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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

ノカルジア症

Nocardiosis

臓器系
感染症呼吸器神経
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 2/33:アクチノミセス・ノカルジア属、非結核性・非病原性抗酸菌微生物学 5/1:皮膚・創傷感染を起こす細菌(一覧)とその診断
鑑別疾患
結核肺癌放線菌症
合併症
脳膿瘍
治療薬
スルファメトキサゾール+トリメトプリム(ST合剤)アミカシンイミペネムセフトリアキソン
原因薬剤
プレドニゾロン
原因微生物
Nocardia
症状
咳発熱
画像所見
肺空洞結節
元疾患
肺胞蛋白症
適応薬
スルファメトキサゾール+トリメトプリム

🧠 全体像:を読む軸は「誰に起こるか」の一点に尽きる。原因菌Nocardiaは土壌などの環境に普遍的に存在し、長期使用・臓器移植・感染など細胞性免疫が低下した患者に主に起こる外因性の日和見感染である1。ただし患者の最大3分の1は免疫正常者で、土壌で汚染された外傷から起こる原発性皮膚型は通常免疫正常者に起こる2——「免疫正常だからではない」とは言えない。肺が主座で、そこから血行性に播種するとを作る——肺病変を見たら中枢神経系まで画像で追うという一続きの発想が、この疾患を理解する最短ルートになる。

病態:主に免疫不全者に起こる日和見感染

土壌中のNocardiaを吸入すると、健常者では多くが免疫機構により排除されるが、細胞性免疫が低下した宿主では好中球・マクロファージによる殺菌に抵抗して肺で増殖する。局所にとどまればを伴う肺炎・になるが、血行性に播種すると中枢神経系へ到達し多発性のを形成する1。

flowchart TD
    A["土壌中のNocardia"] --> B["吸入または外傷による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct inoculation'>直接接種</span>"]
    B --> C{"宿主の細胞性免疫は正常か"}
    C -->|"正常"| D["多くは排除され発症しない"]
    C -->|"低下<br>(ステロイド長期使用・臓器移植・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>など)"| E["肺で増殖"]
    E --> F["局所:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavitation'>空洞形成</span>を伴う肺炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung abscess'>肺膿瘍</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>"]
    G --> H["多発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain abscess'>脳膿瘍</span>"]
    B --> I["皮膚型:限局性膿瘍"]

感染経路と疫学

  • 好発患者は者——長期の使用、臓器移植後の免疫抑制療法、感染、悪性腫瘍が代表的な背景となる1。
  • 伝播経路は土壌からの吸入または外傷によるで、ヒト-ヒト感染は起こさない。

臨床像

病型 頻度 臨床像
最も頻度が高い1 急性〜慢性の経過をとる肺炎(/びまん性)でを伴う。、咳・発熱・呼吸困難、画像上は結節・
皮膚型 に次ぐ 土壌で汚染された外傷からのによる。他の病型と違い、通常は免疫正常者に起こる2。硬く厚いで、播種性であれば顆粒を伴う膿瘍性炎症反応
中枢神経系型 肺外として最多(シリーズにより44%) 肺から血行性に播種した多発性の。頭痛・嘔吐・痙攣・意識変容で発症しうる2

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 肺を診断したら、無症状でも中枢神経系の画像評価を行う。 神経症状の有無・重症肺病変・高度免疫抑制のいずれかがあれば頭部造影MRI/を考慮すべきとされ、無症候性のを見逃さないことが転帰を左右する2。
  • ⚠️ 結核・肺癌とされやすい。 ・という画像所見は結核や肺癌と酷似し、免疫不全者の肺病変では常に鑑別に挙げる必要がある。

放線菌症との対比

顕微鏡像がそっくりな「の糸状菌もどき」だが、生態・宿主・治療期間は対照的である。

項目 (Nocardia) (Actinomyces)
酸素要求性 嫌気性〜
(を含む細胞壁) なし
感染様式 外因性(の日和見感染) 内因性(口腔・の常在菌がバリアを越える)
好発宿主 者 免疫状態を問わない(外傷・処置が契機)
播種による を含む瘻孔
治療 ST合剤を数か月〜1年 高用量を6〜12か月

診断

  • ()——を含む細胞壁がを取り込む。グラム染色も可能だが染まりは弱い1。
  • 培養は数日〜数週間を要することがあり、疑ったら検査室への事前連絡が有用。
  • 肺病変を確認したら、上記の通り中枢神経系の画像評価を併せて行う2。

治療

⭐ (ST合剤)が第一選択で、長期投与が必要になる。 通常は6か月以上、中枢神経系病変を伴う場合は12か月以上の治療期間を要する2。

  • 重症感染・・中枢神経系病変では単剤に頼らず併用療法とする。 代表的な組み合わせはST合剤++で、中枢神経系病変では中枢神経移行の良いST合剤・セフトリアキソンを選ぶ1。
  • 膿瘍形成例(・)では・ドレナージを併用する。
  • 免疫不全者では基礎疾患のコントロール(治療の最適化、減量など)が再発予防に関わる。

まとめ

  • は・の菌Nocardiaによる外因性の日和見感染で、者(ステロイド長期使用・臓器移植・)に生じる。
  • が最多で、⚠️ 血行性に播種するとを形成するため、肺を診断したら中枢神経系の画像評価を行う。
  • ⚠️ 空洞・という画像所見から結核・肺癌とされやすい。
  • (内因性・嫌気性〜・なし)とは酸素要求性・・感染様式の3点で明確に区別する。
  • 治療はST合剤の長期投与(6か月以上、中枢神経系病変では12か月以上)が基本で、膿瘍形成例では外科的処置を併用する。

出典

  1. 1.Nocardia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Nocardia属が好気性放線菌でカタラーゼ陽性・分枝状糸状形態をとるグラム陽性桿菌であること、肺感染が最も多く原発性皮膚感染や他部位への播種も起こしうること、主に細胞性免疫が低下した患者に生じる日和見病原体であること、重症・播種性・中枢神経系病変ではST合剤にアミカシン・イミペネムを加えた併用療法が一般的であり、中枢神経系病変では中枢神経移行の良いST合剤・セフトリアキソンを選ぶべきことを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Nocardiosis: Updates and Clinical Overview(Mayo Clinic Proceedings・2012)(2026-09-27にPMC3498414の全文で追加確認)患者の最大3分の1は免疫正常者であること、原発性皮膚ノカルジア症は他の病型と異なり通常免疫正常者に起こり、土壌で汚染された皮膚の外傷から生じること、Nocardia が土壌・腐敗した植物などの有機物と淡水・海水に分布すること。中枢神経系がノカルジア症の肺外病巣として最も頻度が高く(シリーズによっては44%に達する)こと、神経症状・重症肺ノカルジア症・高度免疫抑制のいずれかがあれば中枢神経系画像評価を考慮すべきこと、ST合剤が治療の第一選択であり通常6か月以上、中枢神経系病変を伴う場合は12か月以上の治療期間を要することを確認した。閲覧 2026-08-19