Microbe Atlas · 細菌
Stenotrophomonas maltophilia
- 分類
- G− 桿菌・好気性 / Gram− rods (aerobic)Stenotrophomonas
- 性状
- Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli好気性 Aerobic
- 科目
- Medical Microbiology
- トピック
- 2/19: Pseudomonas group and Acinetobacter, Burkholderia, Stenotrophomonas genus
- 自然耐性薬
- メロペネムイミペネムシラスタチンドリペネム
- 原因となる疾患
- カテーテル関連血流感染嚢胞性線維症
- 作用する薬剤
- スルファメトキサゾール+トリメトプリムセフィデロコルミノサイクリン
🧠 全体像:Stenotrophomonas maltophiliaは「カルバペネムcarbapenem カルバペネム(carbapenem)carbapenem(カルバペネム) を打てば打つほど選択されてくる」菌として読むと理解が早い。染色体性のメタロβラクタマーゼ metallo-beta-lactamase メタロβラクタマーゼ(metallo-beta-lactamase) metallo-beta-lactamase(メタロβラクタマーゼ) (L1)をもとから持つためカルバペネム系carbapenems カルバペネム系(carbapenems)carbapenems(カルバペネム系) に自然耐性 intrinsic resistance自然耐性(intrinsic resistance) intrinsic resistance(自然耐性)を示し、広域カルバペネム carbapenem カルバペネム(carbapenem) carbapenem(カルバペネム) の投与中・投与後に出現する耐性グラム陰性桿菌として臨床で問題になる。緑膿菌・Acinetobacter baumanniiと同じ非発酵性グラム陰性桿菌 non-fermenting gram-negative rods 非発酵性グラム陰性桿菌(non-fermenting gram-negative rods) non-fermenting gram-negative rods(非発酵性グラム陰性桿菌) の湿潤環境常在菌 environmental commensal 環境常在菌(environmental commensal) environmental commensal(環境常在菌) だが、カルバペネムcarbapenem カルバペネム(carbapenem)carbapenem(カルバペネム) が最初から効かないという点で仲間の中でも独自の立ち位置にある。
微生物学的な特徴
非発酵性グラム陰性桿菌non-fermenting gram-negative rods 非発酵性グラム陰性桿菌(non-fermenting gram-negative rods)non-fermenting gram-negative rods(非発酵性グラム陰性桿菌) で、緑膿菌と同様に湿潤環境(留置静脈カテーテルindwelling venous catheter留置静脈カテーテル(indwelling venous catheter)indwelling venous catheter(留置静脈カテーテル)、輸液機器、汚染された消毒液)を好む。嚢胞性線維症患者の気道から比較的よく分離されるグラム陰性菌という位置づけが臨床像を理解する手がかりになる。米国の患者登録(2012年)では有病率 prevalence 有病率(prevalence) prevalence(有病率) 13.4%で、緑膿菌(49.6%)・インフルエンザ菌H. influenzae インフルエンザ菌(H. influenzae)H. influenzae(インフルエンザ菌) (15.6%)に次ぐ3番目のグラム陰性菌であった1。
病原性の仕組み
- 特定の強力な外毒素は持たず、染色体性の2つのβラクタマーゼ(L1・L2)の産生という耐性機構そのものが臨床上の最大の特徴
- L1はメタロβラクタマーゼ metallo-beta-lactamaseメタロβラクタマーゼ(metallo-beta-lactamase) metallo-beta-lactamase(メタロβラクタマーゼ)で、ペニシリン系penicillinsペニシリン系(penicillins)penicillins(ペニシリン系)・セファロスポリン系cephalosporinセファロスポリン系(cephalosporin)cephalosporin(セファロスポリン系)・カルバペネム系carbapenems カルバペネム系(carbapenems)carbapenems(カルバペネム系) を加水分解するがアズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) は分解しない。一方L2はセリンβラクタマーゼで、拡張されたセファロスポリン分解活性に加えてアズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) を分解できる——この2つが組み合わさることで従来のβラクタムがほぼ全て無効になる2
- さらに染色体性のアミノグリコシドアセチル転移酵素 acetyltransferase アセチル転移酵素(acetyltransferase) acetyltransferase(アセチル転移酵素) によるアミノグリコシドへの自然耐性 intrinsic resistance自然耐性(intrinsic resistance) intrinsic resistance(自然耐性)、ST合剤・テトラサイクリン系・フルオロキノロンの活性を落とす多剤排出ポンプ efflux pumps 排出ポンプ(efflux pumps) efflux pumps(排出ポンプ) の蓄積、フルオロキノロンをさらに効きにくくする染色体性のSmqnr遺伝子が重なる2
💡 アズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) 単剤が効かない理由と、アズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) にβラクタマーゼ阻害薬 beta-lactamase inhibitor βラクタマーゼ阻害薬(beta-lactamase inhibitor) beta-lactamase inhibitor(βラクタマーゼ阻害薬) を足す理由が同じ図式で説明できる。 アズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) はL1では壊れないのにL2で壊れる。だからアズトレオナム aztreonam アズトレオナム(aztreonam) aztreonam(アズトレオナム) 単剤は効かず、L2を止める阻害薬(アビバクタムavibactamアビバクタム(avibactam)avibactam(アビバクタム))と組み合わせると初めて活きる2。EUCASTEUCAST(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)もアズトレオナム aztreonam アズトレオナム(aztreonam) aztreonam(アズトレオナム) 単剤は感受性が期待できない薬剤として挙げている3。
⚠️ 染色体性のメタロβラクタマーゼ metallo-beta-lactamase メタロβラクタマーゼ(metallo-beta-lactamase) metallo-beta-lactamase(メタロβラクタマーゼ) (L1)によりカルバペネム系 carbapenems カルバペネム系(carbapenems) carbapenems(カルバペネム系) に自然耐性 intrinsic resistance 自然耐性(intrinsic resistance) intrinsic resistance(自然耐性) を示す。 カルバペネムcarbapenem カルバペネム(carbapenem)carbapenem(カルバペネム) 投与中に出現する耐性グラム陰性桿菌として重要で、「広域にすればするほどカバーできる」という直感が破れる代表例。カルバペネムcarbapenem カルバペネム(carbapenem)carbapenem(カルバペネム) を含む広域治療を続けた患者に新たな発熱や肺炎が出た場合、この菌への菌交代 microbial substitution (superinfection) 菌交代(microbial substitution (superinfection)) microbial substitution (superinfection)(菌交代) を鑑別に入れる。
感染経路と疫学
- 院内日和見感染nosocomial opportunistic infection 院内日和見感染(nosocomial opportunistic infection)nosocomial opportunistic infection(院内日和見感染) :留置静脈カテーテル indwelling venous catheter留置静脈カテーテル(indwelling venous catheter) indwelling venous catheter(留置静脈カテーテル)、人工呼吸器回路ventilator circuit人工呼吸器回路(ventilator circuit)ventilator circuit(人工呼吸器回路)、汚染された消毒液・輸液に由来する
- 嚢胞性線維症患者の慢性気道定着 airway colonization気道定着(airway colonization) airway colonization(気道定着)・感染で重要。⚠️ Burkholderia cepacia complexより本菌のほうがずっと高頻度である——米国の患者登録(2012年)では本菌13.4%に対しB. cepacia complexは2.6%で、後者は調べた菌のなかで最も低かった1。B. cepacia complexは頻度ではなく予後への影響の大きさで重い存在である
- 同じ登録では2006〜2012年に緑膿菌とB. cepacia complexの有病率 prevalence 有病率(prevalence) prevalence(有病率) が有意に低下する一方、MRSAMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)が有意に上昇しており、嚢胞性線維症の菌叢は動いている1
- 免疫不全患者・長期広域抗菌薬 broad-spectrum antibiotics 広域抗菌薬(broad-spectrum antibiotics) broad-spectrum antibiotics(広域抗菌薬) (特にカルバペネム carbapenemカルバペネム(carbapenem) carbapenem(カルバペネム))投与中の患者で選択的に出現する
起こす疾患
| 疾患・病態 | 押さえどころ |
|---|---|
| 院内肺感染 | ICUICU(intensive care unit)患者・嚢胞性線維症患者の慢性気道感染 |
| 敗血症・カテーテル関連血流感染catheter-related bloodstream infection, CRBSIカテーテル関連血流感染(catheter-related bloodstream infection, CRBSI)catheter-related bloodstream infection, CRBSI(カテーテル関連血流感染) | 留置カテーテルindwelling catheter 留置カテーテル(indwelling catheter)indwelling catheter(留置カテーテル) からの血流侵入 |
診断
- 培養でグラム陰性桿菌として検出後、カルバペネム耐性carbapenem-resistant カルバペネム耐性(carbapenem-resistant)carbapenem-resistant(カルバペネム耐性) という表現型自体が同定の手がかりになる
- 感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) は必須——L1・L2に加えて排出ポンプ efflux pumps 排出ポンプ(efflux pumps) efflux pumps(排出ポンプ) などの獲得耐性 acquired resistance 獲得耐性(acquired resistance) acquired resistance(獲得耐性) を併せ持つ株もある
自然耐性として「はじめから期待できない」薬剤
EUCASTの Expected Resistant Phenotypes(v1.2、2023年1月)は、本菌について次の薬剤を感受性が期待できないものとして挙げている3。
| 系統 | 感受性が期待できない薬剤 |
|---|---|
| ペニシリン系penicillinsペニシリン系(penicillins)penicillins(ペニシリン系) | アンピシリン/アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン酸clavulanateクラブラン酸(clavulanate)clavulanate(クラブラン酸)、アンピシリン・スルバクタムampicillin-sulbactamアンピシリン・スルバクタム(ampicillin-sulbactam)ampicillin-sulbactam(アンピシリン・スルバクタム)、チカルシリン、ピペラシリンpiperacillinピペラシリン(piperacillin)piperacillin(ピペラシリン)、ピペラシリンpiperacillinピペラシリン(piperacillin)piperacillin(ピペラシリン)・タゾバクタムtazobactamタゾバクタム(tazobactam)tazobactam(タゾバクタム) |
| セファロスポリン系cephalosporinセファロスポリン系(cephalosporin)cephalosporin(セファロスポリン系)・モノバクタムmonobactamモノバクタム(monobactam)monobactam(モノバクタム) | セフォタキシムcefotaximeセフォタキシム(cefotaxime)cefotaxime(セフォタキシム)/セフトリアキソン、アズトレオナムaztreonamアズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) |
| カルバペネム系carbapenemsカルバペネム系(carbapenems)carbapenems(カルバペネム系) | エルタペネムertapenemエルタペネム(ertapenem)ertapenem(エルタペネム)、イミペネムimipenemイミペネム(imipenem)imipenem(イミペネム)、メロペネムmeropenemメロペネム(meropenem)meropenem(メロペネム) |
| その他 | アミノグリコシド系(全剤)、トリメトプリムtrimethoprim トリメトプリム(trimethoprim)trimethoprim(トリメトプリム) 単剤、ホスホマイシンfosfomycinホスホマイシン(fosfomycin)fosfomycin(ホスホマイシン)、テトラサイクリン |
同表には非発酵性グラム陰性桿菌 non-fermenting gram-negative rods 非発酵性グラム陰性桿菌(non-fermenting gram-negative rods) non-fermenting gram-negative rods(非発酵性グラム陰性桿菌) 全体への注記もあり、ベンジルペニシリンbenzylpenicillinベンジルペニシリン(benzylpenicillin)benzylpenicillin(ベンジルペニシリン)、第1・第2世代セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、リンコサミドlincosamideリンコサミド(lincosamide)lincosamide(リンコサミド)、リファンピシン、オキサゾリジノンなども一般に自然耐性 intrinsic resistance 自然耐性(intrinsic resistance) intrinsic resistance(自然耐性) である3。
💡 「耐性の予測」と「実際の感受性」を取り違えない。 同じ表で、チカルシリン・クラブラン酸clavulanateクラブラン酸(clavulanate)clavulanate(クラブラン酸)、セフタジジム、セフェピムcefepimeセフェピム(cefepime)cefepime(セフェピム)、シプロフロキサシンciprofloxacinシプロフロキサシン(ciprofloxacin)ciprofloxacin(シプロフロキサシン)、クロラムフェニコールchloramphenicolクロラムフェニコール(chloramphenicol)chloramphenicol(クロラムフェニコール)、チゲサイクリンtigecyclineチゲサイクリン(tigecycline)tigecycline(チゲサイクリン)、ポリミキシンBpolymyxin BポリミキシンB(polymyxin B)polymyxin B(ポリミキシンB)/コリスチンcolistin コリスチン(colistin)colistin(コリスチン) には耐性の予測が付いていない——これらは自然耐性 intrinsic resistance 自然耐性(intrinsic resistance) intrinsic resistance(自然耐性) ではないので、効くかどうかは株ごとの感受性試験 susceptibility test 感受性試験(susceptibility test) susceptibility test(感受性試験) で決まる(実際に排出ポンプ efflux pumps 排出ポンプ(efflux pumps) efflux pumps(排出ポンプ) による獲得耐性 acquired resistance 獲得耐性(acquired resistance) acquired resistance(獲得耐性) はしばしば起こる)3。
⭐ ST合剤は「トリメトプリムtrimethoprim トリメトプリム(trimethoprim)trimethoprim(トリメトプリム) 単剤とは別扱い」である。 EUCASTは本菌がST合剤には通常感受性である一方、トリメトプリムtrimethoprim トリメトプリム(trimethoprim)trimethoprim(トリメトプリム) 単剤には耐性だと明記している3。同様に、テトラサイクリンには常に耐性だがドキシサイクリン・ミノサイクリンminocyclineミノサイクリン(minocycline)minocycline(ミノサイクリン)・チゲサイクリンtigecycline チゲサイクリン(tigecycline)tigecycline(チゲサイクリン) への感受性は一定しない——同じ系統のなかで剤ごとに答えが違うため、系統名でまとめて判断しない3。
治療と予防
長くST合剤が治療の中心とされてきた——カルバペネム carbapenem カルバペネム(carbapenem) carbapenem(カルバペネム) が効かないぶん、この菌ではST合剤に依存してきた歴史がある。
⚠️ 侵襲性感染の推奨は変わりつつある。 米国感染症学会の2026年版指針は、侵襲性の本菌感染にセフィデロコルcefiderocolセフィデロコル(cefiderocol)cefiderocol(セフィデロコル)単剤を推奨薬とし、代替として次の4つを挙げている4。
| 位置づけ | 薬剤 | 使い方 |
|---|---|---|
| 推奨 | セフィデロコルcefiderocolセフィデロコル(cefiderocol)cefiderocol(セフィデロコル) | 単剤で用いる |
| 代替 | アズトレオナムaztreonamアズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム)・アビバクタムavibactamアビバクタム(avibactam)avibactam(アビバクタム) | 第2の薬剤との併用が望ましい |
| 代替 | レボフロキサシンlevofloxacinレボフロキサシン(levofloxacin)levofloxacin(レボフロキサシン) | 併用療法の一部として |
| 代替 | ミノサイクリンminocyclineミノサイクリン(minocycline)minocycline(ミノサイクリン) | 併用療法の一部として |
| 代替 | ST合剤 | 併用療法の一部として |
- ⭐ ST合剤が「中心」から「併用の一角」へ下がった理由は、殺菌性bactericidal 殺菌性(bactericidal)bactericidal(殺菌性) を示せないことにある。 2026年版は、広く使われてきた歴史があるにもかかわらず、PK/PD研究が一貫して高用量でもTMPのMICMIC(minimum inhibitory concentration)が低い株に対してもST合剤は本菌に殺菌的 bactericidal 殺菌的(bactericidal) bactericidal(殺菌的) 活性を示さないと示していると述べる4。感受性率が9割を超えていても「効く薬」として扱えないという、感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) の結果だけでは決まらない例である
- レボフロキサシンlevofloxacin レボフロキサシン(levofloxacin)levofloxacin(レボフロキサシン) は治療中の耐性出現が約20%に起こり、ミノサイクリンminocycline ミノサイクリン(minocycline)minocycline(ミノサイクリン) は血中濃度が持続しにくいため、いずれも単剤化は臨床的改善が明らかになってからとされる4。テトラサイクリン系のなかではミノサイクリン minocycline ミノサイクリン(minocycline) minocycline(ミノサイクリン) がチゲサイクリン tigecycline チゲサイクリン(tigecycline) tigecycline(チゲサイクリン) より優先され、エラバサイクリンeravacyclineエラバサイクリン(eravacycline)eravacycline(エラバサイクリン)・オマダサイクリンは推奨されない
- ⚠️ ただしこの推奨の根拠は弱い。指針自身が、感受性データと好中球減少動物モデル animal models 動物モデル(animal models) animal models(動物モデル) に基づくもので臨床データの裏づけはごく乏しいと明記している4。2026年版も2023年版と同じく、本菌には「標準治療」と呼べるレジメンが確立しておらず、薬剤間の比較試験も併用の追加効果のデータも欠けていると明記している42。薬剤の入手性にも国差があるため、実地では感受性試験 susceptibility test 感受性試験(susceptibility test) susceptibility test(感受性試験) と専門家 expert 専門家(expert) expert(専門家) の助言に従って個別に決める
- 💡 推奨の形そのものが数年で変わっている領域である。 2023年版は、ST合剤・ミノサイクリンminocycline ミノサイクリン(minocycline)minocycline(ミノサイクリン) またはチゲサイクリン tigecyclineチゲサイクリン(tigecycline) tigecycline(チゲサイクリン)・セフィデロコルcefiderocolセフィデロコル(cefiderocol)cefiderocol(セフィデロコル)・レボフロキサシンlevofloxacin レボフロキサシン(levofloxacin)levofloxacin(レボフロキサシン) のうち2剤の併用(重症例や他剤が使えない場合はセフタジジム・アビバクタムavibactam アビバクタム(avibactam)avibactam(アビバクタム) +アズトレオナム aztreonamアズトレオナム(aztreonam) aztreonam(アズトレオナム))という組み立てだった2。2026年版で変わったのは推奨の第一候補が「2剤併用」から「セフィデロコルcefiderocol セフィデロコル(cefiderocol)cefiderocol(セフィデロコル) 単剤」になったことで、代替薬の側は今も併用を前提にしている点として押さえる4
- 予防はカテーテル管理・消毒液の適正管理・不要な広域抗菌薬 broad-spectrum antibiotics 広域抗菌薬(broad-spectrum antibiotics) broad-spectrum antibiotics(広域抗菌薬) (特にカルバペネム carbapenemカルバペネム(carbapenem) carbapenem(カルバペネム))の使用制限
まとめ
- Stenotrophomonas maltophiliaは染色体性のメタロβラクタマーゼmetallo-beta-lactamase メタロβラクタマーゼ(metallo-beta-lactamase)metallo-beta-lactamase(メタロβラクタマーゼ) L1(ペニシリン系penicillinsペニシリン系(penicillins)penicillins(ペニシリン系)・セファロスポリン系cephalosporinセファロスポリン系(cephalosporin)cephalosporin(セファロスポリン系)・カルバペネム系carbapenems カルバペネム系(carbapenems)carbapenems(カルバペネム系) を分解。アズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) は分解しない)とセリンβラクタマーゼL2(アズトレオナムaztreonam アズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム) も分解)を併せ持つため、従来のβラクタムがほぼ全て無効になる非発酵性グラム陰性桿菌 non-fermenting gram-negative rods非発酵性グラム陰性桿菌(non-fermenting gram-negative rods) non-fermenting gram-negative rods(非発酵性グラム陰性桿菌)2。EUCASTはカルバペネム系 carbapenemsカルバペネム系(carbapenems) carbapenems(カルバペネム系)・アズトレオナムaztreonamアズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム)・アミノグリコシド系などを自然耐性 intrinsic resistance 自然耐性(intrinsic resistance) intrinsic resistance(自然耐性) として挙げる一方、ST合剤には通常感受性(トリメトプリムtrimethoprim トリメトプリム(trimethoprim)trimethoprim(トリメトプリム) 単剤には耐性)とする3。
- 嚢胞性線維症患者の気道では、緑膿菌・インフルエンザ菌H. influenzae インフルエンザ菌(H. influenzae)H. influenzae(インフルエンザ菌) に次ぐ3番目に多いグラム陰性菌(2012年の米国登録で13.4%)で、B. cepacia complex(2.6%)よりずっと高頻度である1。留置カテーテルindwelling catheter留置カテーテル(indwelling catheter)indwelling catheter(留置カテーテル)・人工呼吸器回路ventilator circuit 人工呼吸器回路(ventilator circuit)ventilator circuit(人工呼吸器回路) からの院内日和見感染 nosocomial opportunistic infection 院内日和見感染(nosocomial opportunistic infection) nosocomial opportunistic infection(院内日和見感染) も起こす。
- カルバペネムcarbapenem カルバペネム(carbapenem)carbapenem(カルバペネム) 投与中・投与後に出現する耐性菌として重要——「広域治療がすべてをカバーする」という前提が崩れる代表例。
- 治療はカルバペネム carbapenem カルバペネム(carbapenem) carbapenem(カルバペネム) ではない。長くST合剤が中心だったが、米国感染症学会2026年版は侵襲性感染にセフィデロコル cefiderocol セフィデロコル(cefiderocol) cefiderocol(セフィデロコル) 単剤を推奨薬とし(根拠は動物モデル animal models 動物モデル(animal models) animal models(動物モデル) 中心で臨床データに乏しい)、ST合剤・レボフロキサシンlevofloxacinレボフロキサシン(levofloxacin)levofloxacin(レボフロキサシン)・ミノサイクリンminocyclineミノサイクリン(minocycline)minocycline(ミノサイクリン)・アズトレオナムaztreonamアズトレオナム(aztreonam)aztreonam(アズトレオナム)・アビバクタムavibactam アビバクタム(avibactam)avibactam(アビバクタム) は併用療法の一部としての代替に置いた。ST合剤が降格した理由は、PK/PDで本菌に殺菌的 bactericidal 殺菌的(bactericidal) bactericidal(殺菌的) 活性を示せないことである4。
出典
- 1.Changing Epidemiology of the Respiratory Bacteriology of Patients With Cystic Fibrosis(Chest(Salsgiver EL, et al.)・2016)PMC全文(PMC5831653)の Results と Table 1 を直接確認した。米国嚢胞性線維症財団患者登録(CFFPR)の2012年データで、有病率は MSSA 52.3%、Pseudomonas aeruginosa 49.6%、MRSA 26.5%、Haemophilus influenzae 15.6%、Stenotrophomonas maltophilia 13.4%、非結核性抗酸菌 12.0%、Achromobacter xylosoxidans 6.4%、Burkholderia cepacia complex 2.6% であったこと。つまりグラム陰性菌では緑膿菌・インフルエンザ菌に次ぐ3番目が S. maltophilia で、B. cepacia complex は最も低いこと。2006〜2012年に緑膿菌と B. cepacia complex の有病率・罹患率は有意に低下し、MRSA は有意に上昇したこと。1995〜2012年で緑膿菌は60.4%から49.6%へ低下したこと。閲覧 2026-09-27
- 2.Infectious Diseases Society of America 2023 Guidance on the Treatment of Antimicrobial Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2023)Consensus の全文抜粋で SECTION 6: STENOTROPHOMONAS MALTOPHILIA の逐語を取得し、耐性機構の記述を確認した。「An L1 metallo β-lactamase and L2 serine β-lactamase render most conventional β-lactams ineffective against S. maltophilia. L1 hydrolyzes penicillins, cephalosporins, and carbapenems, but not aztreonam. L2 has extended cephalosporin activity as well as the ability to hydrolyze aztreonam.」と述べ、染色体性のアミノグリコシドアセチル転移酵素による自然耐性、トリメトプリム・スルファメトキサゾール/テトラサイクリン系/フルオロキノロンの活性を落とす多剤排出ポンプの蓄積、フルオロキノロンをさらに効きにくくする染色体性 Smqnr 遺伝子を挙げること、そして「標準治療」と呼べるレジメンが確立しておらず薬剤間の頑健な比較研究と併用の追加効果のデータが不足していると明記することを確認した。⚠️ この2023年版は同じ著者陣による2026年版(id: idsa-amr-gram-negative-guidance-2026、2026年3月1日時点)に置き換えられているため、本ノートではこの版を耐性機構の根拠としてのみ用い、治療の推奨は2026年版に従っている。なお2023年版の推奨は、トリメトプリム・スルファメトキサゾール/ミノサイクリンまたはチゲサイクリン/セフィデロコル/レボフロキサシンのうち2剤の併用、または重症・他剤が使えない場合のセフタジジム・アビバクタムとアズトレオナムの併用だった。閲覧 2026-09-27
- 3.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)PDF(v1.2、2023年1月)を取得し、Table 2(非発酵性グラム陰性桿菌)の rule 2.8 Stenotrophomonas maltophilia の行を座標つきで読み直した。感受性が期待できない(expected resistant)と示されている薬剤はアンピシリン/アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン酸、アンピシリン・スルバクタム、チカルシリン、ピペラシリン、ピペラシリン・タゾバクタム、セフォタキシム/セフトリアキソン、アズトレオナム、エルタペネム、イミペネム、メロペネム、ホスホマイシン、アミノグリコシド(脚注4)、トリメトプリム単剤(脚注6)、テトラサイクリン(脚注7)で、チカルシリン・クラブラン酸、セフタジジム、セフェピム、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、チゲサイクリン、ポリミキシンB/コリスチンには R が付いていない。表の前文は非発酵性グラム陰性桿菌が一般にベンジルペニシリン、第1・第2世代セファロスポリン、グリコペプチド、リポグリコペプチド、フシジン酸、マクロライド、リンコサミド、ストレプトグラミン、リファンピシン、オキサゾリジノンにも自然耐性であると述べる。脚注4はブルクホルデリア・セパシアと本菌が全アミノグリコシドに耐性と予測され、透過性の低さと排出ポンプに帰され、さらに大半の本菌が AAC(6')Iz 酵素を産生すると述べる。脚注6は本菌がトリメトプリム・スルファメトキサゾールには通常感受性だがトリメトプリム単剤には耐性と述べる。脚注7は本菌が常にテトラサイクリンに耐性である一方、ドキシサイクリン・ミノサイクリン・チゲサイクリンへの感受性は一定せず臨床成績もばらつくと述べる。ドリペネムは v1.2 の表にそもそも列として存在しない。閲覧 2026-09-27
- 4.Infectious Diseases Society of America 2026 Guidance on the Treatment of Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2026)書誌は Crossref(Tamma PD ほか、Clinical Infectious Diseases、2026年8月8日)で照合した。DOI 先の academic.oup.com は bot 判定で 403 を返すが、2026-09-27 に IDSA の掲載ページ(Version 4.0、2026年7月30日公開、内容は2026年3月1日時点)から SECTION 6: Stenotrophomonas maltophilia の全文を取得して確認した。Question 6.1 の suggested approach が逐語「Cefiderocol, as monotherapy, is the preferred treatment for invasive S. maltophilia infections, acknowledging this preference is largely based on data derived from neutropenic animal infection models and not clinical outcomes studies.」であること、Question 6.2〜6.5 がアズトレオナム・アビバクタム(第2の薬剤との併用が望ましい)・レボフロキサシン(併用療法の一部として)・ミノサイクリン(同)・トリメトプリム・スルファメトキサゾール(同)をいずれも alternative treatment option とすること、TMP-SMX については「広く使われてきた歴史があるにもかかわらず、高用量でもTMP MICが低い株に対しても本菌に殺菌的活性を示さない」とPK/PD研究が一貫して示すと述べること、レボフロキサシンは治療中の耐性出現が約20%に起こること、ミノサイクリンは血中濃度が持続しにくいため単剤化は臨床的改善が明らかになってからとすること、ミノサイクリンがチゲサイクリンより優先されエラバサイクリン・オマダサイクリンは推奨されないこと、CLSIが本菌に対して判定基準を持つのはセフィデロコル・クロラムフェニコール・レボフロキサシン・ミノサイクリン・チカルシリン・クラブラン酸・TMP-SMXの6剤だがチカルシリン・クラブラン酸は製造中止、クロラムフェニコールは毒性のため米国でほとんど使われず実質4剤であること、そして「standard of care」と呼べるレジメンが存在せず薬剤間の比較試験を欠くと明記することを確認した。閲覧 2026-09-27