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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

カラアザール後皮膚リーシュマニア症

Post-kala-azar dermal leishmaniasis

別名
PKDL
臓器系
感染症皮膚
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 4/21:リーシュマニア皮膚科 1-12:ハンセン病とリーシュマニア症の臨床病型・治療
上位概念
リーシュマニア症
治療薬
ミルテホシンスチボグルコン酸ナトリウムパロモマイシンアムホテリシンB
原因微生物
Leishmania donovani
症状
皮膚結節丘疹
適応薬
スチボグルコン酸ナトリウムパロモマイシンミルテホシン

🧠 全体像:(PKDL)は、()が治癒した後に皮膚だけに現れる遅発性合併症である。単なるではなく、症状の乏しい患者が地域社会の中でへ原虫を供給し続けるヒトリザーバーになりうる点が上の核心である。臨床像・は地域で大きく異なり、東アフリカ(スーダン)では自然治癒しやすい丘疹・、インド亜大陸では自然治癒せず慢性化する病変という対照をなす。

病態

PKDLはの原因原虫(主に*Leishmania donovani*)が、VL治療後も皮膚に温存されて生じる。発症はVL治療後6か月〜5年と幅があり、インド亜大陸では患者の15〜20%で先行するVLの病歴を確認できない(新規発症または無症候感染からの発症と考えられる)1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visceral leishmaniasis'>内臓リーシュマニア症</span>(VL)"] --> B["治療により全身症状は治癒"]
    B --> C["皮膚に原虫が温存される"]
    C --> D["数か月〜数年後に皮膚病変として顕在化"]
    D --> E{"地域・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='host immunity'>宿主免疫</span>応答"}
    E -->|"東アフリカ(強いエフェクター<span class='jp-term jp-term-diagram' title='memory T cells'>メモリーT細胞</span>応答)"| F["丘疹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nodular lesion'>結節性病変</span>、自然治癒しやすい"]
    E -->|"インド亜大陸(弱い応答)"| G["斑状〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleomorphism'>多形性</span>病変、慢性化・非自然治癒"]

⭐ 自然治癒の有無を分けるのは免疫応答の強さである。 スーダンのPKDL患者は皮膚のエフェクター応答が高く、これが自然治癒につながる。インドの患者ではこの応答が弱く、非治癒性の慢性病変になる2。

臨床像

地域 病変の型
インド亜大陸 斑状・局面・丘疹結節が同一患者に混在する病変 自然治癒しない。慢性化する1
東アフリカ(スーダン) 丘疹・が主体 大多数が自然治癒する1

💡 PKDLは「治った患者」に見えても伝播の温床になりうる。 xenodiagnosis(への吸血実験)では、を吸血したの86%が感染したのに対し斑状病変では35%にとどまり、病変型によって伝播効率が異なることが示されている1。全身症状に乏しく本人が受診しないまま地域内の感染源であり続けることが、VL制圧プログラムにとっての課題になる。

診断

  • 病歴(VLの既往、流行地滞在歴)と皮膚病変のが出発点になる。
  • 寄生虫学的診断(皮膚スリット標本の鏡検・生検)の感度は病変型で大きく異なり、結節性67〜100%、丘疹性36〜69%、斑状7〜33%と、斑状病変ほど検出が難しい1。
  • 血清学的検査(rK39迅速検査)は補助的に用いられるが、全般と同様に単独の確定診断法にはならない。
  • (定量的を含む)は鏡検より感度が高く、専門施設で診断・治療効果判定に用いられる2。

治療

インド亜大陸では、年齢・体重に応じて調整した経口12週間投与が第一選択で、無効例ではが代替になる2。

東アフリカのVL治療では、+と比べ、+併用の方がその後のPKDLが低いことが第3相試験で示されている(スーダン・エチオピア合算で/PM群20.9%に対し+群4.4%)3。この差は、2026年のガイドラインが東アフリカのVL初回治療として+を提案する根拠の一つになっている4。

⚠️ PKDLには単一の確立された標準治療がない。 再発・がしばしば問題になり、地域・病変の重症度に応じて個別化が必要である1。

まとめ

  • PKDLは治療後に皮膚だけに生じる遅発性合併症で、原虫の温存とヒトリザーバーとしての伝播に意義がある。
  • 東アフリカでは自然治癒しやすい丘疹・、インド亜大陸では自然治癒せず慢性化する病変という対照的な経過を示し、その違いは皮膚のエフェクター応答の強さで説明される。
  • 寄生虫学的診断の感度は病変型に依存し、斑状病変ほど検出しにくい。
  • インド亜大陸の第一選択は経口12週間。東アフリカのVL治療で+を選ぶと、+よりその後のPKDLが低い。

出典

  1. 1.Post kala-azar dermal leishmaniasis: A threat to elimination program(PLOS Neglected Tropical Diseases・2020)PKDLが内臓リーシュマニア症(VL)治療後6か月〜5年後(15〜20%は先行するVLの病歴が確認できない)に生じる遅発性の皮膚病変であること、インド亜大陸では斑状・局面・丘疹結節が混在する多形性病変を呈する一方、東アフリカ(スーダン)では丘疹・結節性病変が主体であること、スーダンでは大多数の症例が自然治癒する一方インド亜大陸では自然治癒せず慢性化すること、xenodiagnosisで結節性病変からのサシチョウバエ感染率が86%・斑状病変で35%と病変型によって伝播リザーバーとしての効率が異なること、寄生虫学的診断の感度が結節性67〜100%・丘疹性36〜69%・斑状7〜33%と病変型で大きく異なることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Post kala-azar dermal leishmaniasis in the Indian sub-continent: challenges and strategies for elimination(Frontiers in Immunology・2023)インド亜大陸ではVL既往者の2〜20%がPKDLを発症すること、スーダンのPKDL患者は皮膚のエフェクターメモリーT細胞応答が高く自然治癒に至る一方、インドのPKDL患者はこの応答が弱く非治癒性の慢性病変になること、インド亜大陸での第一選択治療が年齢・体重で調整した経口ミルテホシン12週間投与であり、無効例ではリポソーマルアムホテリシンBが代替になることを確認した。閲覧 2026-09-06
  3. 3.Paromomycin and Miltefosine Combination as an Alternative to Treat Patients With Visceral Leishmaniasis in Eastern Africa: A Randomized, Controlled, Multicountry Trial(Clinical Infectious Diseases・2022)ケニア・エチオピア・スーダン・ウガンダで実施された第3相多施設無作為化比較試験(439例登録・424例完了)で、カラアザール後皮膚リーシュマニア症の発生率がスーダン・エチオピア合算でスチボグルコン酸ナトリウム+パロモマイシン(SSG/PM)群20.9%とミルテホシン+パロモマイシン群4.4%より高かったことを確認した。閲覧 2026-09-06
  4. 4.WHO guidelines on leishmaniases: treatment of visceral leishmaniasis and post-kala-azar dermal leishmaniasis in eastern Africa and South-East Asia(World Health Organization・2026)2026年7月28日発行のガイドライン本体で、東アフリカ・南アジアの内臓リーシュマニア症(VL)とカラアザール後皮膚リーシュマニア症(PKDL)を対象に含むこと、推奨がすべてHIV陰性患者を対象とすることを確認した。閲覧 2026-09-06