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Microbe Atlas · 細菌

Streptococcus agalactiae / GBS

B群レンサ球菌

分類
G+ 球菌 / Gram+ cocciStreptococcus
性状
Gram陽性 (G+)球菌 Cocci
科目
Medical Microbiology
トピック
2/5: Streptococcus agalactiae, Enterococcus genus2/3: Streptococcus pneumoniae, oral streptococci and cariogenesis. Anaerobic cocci2/4: Streptococcus pyogenes
原因となる疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)細菌性髄膜炎産褥敗血症・産褥感染新生児敗血症前期破水
作用する薬剤
アンピシリンセフォタキシムテジゾリドテラバンシンペニシリンG

🧠 全体像:B群レンサ球菌(GBS)は腟・消化管の無症候性常在菌でありながら、経腟分娩時に産道を通る新生児にとっては・敗血症の最頻原因になる——「普段はおとなしい菌が、特定の脆弱な宿主(新生児)にだけ牙をむく」という構図で読む。妊婦のとという、菌そのものの病原性以上に周産期管理が主戦場になる点が本菌の最大の特徴である。

微生物学的な特徴

の長い配列で、(A群)と同じβ溶血を示す。両者の鑑別は次の2点に尽きる。

試験 (A群) 本菌(B群)
感受性 耐性
陰性 陽性——黄色ブドウ球菌と並行培養するとが増強しの溶血パターンを示す
陰性 陽性(を加水分解)

属全体の溶血パターン・Lancefield分類・鑑別試験の全体像はのページにまとめてあるので参照。莢膜はを持つ(血清型Ia・Ib・II〜IXに分類)。

病原性の仕組み

  • 莢膜:貪食からの回避が病原性の中心。に対する母体IgGの移行が乏しい新生児(特に早産児)は防御が薄い
  • ヒトの腟(率20〜30%)・消化管に常在し、分娩時に産道を通過する新生児は約50〜75%の頻度で獲得する
  • 侵襲性感染は新生児・妊婦・60歳以上の非妊娠成人(糖尿病・悪性腫瘍などの基礎疾患)に集中する——健常な成人にはまれ

感染経路と疫学

  • 経腟分娩時の母子が最大の感染経路。妊娠中の保菌は無症候
  • 非妊娠成人では皮膚・軟部組織の破綻、糖尿病・肝硬変などの基礎疾患を通じた侵入

起こす疾患

病型 時期 疾患
出生後6日以内 、(のの主要原因)、新生児肺炎
出生後4か月以内 髄膜炎、菌血症、骨関節炎
産科合併症 妊娠・分娩期 、、・
非妊娠成人(主に60歳以上) — 皮膚・骨感染、菌血症、、肺炎

診断

  • 血液寒天培地でβ溶血。陽性で確定
  • 妊娠36週0日〜37週6日の全妊婦に腟・直腸の培養でGBS保菌の有無をスクリーニングする。⚠️ これは米国産科婦人科学会(ACOG)Committee Opinion 797(2020年、2025年に再確認)の推奨で、以下の予防の記述もすべて同文書=米国の枠である1。「妊娠35〜37週」は旧 2010基準の時期で、ACOG 2020 がこの時期へ改めた(⚠️ 「腟だけ」は旧基準ですらない。 2010 も腟+直腸を求めている)。時期を改めた狙いは、が有効な5週間の窓が、少なくとも妊娠41週0日までに起こる分娩を覆うようにすることである1
  • スクリーニングは予定している分娩様式によらず全妊婦に行う。ただし今回の妊娠中のGBS菌尿またはGBS感染児を出産した既往があれば、その時点で分娩時予防投与の適応が決まるためスクリーニングは要らない1
  • 分娩開始時にが不明なら、危険因子のある妊婦に予防投与を行う——早産の危険が大きい状態での陣痛発来、(早産期)またはでの18時間以上の破水、の発熱(38.0℃以上)である1

治療と予防

  • が一貫して第一選択:は静注のが第一選択で、静注アンピシリンが許容される代替である1。💡 ペニシリンが選ばれる理由は、グラム陽性菌に絞った狭い抗菌スペクトルを持ち、他のに耐性を誘導しにくいことである1。⚠️ 経口・筋注のレジメンは、妊娠中でもでも同等の有効性が示されていない1
  • 培養陽性でも、破膜がなく陣痛開始前に帝王切開する場合は予防投与を要しない1
  • ペニシリンアレルギーの代替は、アレルギーの重さとの感受性で3段階に分かれる1
報告されたペニシリンアレルギー 選ぶ薬
低リスク——アナフィラキシーの危険が低い、または重症度が不明 ()
高リスクで、がクリンダマイシン感受性と分かっている クリンダマイシン
高リスクで、がクリンダマイシンに感受性でない バンコマイシン静注——学的・微生物学的に検証された唯一の選択肢。体重と基礎腎機能に基づき20 mg/kgを8時間ごと(1回最大2 g)

⚠️ 「高リスク」=アナフィラキシーの危険だけ、ではない。 ACOG の Table 2 の表題は “Penicillin Allergy: Low Risk or High Risk of Anaphylaxis or Severe Non-IgE Mediated Reaction” で、高リスク側には①IgE介在を示唆する反応(発疹・蕁麻疹・即時の・低血圧・・呼吸困難・アナフィラキシー)、②反復する反応・複数のβラクタムへの反応・ペニシリンアレルギー検査陽性、③まれな重症の反応(好酸球増多と全身症状を伴う、・)の3系統が入る1。⭐ の既往は、アナフィラキシーの既往が無くても高リスク側である——ここを落とすとを選んでしまう。この区分の言い回しは、本文書の interim update で手が入った箇所そのものである。

⚠️ クリンダマイシンは「感受性が確認できたときだけ」の代替である。 そのため、高リスクのペニシリンアレルギーがある妊婦では培養の検査依頼にアレルギーの存在を明記し、検査室がクリンダマイシン感受性を必ず調べるようにする1。⭐ 本文書がを求めているのはクリンダマイシンについてだけで、ペニシリン自体のは求めていない。💡 ペニシリンアレルギーの検査そのものも妊娠中に安全で、I型過敏反応が無いと確かめられれば代替薬が要らなくなる(自己申告のアレルギーの多くは実際にはペニシリンである)1。

  • 4時間以上の曝露が望ましいが、2時間でも腟内のGBS菌量減少と診断の頻度低下が示されている。したがってオキシトシン投与・・といった必要な産科的処置を、4時間を確保するためだけに遅らせない1
  • そのものが成立した後の抗菌薬治療はIAPの代わりにはならない——予防の主眼は分娩前のスクリーニングと投与のタイミングにある

⚠️ 「GBSはに常に感受性」とは、もう書けない。 ペニシリンが侵襲性GBS感染症の治療の第一選択であり続け、投与(IAP)の要であることは変わらない。しかしペニシリン感受性が低下した株の分離は2008年以降に報告され、世界的な懸念になっている2。⭐ 最初の報告は日本の(1995〜2005年収集)で、その後も日本・米国・カナダ・アフリカから高度耐性株のデータが出ている2。💡 機序はβラクタマーゼではなく標的側の変化——ペニシリン結合タンパク質、とりわけPBP2Xの(V405A・Q557E など)がβラクタムへの感受性低下と結びつく2。判定はでは 0.12 µg/mL超を感受性低下とし、はペニシリンの疫学的(ECOFF)を0.125 mg/L、阻止円径18 mm超としている2。⚠️ これは「予防投与の薬を替えろ」という話ではない——ACOG CO 797 がを求めているのは今もクリンダマイシンについてだけで、ペニシリンの第一選択という位置づけは動いていない1。試験で「常に感受性」と暗記すると、この10年以上のを取りこぼす。

まとめ

  • B群レンサ球菌(β溶血、耐性・陽性)は腟・消化管の常在菌で、新生児の原因菌として最頻。
  • (生後6日以内:敗血症・髄膜炎・肺炎)と(生後4か月以内:髄膜炎・菌血症・骨関節炎)を区別する。
  • 米国(ACOG CO 797。2025年に再確認)の枠では、妊娠36週0日〜37週6日の全妊婦への腟・直腸培養スクリーニングと、の静注(代替はアンピシリン)による予防投与(IAP)が予防の柱1。ペニシリンアレルギーでは低リスクなら、高リスク(アナフィラキシーの危険が高い場合に加え、など重症の反応の既往を含む)なら感受性が確認できたクリンダマイシン、それも使えなければバンコマイシンを選ぶ1。
  • ペニシリンは治療・予防とも第一選択であり続けているが、ペニシリン感受性が低下した株(PBP2X変異など)が2008年以降に日本をはじめ複数国から報告されており、「常に感受性」ではない2。
  • (A群)との鑑別は耐性と陽性の2点で行う。

出典

  1. 1.Prevention of Group B Streptococcal Early-Onset Disease in Newborns: ACOG Committee Opinion, Number 797(American College of Obstetricians and Gynecologists・2020)acog.org の本文全文(Recommendations and Conclusions・本文・図表脚注)を取得して確認した。文書の現行性——ページに「Reaffirmed 2025」と明記されており、2019年6月の Committee Opinion 782 を置き換えた版に、ペニシリンアレルギー検査の記述・低リスク/高リスクの区分(Table 2)・ペニシリンの用量(Figure 3)に限った interim update と2020年4月の訂正が反映されている。本文書はCDC 2010ガイドラインの産科部分を更新して置き換えるものである。以下は本文で確認した内容。全妊婦のスクリーニングは腟・直腸培養で妊娠36週0日〜37週6日に行い、この時期にしたのは培養結果が有効な5週間の窓が妊娠41週0日以上の分娩まで及ぶようにするためであること。今回の妊娠中のGBS菌尿またはGBS感染児の既往があれば予防投与の適応が既に決まるためスクリーニングは不要であること。培養陽性の妊婦は、破膜がなく陣痛開始前の帝王切開を行う場合を除き分娩時抗菌薬予防投与を受けること。培養結果が不明のまま分娩となった場合は、早産の危険が大きい状態での陣痛発来・早産期の前期破水・正期産での18時間以上の破水・分娩中の発熱(38.0℃以上)のいずれかがあれば適応となること。静注ペニシリンが第一選択で静注アンピシリンが許容される代替であり、経口・筋注のレジメンは同等の有効性が示されていないこと。ペニシリンアレルギーの代替は、アナフィラキシーの危険が低いか重症度不明なら第一世代セファロスポリン(セファゾリン)、危険が高い場合は分離株がクリンダマイシン感受性と分かっているときに限りクリンダマイシン、感受性でなければ静注バンコマイシンが薬物動態学的・微生物学的に検証された唯一の選択肢で、体重と基礎腎機能に基づき20 mg/kgを8時間ごと(1回最大2 g)とすること。⚠️ この「高リスク」はアナフィラキシーの危険だけで決まるのではない——Table 2 の表題は「Penicillin Allergy: Low Risk or High Risk of Anaphylaxis or Severe Non-IgE Mediated Reaction」で、Figure 3 の脚注は高リスク側に、IgE介在を示唆する反応(掻痒性発疹・蕁麻疹・即時の潮紅・低血圧・血管性浮腫・呼吸困難・アナフィラキシー)に加えて、反復する反応・複数のβラクタムへの反応・ペニシリンアレルギー検査陽性と、まれな重症遅発型の皮膚・全身反応(好酸球増多と全身症状を伴う薬剤性過敏症症候群、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死融解症)を並べている。高リスクのアレルギーがある場合は検査依頼にその旨を明記してクリンダマイシン感受性検査が確実に行われるようにすること。妊娠中のペニシリンアレルギー検査は安全で有益なこと。4時間以上の予防投与が望ましいが2時間の曝露でも腟内GBS菌量の減少と新生児敗血症診断の頻度低下が示されており、オキシトシン投与・人工破膜・予定帝王切開などの必要な産科的処置を4時間確保のためだけに遅らせないこと。⚠️ 本文書は感受性検査を求めているのはクリンダマイシンについてだけであり、GBSがペニシリン系に「常に感受性」であるとは述べていない閲覧 2026-09-08
  2. 2.Penicillin-Binding Proteins in Streptococcus agalactiae and Their Association with Reduced Penicillin Susceptibility: An Overview(Antibiotics (Basel)・2026)Europe PMC の全文(PMC12837354、CC BY)で確認した。緒言は「Penicillin remains the first-line antibiotic for the treatment of S. agalactiae infections and is crucial for preventing vertical transmission to the newborn through intrapartum antibiotic prophylaxis (IAP). However, isolation of S. agalactiae presenting reduced penicillin susceptibility (RPS) has been reported since 2008 and has become a matter of concern worldwide」と述べる。抄録は「Data on invasive S. agalactiae strains with high levels of penicillin resistance have been found in Japan, the United States, Canada, and Africa」とし、感受性低下はペニシリン結合タンパク質、とりわけPBP2Xと結びつくとする。判定基準はCLSIがMIC 0.12 µg/mL超をRPSとし、EUCASTはペニシリンのECOFFを0.125 mg/L・阻止円径18 mm超とする。表の最初期の行は Kimura 2008(日本、1995〜2005年収集)で、PBP2XのQ557E・V405A置換を挙げている。⚠️ 本総説は予防投与の薬剤選択の変更を提言してはおらず、監視の強化を求めている閲覧 2026-09-08