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Microbe Atlas · 細菌

Enterococcus faecium

分類
G+ 球菌 / Gram+ cocciEnterococcus
性状
Gram陽性 (G+)球菌 Cocci
科目
Medical MicrobiologyPharmacology
トピック
2/5: Streptococcus agalactiae, Enterococcus genusC16: Clindamycin. Streptogramins. Oxazolidinones. Fusidans
自然耐性薬
セフトリアキソンセフォタキシムセフタジジムセフェピムスルファメトキサゾール+トリメトプリム
作用する薬剤
アンピシリンエラバサイクリンオリタバンシンキヌプリスチン/ダルフォプリスチンダプトマイシンチゲサイクリンバンコマイシンリネゾリド

🧠 全体像:E. faeciumはの中ではE. faecalisより少ないが、がはるかに強いという一点で臨床的な重みが逆転する菌である。病原性はむしろE. faecalisのほうが高いとされる1。属に共通する性状(高塩濃度・、セファロスポリン)はE. faecalisのページにまとめてあるので参照し、本稿はアンピシリン耐性とを中心に本種固有の内容へ絞る。

微生物学的な特徴

、短い連鎖またはペア。、高塩濃度(6.5% NaCl)・胆汁への耐性、陽性という基本性状はE. faecalisと共通する。菌種の鑑別は生化学的性状パネル・で行う。

病原性の仕組み

  • E. faecalisと同様、外毒素ではなく環境耐性の強さそのものが病原性の土台——による異物定着が病態の中心
  • アンピシリン耐性の頻度がE. faecalisより著しく高い:親和性の低いPBP5を持ち、高度耐性の主な機序はpbp5遺伝子の変異である。多くの施設でE. faeciumの高度アンピシリン耐性率は70%を超える1
  • :本種の株がの中心である。vanA・vanB遺伝子によりの末端がD-Ala-D-Alaから親和性の低いD-Ala-D-Lacへ置換され、バンコマイシンが標的に結合できなくなる。院内感染株ではE. faecalisよりの頻度がはるかに高い(下の疫学を参照)

感染経路と疫学

  • 消化管の常在菌で、抗菌薬曝露(特に広域セファロスポリン・バンコマイシンの長期使用)や医療器具留置が院内での定着・伝播を助長する
  • 院内では患者間の接触・環境表面を介した伝播が起こりやすく、の隔離・が感染対策の要になる
  • ⭐ 米国の成人の(2015〜2017年)では、報告された病原体のうちE. faecalisが28,236件(7.9%)、E. faeciumが13,687件(3.8%)で、E. faeciumはE. faecalisの約半数にあたる2。腸球菌性心内膜炎に限れば90%超がE. faecalisである3
米国の成人の(2015〜2017年) E. faecium E. faecalis
医療器具関連感染での 82.1% 7.2%
での 55.6% 3.4%

表の値は米国NHSNの集計2。耐性率は国・施設で大きく違うので、自施設のデータで判断する。

起こす疾患

臨床像はE. faecalisと重なる(尿路感染症、、菌血症、)が、免疫抑制患者・長期入院患者・既往のある患者での院内感染として顕在化する頻度が高い。

診断

  • 血液培養・尿培養などでと同定したら、菌種と感受性を必ず確認する——E. faeciumは大半がペニシリン耐性で、かどうかでも治療薬が根本的に変わる3
  • アンピシリン感受性も個別に確認する(E. faecalisでは多くが感受性だが、本種では耐性が多い)

治療と予防

⚠️ 共通の・へのはE. faecalisのページを参照(はE. faeciumの・・アミノグリコシド低度耐性などを想定耐性としている)4。E. faeciumはこれに加えてアンピシリン耐性との頻度が高く、治療の選択肢が狭い。

  • ⚠️ アンピシリン+セフトリアキソン併用はE. faeciumには無効——E. faecalis心内膜炎で使う組み合わせを本種に持ち込まない3
  • 💡 アミノグリコシドのは薬ごとに違う。 本種は染色体性のAAC(6’)-Iを持つため、・・以外のアミノグリコシドは・とのを失う4
  • の心内膜炎:日本循環器学会2026はリネゾリドかを選び、アンピシリンやとの併用を考慮するとし、推奨はいずれもClass IIb(LOE C-LD)である。は日本では腸球菌への適応がなく、使用はや他の薬が無効な場合のに限られる3
  • リネゾリドはだが、菌血症ではな薬と同等の効果が示されている。腸球菌菌血症で6 mg/kg/日以下ではリネゾリドが優れ、6 mg/kg/日を超えると同等だった研究があり、臨床では8〜10 mg/kg/日まで用いられる。耐性は全体では少ないが、治療中に獲得する危険が大きい1
  • /はE. faeciumにのみ活性があり、E. faecalisには使えない1
  • 感受性結果が判明するまでのでは、地域の頻度と患者背景(免疫抑制、長期入院、抗菌薬既往)を踏まえて薬を選ぶ
  • 感染対策:の、不要な(特にバンコマイシン・セファロスポリン)使用の抑制

まとめ

  • の中ではE. faecalisより少なく病原性も低いとされるが、アンピシリン耐性・がはるかに多い。
  • ・への属共通のに加え、PBP5によるアンピシリン耐性(多くの施設で70%超)とVRE(米国の医療器具関連感染で82%)が問題になる。
  • の機序はvanA/vanBによるD-Ala-D-Lacへの置換で、バンコマイシンが標的に結合できなくなる。
  • にはリネゾリドか高用量。アンピシリン+セフトリアキソン併用は本種には無効。日本ではは腸球菌に適応がない。
  • 院内感染・の対象として、免疫抑制患者・長期入院患者での伝播に注意する。

出典

  1. 1.The Enterococcus: a Model of Adaptability to Its Environment(Clinical Microbiology Reviews・2019)PMC全文(PMC6431128)で確認した。E. faecalisとE. faeciumはともにほぼすべてのセファロスポリン系・アミノグリコシド系・クリンダマイシン・ST合剤に自然耐性を示し、高度アミノグリコシド耐性・高度アンピシリン耐性・バンコマイシン耐性を獲得しやすいこと、医療関連感染で最も多いE. faecalisはE. faeciumより病原性が高いが自然耐性・獲得耐性の程度は軽いこと、E. faeciumのβラクタム耐性は親和性の低いPBP5によるもので、高度耐性の主な機序はpbp5遺伝子の変異であり、多くの施設でE. faeciumの高度アンピシリン耐性率が70%を超えること、vanA・vanBなどによりペプチドグリカン前駆体の末端がD-乳酸に置き換わること、キヌプリスチン/ダルフォプリスチンはE. faeciumにのみ活性があること、リネゾリドは静菌的だが菌血症の治療では殺菌的な薬と同等の効果が示されていること、腸球菌菌血症でダプトマイシン6 mg/kg/日以下ではリネゾリドが優れ、6 mg/kg/日超では両者が同等だったという研究があり、臨床では8〜10 mg/kg/日まで用いられていること、ダプトマイシン耐性率は全体として低いが治療中に耐性を獲得する危険は大きいことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Antimicrobial-resistant pathogens associated with adult healthcare-associated infections: Summary of data reported to the National Healthcare Safety Network, 2015-2017(Infection Control & Hospital Epidemiology(Weiner-Lastinger LM, et al./CDC NHSN)・2020)PMC全文(PMC8276252)で確認した。米国NHSNに2015〜2017年に報告された成人の医療関連感染の病原体356,633件で、Enterococcus faecalisが28,236件(7.9%、5位)、Enterococcus faeciumが13,687件(3.8%、8位)であること、Table 10でバンコマイシン耐性(VRE)の割合がE. faeciumで医療器具関連感染82.1%・手術部位感染55.6%、E. faecalisで7.2%・3.4%であり、E. faeciumのバンコマイシン耐性で両者の差が最も大きかったこと、中心ライン関連血流感染のE. faeciumのバンコマイシン耐性が病棟78.3%・ICU 84.5%・腫瘍病棟81.6%・長期急性期病院84.4%であることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.JCS 2026 Guideline on the Management of Infective Endocarditis(Circulation Journal(日本循環器学会)・2026)J-STAGEの全文PDFの腸球菌性心内膜炎の節とTable 28で確認した。E. faecalisが腸球菌性心内膜炎の90%超を占めること、E. faeciumは大半がペニシリン耐性のため菌種と感受性の確認が必須であること、アンピシリンとセフトリアキソンの併用はE. faeciumには無効で用いないこと、ダプトマイシンは日本では腸球菌に対して承認されておらず、バンコマイシン耐性腸球菌や他の薬が無効な場合の救済治療に限られること、バンコマイシン耐性腸球菌にはリネゾリドかダプトマイシンを選び、アンピシリンやゲンタマイシンとの併用を考慮すること、Table 28でペニシリン感受性腸球菌の自然弁心内膜炎にはアンピシリン+ゲンタマイシン(高度耐性がなければ、Class I・LOE B)、ペニシリン耐性腸球菌の自然弁心内膜炎にはバンコマイシン(Class I、LOE B)、ダプトマイシン10〜12 mg/kg 1日1回(バンコマイシンアレルギー時 Class IIa、VREに Class IIb・LOE C-LD、日本では適応外)、リネゾリド600 mg 1日2回(Class IIb・LOE C、VREに Class IIb・LOE C-LD、日本では適応外)が挙げられていることを確認した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)PDF(v1.2、2023年1月)のTable 4(グラム陽性菌)で、Enterococcus faecium(規則4.9)の想定耐性表現型がフシジン酸・セフタジジム・その他のセファロスポリン系・アミノグリコシド系(低度耐性)・マクロライド系・スルホンアミド系であり、E. faecalis(規則4.7)と違ってクリンダマイシンとキヌプリスチン/ダルフォプリスチンの欄が空白であること、脚注で、E. faeciumは低度耐性に加えて染色体性のAAC(6')-I酵素を産生し、ゲンタマイシン・アミカシン・ストレプトマイシン以外のアミノグリコシドとペニシリン系・グリコペプチド系との相乗効果が失われることを確認した。閲覧 2026-09-27