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Drug Atlas · C11 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

ポリミキシンB

polymyxin B

分類
Antibiotics / 抗菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C11: Chloramphenicol. Polymyxins. Antifolate drugs
禁忌疾患
重症筋無力症
標的微生物
Pseudomonas aeruginosaAcinetobacter baumanniiKlebsiella pneumoniae
副作用
知覚異常めまい
監視検査値
クレアチニン

🧠 全体像Bは同じ薬剤が顔を変えるという点で学習上おもしろい。の「トリプル抗菌薬」の一員として擦り傷に塗るときは全身毒性を心配しなくてよいほど安全に使われる一方、多剤耐性Gram陰性菌に対する最後の手段として全身投与すると、添付文書にが付くほどの腎毒性・性を示す。この二面性の分かれ目は「吸収されるかどうか」——皮膚・粘膜からはほとんど吸収されないため外用は安全、静注・筋注・では活性のまま全身に回るため腎尿細管と神経細胞膜を直接傷める。姉妹薬のE)と対で覚える。

薬効群の中での位置づけ

分類 薬剤 特徴
(活性型を直接投与) B 外用では全身毒性が問題にならない。全身投与では腎毒性・性が強く多剤耐性Gram陰性菌の最後の手段
E) として投与され体内で徐々に活性化。同様の腎毒性・性を持つが吸収動態が異なる1
外用配合薬の相方( Gram陽性菌中心。Bと相補的なスペクトラムでトリプル抗菌薬を構成する2
外用配合薬の相方( アミノグリコシド系。同じくBと配合される2

B・は同じ「Gram陰性菌の外膜をのように壊す」機序を共有するが、投与形態が違う。 Bは活性型そのものを投与するため血中濃度が速やかに予測しやすいのに対し、はCMSという不活性として投与され体内変換に時間がかかる分、血中濃度が読みにくい1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Polymyxin'>ポリミキシン</span>Bの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cationic'>陽イオン性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic peptide'>環状ペプチド</span>構造"] --> B["Gram陰性菌外膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipopolysaccharide (LPS)'>リポ多糖</span>(LPS)<br>Lipid A部分と静電的に結合"]
    B --> C["外膜のリン脂質配列を<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='surfactant'>界面活性剤</span>のように破壊"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane permeability'>膜透過性</span>が亢進し<br>細胞内容物が漏出→殺菌"]
    A --> E["同じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cationic'>陽イオン性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surfactant'>界面活性剤</span>様の性質が<br>ヒト細胞膜にも及ぶ"]
    E --> F["腎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal tubular epithelial cell'>尿細管上皮細胞</span>に結合・蓄積"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular injury'>尿細管障害</span>→腎毒性"]
    E --> H["末梢神経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction (NMJ)'>神経筋接合部</span>の膜にも作用"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paresthesia'>知覚異常</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia'>運動失調</span>、高用量では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular blockade'>神経筋遮断</span>による呼吸麻痺"]

💡 のように膜を壊す」という単純な機序だからこそ、耐性が生まれにくい一方でが乏しい。 標的が特定の酵素やリボソームではなく脂質膜そのものであるため、細菌が変異1つで逃げるのは難しい(=菌の切り札になる)。しかし同じ理由で、ヒトの細胞膜(特に腎尿細管・神経細胞)も区別なく攻撃されてしまう——これが全身投与時の毒性の正体である。外用で問題にならないのは、皮膚・粘膜のバリアを通過して血中に到達する量がごくわずかだからであり、機序そのものが変わるわけではない。

薬物動態

活性型のまま投与されるため吸収・分布は速やかで血中濃度は比較的予測しやすいが、腎からの排泄は乏しく腎尿細管に再吸収・蓄積される1。この「されずに腎臓に居座る」性質そのものが腎毒性の一因になる。外用(皮膚・粘膜への塗布)では健常皮膚からの全身吸収はごくわずかであり、通常量の使用では全身毒性を来す血中濃度に達しない。

適応

領域 使いどころ
(外用) などの表在性創部の予防。との配合外用薬(トリプル抗菌薬)としてされる2
感染症科(全身投与) 他に有効な薬剤がない多剤耐性Pseudomonas aeruginosaAcinetobacter baumanniiKlebsiella pneumoniaeなどGram陰性菌感染症に対する最後の手段

用法・用量

外用として1日1〜数回、患部に塗布する。全身投与(静注・筋注):体重・腎機能に応じて算出する。筋注・は入院患者にのみ行い、による常時監視下に置くことが添付文書上ので明記されている3。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ :全身投与用Bにはが付されており、①筋注・は入院患者に限りの常時監視下で行うこと、②腎毒性(蛋白尿・円柱尿・とBUN上昇は中止の指標)、③性(・脱力・傾眠・・四肢の)、④他の腎毒性・性薬との併用回避、⑤による呼吸麻痺(特に麻酔・の直後)、⑥ヒト妊娠時の安全性は確立していないこと、の6項目が並ぶ3。外用の配合にはこのはなく、添付文書上は「外用専用」「眼への使用不可」「広範囲・1週間を超える使用は避ける」という一般的な注意にとどまる2——同じ成分でもによって上の扱いが全く異なる点が学習上の急所になる
  • 全身投与では、めまいなどの性症状の出現に注意し、腎機能(クレアチニン)を定期的にモニタリングする
  • ・アミノグリコシド系・など他の腎毒性・性薬との併用はに毒性を高めるため避ける3
  • 重症筋無力症では作用により症状増悪・のリスクが高まるため禁忌に準じて扱う

副作用

主な副作用
外用 軽微。まれに・過敏反応
全身投与 腎毒性(、多くは可逆的)、性(めまい)、高用量でのによる

まとめ

  • BはGram陰性菌の外膜(LPSのLipid A)をのように破壊する抗菌薬。
  • 外用では全身毒性が問題にならないが、全身投与では腎毒性・性が重い——この二面性は「吸収されるかどうか」で説明できる。全身投与用製剤の添付文書にはが付く3
  • 姉妹薬E)とは機序を共有するが、として投与される点でが異なる1
  • 外用ではと配合されたのトリプル抗菌薬として使われる。
  • 全身投与は多剤耐性Gram陰性菌に対する最後の手段であり、腎機能モニタリングと他の腎毒性・性薬の併用回避が必須。

出典

  1. 1.POLYMYXIN B- polymyxin b sulfate injection, powder, lyophilized, for solution(DailyMed(NLM)掲載のFDA添付文書)全身投与用ポリミキシンB注射剤の添付文書に枠組み警告が存在し、(1)筋注・髄腔内投与は入院患者にのみ行い医師の常時監視下に置くこと、(2)腎毒性(蛋白尿・円柱尿・窒素血症・尿量減少)、(3)神経毒性(易刺激性・脱力・傾眠・運動失調・口周囲の知覚異常・四肢のしびれ・霧視)、(4)バシトラシン・ストレプトマイシン・ネオマイシン・ゲンタマイシン・トブラマイシン・アミカシン・コリスチンなど他の腎毒性・神経毒性薬との併用回避、(5)神経筋遮断による呼吸麻痺のリスク(特に麻酔薬・筋弛緩薬の直後の投与)、(6)ヒト妊娠時の安全性が確立していないこと、の6項目が記載されていることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.A Systematic Review of Pharmacokinetic Studies of Colistin and Polymyxin B in Adult Populations(PMC・2025)コリスチンが不活性プロドラッグ(コリスチメテートナトリウム、CMS)として投与され体内で活性型コリスチンに変換されるのに対し、ポリミキシンBは活性型のまま直接投与されること、CMSは腎排泄が主体(投与量の約70%)であるのに対し活性型コリスチン・ポリミキシンB本体は腎外経路が主体で腎尿細管再吸収を強く受けることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.TRIPLE ANTIBIOTIC- bacitracin zinc, neomycin, polymyxin b ointment(DailyMed(NLM)掲載のOTC添付文書)市販の外用トリプル抗菌薬軟膏1gあたりの配合量(バシトラシン亜鉛400単位・ネオマイシン硫酸塩3.5mg・ポリミキシンB硫酸塩5000単位)と、外用専用であり眼・広範囲・1週間を超える使用は不可とする注意書きを確認した閲覧 2026-08-10