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Microbe Atlas · 細菌

Serratia marcescens

分類
腸内細菌科 / EnterobacteriaceaeSerratia
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli通性嫌気性 Facultative
科目
Medical Microbiology
トピック
2/13: Klebsiella, Enterobacter, Proteus, and Serratia genus
自然耐性薬
アンピシリンアモキシシリンセファゾリンセフォキシチンコリスチンポリミキシンBセフロキシム(-アキセチル)ニトロフラントイン
原因となる疾患
グラム陰性毛包炎眼内炎急性腎盂腎炎・腎膿瘍原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)心臓デバイス関連感染性心内膜炎
作用する薬剤
アズトレオナムアミカシントブラマイシン

🧠 全体像:Serratia marcescensを覚える最初の手がかりは赤色色素()である。シャワーヘッドや浴槽にできるの輪の正体がこの菌であるように、水回り・湿潤環境に広く生息する環境菌としての性質が、そのままの起こしやすさに直結する。・Enterobacter cloacaeと共に群を構成するが、に加えて()へのという腸内細菌科の中でも特異な耐性プロファイルを持つ。

微生物学的な特徴

項目 内容
運動性 運動性あり
生化学的性状 陽性(緩徐発酵)——・Enterobacter cloacaeの急速発酵とは速度が異なる
赤色色素()を産生——室温付近で産生量が増える
培養所見 シャワー・浴槽・表面にの輪を作り環境汚染の指標になる

病原性の仕組み

強力な外毒素を持つ菌ではなく、環境での生存力・しやすさ・広いの組み合わせで問題になる。

⚠️ ・の中でも生存できる点が院内感染源として特殊。 一部の消毒液・点眼薬・静注用薬液の汚染源として報告されており、通常は「無菌」とみなされる医療用液体からのを起こしうる。

感染経路と疫学

  • 水回り・湿潤環境(シャワー、浴槽、の貯留水)に広く分布する環境菌
  • の原因菌として重要——・消毒液・点眼薬の汚染を介して伝播することがある
  • では心内膜炎・骨髄炎の原因になることがある

起こす疾患

疾患 押さえどころ
・ カテーテル関連の院内尿路感染
・ 患者・中の患者に多い
症(角膜炎・) コンタクトレンズ関連・眼科手術後に問題になる
患者の重症感染 などを背景に日和見感染を起こしやすい

診断

  • 培養での赤色コロニーが特徴的(ただしでは色素非産生株も少なくない)
  • でのコロニー(緩徐な)
  • が必須:の範囲が広いための的中率が低い

治療と予防

  • の結果に従って薬を選ぶ。 本菌は染色体性のを持ち、頭字語(SPACE・ESCPMなど)ではEnterobacter cloacaeと同列に「治療中にAmpCがされうる菌」として並べられてきた。しかし米国の 2026 指針は、本菌を Morganella morganii・Providencia 属と同じくAmpCの過剰産生を起こしにくい菌とし、臨床的に問題となるAmpC産生はこれらの感染の5%未満と見積もって、の結果どおりに選ぶこと(セフトリアキソン感性ならセフトリアキソンも選べる)を提案している1
  • ⚠️ ただし心内膜炎・のように菌量が多く感染源の制御が難しい感染では、セフトリアキソン感性と出ていてもを代わりに考慮するのが妥当とされる1。はAmpCを誘導しにくく、加水分解にも比較的安定である
  • 💡 「どおり」は安全性が積極的に示されたからではない。 この方針の根拠は「AmpCの過剰産生が起こりにくいこと」と「セフトリアキソンで害が出たとするデータが無いこと」であって、比較試験で同等性が示されたわけではない。実際、低リスク菌(主にMorganella morganiiと本菌)ではセフトリアキソンの転帰が・より悪かったとする観察研究が1件あり、後続の観察研究では再現されなかった——どちらも観察研究である1
  • ⚠️ 適切な用量と感染源の制御を行っても反応が得られないときは、最初に選んだ薬への耐性化を疑う(低リスク菌でも起こりうる)1
  • 感受性があれば、・・などのアミノグリコシド系、も選択肢になる
  • 重症例・耐性株ではなどのを用いる
  • 感染対策として、・消毒液・点眼薬など汚染源となりうる液体の管理が重要

⚠️ アンピシリン・アモキシシリン(阻害薬を加えたアモキシシリン+、アンピシリン+を含む)・第1世代セファロスポリン・()・に加え、・とにも。2 の「最終手段」として使われがちなが、腸内細菌科の中でも本菌には効かない点はの落とし穴になりやすい。膀胱炎でよく使うも効かないので、カテーテル関連の尿路感染でも感受性結果を待って薬を選ぶ。

まとめ

  • Serratia marcescensは赤色色素()を産生する陽性(緩徐)のグラム陰性桿菌で、水回り・湿潤環境の環境菌としてを起こしやすい。
  • 群の一員としてによりアンピシリン・第1世代セファロスポリン・にを示し、・にもである。
  • ()にも——の最終手段が効かない例外として重要。
  • を持つが過剰産生は起こしにくく、米国 2026 指針はの結果どおりに薬を選ぶことを提案する(心内膜炎・ではを考慮)。
  • ・消毒液・点眼薬などの汚染を介した、の心内膜炎、コンタクトレンズ関連症が臨床像の柱。

出典

  1. 1.Infectious Diseases Society of America 2026 Guidance on the Treatment of Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2026)DOI 先の academic.oup.com は bot 判定で 403 を返すが、2026-09-28 に発行元(IDSA)の掲載ページにブラウザの User-Agent を付けた curl で全文を取得し、Version 4.0(2026年7月30日公開、内容は2026年3月1日時点)の Question 2.1 の本文を照合した。そこではMorganella morganii・Providencia属・Serratia marcescensは従来AmpC脱抑制の中等度リスク菌とされてきたが、試験管内のデータと臨床観察からAmpC過剰産生を起こしにくく、臨床的に問題となるAmpC産生はこれらの菌による感染の5%未満と見積もられること、このため分離時には感受性試験の結果に従って抗菌薬を選ぶことを提案していること、ただし心内膜炎・中枢神経感染症のように菌量が多く感染源の制御が限られる感染ではセフトリアキソン感性が示されていてもセフェピムを代わりに考慮するのが妥当としていることを確認した。低リスク菌(主にMorganella morganiiとSerratia marcescens)でセフトリアキソン治療の転帰がセフェピム・カルバペネム系より悪かったとする観察研究が1件あるが、後続の観察研究では再現されなかったとも述べている。感受性試験どおりに選ぶという提案の根拠が「この方針で害が出たことを示すデータが無いこと」である点、および適切な用量と感染源の制御を行っても反応が得られない場合は最初に選んだ薬への耐性化を強く疑うべきとしている点も確認した。閲覧 2026-09-28
  2. 2.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月。2026-09-27時点でもEUCASTの想定表現型のページが掲げる版)のPDFを取得し、4頁の表(Table 1の続き)を描画して確認し、Serratia marcescens(規則1.18)の想定耐性表現型がアンピシリン/アモキシシリン・アモキシシリン+クラブラン酸・アンピシリン+スルバクタム・セファゾリン等の第1世代セファロスポリン・セフォキシチン・セフロキシム・ポリミキシンB/コリスチン・ニトロフラントインで、チカルシリン・テトラサイクリン系・チゲサイクリン・ホスホマイシンには印が無いこと、表の脚注でセフォキシチンの高いMICが染色体性の誘導性AmpCによることを確認した。閲覧 2026-09-27