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Microbe Atlas · 細菌

Enterobacter cloacae

分類
腸内細菌科 / EnterobacteriaceaeEnterobacter
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli通性嫌気性 Facultative
科目
Medical Microbiology
トピック
2/13: Klebsiella, Enterobacter, Proteus, and Serratia genus
自然耐性薬
アンピシリンアモキシシリンセファゾリンセフォキシチン
原因となる疾患
グラム陰性毛包炎急性腎盂腎炎・腎膿瘍急性胆管炎胆石症
作用する薬剤
アズトレオナムゲンタマイシンセフェピムセフタジジムセフタジジム+アビバクタム

🧠 全体像:Enterobacter cloacaeはと同じ群、すなわち陽性の院内感染菌グループに属するが、莢膜による粘稠さの代わりにという別の武器で腸内細菌科の耐性の階層に食い込む。による運動性を持つ点ものKlebsiellaとの違いになる。

微生物学的な特徴

Klebsiella・Enterobacter・Serratiaの3属をまとめた群に共通する陽性・という性状はのページに譲り、本菌固有の特徴に絞る。

項目 内容
運動性 で運動性あり——のとの鑑別点
生化学的性状 陽性(急速発酵)
培養所見 でコロニー(を反映)

病原性の仕組み

特定の強力な外毒素を持つ菌ではなく、染色体性のによる耐性と院内環境での定着力が臨床上の主題になる。AmpCは2段階で効いてくる1。

flowchart TD
    A["染色体性ampC遺伝子"] --> B["平常時の少量のAmpC"]
    B --> C["アンピシリン・アモキシシリン+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clavulanate'>クラブラン酸</span><br>アンピシリン+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulbactam'>スルバクタム</span><br>第1世代セファロスポリン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cephamycins'>セファマイシン系</span>は分解される<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrinsic resistance'>自然耐性</span>"]
    A --> D["βラクタム系への曝露で<br>AmpC産生が上昇"]
    D --> E["セフトリアキソンなど第3世代<br>セファロスポリン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='piperacillin'>ピペラシリン</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tazobactam'>タゾバクタム</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aztreonam'>アズトレオナム</span>も分解される"]
    E --> F["治療開始時は感受性でも<br>治療中に耐性化(約2割)"]
    A --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cefepime'>セフェピム</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbapenems'>カルバペネム系</span>は<br>分解に安定"]

⚠️ は「治療中に耐性化する」βラクタマーゼである。 βラクタム系への曝露でAmpC産生が上昇すると、治療開始時にセフトリアキソン感受性だった株が、わずか数回の投与で耐性化することがある。セフトリアキソン曝露後の耐性出現は、本菌・Klebsiella aerogenes・Citrobacter freundiiによる感染の約20%と見積もられている。 2026 指針はこの3種に加えてHafnia alveiも同じ群に置いた(のデータに基づく扱いで、臨床経験は乏しい)1。

感染経路と疫学

  • ・環境(土壌・水)に由来する・院内感染菌
  • ・長期入院患者のとして問題になる

起こす疾患

疾患 押さえどころ
・ カテーテル関連の院内尿路感染
(胆石による閉塞などを背景に) 腸管からの
・・ 免疫低下患者・術後患者に多い

診断

  • でのコロニー、による運動性という所見で()と鑑別する
  • 菌種名そのものがAmpCリスクの目印になる:のAmpC産生を確かめる方法として米国で標準化・承認されたもの(が認めた方法やが承認した機器)は無いため、E. cloacae complexが同定された時点で、がセフトリアキソン感受性と出てもその結果を過信しない1

治療と予防

2026 の指針は、本菌を「臨床的に問題となる産生の菌」として次のように整理している1。

薬 位置づけ 理由
望ましい治療薬(が8 µg/mL以下で、遺伝子が検出されていない場合) AmpCを誘導しにくく、加水分解にも安定
・など 有効 AmpCによる加水分解に安定。を同時に産生する株ではが不十分なため、こちらを考える
セフトリアキソン・・セフタジジム 侵襲性感染症には勧めない(初回の感受性結果が感性でも) 治療中の耐性化。重症でなく感染源が制御され、経験的に始めて改善している場合はも妥当
+ 侵襲性感染症には勧めない は新しい阻害薬(など)よりAmpCの分解から守る力が弱い
効きにくい 誘導は弱いがAmpCに分解される
・・・などのアミノグリコシド系 感受性があれば有効 βラクタム系ではないのでAmpCの基質にならない。侵襲性感染症でも、感受性とを確認すれば経口の・・へ切り替えを考慮できる

⚠️ アンピシリン・アモキシシリン(を加えても)・アンピシリン+・第1世代セファロスポリン(など)・にはで、平常時の少量のAmpCだけで分解される。もこれらを本菌の想定耐性表現型としており2、感受性と報告されたら結果を疑ってかかる。の選択肢に入らない。

まとめ

  • Enterobacter cloacaeは群の一員で、による運動性がのとの鑑別点になる。
  • 病原性の核は特殊な毒素ではなく——治療中に耐性化しうる点が臨床上の落とし穴になる。
  • アンピシリン・アモキシシリン(・を加えても)・第1世代セファロスポリン・にはで、の選択肢から外れる。
  • 侵襲性感染症ではセフトリアキソン・+を避け、(共産生なら)を選ぶ。感受性があればβラクタム系以外の薬も使える。

出典

  1. 1.Infectious Diseases Society of America 2026 Guidance on the Treatment of Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2026)DOI 先の academic.oup.com は bot 判定で 403 を返すが、2026-09-28 に発行元(IDSA)の掲載ページにブラウザの User-Agent を付けた curl で全文を取得し、Version 4.0(2026年7月30日公開、内容は2026年3月1日時点)の第2節(AmpC産生腸内細菌目)を照合した。Enterobacter cloacae complex・Klebsiella aerogenes・Citrobacter freundiiが臨床的に問題となる誘導性AmpC産生の中等度リスク群の代表であり、2026年版では試験管内データに基づいてHafnia alveiも同じリスク群に加えられた(臨床経験は乏しい)こと、誘導性発現ではセフトリアキソン感受性の株が治療中にわずか数回の投与で耐性化しうることがあり、セフトリアキソン曝露後の耐性出現はこれらの感染の約20%と見積もられること、ampC遺伝子やAmpC酵素を臨床分離株で検出するCLSIが認めた方法やFDAが承認した機器は無いこと、基礎的なAmpC産生だけでアンピシリン・アモキシシリン+クラブラン酸・アンピシリン+スルバクタム・第1世代セファロスポリン・セファマイシン系に自然耐性であること、アズトレオナム・セフォタキシム・セフタジジム・セフトリアキソン・ピペラシリン+タゾバクタムは誘導は弱いが加水分解されるため中等度リスク菌には効きにくいこと、セフェピムは誘導が弱く加水分解にも安定で、MICが8 µg/mL以下(感性または用量依存的感性)かつESBL遺伝子が検出されていなければ望ましい治療薬とされること、侵襲性感染症にはセフトリアキソン(セフォタキシム・セフタジジムも同様)とピペラシリン+タゾバクタムを勧めないこと(重症でなく感染源が制御され経験的に始めたセフトリアキソンで改善している場合は完遂も妥当)、カルバペネム系はAmpCによる加水分解に安定であること、セフェピムはESBL産生菌には不十分なので両酵素を産生する株では考慮が要ること、アズトレオナム+アビバクタム・セフタジジム+アビバクタム・イミペネム+レレバクタム・メロペネム+バボルバクタム・セフィデロコルはAmpC産生菌にも効くが原則としてカルバペネム耐性菌の感染に温存すること、一方でセフトロザン+タゾバクタムはAmpC産生菌には勧めないこと(中等度のAmpCを産生するE. cloacae分離株に活性があったのは19%[10/53]で、DTR緑膿菌とAmpC産生菌の混合感染で薬剤数を減らす目的なら考慮しうるが注意深い経過観察を要する)、タゾバクタムはアビバクタムやレレバクタムよりAmpCの加水分解から守る力が弱いこと、βラクタム系以外の薬(スルファメトキサゾール+トリメトプリム・フルオロキノロン系・アミノグリコシド系など)はAmpCの基質でなく感受性があれば有効で、単純性膀胱炎ではニトロフラントインかスルファメトキサゾール+トリメトプリムが望ましく、侵襲性感染症でも感受性と臨床的安定を確認すればシプロフロキサシン・レボフロキサシン・スルファメトキサゾール+トリメトプリムの経口へ切り替えを考慮できることを確認した。閲覧 2026-09-28
  2. 2.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月)のPDFのTable 1を表の画像で確認し、Enterobacter cloacae complex(規則1.3)の想定耐性表現型がアンピシリン/アモキシシリン・アモキシシリン+クラブラン酸・アンピシリン+スルバクタム・セファゾリン等の第1世代セファロスポリン・セフォキシチンで、チカルシリン・セフロキシム・テトラサイクリン系・チゲサイクリン・ポリミキシンB/コリスチン・ホスホマイシン・ニトロフラントインには印が無いこと、表の脚注でセフォキシチン耐性が染色体性の誘導性AmpCによること、腸内細菌目全体がベンジルペニシリン・グリコペプチド系などにも想定耐性であること、想定耐性の菌種で感受性の結果が出たら疑ってかかり、臨床医にはその薬を使わないよう助言すべきとされていることを確認した。閲覧 2026-09-27