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Microbe Atlas · 細菌

Streptobacillus moniliformis

分類
G− 桿菌・微好気性 / Gram− rods (microaerophilic)Streptobacillus
性状
Gram陰性 (G−)多形性の糸状桿菌(側方の球状膨大)微好気性 Microaerophilic
科目
Medical Microbiology
トピック
5/11: Zoonotic infections (list) and their prevention
原因となる疾患
ラット咬傷熱

🧠 全体像:Streptobacillus moniliformisはの北米で優位な起因菌で、などの口腔内常在菌である1。もう一つの起因菌Spirillum minus(アジア優位)とは対照的に、培養可能だが要求性が高く血液培養で見落とされやすいという性質が診断上の最大の落とし穴になる2。

微生物学的な特徴

Fusobacteria門Leptotrichiaceae科に属する、の糸状グラム陰性桿菌で、側方に膨大(形態、“moniliformis”の語源)を示す3。微好気条件下でのみ増殖する要求性の高い菌で、増殖に2〜3日〜最長7日を要する2。

⭐ のに添加されたポリアネトールナトリウム(SPS)が、わずか0.0125%という低濃度でも本菌の増殖を阻害する。 血液培養を依頼する際はこの阻害物質の影響との可能性を検査室へ伝えておく必要がある2。同定にはに基づくアッセイ(296bp産物)が利用できる2。

感染経路と疫学

  • (特に)の口腔内常在菌で、咬傷のほか尿・・便・への曝露、ペットのネズミを介した接触でも感染しうる1
  • 世界的な株コレクションの解析では、・マウス・ヒトを宿主とする株が5亜大陸以上から90年間にわたり分離されている——地理的にほぼ普遍的な分布を示す3
  • 潜伏期は3日〜3週間(通常7日未満)2

起こす疾患

疾患 臨床像
(北米で優位) 38.0〜41℃の急激な発熱+目立つ悪寒。50%超で移動性、約75%で斑丘疹状・点状出血性または紫斑状の皮疹。未治療致死率は約7〜13%、心内膜炎合併時は53%2
Haverhill熱 汚染された食品(主に)の摂取による流行性疾患。1926年に米国Haverhillで初報告(4週間で86例)。咬傷熱と臨床像は同一だが咬傷歴を欠き集団発生という疫学パターンで区別する2

合併症として(既存の、特にがある患者でリスクが高い)、、、心筋炎、、全身血管炎、、肝炎、腎炎が報告されている21。

診断

  • 検体からのグラム染色または直接検鏡(の糸状グラム陰性桿菌、側方の膨大)
  • 培養は微好気条件で2〜3日〜最長7日を要し、のSPSが増殖を阻害するため検査室への事前連絡が重要2
  • に基づくアッセイ(296bp産物)2
  • :、淋菌血症、ライム病、、エーリキア症、1

治療と予防

⭐ 第一選択は静注。 成人は40〜60万単位/日を最低7日間(2日以内に反応が無ければ120万単位/日へ増量)、小児は2〜5万単位/kg/日を5〜7日間の静注後に7日間の経口へる。心内膜炎には高用量とまたはの併用を要する2。ペニシリンアレルギーにはドキシサイクリン100mgを1日2回とする記載もある1。

⚠️ はと関連したとされる。 ・テトラサイクリンはペニシリン不耐性の代替として有効とされる2。

予防はとの接触回避、咬傷後の創部洗浄が中心。

まとめ

  • Fusobacteria門Leptotrichiaceae科に属するの糸状グラム陰性桿菌で、側方に膨大を示す。で要求性が高い。
  • の北米で優位な起因菌。(特に)の口腔内常在菌で、咬傷以外のもある。
  • ⭐ のSPSが低濃度でも増殖を阻害するため、検査室への事前連絡が診断成功の鍵。
  • 臨床像は急激な発熱・移動性・皮疹が主体。未治療致死率は約7〜13%、心内膜炎合併で53%まで上昇する。
  • 同じ菌による食品媒介性の流行がHaverhill熱で、咬傷歴を欠く集団発生という疫学パターンで区別する。
  • 治療の第一選択は静注。

出典

  1. 1.Rat-Bite Fever(StatPearls Publishing・2023)NCBI Bookshelfのライブページ(末尾に「Last Update March 6, 2023」の更新表示)で確認した。ラット咬傷熱の別名がstreptobacillosis・spirillary fever・epidemic arthritic erythemaであること、両病原体とも齧歯類の口腔内常在菌であり、咬傷のほか尿・鼻汁・便・眼分泌物への曝露やペット経由でも感染しうること、大半の症例は日本で報告されるが米国・欧州・オーストラリア・アフリカでも見られること、鑑別診断に髄膜炎菌血症・淋菌血症・ライム病・ブルセラ症・エーリキア症・リケッチア感染症が挙がること、治療の第一選択が静注ペニシリンG 20万単位を4時間ごと、または静注セフトリアキソン1gを1日1回であり、ペニシリンアレルギーには静注または経口ドキシサイクリン100mgを1日2回とし、治療期間は2週間であること、未治療での致死率が約10%であること、合併症として心内膜炎・敗血症・肺炎・髄膜炎・肝膿瘍・副腎不全が挙げられることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Rat Bite Fever and Streptobacillus moniliformis(Clinical Microbiology Reviews・2007)PMC1797630(オープンアクセス全文)で確認した。ラット咬傷熱の起因菌は北米で優位な*Streptobacillus moniliformis*(多形性の糸状グラム陰性桿菌で側方の球状膨大を示す)とアジアで優位な*Spirillum minus*(短く太い密巻きの螺旋桿菌で人工培地では培養不能、診断はギムザ染色・ライト染色・暗視野顕微鏡による直接観察に依る)の2種であること。潜伏期間は*S. moniliformis*で3日〜3週間(通常7日未満)であるのに対し*Spirillum minus*では約14〜18日と長いこと。*S. moniliformis*感染は38.0〜41℃の急激な発熱と目立つ悪寒で発症し、患者の50%超が移動性の多関節痛を、約75%が斑丘疹状・点状出血性または紫斑状の皮疹を呈し、手足には触診で著明な圧痛を伴う出血性小胞が生じうること。心内膜炎の報告17例中8例が心内膜炎発症前に弁膜疾患(最多はリウマチ性心疾患)を有していたこと、他に心筋炎・心膜炎・全身血管炎・結節性多発動脈炎・髄膜炎・肝炎・腎炎が合併症として報告されていること。*S. moniliformis*は微好気条件下でのみ増殖する要求性の高い菌で増殖に2〜3日〜最長7日を要し、市販血液培養ボトルのポリアネトールスルホン酸ナトリウムが0.0125%という低濃度でも増殖を阻害すること。16S rRNA遺伝子配列に基づくPCRアッセイ(296bp産物)が記載されていること。未治療での致死率は約7〜13%であるのに対し*S. moniliformis*心内膜炎に限ると致死率53%に達すること。治療の第一選択は静注ペニシリンGで、成人は40〜60万単位/日を最低7日間(2日以内に反応が無ければ120万単位/日へ増量)、小児は2〜5万単位/kg/日を5〜7日間の静注後に7日間の経口ペニシリンVへ切替え、心内膜炎には高用量ペニシリンGとストレプトマイシンまたはゲンタマイシンの併用を要すること、ペニシリン不耐性にはストレプトマイシン・テトラサイクリンが有効な一方エリスロマイシンは治療失敗と関連したこと。Haverhill熱は*S. moniliformis*に汚染された食品(主に牛乳)による流行性疾患で1926年に米国Haverhillで初めて報告され86例が4週間で発症し、咬傷熱と同一の徴候・症状を呈するが多数の患者が共通の時間的・地理的曝露を示し咬傷歴を欠く点で区別されることを確認した。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Phylogenetic and comparative genomics of the family Leptotrichiaceae and introduction of a novel fingerprinting MLVA for Streptobacillus moniliformis(BMC Genomics(Eisenberg T, Fawzy A, Nicklas W, Semmler T, Ewers C)・2016)PMC5093955(オープンアクセス全文)で確認した。*Streptobacillus moniliformis*がFusobacteria門Leptotrichiaceae科に属し、同科には他に*Leptotrichia*・*Sebaldella*・*Sneathia*・*Caviibacter*・*Oceanivirga*属などが含まれること、Leptotrichiaceae科の多くの種がヒト・動物の口腔・消化管・尿生殖路に常在すること、90年間・5亜大陸以上にわたり収集された23株の解析で宿主がラット・マウス・ヒトにまたがっていたこと(1925年〜2009年の株コレクション)を確認した。閲覧 2026-09-16