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Drug Atlas · C10 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

イミペネムシラスタチン

imipenem-cilastatin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
チエナム
商品名(EU)
Tienam
科目
Pharmacology
トピック
C10: Carbapenems. Monobactams. Beta-lactamase inhibitors
禁忌疾患
てんかん
標的微生物
Pseudomonas aeruginosaAcinetobacter baumanniiEscherichia coliKlebsiella pneumoniaeEnterococcus faecalisBacteroides fragilisStaphylococcus aureus
副作用
痙攣下痢悪心
相互作用
バルプロ酸
自然耐性の微生物
Stenotrophomonas maltophilia
対象疾患
急性膵炎血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)非結核性抗酸菌症
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症

🧠 全体像の元祖であり、この薬を理解する軸はただ一点、「なぜと合剤にしてあるのか」に尽きる。単剤は腎のにあるdehydropeptidase-Iという酵素で急速に分解されてしまい、尿路や血中で十分な濃度を保てないうえ、分解産物が腎毒性を持つ。自体には抗菌活性が一切ないが、この酵素を阻害してを守るための「相棒」として設計された。同じ「守る役」でも、が細菌側の酵素からβラクタムを守るのに対し、宿主(ヒト)側の酵素から薬を守るという点が構造的に異なる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 カバーする範囲 痙攣リスク 特徴的な相棒 位置づけ
/ Gram+/Gram−/嫌気性、緑膿菌・Acinetobacter・Enterococcus faecalis含む の中で最も高い (腎dehydropeptidase-I阻害、抗菌活性なし) 最初の。重症の広域治療
ほぼ同等 低め 痙攣リスクが低く髄膜炎にも使いやすい
ほぼ同等 低め に近い後発
緑膿菌・Acinetobacter・Enterococcusは無効 低め 1日1回、市中感染向け
との合剤 耐性Gram陰性菌にcarbapenem活性を回復 、抗菌活性なし) KPC産生菌などへの新しい選択肢

の中で痙攣リスクが最も高いのが 脳内でGABA_A受容体への結合を阻害する作用がより強いためとされ、高用量・腎機能低下・中枢の既往例では特にリスクが上がる。この一点だけでも、髄膜炎など中枢神経系の重症感染ではが選ばれやすい理由になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='imipenem'>イミペネム</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous drip infusion (IV infusion)'>点滴</span>投与"] --> B["未変化体のまま腎尿細管へ達すると<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='brush border'>刷子縁</span>のdehydropeptidase-Iで急速に分解"]
    B --> C["有効な尿中・血中濃度が保てない<br>+腎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toxic metabolite'>毒性代謝物</span>が生じる"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cilastatin'>シラスタチン</span>を1:1で同時投与"] --> E["dehydropeptidase-Iを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive inhibition'>競合阻害</span>"]
    E -.->|"分解を防ぐ"| B
    A --> F["PBPに結合し<br>ペプチドグリカン架橋を阻害"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriolysis (lysis)'>溶菌</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]

💡 は「抗菌薬の相棒」だが、とは守る相手が違う。 細菌のβラクタマーゼからパートナー薬を守るのに対し、が阻害するのはヒトの腎酵素である。「阻害薬=細菌の酵素を狙う」という思い込みで一括りにしないこと。

薬物動態

項目 値・特徴
IV/IM(と1:1配合)
分布 組織移行は良好だが、の中では中枢神経系への移行が最も乏しく髄膜炎には積極的に使われない
代謝 自体は腎dehydropeptidase-Iで分解されるが、併用でこれを防ぐ
排泄 。腎機能低下でが必須(蓄積が痙攣リスクをさらに上げる)
半減期 約1時間

適応

領域 使いどころ
重症 Gram陽性・Gram陰性・嫌気性菌が疑われるの広域治療(の重症感染合併など)
血液・腫瘍 の広域
耐性Gram陰性菌 ESBL産生腸内細菌など、他の広域βラクタムが効かない場合

MRSA・(Mycoplasma、Chlamydia、Legionella)には無効。

用法・用量

IV/IM。一般感染では1回0.5 g・6〜8時間ごとを目安とし、腎機能に応じたが必須のプロトコル薬である。腎機能低下例では蓄積による痙攣リスクが上がるため、投与量・間隔の調整を怠らない。実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌・βラクタム系への過敏症、てんかん・痙攣性疾患の既往(を下げるため)
  • ⚠️ 痙攣はの中で最もリスクが高い。 高用量・腎機能低下・中枢の既往で増強する
  • ⚠️ バルプロ酸との併用は避ける。 共通の相互作用で、バルプロ酸血中濃度が数日で治療域を大きく下回りてんかんコントロールを失う実害がある。やむを得ず併用する場合は厳重なが要る
  • MRSA・には無効

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心下痢、注射部位反応
注意 過敏症・発疹、
重篤・まれ 痙攣の中で最高頻度)、

まとめ

  • の元祖。は腎dehydropeptidase-Iを阻害しての分解を防ぐだけで、抗菌活性は一切ない。
  • (細菌の酵素を狙う)と(ヒトの腎酵素を狙う)を混同しない。
  • の中で痙攣リスクが最も高く、てんかんは禁忌。髄膜炎には中枢移行の良いが好まれる。
  • バルプロ酸の血中濃度を大きく下げるため併用は避ける。
  • Gram陽性・陰性・嫌気性菌を広くカバーするが、MRSA・には無効。
  • 新しいとの合剤で、耐性Gram陰性菌への活性を回復させる選択肢がある。