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Microbe Atlas · 細菌

Streptococcus pneumoniae

肺炎球菌

分類
G+ 球菌 / Gram+ cocciStreptococcus
性状
Gram陽性 (G+)球菌 Cocci
科目
Medical Microbiology
トピック
2/3: Streptococcus pneumoniae, oral streptococci and cariogenesis. Anaerobic cocci2/4: Streptococcus pyogenes2/5: Streptococcus agalactiae, Enterococcus genus
原因となる疾患
S状静脈洞血栓症Waterhouse-Friderichsen症候群クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎遺伝性・後天性溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症・G6PD欠乏症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間ヘモグロビン尿症)角膜炎鎌状赤血球症感音難聴眼窩蜂窩織炎急性中耳炎・慢性中耳炎(滲出性中耳炎を含む)急性乳様突起炎細菌性髄膜炎市中肺炎内耳炎(迷路炎)慢性副鼻腔炎溶血性尿毒症症候群脾摘後重症感染症
作用する薬剤
アモキシシリンアンピシリンエルタペネムセフェピムセフォタキシムセフォペラゾンセフタロリンホサミルセフトリアキソンセフロキシム(-アキセチル)デラフロキサシンバンコマイシンペニシリンGペニシリンVメロペネムモキシフロキサシンリネゾリドレファムリンレボフロキサシンロキシスロマイシン

🧠 全体像:肺炎球菌の病原性はほぼ莢膜一点に集約される。94種類ある血清型のが貪食を防ぐため、莢膜化細菌を除去する臓器である脾臓を失った患者としての鎌状赤血球症)で重症化しやすく、肺炎・髄膜炎・中耳炎・副鼻腔炎という侵襲性感染を起こす。同じ性でも莢膜を持たないとはここで運命が分かれる——莢膜という「防御の鎧」を持つ本菌は侵襲性感染を、鎧を持たない付着による局所病変()にとどまる。

微生物学的な特徴

グラム陽性ので「(先端が尖った柳葉型)」に見えるのが特徴。上気道に定着する常在菌でもある。

試験 所見 何を分けるか
溶血パターン (部分溶血、緑色 β溶血のB群レンサ球菌と区別
感受性 同じ性のS. mitisなど、耐性)との鑑別点
胆汁 陽性(胆汁中で溶解) )との鑑別点。の補助として使う

感受性と胆汁が本菌を確定する2点。 同じでもとは病原性の方向がまったく異なるため、この鑑別は臨床的に重い意味を持つ。属全体の溶血パターン・Lancefield分類の一覧はのページを参照。

病原性の仕組み

  • 莢膜(多糖体、94血清型):病原性の中核。莢膜化細菌は脾臓のによる貪食・に依存して排除されるため、(鎌状赤血球症など)の患者は重症・性感染のリスクが著しく上昇する
  • :気道粘膜表面のを切断し、定着・侵入を助ける
  • 肺胞に達すると好中球主体の炎症反応を起こし、下葉優位のを形成する
flowchart TD
    A["Streptococcus pneumoniae"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polysaccharide capsule'>多糖体莢膜</span>で貪食を回避"]
    B --> C["脾臓(莢膜化細菌の除去臓器)が正常なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='localized infection'>局所感染</span>にとどまりやすい"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='post-splenectomy'>脾摘後</span>・鎌状赤血球症では<br>莢膜化細菌の除去機構が働かない"]
    D --> E["侵襲性感染<br>(菌血症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electric shock (electrocution)'>電撃</span>性敗血症)"]
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IgA protease'>IgAプロテアーゼ</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal barrier'>粘膜バリア</span>を突破"]
    F --> G["上気道からの隣接臓器への進展<br>(中耳・副鼻腔・肺)"]

⚠️ 患者の発熱は救急疾患として扱う。 莢膜化細菌(本菌・髄膜炎菌)によるは数時間でショックに至りうるため、ワクチン接種歴によらず経験的抗菌薬を即座に開始する。

感染経路と疫学

  • 上気道のが、鼻腔から中耳・副鼻腔へ、あるいは誤嚥で下気道へと隣接臓器へ進展する形で発症することが多い
  • 感染で伝播し、保育施設・高齢者施設で伝播しやすい
  • 高リスク群:(鎌状赤血球症)、乳幼児・高齢者、、免疫不全、ワクチン未接種

起こす疾患

の原因菌第1位であり、以下4疾患の最頻原因菌でもある(覚え方 “MOPS”:髄膜炎 Meningitis・中耳炎 Otitis・肺炎 Pneumonia・副鼻腔炎 Sinusitis)。

疾患 特徴
下葉優位の、「」の喀痰
乳児期以降で成人まで一貫して主要な原因菌
を含む) 小児ので最も頻度が高い
の主要起因菌の一つ
感音難聴 髄膜炎後の内耳障害として難聴を残しうる
小児気道緊急症の鑑別に入る

診断

  • 血液寒天培地(5% CO₂培養)でのコロニー
  • (Quellung反応)またはで莢膜血清型を同定
  • 喀痰・血液・髄液のグラム染色でのグラム陽性を確認する

治療と予防

予防(ワクチン):莢膜が病原性の中心であるため、ワクチンもを標的とする。

ワクチン 対象 免疫応答
23価(PPSV23) 成人・高リスク児 23血清型 、主にIgM、を残さない
13〜21価(PCV13〜PCV21) 小児・成人 13〜21血清型(蛋白質と結合) 、IgGへのを誘導

💡 なぜだけが乳幼児に効くのか。 多糖体単独では乳幼児の免疫(記憶を残さないIgM応答)しか誘導できない。を無毒化した蛋白質に結合させることで、(IgGへの)を誘導できる。

まとめ

  • 莢膜(94血清型)が病原性の中心。感受性・胆汁(莢膜なし)と鑑別する。
  • ・鎌状赤血球症など莢膜化細菌の除去機構が働かない患者で性感染のリスクが著しく上昇する(O)。
  • の原因菌第1位で、髄膜炎・中耳炎・肺炎・副鼻腔炎(MOPS)の最頻原因菌でもある。
  • ペニシリン耐性・セファロスポリン耐性が世界的に増加しており、重症例ではバンコマイシン併用を検討する。
  • ワクチンは成人用の多糖体型(IgM応答・なし)と小児用の蛋白結合型(IgG応答・あり)で免疫応答の質が異なる。