微生物学

微生物学 · 2/5

ストレプトコッカス・アガラクチエ(B群)・腸球菌属

Streptococcus agalactiae, Enterococcus genus

応用トピック
腹腔内感染症:胆管炎・胆嚢炎・腹腔内膿瘍・憩室炎・腹膜炎早産陣痛と早産卵膜破裂の異常妊娠中の感染症・細菌感染・寄生虫感染新生児感染症敗血症・敗血症性ショックの認識と救急治療新生児感染症
微生物
Enterococcus faecalisEnterococcus faeciumStreptococcus agalactiae / GBSStreptococcus mitisStreptococcus mutansStreptococcus pneumoniae

🧠 B群レンサ球菌とは、どちらも「普段はおとなしい常在菌が、特定の脆弱な状況で牙をむく」菌として一緒に読む。 S. agalactiae(Lancefield B群)は腟・消化管の常在菌だが、経腟分娩時に産道を通る新生児にとっては・敗血症の最頻原因になる——脆弱な宿主は「新生児」。は消化管・尿道・の常在菌だが、カテーテルやなどの異物が入った患者にとっては院内感染の主要な原因になる——脆弱な宿主は「医療器具留置患者」。両者ともA群のS. pyogenesとは対照的に、天然の多剤耐性・生存力の強さ(腸球菌の高塩濃度耐性、GBSの莢膜)が病原性の背景にある。

B群レンサ球菌

項目 内容
形態 、長い配列
生息地 ヒトの腟(率20〜30%)+消化管
Lancefield分類 B群レンサ球菌
莢膜
陽性(を加水分解)
耐性——A群(S. pyogenes)との鑑別に用いる
カタラーゼ 陰性

病原性因子:新生児は出生時に母体から感染する(獲得率50〜75%)。

臨床像

病型 時期 疾患
出生後6日以内 (新生児での原因菌第1位)、、新生児肺炎
出生後4か月以内(一般的な区分は生後7〜89日) 髄膜炎、菌血症、骨関節炎
非妊娠成人(主に60歳以上の女性) — 皮膚・骨感染、菌血症、、肺炎

診断:血液寒天培地でβ溶血。陽性(他のすべてのレンサ球菌とS. agalactiaeを鑑別する)——S. aureusと並行培養するとが増強し、の溶血パターンとして観察される。

治療:の母体へのは、静注ペニシリンが第一選択で、静注アンピシリンは許容される代替である——2剤は同格ではない1。

予防:⚠️ 以下は米国産科婦人科学会(ACOG)の枠である。 ACOGは、予定している分娩様式によらずすべての妊婦に妊娠36週0日〜37週6日の腟と直腸のでS. agalactiaeの保菌を検査するとしている。⭐ ただし例外が2つある——今回の妊娠中のGBS菌尿、またはGBS感染児を出産した既往があれば、その時点で分娩時予防投与の適応が決まるのでスクリーニングは要らない1。

⚠️ スクリーニングの時期は2020年に「35週0日から」から「36週0日〜37週6日」へ変更された。 米国産科婦人科学会(ACOG)Committee Opinion 797(2020年。2025年に再確認 Reaffirmed 2025 されており、置き換えた後継文書は出ていない)は、GBSの全妊婦スクリーニングを妊娠36週0日〜37週6日に行うと改めた1。時期を動かした根拠は本文に2つ挙がっている——①37週0日より前に分娩する妊婦にはが不明でも既定で予防投与を行うので、35週台に採る意義が小さいこと、②の有効期間(5週間)を後ろへずらすことで、少なくとも41週0日までの分娩を覆えること(原文 “This new recommended timing for screening provides a 5-week window for valid culture results that includes births that occur up to a gestational age of at least 41 0/7 weeks.”)1。💡 5週間という窓の根拠は、培養から分娩までの間隔が5週間を超えるとの予測能が有意に落ちる(P<.01)という観察である1。95〜98%という数字はACOG 2020ではなく 2010が挙げているものである2。

⚠️ 旧基準( 2010)に帰属できるのは「35〜37週」という時期だけである。「腟だけ」は旧基準ではない。 2010(MMWR RR-59(10))は逐語で “GBS colonization status should be determined by collecting both vaginal and rectal specimens at 35–37 weeks’ gestation” と書き、さらに “Swabbing both the lower vagina and rectum (through the anal sphincter) increases the culture yield substantially compared with sampling the cervix or the vagina without also swabbing the rectum” と理由まで明記している2。腟のみで採るのは2010年当時から誤りで、「腟だけ」は旧基準ではなく学生側の記憶違いである。 ⭐ 変わったのは時期だけ(35〜37週 → 36週0日〜37週6日)、変わっていないのは腟+直腸、と対応づけて覚える。💡 採取は1本ので腟下部(腟口近く)→ 直腸(を越えて)の順に行う1。

💡 数字で押さえるGBSの。 GBS保菌妊婦のうち約50%が新生児へ菌を伝播し、投与がない場合、そのうち1〜2%がGBS感染症を発症する1。予防投与は4時間以上の曝露が望ましいが、2時間でも腟内GBS菌量の減少と診断の頻度低下が示されているため、必要な産科的処置を「4時間を確保するためだけに」遅らせてはならない1。

腸球菌属

属名の由来は「糞便の一部」で、臨床で重要なのはE. faecalisとE. faeciumの2種である。

⚠️ 「E. faecium のほうが病原性が強い」は逆である。向きを取り違えると治療の判断まで狂う。 病原性が高いのは*E. faecalis* で、耐性が強いのは*E. faecium* というたすき掛けの関係になっている3。

項目 E. faecalis E. faecium
病原性 高い(腸球菌のなかでに最も多い菌種でもある)3 E. faecalis より低い3
・ 程度は軽い3 強い。多くの施設で高度アンピシリン耐性率が70%超3
医療器具関連感染で7.2%4 同82.1%4
米国のでの件数 28,236件(全病原体356,633件の7.9%、第5位)4 13,687件(3.8%、第8位)4

割合の実数は米国NHSNの2015〜2017年の報告で押さえる。のなかではE. faecalisが約67%、E. faeciumが約33%で4、「80〜90%対5〜15%」のような大差ではない。総説もE. faeciumによる感染が増加傾向にあると述べている3。

💡 なぜ「E. faecium のほうが厄介だ」という印象が生まれるのか。 臨床の現場で困るのは治療の手数が無いことであり、その点ではE. faeciumが圧倒的に手強い——高度アンピシリン耐性率が70%を超える施設が多く、医療器具関連感染ではが82.1%に達する34。だが「困りやすさ(耐性)」と「毒性(病原性)」は別の軸である。この2つを混ぜないのが、腸球菌を読むときの要点になる。

⚠️ は1984年に Streptococcus 属から分かれた、比較的新しい属である。 (核酸)に基づき、Streptococcus faecalis・Streptococcus faecium が復活させた Enterococcus 属へ移されたのが1984年で5、それ以前の文献では「D群レンサ球菌」として扱われている。旧名 Streptococcus faecalis/S. faecium は古い教科書・試験問題に残るので、現行名と対応づけて覚える。上の「Lancefield D群」という位置づけは、この属分離より前の分類の名残である。

項目 内容
形態 、短い連鎖またはペア
生息地 、尿道、
6.5% NaCl(高温にも)耐性という強靭さ
耐性
陽性
陽性
カタラーゼ 陰性

病原性因子:発育が容易で天然の多剤耐性を持ち、を形成する——院内感染のグラム陽性菌としてS. aureusに次ぐ第2位の頻度。

⚠️ 腸球菌はに「」——効かないのではなく、最初から対象外である。 腸球菌はに対して耐性を持つため、で「感性」と出ても臨床的には使えない。乾燥・高塩濃度・広い温度域への抵抗性と合わせて、これが院内環境への適応の中核であり、広域セファロスポリンを使うほど腸球菌が選択されて増えるという臨床上の帰結を生む3。などでセファロスポリンを選んだときに「腸球菌が抜けている」ことを意識する。

臨床像

疾患 機序
尿路感染症 カテーテル関連
心内膜炎・敗血症 関連
胆道感染 腸球菌は胆汁に不溶であるため胆道に定着・感染しうる
その他 腹膜炎、、(血流に播種した場合)髄膜炎

診断:溶血はα・β・γいずれもとりうる——灰色でつやのある円形コロニー。でエスクリンを加水分解し黒〜暗褐色(エスクレチン)を呈する。

治療:バンコマイシン耐性腸球菌——特にE. faeciumで問題となる。には主にリネゾリドを用いる。ほかに(テトラサイクリン系)。

💡 βラクタム耐性とは、多くの場合どちらか一方である。 2023は、両方に耐性である例はまれなので株にはβラクタムを、βラクタム耐性株にはバンコマイシンを当てられると述べる。多剤耐性・の腸球菌心内膜炎に対する最良の選択肢は10〜12 mg/kg/日で、⚠️ 耐性化を防ぐため必ずβラクタム(アンピシリン・・)またはと併用する(単剤で使わない)6。⚠️ 同じ原文が「成績は一定しない」と並べているのは5剤で、そこにはも入っている——・ダルホプリスチン(E. faecalis には無効)、リネゾリド、、、である6。💡 矛盾ではない——「単剤としての成績は一定しない」ことと、「多剤耐性・株にはβラクタムとの併用が最良の選択肢である」ことは別の主張で、原文は前者の直後に後者を置いている。

💡 の機序は「標的のほうを作り替える」——vanA/vanB。 バンコマイシンはの末端 D-Ala-D-Ala に結合してを止める。vanA・vanB オペロンはこの末端を D-Ala-D-Lac へ置き換えるため、バンコマイシンが標的に結合できなくなる3。薬を壊す(βラクタマーゼ型)でも汲み出す(型)でもなく、鍵穴のほうを変えるタイプの耐性である。vanA はにも耐性、vanB はバンコマイシンのみ耐性という違いがある。

⚠️ E. faecalis 心内膜炎では「アンピシリン+セフトリアキソン」が「アンピシリン+」に並ぶ選択肢になった。 17のスペインの施設と1つのイタリアの施設で行われた非の観察的(アンピシリン+セフトリアキソン159例 対 アンピシリン+87例)では、治療中死亡(22%対21%)・3か月死亡(8%対7%)・抗菌薬変更を要する(1%対2%)・再発(3%対4%)に差がなかった一方、有害事象による治療中断は群25%対セフトリアキソン群1%で、その主因は新規の腎機能悪化(ベースラインのクレアチニンから25%以上の上昇。23%対0%)だった7。💡 されていないので群間の背景は揃っていない——セフトリアキソン群のほうがの既往(33%対16%)・悪性腫瘍(18%対7%)・移植後(6%対0%)・(59%対40%)が多かった。もっとも腎障害については不利な背景を負った側で有害事象が少なかったので、この方向のずれはを弱めない。著者らのは「アンピシリン+セフトリアキソンはアンピシリン+と同等に有効であり、腎不全のリスクをほぼ伴わず、E. faecalis のアミノグリコシド高度耐性の有無にかかわらず使用できる」である7。

⚠️ ただし「併用は古い」と読み替えない。 2023の推奨表9は、アミノグリコシド高度耐性でない(non-HLAR)腸球菌の例について「アンピシリンまたはアモキシシリンに、セフトリアキソンを6週間、またはを2週間併用する」を1つの推奨(Class I、Level B)として掲げており、2つの併用は同格である6。⭐ 二剤βラクタム併用が「選択すべき組み合わせ」になるのは、アミノグリコシド高度耐性(HLAR)株のときである——アミノグリコシドのが128 mg/Lを超えるととのが失われるため、この条件でアミノグリコシドは用いない6。⚠️ この二剤βラクタム併用は E. faecium には無効で、他の腸球菌種での使用経験も乏しい6。セファロスポリンにの菌にセフトリアキソンを足すのは、単剤の抗菌活性ではなくアンピシリンとの相補的な飽和によるを狙うためである。

予防(旧来の運用):かつては、心臓弁に基礎疾患がある患者に腸・尿路操作を行う前、ペニシリン+を予防的に投与していた。

⚠️ この「消化管・尿路処置の前の心内膜炎予防」は、現行の推奨では行わない。 米国心臓協会の2021年科学的声明(診療ガイドラインではない。適応を述べる部分——Table 3・4・6 の表題と個々の適応文——は recommended ではなく suggested=提案するで書かれている。⚠️ ただし文書全体が suggested なのではなく、のは執筆委員会自身の声で “We continue to recommend VGS prophylaxis only for categories of patients at highest risk for adverse outcome” と recommend を用いる)は、に対する抗菌薬予防の対象を最高リスクの4群と、歯肉組織や根尖周囲の操作・口腔粘膜穿孔を伴う歯科処置に絞っている8。消化管・泌尿生殖器の処置については、それより前の2007年ガイドラインがすでに「心内膜炎の予防だけを目的とした抗菌薬投与は推奨しない」と改訂の主要点に明記しており9、2021年の声明も予防の対象を歯科処置に絞ったままである(菌血症の大半は処置ではなく日常の・歯磨きで起こり、予防投与の有効性を示す証拠が乏しいため)。授業ノートの記載は旧来の運用として残すが、現行の推奨とは異なる。

⭐ その4群は「・既往・・後」の4語で覚えると内訳が落ちる。 同声明の Table 3 は、〈または〉に経カテーテル植込み・人工リングやクリップなどのデバイスを用いた・および植込み型人工心臓を、〈〉に未修復の(短絡・導管を含む)・やデバイスで完全修復した後の6か月間・人工や人工デバイスの部位またはその近傍に遺残欠損がある修復後・外科的または経カテーテル的なないし導管の留置を含める。〈の既往〉は初発・・再発を問わず、〈後〉は弁膜症を生じた患者に限る。⚠️ 同じ表は提案しない側も明示的に挙げており、ペースメーカなどの植込み型電子デバイス、完全閉鎖が得られた中隔欠損閉鎖デバイス、末梢血管・、冠動脈その他の血管、脳室心房短絡、、プレジェットが並ぶ——これらの感染はまれで、起きたときの起因菌の大半がブドウ球菌であり、歯科処置前の予防投与が狙うビリダンス群レンサ球菌ではないからである8。

⚠️ これは欧米の枠であって、日本の枠ではない。 日本循環器学会の2026年ガイドラインは「高リスク群に限定する欧米のガイドラインと異なり、日本のガイドラインは高リスク群と群の双方に予防投与を推奨する」と明記している10。⭐ 線引きの違いが最も分かりやすいのが心臓植込み型電気デバイス(CIED)である——AHA 2021は予防投与を提案しない側に挙げるのに対し8、JCS 2026は(歯科予防投与はClass IIb)に置き、欧米では推奨されていないことを自ら注記している10。⭐ 消化管・尿路の処置に限っても、日本の基準は授業ノートの記載と一致しない。 JCS 2026の表38は、(生検を含む)・・食道拡張・やを伴う・胆道手術、および尿道拡張・経腟分娩・腟式などをClass IIb(考慮してもよいが、高リスク群には投与すべき)、前立腺切除をClass IIa(とくにの患者)、挿入と内視鏡(膀胱尿道鏡・腎盂)をClass III(推奨しない)としている。さらに歯科・心血管以外のの標準的な予防レジメン(表41)は、経口アモキシシリン2 gを処置1時間前に1回、経口できなければ3 gまたは0.5〜1 gの静注、βラクタムアレルギーではバンコマイシンまたはの静注で、併用は含まれない10。対象となる処置の一覧を含む日本の基準はの項を参照する。

flowchart TD
  A["消化管・産道の常在菌"] --> B["B群レンサ球菌<br>(S. agalactiae)"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Enterococcus genus'>腸球菌属</span><br>(Enterococcus)"]
  B --> D["経腟分娩時に新生児へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertical transmission'>垂直感染</span>"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early onset'>早発型</span>:生後6日以内<br>髄膜炎・敗血症・肺炎"]
  D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late onset'>遅発型</span>:生後4か月以内<br>髄膜炎・菌血症・骨関節炎"]
  C --> G["カテーテル・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cannula'>カニューレ</span>などの異物"]
  G --> H["院内感染:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary tract infection'>UTI</span>・心内膜炎・敗血症・胆道感染"]

まとめ

  • S. agalactiae(B群、耐性、陽性)は腟・消化管の常在菌で、・敗血症の最頻原因(は生後6日以内、は生後4か月以内)。
  • 米国(ACOG)の枠では、妊婦へのスクリーニング(2020年の改訂で妊娠36週0日〜37週6日、腟・直腸培養。今回の妊娠中のGBS菌尿・GBS感染児の出産既往があれば不要)と、の静注ペニシリン(第一選択。アンピシリンは許容される代替)の予防投与が標準的な1。⚠️ 2020年に変わったのは時期だけで、検体が腟+直腸である点は旧 2010基準から変わっていない——「腟だけ」は旧基準ではない2。
  • (E. faecalis、E. faecium)は高塩濃度・という強靭さを持ち、カテーテル・など異物関連の院内感染(、心内膜炎、胆道感染)を起こす。
  • 腸球菌は1984年に Streptococcus 属から分離された属で5、にを持つ3。S. aureusに次ぐ院内感染グラム陽性菌第2位で、(特にE. faecium)は vanA/vanB によるD-Ala-D-Lac置換が機序であり3、治療にはリネゾリドを用いる。
  • E. faecalis 心内膜炎では、アンピシリン+セフトリアキソンがアンピシリン+と同等に有効で、腎障害による治療中断が25%対1%と少ない(非コホート)7。 2023はアミノグリコシド高度耐性でない株に対して両者をともにClass I(同格)とし、二剤βラクタム併用が選択すべき組み合わせになるのは高度耐性株のときである。この併用は E. faecium には無効6。
  • 消化管・尿路処置の前の心内膜炎予防投与は、現行の推奨(AHA 2021の科学的声明。最高リスク4群×歯肉操作等を伴う歯科処置)では行わない8。⚠️ ただしこれは米国(AHA 2021)の枠で、日本循環器学会2026年ガイドラインは群も対象に含める(同ガイドライン自身は「欧米のガイドラインと異なり」という言い方をしている)10。
  • 両者ともA群のS. pyogenesと異なり、毒素性症候群ではなくとしての定着・耐性の強さが病原性の背景にある。

出典

  1. 1.Prevention of Group B Streptococcal Early-Onset Disease in Newborns: ACOG Committee Opinion, Number 797(American College of Obstetricians and Gynecologists・2020)acog.org が公開している本文全文(Recommendations and Conclusions・本文・図表脚注)で確認した。文書の現行性——ページに「Reaffirmed 2025」と明記されており、2019年6月の Committee Opinion 782 を置き換えた版に、ペニシリンアレルギー検査の記述・低リスク/高リスクの区分(Table 2)・ペニシリンの用量(Figure 3)に限った interim update と2020年4月の訂正が反映されている。以下は本文で確認した内容。①米国産科婦人科学会は、GBSの全妊婦スクリーニングを行う時期を妊娠36週0日〜37週6日へ変更した。②時期を変えた根拠として本文は2点を挙げる——37週0日より前に分娩する妊婦は保菌状態が不明でも既定で予防投与を行うこと、および「This new recommended timing for screening provides a 5-week window for valid culture results that includes births that occur up to a gestational age of at least 41 0/7 weeks.」(培養の有効期間5週間が、少なくとも41週0日までの分娩を覆うようにするため)。培養は分娩前5週間以内に採取されていれば保菌状態をよく予測し、5週間を超えると予測能が有意に落ちる。③本文は「The 2010 version of the CDC's perinatal GBS guidelines recommended that prenatal GBS screening be performed starting at 35 0/7 weeks of gestation.」と、旧基準が35週0日開始であったことを述べる。④検体は腟・直腸の培養で(1本のスワブで腟下部→直腸の順に採取)、この時期の培養が陽性の妊婦には、破膜前の予定帝王切開でない限り分娩時抗菌薬予防投与を行う。⑤GBS保菌妊婦のうち約50%が新生児へ伝播し、分娩時予防投与がない場合その1〜2%が早発型GBS感染症を発症する。⑥予防投与は4時間以上が望ましいが、2時間の曝露でも腟内のGBS菌量減少と新生児敗血症診断の頻度低下が示されており、必要な産科的処置を4時間確保のためだけに遅らせるべきではない。⑦スクリーニングには例外があり、原文は「Regardless of planned mode of birth, all pregnant women should undergo antepartum screening for GBS at 36 0/7–37 6/7 weeks of gestation, unless intrapartum antibiotic prophylaxis for GBS is indicated because of GBS bacteriuria during the pregnancy or because of a history of a previous GBS-infected newborn.」——今回の妊娠中のGBS菌尿またはGBS感染児の出産既往があれば、その時点で予防投与の適応が決まるのでスクリーニングは要らない。⑧分娩時予防の第一選択は静注ペニシリンで、静注アンピシリンは許容される代替である(原文 intravenous penicillin remains the agent of choice for intrapartum prophylaxis, with intravenous ampicillin as an acceptable alternative)。⚠️ 陰性的中率95〜98%という数値は本文書には無い(CDC 2010 の記述である)。本文書が述べるのは、培養から分娩までの間隔が5週間を超えると予測能が有意に落ちる(P<.01)ことまでである閲覧 2026-09-08
  2. 2.Prevention of perinatal group B streptococcal disease--revised guidelines from CDC, 2010(Centers for Disease Control and Prevention (MMWR Recommendations and Reports 59(RR-10))・2010)MMWR の全文(cdc.gov の rr5910a1)で確認した。旧基準は逐語で「GBS colonization status should be determined by collecting both vaginal and rectal specimens at 35--37 weeks' gestation」と述べており、**腟のみの採取は旧基準でも認められていない**。同文書は理由として「Swabbing both the lower vagina and rectum (through the anal sphincter) increases the culture yield substantially compared with sampling the cervix or the vagina without also swabbing the rectum」を挙げる。また「A negative GBS screen is considered valid for 5 weeks」「The negative predictive value of GBS cultures performed ≤5 weeks before delivery is 95%--98%; however, the clinical utility decreases when a prenatal culture is performed more than 5 weeks before delivery because the negative predictive value declines」とし、培養結果の有効期間を5週間としている。⚠️ 41週という数字はこの文書には無く、ACOG 2020 が新しい採取時期の根拠として述べるものである。閲覧 2026-09-07
  3. 3.The Enterococcus: a Model of Adaptability to Its Environment(Clinical Microbiology Reviews・2019)腸球菌属はヒト・動物の消化管常在菌でありながら、セファロスポリン系への自然(内因性)耐性、乾燥・高塩濃度・広い温度域への抵抗性、可動性遺伝因子による獲得耐性の蓄積という特性によって院内環境へ適応した。vanA・vanBオペロンは細胞壁前駆体末端のD-Ala-D-AlaをD-Ala-D-Lacへ置換してバンコマイシンの結合を妨げ、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を生じる。この耐性は院内感染株、とくにEnterococcus faeciumで問題となる閲覧 2026-08-26
  4. 4.Antimicrobial-resistant pathogens associated with adult healthcare-associated infections: Summary of data reported to the National Healthcare Safety Network, 2015-2017(Infection Control & Hospital Epidemiology(Weiner-Lastinger LM, et al./CDC NHSN)・2020)PMC全文(PMC8276252)で、米国NHSNへ2015〜2017年に報告された成人の医療関連感染の病原体356,633件のうち*Enterococcus faecalis*が28,236件(7.9%、第5位)、*Enterococcus faecium*が13,687件(3.8%、第8位)であること、したがって腸球菌属のなかでは*E. faecalis*が約67%、*E. faecium*が約33%にあたること、バンコマイシン耐性が医療器具関連感染で*E. faecium* 82.1%に対し*E. faecalis* 7.2%であることを確認した閲覧 2026-09-27
  5. 5.Transfer of Streptococcus faecalis and Streptococcus faecium to the Genus Enterococcus nom. rev. as Enterococcus faecalis comb. nov. and Enterococcus faecium comb. nov.(International Journal of Systematic Bacteriology・1984)1984年、核酸ハイブリダイゼーションを含む分子系統解析に基づき Streptococcus faecalis と Streptococcus faecium が Streptococcus 属から分離され、復活させた Enterococcus 属へ Enterococcus faecalis・Enterococcus faecium として移された閲覧 2026-08-26
  6. 6.2023 ESC Guidelines for the management of endocarditis(European Society of Cardiology (ESC)・2023)誌上版(academic.oup.com)は403のままだが、Internet Archive の2024-04-19スナップショット経由で Milano-Bicocca 大学リポジトリの版(Delgado-2023-Eur Heart J-VoR.pdf、全95頁)を取得し、pdftotext の全文で確認した。①推奨表9——アミノグリコシド高度耐性でない(non-HLAR)腸球菌の自己弁例に対して「アンピシリンまたはアモキシシリンに、セフトリアキソンを6週間、またはゲンタマイシンを2週間併用する」が1つの推奨(Class I、Level B)として掲げられており、2つの併用は同格である(人工弁例・合併症を伴う自己弁例・症状が3か月を超える例も同じ2択でClass I・Level B)。二剤βラクタム併用が選択すべき組み合わせとされるのはHLAR株の場合で、7.8節に「this is the combination of choice for treating NVE and PVE caused by HLAR E. faecalis」とある。アミノグリコシドのMICが128 mg/Lを超えると細胞壁合成阻害薬との殺菌的相乗効果が失われるため、その条件では用いない。②同節は、この二剤βラクタム併用が E. faecium には無効で他の腸球菌種での経験も乏しいこと、βラクタム耐性とバンコマイシン耐性の同時保有はまれなので一方の耐性株には他方を用いうること、多剤耐性・バンコマイシン耐性腸球菌の心内膜炎にはダプトマイシン10〜12 mg/kg/24時間を耐性化防止のため常にβラクタム(アンピシリン・エルタペネム・セフタロリン)またはホスホマイシンと併用するのが最良の選択肢であること、キヌプリスチン・ダルホプリスチン(E. faecalis には無効)・リネゾリド・ダプトマイシン・テイコプラニン・チゲサイクリンの成績は一定しないことを述べる。③口腔レンサ球菌と S. gallolyticus 群については、推奨表7がペニシリンへの感受性で2区画に分かれる——〈Penicillin-susceptible oral streptococci and Streptococcus gallolyticus group〉ではペニシリンG・アモキシシリン・セフトリアキソンを自己弁4週間・人工弁6週間の単剤で用い(Class I・Level B)、アミノグリコシド併用は必須ではない(合併症のない自己弁例で腎機能が正常なら、ゲンタマイシン併用の2週間治療も選べる。この2週間短縮は人工弁には適用できない)。これに対し〈Oral streptococci and Streptococcus gallolyticus group susceptible, increased exposure or resistant to penicillin〉では、自己弁4週間・人工弁6週間のいずれにもゲンタマイシン2週間を併用する(Class I・Level B)。⚠️ 単剤の4週/6週を耐性株へ広げてはならない。閲覧 2026-09-07
  7. 7.Ampicillin plus ceftriaxone is as effective as ampicillin plus gentamicin for treating Enterococcus faecalis infective endocarditis(Clinical Infectious Diseases・2013)スペイン17施設・イタリア1施設のEnterococcus faecalis感染性心内膜炎コホート(アンピシリン+セフトリアキソン群159例、アンピシリン+ゲンタマイシン群87例)で、治療中死亡(22%対21%)・3か月時点の死亡(8%対7%)・抗菌薬変更を要する治療失敗(1%対2%)・再発(3%対4%)に差はなかった。一方、有害事象による治療中断はゲンタマイシン群で25%、セフトリアキソン群で1%と大きく異なり、その主因は腎機能悪化(23%対0%)だった。アミノグリコシド高度耐性株の有無にかかわらず使用できる閲覧 2026-08-26
  8. 8.Prevention of Viridans Group Streptococcal Infective Endocarditis: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association (AHA)・2021)Internet Archive の2024-04-26スナップショット経由で誌上版PDF(Circulation. 2021;143:e963–e978)を取得し、pdftotext の全文(1,401行)で確認した。①Table 3 の表題は「AP for a Dental Procedure: Underlying Conditions for Which AP Is Suggested」で、4群はそれぞれ内訳を持つ——〈人工弁または人工材料〉は人工弁の存在・経カテーテル人工弁植込み・人工リングやクリップ等のデバイスを用いた弁形成・左室補助人工心臓および植込み型人工心臓、〈IEの既往〉は初発・再燃・再発を問わない、〈先天性心疾患〉は未修復のチアノーゼ性CHD(姑息的短絡と導管を含む)・人工材料またはデバイスで完全修復した後の6か月間・人工パッチや人工デバイスの部位またはその近傍に遺残欠損がある修復後・外科的または経カテーテル的な肺動脈弁ないし導管の留置、〈心移植後に弁膜症を生じた患者〉。②同じ Table 3 は予防投与を提案しない対象として、ペースメーカ等の植込み型電子デバイス、完全閉鎖が得られた中隔欠損閉鎖デバイス、透析用を含む末梢血管グラフト・パッチ、冠動脈その他の血管ステント、脳室心房短絡、下大静脈フィルター、プレジェットを明示的に列挙し、本文はこれらの感染がまれで大半がブドウ球菌によることを理由に挙げる。③Table 4 の対象手技は「All dental procedures that involve manipulation of gingival tissue or the periapical region of teeth or perforation of the oral mucosa」。④本文書は診療ガイドラインではなく科学的声明である。⚠️ suggested で書かれているのは適応を述べる部分——Table 3・4・6 の表題と個々の適応文——に限られ、文書全体が suggested なのではない。抄録の CONCLUSIONS は執筆委員会自身の声で「We continue to recommend VGS IE prophylaxis only for categories of patients at highest risk for adverse outcome」と recommend を用い、Table 5 の脚注も「Clindamycin is no longer recommended for antibiotic prophylaxis for a dental procedure」である。⑤Table 6 は、VGS IE が歯科処置よりも咀嚼や歯磨きによる一過性菌血症で生じることのほうがはるかに多いこと、良好な口腔衛生と歯科医療への定期的アクセスのほうが重要であることを挙げる。閲覧 2026-09-07
  9. 9.Prevention of infective endocarditis: guidelines from the American Heart Association(American Heart Association (AHA)・2007)Europe PMC の抄録で確認した。1997年版を改訂した主要な変更点の第5項に「Administration of antibiotics solely to prevent endocarditis is not recommended for patients who undergo a genitourinary or gastrointestinal tract procedure.」(泌尿生殖器・消化管の処置を受ける患者に、心内膜炎の予防だけを目的として抗菌薬を投与することは推奨しない)とある閲覧 2026-09-27
  10. 10.JCS 2026 Guideline on the Management of Infective Endocarditis(Circulation Journal(日本循環器学会)・2026)J-STAGE の全文PDF(Advance Publication)を pdftotext で読んで確認した。①「Unlike Western guidelines that restrict prophylaxis to the high-risk group, Japanese guidelines recommend prophylaxis for both high- and moderate-risk groups」と明記されている。②心臓植込み型電気デバイス(CIED)については「patients with CIED remain at moderate risk with a Class IIb recommendation for dental prophylaxis」とし、続けて「In Western guidelines, the routine prophylactic administration of antimicrobial agents before dental procedures is not recommended in patients with CIEDs.」と欧米との差を自ら述べている。③Table 37 の脚注Eは「Excludes leadless pacemakers and implantable cardioverter defibrillators (ICDs)」だが、本文 2.2.2 はこの2機種をリードレスペースメーカと皮下植込み型ICD(subcutaneous ICD)と特定し、「Thus, these 2 devices are categorized into a different directory from other CIEDs.」と結んでいる——リードレスICDのことではない。④(2026-09-27追記、J-STAGE の全文PDFで確認)Table 38 は、上部消化管内視鏡(生検を含む)・食道静脈瘤硬化療法・食道拡張・粘膜生検やポリープ切除を伴う下部消化管内視鏡・胆道手術と、尿道拡張・経腟分娩・腟式子宮全摘・掻爬・人工妊娠中絶・子宮内避妊具の挿入と抜去を「Antibiotic prophylaxis may be considered; however, prophylactic antibiotics should be administered to the high-risk group」(IIb・C)、経尿道的前立腺切除(とくに人工弁の患者)を IIa・C、尿道カテーテル挿入と経尿道的内視鏡(膀胱尿道鏡・腎盂尿管鏡)を III(No benefit)・B に置く。⑤Table 41(歯科・心血管以外の侵襲的処置の標準的予防レジメン、成人)は、経口可能ならアモキシシリン2 gを処置1時間前に単回、経口不能ならアンピシリン・スルバクタム3 gまたはセファゾリン0.5〜1 g、βラクタムアレルギーではバンコマイシン15 mg/kgまたはテイコプラニン9〜12 mg/kgで、アミノグリコシドは含まれない。閲覧 2026-09-07