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Drug Atlas · C9 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

セフィデロコル

cefiderocol

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
フェトロージャ
商品名(EU)
Fetcroja
科目
Pharmacology
トピック
C9: Cephalosporins
標的微生物
Pseudomonas aeruginosaAcinetobacter baumanniiKlebsiella pneumoniaeEscherichia coliStenotrophomonas maltophilia
副作用
皮疹下痢
監視検査値
クレアチニン
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症

🧠 全体像:は13薬剤の生成論的な軸から外れた特殊枠で、セファロスポリンという独自の機序を持つ。細菌が鉄を取り込むために使う輸送系を「トロイの木馬」のように利用して外膜を通過するため、通常の薬が通れない・亢進を持つグラム陰性菌にも届く、最後の砦の一つ。

薬効群の中での位置づけ

同じ「特殊枠」の・がβラクタマーゼへの対策(阻害薬配合・本体の改造)で耐性を克服するのに対し、はそもそも菌体内へ入る経路そのものを変えるという根本的に異なる戦略を取る。この違いにより、他の2剤が手を焼くや、多くのセファロスポリン・に本質的に耐性を持つStenotrophomonas maltophiliaにも活性を持つ点が際立つ。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cefiderocol'>セフィデロコル</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catechol side chain'>カテコール側鎖</span>が<br>細胞外の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free iron'>遊離鉄</span>(Fe3+)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chelation'>キレート</span>"] --> B["鉄と結合した複合体を形成"]
    B --> C["細菌の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron transport system'>鉄輸送系</span>(TonB依存性受容体)が<br>これを『鉄』と誤認して能動的に取り込む"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='porin'>ポーリン</span>を介さずに外膜を通過<br>(Trojan horse機構)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periplasm'>ペリプラズム</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein'>PBP</span>に結合し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell wall synthesis'>細胞壁合成</span>を阻害"]
    F["ほぼすべてのβラクタマーゼ<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallo-beta-lactamase'>メタロβラクタマーゼ</span>を含む)に安定"] -.->|"分解されにくい"| E

💡 鉄欠乏環境(の多くはそうなっている)ほど菌がこの輸送系を活発に使うため、皮肉にも感染の現場でこの機序が効きやすい。 通常のβラクタムがを通って受動的に拡散するのに対し、は菌の能動輸送に「便乗」する点が根本的に異なる。

適応

領域 使いどころ
感染 の・緑膿菌・による感染で、他の薬剤に耐性がある場合。米国では・/という適応ごとの対象菌リストで承認されているのに対し、では「他に肢が限られるグラム陰性感染症」という包括的な適応で承認されており、範囲の書き方が異なる12
呼吸器 Stenotrophomonas maltophiliaによる(この菌は他のほぼ全セファロスポリン・に本質的に耐性)
泌尿器 (によるもの)

用法・用量

静注、時間を長くしてとしての効果を確保する(が推奨される)。腎機能に応じたが必要。実際の用量は適応・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:への過敏症
  • ⚠️ 無差別な広域使用を避ける。 「多剤耐性が確認された、または強く疑われる場合」に絞って使うことが耐性化を防ぐ上で重要
  • ⚠️ CREDIBLE-CR試験(・/敗血症・を対象にした2対1・の第3相試験、群101例 対 BAT群49例)で、群のが試験終了時点で34/101例(33.7%)とBAT群9/49例(18.4%)より高い傾向が観察された32。この死亡率上昇は・菌血症/敗血症で治療された患者に生じ、では生じなかった。また群ではAcinetobacter属感染との関連が認められたが、他の非発酵菌感染では差がなかった2。原因は確定していないが、がこの死亡率シグナルへの注意喚起を行っている。使用に際しては臨床的必要性を慎重に評価する
  • Enterococcus・Listeria・には無効(セファロスポリン共通。標的はあくまでグラム陰性菌)

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢、注射部位反応
注意 皮疹、
重篤・まれ アナフィラキシー、

まとめ

  • セファロスポリン。を利用した「トロイの木馬」機構で外膜を通過し、ほぼすべてのβラクタマーゼ(メタロ型を含む)に安定。
  • ・緑膿菌・、および本質的に多剤耐性のStenotrophomonas maltophiliaが主戦場。
  • に対する最後の砦。乱用せず耐性確認例に絞って使う。
  • ⚠️ CREDIBLE-CR試験の死亡率シグナルが報告されており、臨床的必要性を見極めて使用する。
  • Enterococcus・Listeria・には無効。標的はグラム陰性菌に限られる。

出典

  1. 1.FETROJA (cefiderocol) for Injection Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2025)米国の承認適応は複雑性尿路感染症(E. coli・K. pneumoniae・P. mirabilis・P. aeruginosa・Enterobacter cloacae complexによるもの)と院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎(上記に加えAcinetobacter baumannii complex・Serratia marcescensによるもの)に限定され、対象菌種を列挙する形を取る(EUの包括的な適応文言とは書き方が異なる)。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Fetcroja (cefiderocol) - Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2025)CREDIBLE-CR試験のday28全死因死亡率はセフィデロコル群25/101例(24.8%)・BAT群9/49例(18.4%)、試験終了時までの全死因死亡率はセフィデロコル群34/101例(33.7%)・BAT群9/49例(18.4%)で、セフィデロコル群で死亡率が高い傾向が続いた。この死亡率上昇は院内肺炎・菌血症/敗血症で治療された患者に生じ、複雑性尿路感染症では生じなかった。セフィデロコル群ではAcinetobacter属感染との関連が認められたが、他の非発酵菌感染ではBAT群と比べ死亡率は高くなかった。EUの適応は「他に治療選択肢が限られる成人のグラム陰性好気性菌による感染症」という包括的な文言である。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Efficacy and safety of cefiderocol or best available therapy for the treatment of serious infections caused by carbapenem-resistant Gram-negative bacteria (CREDIBLE-CR): a randomised, open-label, multicentre, pathogen-focused, descriptive, phase 3 trial(The Lancet Infectious Diseases・2021)95施設で実施されたランダム化2対1・非盲検の第3相CREDIBLE-CR試験(院内肺炎・血流感染/敗血症・複雑性尿路感染症でカルバペネム耐性グラム陰性菌が疑われる重症患者が対象)で、セフィデロコル群101例中34例(34%)、最適利用可能治療(BAT)群49例中9例(18%)が試験終了までに死亡した。死亡の増加はセフィデロコル群でAcinetobacter属感染症例に多かった。閲覧 2026-08-27