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Microbe Atlas · 蠕虫

Schistosoma mansoni

マンソン住血吸虫

分類
吸虫 / TrematodesSchistosoma
科目
Medical Microbiology
トピック
4/23: General characterisation and taxonomy of helminths4/30: Schistosomes
原因となる疾患
セルカリア皮膚炎住血吸虫症
作用する薬剤
プラジカンテル

🧠 全体像:はアフリカ・中東からカリブ海・南米まで大陸をまたいで分布し1、S. japonicumと同じに住み着く「肝脾型」の代表格。同じ腸管型でもはS. japonicumほど多くなく、病態は相対的に緩徐——3種のなかでは最も「標準形」として位置づけて読むとよい。起こす病気はのうち腸管・肝脾型である。

微生物学的な特徴

  • 属共通の性質(、、、)を持つ。
  • 虫卵形態:卵円形で大きなを持つ——S. japonicumの微小棘、S. haematobiumのと対比される鑑別点。
  • 成虫の最終は()。
  • 3種のなかでは中間〜少なめ——S. japonicumほど重篤なに至らないことが多い。

生活環

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cercaria'>セルカリア</span>を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fresh water'>淡水</span><br>(灌漑農地・湖沼)との<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin-to-skin contact'>皮膚接触</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cercaria'>セルカリア</span>が皮膚を貫通"]
    B --> C["血流→門脈で肝臓に到達し成熟"]
    C --> D["雌雄が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synapsis'>対合</span>したまま<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior mesenteric venous system'>下腸間膜静脈系</span>へ移動して定着"]
    D --> E["産卵、卵は腸壁を貫いて糞便中へ<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal blood flow'>門脈血流</span>で肝臓へ運ばれる"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fresh water'>淡水</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miracidium'>ミラシジウム</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hatching'>孵化</span><br>→貝(Biomphalaria属)に侵入"]
    F --> G["貝内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cercaria'>セルカリア</span>へ発育し<br>自由遊泳"]
    G --> A

病原性の仕組み

  • 病態の主体は虫卵抗原への肉芽腫反応——3種に共通する原則。
  • 皮膚侵入時:。
  • 急性期:発熱・掻痒・下痢/血性便を伴う(S. japonicumより軽度な傾向)。
  • 慢性期:腸壁への虫卵沈着による腸炎症状(腹痛・下痢・血便)に加え、で肝臓へ運ばれた虫卵による・(Symmers線維化)→→肝脾腫・へ進行する。進行例ではに腹水と腹部血管の圧亢進を伴い、脾腫を伴うこともある1。

💡 肝硬変とは別物の門脈圧亢進。 線維化はを取り巻く形で進み、肝細胞そのものの障害は後まで軽いことが多い。そのためが破裂するほど門脈圧が高くても、肝機能は比較的保たれていることがある。

感染経路と疫学

  • を含む(灌漑農地、湖沼)とのによる感染。
  • 分布はアフリカ・中東・カリブ海・ブラジル・・スリナム1——アフリカ・中東(とフランスのコルシカ島)に分布するS. haematobiumや、中国・インドネシア・フィリピンに分布するS. japonicumと違い、新大陸にも広がる唯一の主要種である。
  • 貝(Biomphalaria属)の生息する止水域が感染の温床になる。

起こす疾患

腸管・肝脾型:急性期は、慢性期は腸炎症状に加え肝脾腫・門脈圧亢進(からの出血が重篤な合併症)。

診断

  • 糞便検体からの卵円形・を持つ虫卵の検出。は Kato-Katz 法(グリセリンとで処理したセロファンで便を透明化して虫卵を数える方法)を用いる1。
  • 本種の流行地では、循環抗原を検出する検査も使える1。
  • 血清学的検査は、非流行地・低流行地の居住者で曝露の有無を示すのに役立つ1。
  • 腹部画像検査で・門脈圧亢進所見を評価する。

治療と予防

  • が治療薬(全種に共通)。米国はS. mansoniに40 mg/kg/日を2分割で1日間とし、60 mg/kg/日を3分割とするS. japonicumより少ない2。
  • 💡 渡航者では最終曝露から少なくとも6〜8週あけて治療する(米国)。は成虫に最もよく効き、成熟したを要するためで、軽度感染では2〜4週後の再投与が有効性を高めうる2。
  • ⚠️ 日本ではにの効能が承認されていない。 電子添文は、海外で有用性が確立しの必須医薬品とされている一方、国内に評価症例がないため承認されていないと明記する。あわせて、投与後に抗原への炎症性免疫応答と思われる重篤な事象(呼吸不全・脳症・など)の報告を記している3。
  • 門脈圧亢進によるは・などの対症療法を要することがある。
  • 予防:流行地での接触回避、貝対策。の2022年ガイドラインは、10%以上の地域で2歳以上の全年齢(成人、を過ぎた妊婦、を含む)に単回投与の年1回集団投与を強く推奨しており、学童中心だった従来の治療対象を広げた。この方針はの種で変わらない4。

まとめ

  • S. mansoniはアフリカ・中東から南米・カリブ海まで分布し、S. japonicumと同じ()に住み着く。
  • は3種のなかで中間〜少なめで、病態はS. japonicumより相対的に緩徐。
  • 慢性期はによる門脈圧亢進が特徴で、からの出血が重篤な合併症になる。
  • 診断は糞便中虫卵検出(Kato-Katz 法)、流行地での循環抗原検査、非流行地の居住者では血清学。治療は(日本ではの効能は未承認)。
  • の集団投与は、10%以上の地域で2歳以上の全年齢を対象にしている。
  • S. haematobium(・血尿・)、S. japonicum(最卵・最重症)との対比で3種を整理すると理解しやすい。

出典

  1. 1.Schistosomiasis (fact sheet)(World Health Organization・2026)ファクトシート(2026年2月23日更新)本文の分布表で、S. mansoni の分布が「アフリカ・中東・カリブ海・ブラジル・ベネズエラ・スリナム」、S. haematobium が「アフリカ・中東・コルシカ(フランス)」、S. japonicum が「中国・インドネシア・フィリピン」であること、腸管住血吸虫症が腹痛・下痢・血便を来し、進行例では肝腫大が多く腹水と腹部血管の圧亢進を伴い、脾腫を伴うこともあること、腸管住血吸虫症の虫卵検出には Kato-Katz 法を用い、S. mansoni の流行地では循環陰極抗原(CCA)検査も使えること、非流行地・低流行地の居住者では血清学的・免疫学的検査が曝露の証明に有用であることを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Clinical Care of Schistosomiasis(Centers for Disease Control and Prevention(医療者向けページ、2024年3月4日更新)・2024)米国CDCの医療者向けページで、プラジカンテルの用量が「S. mansoni・S. haematobium・S. intercalatum=40 mg/kg/日を2分割で1日間経口」「S. japonicum・S. mekongi=60 mg/kg/日を3分割で1日間経口」であること、渡航者では汚染の可能性がある淡水への最終曝露から少なくとも6〜8週あけて治療すべきで、その理由を「プラジカンテルは成虫に最もよく効き、寄生虫に対する成熟した抗体応答の存在を要する」としていること、軽度感染では2〜4週後の再投与が有効性を高めうること、治療前に虫卵陽性だった例では1〜2か月後に再検して治癒を確認するよう勧めていることを確認した(取得は WebFetch。curl はアクセス拒否)。閲覧 2026-09-27
  3. 3.ビルトリシド錠600mg 電子添文(2023年10月改訂・第2版)(バイエル薬品(PMDA 医療用医薬品情報)・2023)日本の電子添文(2023年10月改訂・第2版)で、効能・効果が肝吸虫症・肺吸虫症・横川吸虫症の3つであること、15.1に「住血吸虫症に対する本剤の有用性は外国においては確立されており、WHOでは住血吸虫症の治療のエッセンシャル・ドラッグとされているが、国内における評価症例がないため、我国においては住血吸虫症に対する効能は承認されていない」とあること、同じ15.1が幼虫期の住血吸虫は成虫より本剤への感受性が低いとの報告と、住血吸虫の抗原に対する炎症性の免疫応答と思われる重篤な事象(呼吸不全・脳症・脳血管炎など)の報告を記していることを確認した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.WHO guideline on control and elimination of human schistosomiasis(World Health Organization・2022)IRIS の DSpace API から全文テキスト(9789240041608-eng.pdf.txt)を取得し、推奨の要約で確認した。推奨1は逐語で「In endemic communities with prevalence of Schistosoma spp. infection ≥ 10%, WHO recommends annual preventive chemotherapy with a single dose of praziquantel at ≥ 75% treatment coverage in all age groups from 2 years old, including adults, pregnant women after the first trimester and lactating women」(Strong recommendation/Certainty of evidence moderate)で、実施上の考慮に「The strategy of preventive chemotherapy does not differ by Schistosoma species.」、2歳未満は個別の臨床判断で治療を考慮しうるとある。推奨2は有病率10%未満の地域で既存事業の継続または検査して治療する方式を条件つきで示す。推奨4は医療機関が年齢を問わず全感染者(妊娠第1三半期を除く妊婦・授乳婦・2歳未満を含む)にプラジカンテル治療を提供することを強く推奨する。推奨1の根拠の節(Equity)は「Historically, treatment has focused on SAC, which neglects the remainder of the population who carry a substantial disease burden, namely pre-SAC, older adolescents and adult populations.」と述べる。閲覧 2026-09-27