進行性に線維化・閉塞していく過程そのものは止められないが、生後60日以内に葛西手術()を行えば約70%で胆汁流出が確立するのに対し、生後90日を過ぎると胆汁流出が得られる児は25%未満まで落ちる。この一点がすべての診療行動を規定する——「生後2週を超える黄疸ではを測る」という一見地味なルールが、実は時間との勝負の入口になっている。

病態

は、および部の胆管が進行性に線維化・閉塞していく疾患である。原因は単一ではなく、の胆管傷害、ウイルス感染、毒素曝露などが複合的に関与すると考えられているが、機序は完全には解明されていない1。未治療のまま進行すると、閉塞した胆管から胆汁が排泄できず胆汁うっ滞が持続し、・門脈圧亢進・肝不全へと進む1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrahepatic'>肝外</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='porta hepatis'>肝門</span>部胆管の進行性線維化・閉塞"] --> B["胆汁排泄が途絶"]
    B --> C["生後2週を超える<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prolonged jaundice'>遷延性黄疸</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='acholic stool'>灰白色便</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dark urine'>濃色尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatomegaly'>肝腫大</span>"]
    C --> D{"生後何日で<br>葛西手術を施行するか"}
    D -->|"60日以内"| E["約70%で胆汁流出が確立"]
    D -->|"90日超"| F["胆汁流出の確立は25%未満"]
    B --> G["未治療:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biliary cirrhosis'>胆汁性肝硬変</span><br>門脈圧亢進・肝不全"]

分類

は閉塞の高さによって3型に分類される。III型(部での閉塞で吻合可能な胆管が残らないもの)が最多で、症例の9割以上を占める1

これとは別の軸として、側性異常(など)の有無による分類もある。側性異常を伴わない非症候性が症例の84%を占め、側性異常を伴わない奇形合併型が6%、側性異常を伴う症候性型(胆道閉鎖脾奇形症候群:BASM)が10%を占める2

臨床像——時間との勝負の入口

⚠️ 生後2週を超える黄疸では、直接(抱合型)ビリルビンを必ず測る。 これを怠ることが診断遅延の最も典型的な経路である。全身状態は良好に見えることが多く、「元気だから様子を見る」という判断が命取りになる。

  • 典型的な臨床像は、生後2週を超えるである1
  • ⚠️ との決定的な違いは、間接()優位か直接(抱合型)優位かにある。 はいずれも必ず優位で、が優位な黄疸は生理的にはありえない。の排泄障害であるため優位の黄疸を呈し、この一点でと本質的に異なる。
  • は間欠的にしか出ないこともあり、一度確認できないからといってを除外してはならない。

診断

を単独で確定できる非侵襲的検査は存在せず、複数の検査を組み合わせて評価する。

検査 所見・位置づけ
総・直接ビリルビン >1.0 mg/dL(17 μmol/L)で胆汁うっ滞として精査を進める2
腹部超音波 triangular cord徴候部の)、胆嚢の欠如・低形成が特異度は高いが、単独での診断精度は70〜80%にとどまり、正常像でも除外できない1
肝胆道 腸管への排泄欠如を示すが、重度のでも同様の所見を来すため非特異的で、偽陽性・はおよそ10%に達する1
が最も感度・特異度の高い組織学的所見1
術中 診断の。造影剤が通過しなければと確定する1

⭐ 画像検査の目的は「を積極的に証明すること」ではなく、「を否定できないまま時間を浪費しないこと」にある。疑いが残れば手術(術中)へ進む判断を遅らせない。

治療——時間が予後を決める

葛西手術()を生後60日以内に施行することが最重要の予後規定因子である。 生後60日以内に施行すればおよそ70%で胆汁流出が確立するのに対し、生後90日を過ぎて施行した場合は胆汁流出が得られる児は25%未満にとどまる2

な転帰研究(743例)における自己肝は、コホート全体で2年・5年・10年・15年がそれぞれ57.1%・37.9%・32.4%・28.5%であった2。同じ研究では、手術時年齢が生後45日未満から90日まで上がるにつれて自己肝が低下することも示されている2

葛西手術後も胆管炎、門脈圧亢進、胆汁うっ滞の進行を来す例が多く、多くは最終的に小児へ至る。米国のデータでは移植後5年は90%を超える1。移植までの期間にはによる重症度評価が用いられ、胆汁うっ滞に対しては補充などの支持療法を併用する。

鑑別

疾患 鑑別のポイント
必ず優位。優位ならを積極的に疑う
同じく優位を来すが、腹部超音波で胆管の拡張として区別できることが多い

まとめ

  • 部胆管が進行性に線維化・閉塞する疾患で、III型(部での閉塞)が最多。
  • 生後2週を超える黄疸ではを必ず測定する。優位であることが、であるとの決定的な違いである。
  • 診断は超音波・肝胆道を組み合わせ、術中で確定する。単独で確定できる非侵襲的検査はない。
  • 時間が予後を決める:葛西手術を生後60日以内に行えば約70%で胆汁流出が確立するが、生後90日を過ぎると25%未満にとどまる。
  • 葛西手術後も進行する例が多く、多くは最終的に小児を要する。

出典

  1. 1.Guideline for the Evaluation of Cholestatic Jaundice in Infants: Joint Recommendations of NASPGHAN and ESPGHAN(North American Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition / European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition・2017)生後2週以降に黄疸のある児は総・抱合型(直接)血清ビリルビンでの評価が推奨されること(推奨1A)、抱合型(直接)ビリルビン1.0 mg/dL(17 μmol/L)超が病的とみなされること、胆道閉鎖症が生後3か月以内の閉塞性黄疸の最も頻度の高い同定可能な原因であること、胆道閉鎖症が3分類(非症候性84%、側性異常を伴わない奇形合併6%、側性異常を伴う症候性10%)に分かれること、肝門部空腸吻合術(Kasai手術)を生後60日以内に施行すればおよそ70%で胆汁流出が確立する一方、生後90日以降では25%未満にとどまること、743例の大規模転帰研究で自己肝生存率が手術年齢とともに低下し2・5・10・15年生存率がそれぞれ57.1%・37.9%・32.4%・28.5%であったことを、原著Table 1・本文・要旨から確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Biliary Atresia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)胆道閉鎖症が肝外・肝内胆管の進行性線維閉塞性疾患で未治療なら胆汁うっ滞・胆道性肝硬変・肝不全に至ること、生後2週を超える遷延性黄疸・灰白色便・濃色尿・肝腫大という典型的な臨床像、腹部超音波のtriangular cord signや胆嚢異常が高い特異度を持つ一方で単独の診断精度は70〜80%にとどまること、肝胆道シンチグラフィの排泄欠如は重度の肝細胞機能不全でも同様の所見を来しうるため非特異的で偽陽性・偽陰性率がおよそ10%に達すること、術中胆道造影が診断のゴールドスタンダードであること、肝生検で胆管増生が最も感度・特異度の高い組織学的所見であること、Kasai手術後も病勢が進行する例が多く小児肝移植が長期管理に不可欠であり米国データで移植後5年生存率が90%を超えることを確認した。閲覧 2026-08-11