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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

カテーテル関連血流感染

Catheter-related bloodstream infection (CRBSI)

別名
CRBSICLABSIカテーテル関連血流感染症中心ライン関連血流感染
臓器系
感染症全身
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 1/35:院内(医原性)感染とその主要な起因菌微生物学 2/19:シュードモナス群とアシネトバクター・バークホルデリア・ステノトロホモナス属
上位概念
菌血症
合併症
感染性心内膜炎
続発疾患
敗血症
関連疾患
腸管不全関連肝疾患
治療薬
バンコマイシンダプトマイシンリネゾリドカスポファンギンミカファンギンフルコナゾールエタノール
原因微生物
Staphylococcus epidermidisAcinetobacter baumanniiStenotrophomonas maltophiliaSaccharomyces cerevisiae黄色ブドウ球菌Candida albicans
症状
発熱悪寒

🧠 全体像は、血管内カテーテルの内腔・外壁・に形成されたを起点とする菌血症で、菌血症全般の・治療期間はそちらに委ねたうえで、本稿ではカテーテルという「異物」に固有の3つの論点——カテーテルの種類でリスクがどう変わるか、抗菌薬だけで治せるか(ロック療法)、それともが必須か、そして予防バンドルで何を防げるか——に絞って扱う。

CRBSIとCLABSIの違い

臨床でしばしば同義に使われるが、厳密には定義が異なる。

用語 定義の基盤 用途
CR(catheter-related bloodstream infection) やカテーテル・末梢血の陽性化時間差など、微生物学的に感染源をカテーテルと確定する臨床的定義 個々の患者の診断・決定
CLA(central line-associated bloodstream infection) 中心ラインが48時間を超えて留置され、他に明らかな感染源のないという定義(微生物学的にカテーテル由来と確定していなくてもよい) 施設間・な感染率の比較、院内感染対策の評価指標

CLAはCRより感度を優先した定義のため、実際にはカテーテル以外が感染源の症例も一部含まれる。診断・治療の議論では菌血症の「定量血液培養での3倍基準」「陽性化時間差2時間」といった確定基準を用いるが、これらの詳細はそちらのノートに委ねる。

カテーテルの種類とリスク差

カテーテルの構造・留置期間によって感染リスクは大きく異なり、この違いが・予防戦略の土台になる。

種別 特徴 感染リスクの傾向
短期留置、皮膚から直接血管へ挿入 最もリスクが高い部類
上腕から挿入しまで進める 「末梢から挿入するから安全」というイメージに反し、他のカテーテルと同程度のリスクを持つ1
トンネル型カフ付きカテーテル 皮下トンネルを通し、カフが線維性癒着を作って皮膚からの侵入を物理的に妨げる 非トンネル型より低リスク、長期留置向け
完全皮下埋め込み式ポート 皮下に完全に埋没し、使用時のみ穿刺する 最も低リスク、長期・間欠的使用向け
用カテーテル 内腔が太く血流量が多い。多くは非トンネル型または専用のカフ付きトンネル型 使用頻度・接続回数が多く感染機会が多い

⚠️ 「PICCはと同じくらい安全」という誤解は臨床上の実害を生む。 感染リスクを下げる目的だけでPICCへ変更しても期待した効果は得られず、むしろなどPICC特有の合併症を追加するだけになりかねない1。カテーテルの種類は、感染リスクではなく必要な留置期間・用途(短期か、長期間欠使用か)で選ぶのが原則である。

病態:バイオフィルムという足場

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catheterization'>カテーテル留置</span>"] --> B["皮膚常在菌が挿入部から<br>カテーテル外壁を伝って侵入<br>(短期留置で優位)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hub'>ハブ</span>・接続部の反復操作で<br>内腔から菌が侵入<br>(長期留置で優位)"]
    B --> D["菌体がカテーテル表面の<br>宿主蛋白(フィブリン鞘)に付着"]
    C --> D
    D --> E["多糖体基質を分泌し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm'>バイオフィルム</span>を形成"]
    E --> F["抗菌薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune cell'>免疫細胞</span>から保護された<br>菌の温床が完成"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm'>バイオフィルム</span>から持続的に血中へ菌が放出"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catheter-related bloodstream infection, CRBSI'>カテーテル関連血流感染</span>"]

Staphylococcus epidermidisなど能が高く、CRの代表的な原因菌になる。Acinetobacter baumanniiStenotrophomonas maltophiliaなど環境の多剤耐性グラム陰性桿菌や、非経口栄養施行中の患者ではCandida属・Saccharomyces cerevisiaeなどの真菌も重要な原因になる。

抗菌薬ロック療法

内の菌は全身投与された抗菌薬が十分な濃度で到達しにくいため、カテーテルを温存したい場合はカテーテル内腔に高濃度抗菌薬を満たして留置する抗菌薬ロック療法を全身投与に併用する2

  • 全身抗菌薬だけでカテーテルを温存しようとせず、ロック療法を併用することが推奨される2
  • ロック療法を実施できない状況(外来通院で頻回のロック交換が困難など)では、無理に温存を試みず、感染したカテーテルを通してでも全身抗菌薬の投与を優先する2
  • 患者では、透析セッションごとにロックを行う運用がとして用いられる。
  • エタノールロックは抗菌薬耐性菌・真菌を含む広いスペクトラムでを破壊する代替手段として、長期の温存を目指す場面で選択肢になる。

治療:温存か抜去か

カテーテルの種類・原因菌・重症度の3軸で判断する。菌血症基準と重なる部分は共通だが、ここではカテーテル温存を試みてよい条件に焦点を当てる。

状況 方針
短期、グラム陰性桿菌・S. aureus・腸球菌・真菌・抗酸菌が原因 する2
長期・化膿性・適切な抗菌薬投与にもかかわらず持続する菌血症、または上記のの高い菌が原因 する2
長期、上記に該当しない低菌(多くのなど)による合併症のない感染 全身抗菌薬+抗菌薬ロック療法によるカテーテル温存を試みてよい2

「温存を試みる」ことと「温存できる」ことは同じではない。 温存を試みてもしない、血液培養が持続陽性、局所の膿瘍形成などがあれば、温存を断念してへ切り替える。特にCandida属によるなどの播種性合併症のリスクが高く、と抗真菌薬全身投与を優先する。

予防バンドル

CR予防可能な院内感染の代表であり、挿入時とそれぞれにエビデンスの確立したバンドル要素がある1

挿入時バンドル

  • 挿入に関わる医療者全員が、マスク・帽子・ガウン・手袋を着用し、患者を全身用のドレープで覆う最大バリアプリコーションを徹底する1
  • 挿入前の皮膚消毒は濃度2%以上のアルコール性製剤を用いる1
  • 挿入部位はに応じて感染リスクの低い部位を選び、でのカテーテルではが感染合併症を減らす部位として優先される。
  • 感染予防のみを目的にPICCを選択しない(前述のとおりPICCは他のカテーテルと同等のリスクを持つ)1

維持期バンドル

  • 不要になったカテーテルは日々の必要性評価に基づき速やかにする。
  • ・接続部の清潔操作を維持し、定期的な入れ替えを感染予防目的だけで行わない。
  • は(生後2か月超で)必須実践に位置づけられる。基本的なバンドルを遵守しても施設の目標を上回るCR率が続く場合に追加的な対策として検討するのは、抗菌薬・抗菌物質コーティングカテーテルの方である1

まとめ

  • CRは血管内カテーテルのを感染源とする菌血症で、微生物学的に確定するCRと、感染対策の指標である定義CLAは厳密には別物である。
  • PICCは「末梢だから安全」という直感に反し、他のカテーテルと同程度の感染リスクを持つため、感染予防目的だけでPICCを選ばない。
  • カテーテル温存を狙うなら抗菌薬ロック療法を全身抗菌薬に併用する。ロック療法が使えない状況では温存にこだわらず全身抗菌薬投与を優先する。
  • 菌による合併症のない長期感染だけが温存の対象で、・心内膜炎・・真菌やの高い菌ではする。
  • 予防は最大バリアプリコーション、2%以上のアルコール性消毒、不要カテーテルの早期を基本バンドルとし、これらを徹底してもなお感染率が高い場合に限り抗菌薬コーティングカテーテルなどを追加する。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Intravascular Catheter-Related Infection: 2009 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2009)短期留置カテーテルはグラム陰性桿菌・S. aureus・腸球菌・真菌・抗酸菌が原因なら抜去すること、長期留置カテーテルでも重症敗血症・化膿性血栓性静脈炎・心内膜炎・適切な抗菌薬投与にもかかわらず持続する菌血症では抜去すること、それ以外の低毒力菌による合併症のない長期留置カテーテル感染では全身抗菌薬に抗菌薬ロック療法を併用してカテーテル温存を試みてよいこと、ロック療法が使用できない状況では汚染されたカテーテルを通して全身抗菌薬を投与すべきことを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Strategies to prevent central line-associated bloodstream infections in acute-care hospitals: 2022 Update(Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA) / Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2022)中心静脈カテーテル挿入時はマスク・帽子・滅菌ガウン・滅菌手袋・全身用滅菌ドレープによる最大滅菌バリアプリコーションを全例で用いること、挿入前の皮膚消毒には濃度2%以上のアルコール性クロルヘキシジン製剤を用いること、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)は他の中心静脈カテーテルと同程度の感染リスクを持つため感染予防を目的にPICCを選択すべきではないことを確認した。閲覧 2026-08-11