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Drug Atlas · C10 Antibiotics / 抗菌薬

エルタペネム

ertapenem

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
インバンズ
商品名(EU)
Invanz
科目
Pharmacology
トピック
C10: Carbapenems. Monobactams. Beta-lactamase inhibitors
標的微生物
Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeProteus mirabilisBacteroides fragilisStreptococcus pneumoniaeStaphylococcus aureus
副作用
痙攣下痢
相互作用
バルプロ酸
自然耐性の微生物
Pseudomonas aeruginosa
対象疾患
急性腎盂腎炎・腎膿瘍
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症

🧠 全体像は同じでありながら、「守備範囲が狭い代わりに1日1回で済む」という一点で他の3剤(/)とはっきり性格が分かれる。決定的な違いは緑膿菌・AcinetobacterEnterococcusに無効なこと——院内感染や免疫不全でこれらのカバーが必要な場面では選ばない。逆に言えば、これらのリスクが低い市中発症の腹腔内・では、広域さより利便性(1日1回投与で外来治療にも組み込みやすい)が勝る場面がある。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 緑膿菌 Acinetobacter Enterococcus 投与回数
× × × 1日1回
○(faecalis) 1日3回
○(faecalis、最も強い) 1日3〜4回
○(faecalis) 1日3回

の中で「例外」を1つ覚えるなら 他の3剤が「広域だが投与回数が多い」のに対し、だけ「守備範囲が狭い代わりに1日1回」という逆方向の設計になっている。

機序

PBPに結合してペプチドグリカンの架橋を阻害する点は他のと同じだが、分子の側鎖がかさ高くとの結合率が約95%と極めて高い(他のは1桁%程度)という構造上の特徴が、スペクトラムとの両方を決めている。

💡 緑膿菌・Acinetobacterに無効な理由は「届かない・押し出される」から。 かさ高い側鎖が緑膿菌のを通過しにくく、能動的なの基質にもなりやすいため、菌体内のPBPまで十分量が到達しない。Enterococcusに対しても他のよりPBPへの親和性が弱く、実用上は無効として扱う。

💡 同じ側鎖の性質が「1日1回投与」も生んでいる。 との結合が強いためとしてゆっくり放出され、実効的な半減期が他の(約1時間)よりはるかに長い(約4時間)。「狭い守備範囲」と「長い半減期」は同じ分子構造から生まれた表裏の性質である。

薬物動態

項目 値・特徴
IV/IM
約95%(他のより著しく高い)
半減期 約4時間(他のの約1時間より長い)
排泄 。腎機能低下でが必要

適応

市中発症で、緑膿菌・Acinetobacterのリスクが低い中等症〜重症感染に用いる。

領域 使いどころ
腹腔内・骨盤内 市中発症の
泌尿器 (耐性菌が疑われるが緑膿菌リスクは低い例)
皮膚・軟部組織 を含む
呼吸器 の重症例・耐性菌が疑われる例

院内感染・好中球減少・など緑膿菌/Acinetobacterのリスクが高い状況では選ばない。

用法・用量

IV/IM、1回1 gを1日1回投与。腎機能低下例ではを延長する。実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌・βラクタム系への過敏症
  • ⚠️ 緑膿菌・AcinetobacterEnterococcusには無効。 院内感染や免疫不全でこれらのリスクが高い場合は誤った選択になる
  • ⚠️ 痙攣:βラクタム共通のの中では相対的にリスクが低いが、高用量・腎機能低下では注意
  • ⚠️ バルプロ酸との併用は避ける。 他のと同じ機序でバルプロ酸血中濃度を大きく下げる

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢、悪心、注射部位反応・(IM投与では局所疼痛)
注意 過敏症・発疹、頭痛
重篤・まれ 痙攣(高用量・腎障害時)、

まとめ

  • の中で唯一緑膿菌・AcinetobacterEnterococcusに無効。その代わり1日1回投与が可能。
  • 原因は分子側鎖のかさ高さと高い——OprDを通過しにくくの基質になりやすいことがスペクトラムを狭め、同じ性質が長い半減期(≈4時間)を生む。
  • 市中発症・院内感染リスクが低い腹腔内/骨盤内/皮膚/呼吸器感染に向く。院内感染や免疫不全患者には向かない。
  • 他のと同様、バルプロ酸の血中濃度を大きく下げる。
  • PBP結合というは他のと共通で、MRSA・には無効。