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Microbe Atlas · 細菌

Klebsiella pneumoniae

肺炎桿菌

分類
腸内細菌科 / EnterobacteriaceaeKlebsiella
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli通性嫌気性 Facultative
科目
Medical Microbiology
トピック
2/13: Klebsiella, Enterobacter, Proteus, and Serratia genus5/8: The most important microbial pathogens of the urinary tract (list)5/13: Bacteria causing lower respiratory tract infections (list) and their diagnosis
自然耐性薬
アンピシリンアモキシシリン
原因となる疾患
Caroli病グラム陰性毛包炎マラコプラキア院内肺炎壊死性腸炎急性腎盂腎炎・腎膿瘍急性胆管炎細菌性肝膿瘍新生児敗血症人工呼吸器関連肺炎胆石症特発性細菌性腹膜炎尿路感染症膿腎症敗血症肺膿瘍腹膜炎・消化管穿孔
作用する薬剤
アズトレオナムアミカシンイミペネム+シラスタチンエラバサイクリンエルタペネムゲンタマイシンコリスチンセファゾリンセファレキシンセフィデロコルセフェピムセフォキシチンセフォタキシムセフォペラゾンセフタジジムセフタジジム+アビバクタムセフトロザン+タゾバクタムセフメタゾールチゲサイクリントブラマイシンドリペネムネチルマイシンノルフロキサシンピブメシリナムピペラシリンポリミキシンBメロペネムロメフロキサシン

🧠 全体像:を理解する鍵は莢膜の厚さの一点にある。腸内細菌科の中で群を抜いて厚いが、粘稠なコロニー・悪臭のない血性喀痰・患者のという臨床像を一直線に説明し、同時に莢膜の下に潜むβラクタマーゼ(染色体性SHV-1から・まで)が、腸内細菌科の中で最も手強い耐性菌になりやすい理由でもある。Enterobacter cloacae・Serratia marcescensと共に陽性の院内感染菌グループ(群)を構成するが、莢膜の厚さと耐性の広がりで一段抜きん出た存在になる。

微生物学的な特徴

項目 内容
運動性 ——を持つEnterobacter cloacae・Proteus mirabilisとの鑑別点
莢膜 厚い——腸内細菌科の中で最も目立つ形態的特徴。血清学的検査は
生化学的性状 陽性(急速発酵)、ウレアーゼ陽性、グルコース陽性、・H₂S陰性
培養所見 で濃青〜紫色コロニー、では尿臭のある粘液様の大コロニー(莢膜による粘稠性を反映)

⭐ 群(Klebsiella・Enterobacter・Serratia)は陽性という1点で束ねられる。 でを呈する・院内感染菌のグループで、Proteus mirabilis()とはこの1点で明確に分かれる。KlebsiellaとEnterobacterは急速発酵菌、Serratiaは緩徐発酵菌という発酵速度の差はあるが、臨床的な重みは薄い。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Klebsiella pneumoniae"] --> B["厚い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polysaccharide capsule'>多糖体莢膜</span>"]
    A --> C["染色体性SHV-1βラクタマーゼ<br>(常在的に産生)"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extended-spectrum β-lactamase'>ESBL</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbapenemase'>カルバペネマーゼ</span><br>(獲得性、プラスミド性が多い)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evasion of phagocytosis'>貪食回避</span>"]
    E --> F["粘稠なコロニー<br>厚く血性だが悪臭のない喀痰"]
    C --> G["アンピシリン・アモキシシリンに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrinsic resistance'>自然耐性</span>"]
    D --> H["ペニシリン・セファロスポリン<br>さらには<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbapenem'>カルバペネム</span>まで無効化"]

💡 「3つのA」で臨床像を覚える。 に多く、誤嚥で下気道に侵入し、膿瘍を形成する——この語呂がそのまま肺炎()の典型像になる。

⚠️ は腸内細菌科の耐性の階層を最も速く駆け上がる菌種である。 染色体性のSHV-1型βラクタマーゼを常在的に産生するためアンピシリン・アモキシシリンにはを示す(同じ腸内細菌科でも大腸菌はこの酵素を持たない)。ここに()が加わるとペニシリン・セファロスポリンの大部分が無効化され、さらに(・・OXA-48型)を獲得すると最終手段のまで効かなくなる——この耐性の階層(→)を教科書的に最も体現する菌種として知られる。

感染経路と疫学

  • ・上気道の常在菌で、との両方が起こる
  • 患者のの代表菌——誤嚥を契機に()を起こす
  • 院内では・尿路カテーテル・を介した日和見感染が中心
  • 新生児室・でのを起こしやすく、の原因にもなる
  • ⚠️ 健常者を侵す型もある。 が院内・基礎疾患のある人の日和見感染を起こすのに対し、型は健常なことが多い市中の人に感染し、多発・転移性拡散、中枢神経系感染・を起こしやすい。アジア太平洋地域に多いが世界的に発生している。莢膜産生の亢進と(鉄を奪う)産生がで、現時点の臨床検査室ではと判別できない1

起こす疾患

疾患 押さえどころ
肺炎() 厚く血性だが悪臭のない喀痰が特徴。、に進展しうる
尿路感染症・・ 起因菌の。カテーテル関連が多い
・ 腸管からの
腹膜炎・消化管穿孔・ 肝硬変患者で問題になる
(型による侵襲性症候群) 糖尿病と菌側の特定のが素因となってを作り、菌血症・髄膜炎・・へ転移しうる。抗菌薬にを併用する2
副鼻腔炎・中耳炎・・敗血症 日和見感染として起こりうる
新生児室でのに注意

診断

  • で濃青〜紫色コロニー、で粘液様の大コロニーという培養所見が莢膜の厚さを反映する
  • による血清学的検査
  • がを決める:・産生の有無で使える薬が大きく変わる

治療と予防

耐性段階 治療の考え方
・セフトリアキソンなどの
産生株(尿路以外の感染) ・・が推奨薬。重症例・ではかを優先する(率の高いはで排泄が速まる)。代替薬は・エンメ。臨床的に改善したあとは、感受性を確認のうえ経口の・・へ切り替えてよい。・は侵襲性感染には勧められない。は別扱いで、の選択肢がある3
だが非産生 見落としやすい段階。・に感性( 1 µg/mL以下)でだけ非感性なら、かの投与時間を延長して使う。すべてのに非感性なら、・、セフタジジム・、・、・が推奨薬、・・が代替薬になる3
産生(型) セフタジジム・、・、・が推奨薬(3剤とも95%超に活性)。治療中の耐性化はセフタジジム・で約10%、他の2剤で3%未満と報告され、3剤同格のうえで・→セフタジジム・→・の順にわずかに優先される。・とが代替薬で、・も・尿路感染以外なら代替になる3
産生(型) ⚠️ ・・はいずれもを阻害しないため、型の推奨薬は無効。が分解できないを、同時に産生されがちなセリン型βラクタマーゼからで守る・、またはが推奨薬。・が無ければ、セフタジジム・との併用で代える(2剤を別々に投与するより、3対1に固定された配合剤のほうが両成分の曝露がそろい目標到達確率が高いため、使えるなら配合剤をわずかに優先する)。・は・尿路感染以外なら代替になる3
産生(OXA-48様) セフタジジム・が推奨薬(95%超に活性)。代替薬は・と(どちらも95%超に活性)で、・は・尿路感染以外なら代替になる。・はOXA-48様酵素をほとんど阻害しないため、その配合剤は感受性と報告されても勧められない3

💡 産生株に・を使わないのはなぜか。 391例のでは30日が・88%、96%だった。ただし基準法(ブロスマイクロ)で感受性を再判定した320例の再解析では91%対96%に縮まり、統計学的な有意差は消えている。それでも指針がを推奨薬に据え続けるのは、差の向きが部分集団をまたいで一貫していることと、機序上の懸念が重なるためである——やOXA-1が共存すると感受性判定そのものがぶれやすく、菌量が多い(膿瘍など)では再増殖が起こりやすく、との配合比が8対1での量が相対的に少ない。一方、重症でなく菌血症を伴わないでは代替薬として認められている——尿中濃度が高いためで、部位によって扱いが変わる3。

⚠️ テトラサイクリン系(・)は組織へ速やかに分布して血中・尿中濃度が低いため、CREの・尿路感染には勧められない代替にとどまる。 などのは、従来のCRE治療でよく軸にされたが、型の推奨薬は・アミノグリコシドを軸にした治療より転帰がよく毒性も少ないと一貫して報告されている。は短期投与でも腎毒性が約30%に及ぶため、現行の手引きではCREのでも代替にとどまる3。

  • アンピシリン・アモキシシリンは染色体性SHV-1により(メタパネルの欄を参照)
  • 予防はカテーテル管理・・でのが中心

まとめ

  • は・厚い莢膜を持つ陽性のグラム陰性桿菌で、の濃青〜紫色コロニーと粘液様の大コロニーが特徴。
  • 「3つのA」(・誤嚥・膿瘍)がの臨床像を要約する。
  • Enterobacter cloacae・Serratia marcescensと共に群(陽性の院内感染菌)を構成するが、莢膜の厚さと耐性の広がりで際立つ。
  • 染色体性SHV-1でアンピシリン・アモキシシリンに。→(・・OXA-48)という耐性の階層を最も速く駆け上がる腸内細菌科の代表菌。
  • の型で薬が変わる:型はセフタジジム・などの新しい阻害薬配合剤、型は・(無ければセフタジジム・+)か、OXA-48様はセフタジジム・。でもを作っていない株があり、そこではの投与時間延長で足りることがある。
  • の院内感染とは別に、健常者に・・髄膜炎を起こす型がある。

出典

  1. 1.Hypervirulent Klebsiella pneumoniae(Clinical Microbiology Reviews・2019)抄録で、高病原性の型は古典型より病原性が強く、健常なことが多い市中の人に感染し、アジア太平洋地域に多いが世界的に発生していること、多発病巣や転移性拡散を起こしやすく感染源のコントロールを要することが多いこと、中枢神経系感染と眼内炎を起こしやすいこと、莢膜産生の亢進とアエロバクチン産生が確立した病原因子であること、現時点の臨床検査室では古典型と判別できないことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Klebsiella pneumoniae liver abscess: a new invasive syndrome(The Lancet Infectious Diseases・2012)抄録で、過去20年にアジアで肝膿瘍を起こす特有の侵襲性症候群の報告が増え世界的に広がりつつあること、糖尿病と菌側の2つの特定の莢膜型が肝膿瘍とそれに続く転移性合併症(菌血症・髄膜炎・眼内炎・壊死性筋膜炎)の素因になること、適切な抗菌薬と肝膿瘍の経皮ドレナージの併用が生存の可能性を高めることを確認した。全文は未取得。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Infectious Diseases Society of America 2026 Guidance on the Treatment of Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2026)DOI 先の academic.oup.com は bot 判定で 403 を返すが、2026-09-28 に発行元(IDSA)の掲載ページにブラウザの User-Agent を付けた curl で全文を取得し、Version 4.0(2026年7月30日公開、内容は2026年3月1日時点)の第1節・第3節を照合した。尿路以外のESBL産生腸内細菌目感染症ではエルタペネム・イミペネム・メロペネムが推奨薬で、重症例・低アルブミン血症ではイミペネムかメロペネムを優先すること、セフェピム・エンメタゾバクタムが代替薬であること、臨床的に改善後は感受性を確認のうえ経口のシプロフロキサシン・レボフロキサシン・スルファメトキサゾール+トリメトプリムへ切り替えてよいこと(Question 1.3)。ピペラシリン・タゾバクタムは血流感染391例の無作為化比較試験で30日生存率88%対メロペネム96%だったが、基準法で感受性を再判定した320例の再解析では91%対96%となり有意差は消えており、それでも差の向きの一貫性と機序上の懸念(ESBLやOXA-1共存時の判定のぶれ、菌量が多い病巣での再増殖、8対1という配合比)から侵襲性感染には勧めないこと、一方で重症でなく菌血症を伴わない複雑性尿路感染症では代替薬として認めていること(Question 1.4)。カルバペネマーゼ非産生のカルバペネム耐性株では、メロペネム・イミペネム感性(MIC 1 µg/mL以下)でエルタペネム非感性なら投与時間を延長したメロペネムかイミペネムを用い、すべてのカルバペネムに非感性ならアズトレオナム・アビバクタム、セフタジジム・アビバクタム、イミペネム・レレバクタム、メロペネム・バボルバクタムが推奨薬、セフィデロコル・エラバサイクリン・チゲサイクリンが代替薬であること(Question 3.3)。KPC産生腸内細菌目の侵襲性感染症ではセフタジジム・アビバクタム、イミペネム・レレバクタム、メロペネム・バボルバクタムが推奨薬(3剤とも95%超に活性)で、治療中の耐性化はセフタジジム・アビバクタムで約10%、他の2剤で3%未満と報告され、同格としたうえでメロペネム・バボルバクタム、次にセフタジジム・アビバクタム、次にイミペネム・レレバクタムの順にわずかに優先されること、アズトレオナム・アビバクタムとセフィデロコルが代替薬で、エラバサイクリン・チゲサイクリンも血流感染・尿路感染以外なら代替になること(Question 3.4)。NDM産生株ではアズトレオナム・アビバクタムとセフィデロコルが推奨薬で、アズトレオナム・アビバクタムが使えなければセフタジジム・アビバクタム+アズトレオナムが代替であり、3対1固定の配合剤のほうが両成分の曝露がそろい目標到達確率が高いため使えるなら配合剤をわずかに優先すること、アビバクタム・レレバクタム・バボルバクタムはいずれもNDMを阻害しないこと(Question 3.5)。OXA-48様産生株ではセフタジジム・アビバクタムが推奨薬(95%超に活性)で、アズトレオナム・アビバクタムとセフィデロコルが代替薬(いずれも95%超に活性)、エラバサイクリン・チゲサイクリンも血流感染・尿路感染以外なら代替であり、メロペネム・バボルバクタムとイミペネム・レレバクタムは感受性と報告されても勧めないこと(Question 3.6)。エラバサイクリン・チゲサイクリンは組織へ速く分布し血中・尿中濃度が低いため血流感染・尿路感染には勧めない代替にとどまること(Question 3.7)。コリスチンは短期投与でも腎毒性が約30%に及ぶためCREの単純性膀胱炎でも代替に位置づけられていること、KPC型の推奨薬3剤はポリミキシン系・アミノグリコシドを軸にした代替治療より転帰がよく毒性が少ないと一貫して報告されていることを確認した。閲覧 2026-09-28