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Microbe Atlas · 細菌

Nocardia

分類
分枝状菌 / Branching filamentsNocardia
性状
Gram陽性 (G+)分枝状 Branching filaments
科目
Medical Microbiology
トピック
2/33: Actinomyces and Nocardia genus, atypical and apathogenic mycobacteria5/13: Bacteria causing lower respiratory tract infections (list) and their diagnosis
原因となる疾患
ノカルジア症原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)脳膿瘍肺膿瘍
作用する薬剤
スルファメトキサゾール+トリメトプリム

🧠 全体像:NocardiaはActinomycesと顕微鏡像がそっくりな「の糸状菌もどき」だが、生態は正反対である。の菌で、主に細胞性免疫が低下した人(感染、長期使用など)に外因性の日和見感染を起こすが、患者の最大3分の1は免疫正常者とされ、外傷から土壌が入り込む原発性の皮膚はむしろ免疫正常者に多い1。を含む細胞壁のためを示す点も、を持たないActinomycesとの決定的な違いになる。肺が主座で、そこから血行性にを作る経路を押さえておくと臨床像が一本につながる。

微生物学的な特徴

項目 Nocardia属 Actinomyces属(対比)
グラム染色 陽性(染まりが弱い) 陽性
形態 の の
酸素要求性(鑑別点) 多くはで、〜でよく育つ(A. meyeriなど一部は)2
生息地 土壌・腐敗植物などの有機物、・に分布する環境菌1 ヒト・動物の口腔
弱陽性(を含む細胞壁のため) 陰性
生化学的性状 、ウレアーゼ陽性、 —

💡 両者を分ける最も実用的な指標は酸素要求性である。 顕微鏡像だけでは真菌の菌糸とも誤認されるため、で育ち弱ならNocardia、〜でよく育ちが無ければActinomycesと判断する。ただし「Actinomycesは」と覚えるのは正確でない——多くの菌種はであり、なのはA. meyeriなどの一部にとどまる2。それでも分離には嫌気輸送とが要り、発育が遅く陰性と判断するまで少なくとも10日の培養が必要になる2。

病原性の仕組み

  • は土壌で、伝播経路は(吸入)または外傷による
  • を含む細胞壁が細胞内での生存・に関わり、好中球やマクロファージによる殺菌に抵抗する
  • 肺での増殖後、血行性に播種すると多発性のを形成する
flowchart TD
    A["土壌中のNocardia"] --> B["吸入または外傷による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Direct Implantation'>直接移植</span>"]
    B --> C["肺での増殖<br>(免疫不全者で顕著)"]
    C --> D["局所:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavitation'>空洞形成</span>を伴う<br>肺炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung abscess'>肺膿瘍</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>"]
    E --> F["多発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain abscess'>脳膿瘍</span>"]
    B --> G["皮膚型:限局性膿瘍<br>(播種性なら顆粒を伴う)"]

感染経路と疫学

  • 好発患者:免疫不全者(感染、使用など)、悪性腫瘍患者——女性より男性に多い
  • 伝播はまたは外傷によるで、ヒト-ヒト感染はない

起こす疾患

疾患の総称をと呼ぶ。吸入が主なであるためが最も多く、肺外では中枢神経系が最も多い(ある報告では最大44%)1。下表の頻度は同一患者で病型が重なりうるため、合計が100%になる分割ではない。

病型 頻度 臨床像
90% 急性・亜急性・慢性いずれの経過もとりうる肺炎(/びまん性)でを伴う。、咳・発熱・呼吸困難、画像上は結節・
皮膚型 20% 土壌への曝露による感染。硬く厚い、播種性であれば皮膚に顆粒を伴う膿瘍性炎症反応
中枢神経系型 — 肺から血行性に播種した場合に多発性のを形成

⚠️ 免疫不全者の空洞性肺病変+の組み合わせを見たらを鑑別に入れる。 結核・真菌感染との鑑別が問題になりやすいが、播種パターン(肺→脳への)が診断の手がかりになる。神経症状・重症の肺・高度の免疫抑制のいずれかがあれば、中枢神経系の画像検査を考慮する1。

診断

  • ()——を含む細胞壁がを取り込む。グラム染色も可能だが染まりは弱い
  • 培養は数日〜数週間を要することがあり、検査室への事前連絡が有用
  • 菌種の同定とを行う——菌種の間でも同じ菌種の中でも感受性のパターンが異なるためで、後ののガイドラインは両者を強く推奨している3

治療と予防

まとめ

  • Nocardiaは・の菌で、主に免疫不全者に外因性の日和見感染を起こすが、免疫正常者の発症も珍しくない(とくに外傷による皮膚型)。
  • Actinomyces(多くはで〜を好み、なしの)とは酸素要求性・の2点で区別する。
  • は(90%、)・皮膚型(20%)・中枢神経系型(肺からのによる多発性)に分かれる。
  • 診断は()が鍵。
  • 治療はST合剤が第一選択で、菌種により耐性があるため同定とを行う。播種性・重症例は2剤以上の併用で始め、期間は免疫正常者の非中枢神経系病変で6〜12か月、免疫抑制または中枢神経系病変では12か月以上。膿瘍形成例では外科的処置を併用する。

出典

  1. 1.Nocardiosis: Updates and Clinical Overview(Mayo Clinic Proceedings・2012)PMC掲載の全文(PMC3498414)で、Nocardiaが土壌・腐敗植物などの有機物と淡水・海水に存在すること、吸入が主な曝露経路で肺ノカルジア症が最も多い病型であること、中枢神経系が最も多い肺外病巣であること(ある報告では最大44%)、神経症状・重症肺ノカルジア症・高度の免疫抑制のいずれかがあれば中枢神経系の画像検査を考慮すべきこと、ST合剤はほとんどの菌種に活性があるがN. otitidiscaviarumはしばしば耐性でN. novaとN. farcinicaもときに耐性であること、免疫正常者の肺または多巣性(中枢神経系以外)のノカルジア症は6〜12か月の抗菌薬治療で治療しうる一方、免疫抑制患者と中枢神経系病変のある患者は少なくとも12か月の治療を要すること、ノカルジア症は典型的には細胞性免疫を抑制する病態の患者に起こるが免疫正常者にもときに発症すること(抄録)、本文では患者の最大3分の1が免疫正常者であること、原発性の皮膚・軟部組織ノカルジア症は外傷で土壌が皮膚に入って起こり、他の病型と異なり通常は免疫正常者に発症することを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Actinomycosis: etiology, clinical features, diagnosis, treatment, and management(Infection and Drug Resistance(Valour F, et al.)・2014)PMC全文(PMC4094581)で、*Actinomyces*属の多くは通性嫌気性であり*A. meyeri*など一部の重要菌種が偏性嫌気性であること(原文「Most Actinomyces spp. are facultative anaerobes, but some relevant species (such as A. meyeri), are strictly anaerobic.」)、微好気性から偏性嫌気性という性質のため検体の適切な輸送と培養条件が必要であること、発育が遅く少なくとも5日、長いと15〜20日かかるため陰性と判断するまで最低10日の培養を要することを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Nocardia infections in solid organ transplantation: Guidelines from the Infectious Diseases Community of Practice of the American Society of Transplantation(Clinical Transplantation(American Society of Transplantation Infectious Diseases Community of Practice)・2019)抄録で、固形臓器移植後のノカルジア症について、菌種間・菌種内で感受性のパターンが異なるため菌種の同定と薬剤感受性試験を強く推奨すること、スルホンアミドが第一選択であること、播種性または重症のノカルジア症では初期に少なくとも2剤の併用療法を用いるべきことを確認した(本文は未取得)。閲覧 2026-09-27